ハングルの成り立ちと構造とは?韓国語学習に役立つ知識

ハングルの成り立ちとは?韓国語の謎を解明しよう

 

ハングルは朝鮮語を表記するための文字で、日本語でいうひらがな・カタカナ、英語でいうアルファベットに値しますので、時折耳にする「ハングル語」という言い方は間違いになります。

今回は、ハングルの成り立ちとハングルが偉大なる文字と呼ばれる所以を探っていきたいと思います。成り立ちを知ることで、ハングルへの理解が深まり、韓国語を勉強する上でも大きな力になる事と思います。

 

ハングルの成り立ち

 

ハングルができる前はどんな文字が使われていたのか、なぜ、どのようにハングルが作られたのか。その歴史をひも解いてみましょう。

 

ハングル誕生までの歴史的背景

 

どんな文字でもそうですが、最初に口語で使われている言語が存在して、それを表記するために後から文字が作られます。

朝鮮では朝鮮語を使っていましたが、では文字はどうだったのでしょうか。

実は、ハングルが作られるまでは、朝鮮でも日本と同じように中国から来た漢字が使われていました

しかし、漢字は覚えるべき文字の数が膨大なため習得がとても難しく、文字を読み書きできるのはある程度地位が高く学習の機会を得ることができたごく一部の上流階級の人々のみで、庶民は読み書きができませんでした。

庶民が文字を知らないと、国からの告知や連絡事項はすべて口伝えで広めないといけないという不便が生じます。

そこで、国民への情報の伝達を簡潔化すべく、また庶民も気軽に文学を楽しめるよう、簡単に読み書きできる文字として創製されたのがハングルなのです。

 

ハングル誕生のその後

 

ハングルは1443年に「세종대완(セジョンデワン/世宗大王)」によって作られ、1466年に「훈민정음(フンミンジョンウㇺ/訓民正音)」の名で公布されました。

このように、作った人と年代が明確に記録されていて、「公布」という方法で世に広まった文字は世界でもとても珍しいそうです。

今でこそ「偉大な文字」と言われ韓国人が誇りを持ち確固たる地位を確立したハングルですが、世宗大王が発表した当初は、その簡単すぎる構造のせいで知識のない平民や女子供が使う卑しい言葉=언문(オンムン/諺文)などと呼ばれて蔑まれていました。

その為、国民に普及した後も公文書への使用はなかなか進まず、公式に使用が認められる様になったのは1984年、世宗大王がハングルを作ってから実に450年も後の事だったそうです。

世宗大王ってどんな人?

世宗大王は、韓国人なら小学校でも知っている偉人です。1万ウォン札に肖像が描かれ、ソウルの光化問広場には銅像が建てられ、王に由来する数々の史料が展示された世宗大王記念館もあり、韓国国民の世宗大王への尊敬の念が感じられます。

そんな世宗大王とは、いったいどんな人物だったのでしょう?

世宗大王は子供のころから大の読書家であったと知られています。また、言語学のみならず化学・天文学・力学・医学に至るまで幅広い分野に精通していたとも言われています。

音楽もたしなみ、韓国伝統楽器の거문고(コムンゴ/韓国の琴)や가야금(カヤグㇺ/伽倻琴)を自ら演奏。そして、僅かな音の違いを聞き分ける絶対音感を持っていたという記述も残されています。

発音を表記するのにとても優れていると言われるハングルは、世宗大王の絶対音感を持ってしてこそ作り得たと考えられています。

 

世宗大王を題材にしたドラマ

 

ハングルを作った人として韓国国民に愛され続ける世宗大王。これまでに、世宗大王やハングル創製を題材とした映画やドラマがたくさん作られてきました。

「뿌리 깊은 나무(プリ キップン ナㇺ/根の深い木)」はその中でも特に人気のあったドラマで、訓民正音が発表されるまでの7日間に起きた学士連続殺人とハングルに隠された秘密を描いた壮絶なストーリー。最高視聴率27.3%を記録したミステリー時代劇です。

ハングルや世宗大王に興味のある方は、是非一度見てみて下さい!

 

ハングルの構造

 

ひらがなやカタカナは元となる漢字を崩して作られました。この漢字の様に、元となる字の事を「字母」と呼び、ほとんどの文字がなんらかの「字母」を持つのに対し、ハングルは他の文字の影響を受けることなくイチから創造されたという点がとても独創的だと言われています。

ここではハングルのその独創的な構造と発音について、詳しく見ていきたいと思います。

 

子音の構造

 

まずは、ハングルの子音字母5個を列挙してみましょう。

子音字母:ㄱㄴㅁㅅㅇ

ハングルの子音は発音する時の発音器官の形を元に作られています。

「ㄱ」を例にみてみましょう。「가갸거겨...」を発声する時は、舌を奥に引き舌の根元で喉を閉じるようにして発音します。この時の舌の形を横から見ると「ㄱ」の形をしている事が分かります。

分かりづらい方はㄱパッチㇺがある単語を声に出してみて下さい。例えば、「학교(ハッキョ/学校)」はハを発音した後に舌を後ろに引いているのを感じる事ができると思います。

「ㄴ」はどうでしょうか。「나냐너녀...」と発声する時は、舌の先が前歯の裏側についてから発音していますね。この時の舌の形を横から見ると「ㄴ」の形になっているのです。

こちらも、分かりづらい方はㄴパッチㇺがある単語を声に出すと理解しやすいでしょう。「산(サン/山)」の「ン」を発音する時は前歯の裏に舌がつくのが正しく発声した時の形です。

同様に「ㅁ」は口を開けた時の口の形を、「ㅅ」は息が漏れるくらい僅かに隙間が空いた歯のを横から見た時の形、「ㅇ」は舌の一番根本部分で発声するので喉元の形、といった様に発音する時の発音器官の形が元となって作られているのです。

この他に、字母に線を加えたり子音を2つ並べたりして出来た子音が14個あります。

線を加えたもの:ㄷㄹㅂㅈㅊㅋㅌㅍㅎ
2つ並べたもの:ㄲㄸㅃㅆㅉ

これがハングルの子音の基本的な構造になります。

 

母音の構造

 

母音は10個の母音字母と11個の二重母音からなっています。

母音字母:ㅏㅑㅓㅕㅗㅛㅜㅠㅡㅣ
二重母音:ㅐㅒㅔㅖㅘㅙㅚㅝㅟㅞㅢ

よく見ると、母音を作る要素は3つしかないという事が分かります。

天を表す「・」、人を表す「ㅣ」、地を表す「ㅡ」、母音はこの3つの要素を組み合わせだけで作られています。

これは、「1」と「0」の組み合わせだけで出来ている現在のコンピューターの原理と非常によく似ていて、化学的なこの方法を500年以上前に生み出していたことに、各国の言語学者達は驚嘆していると言います。

 

子音と母音の複合文字

 

ハングルは、前出の子音と母音を組み合わせて構成されます。

英語の場合、子音「n」と母音「a」で「na/ナ」と発音しますね。これがハングルの場合は「ㄴ」
と「ㅏ」が結合してひとつの文字「나」を作り出すわけです。

英語がnとa二文字なのに対し、ハングルはたった1文字で表すことができます。

それを言うなら、日本語も「na」を「な」1文字で書き表せるじゃないか!と思いますよね。その通りなのですが、そこには根本的な構造の違いがあります。

日本の五十音(正確には「ん」を除く45字)を書くには仮名を45個覚えなくてはなりません。これに対しハングルは、子音8個と母音5個合わせて13個だけを覚えれば後は組み合わせる事で45字を書けてしまうのです。

韓国語を学び始めた時、あっという間にハングルの読み書きを習得できてびっくりしたという経験を持つ方も多いと思いますが、それはこのシンプルな構造故なのです。

 

ハングルの発音

 

ハングルは、発音と文字が一対一で表記される唯一の文字とも言われており、これもまたハングルが評価される理由のひとつです。

例えば、アルファベットの「a」は、単語によって「ə」「ei」「æ」「aː」「ɔː」と5つもの読み方ができますが、ハングルはひとつの文字の読み方はひとつだけ。

これはどう読むんだろう?と悩む事もないので、韓国語が全く話せない人でも仕組みさえ分かればハングルを読むことだけはできる様になります。

 


ここで少し余談!

 

下記記事では、韓国語を学習し始めた方が気を付けるべきポイントや、効果的な学習法を記載しています!最初から間違った勉強に進まないよう、気をつけましょう♪

 

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後世に継承されるハングル

 

韓国の国宝第70号に指定され、1997年にはユネスコ世界記録遺産にも登録された「訓民正音」。この素晴らしい言語を後世に継承するべく、様々な取り組みが行われています。

 

ハングルの日

 

毎年10月9日は「한글날(ハングㇽラㇽ/ハングルの日)」。

訓民正音が頒布されたことを記念し、ハングルの普及と研究を奨励するために制定された祝祭日です。

この日は韓国各地で作文大会や書道大会、ハングルをテーマにしたクイズやイベントが開催され、テレビ番組でもハングルを主題にした特番が組まれたりします。

また、世宗大王のハングル創製を称えるため、民族文化の振興に寄与した個人または団体に贈られる「世宗文化賞」の授賞式も、このハングルの日に執り行われます。

 

輸出されたハングル

 

ハングルが、発音をそのまま表現できるという点でとても優れているという事はこれまで何度もお話してきました。その長所を活かし、韓国以外でハングルが採用された事例をご紹介します。

インドネシアのチアチア族は独自の言語を話しますが、これを表記する文字を持ちませんでした。そこで2009年、言語の表記にハングルを採用。口語でのみ伝えられてきた言語が、ハングルを利用することで文字として残り、後世まで伝統を伝えることができるようになったのです。

当初は、なぜアルファベットでないのか?などの論争もありましたが、アルファベットよりもより多くの発音を表示でき、複雑な発音にも対応できる事などからハングル採用に至ったと言われています。

 


ここでまた少し余談!

 

下記記事では、韓国語を独学で勉強するために必要な情報をまとめています!独学でも会話ができるレベルまでに成長できるよう、効果的な学習方法を記載していますので是非ご参考にしてください♪

 

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おわりに

 

シンプルで合理的な構造を持ち学者たちから「文字の革命」と高く評価差されるハングルは、世宗大王の知恵と国民への愛情から生まれたまさに「偉大なる文字」でした。

ハングルに苦手意識があった方も、ハングルについて詳しく知らずに韓国語を勉強していた方も、その成り立ちと歴史を知ったことで、今までよりハングルを身近に感じてもらえたら嬉しいです。