韓国語は、日本語と同じ様に敬語が発達した言語のひとつです。
「韓国語の尊敬語について学ぼう!」の記事でも触れましたが、韓国には儒教の文化が根強く残っていて目上の人を敬う事を重要視する為、敬語を正しく使う事はとても大事なんです。
ドラマや映画でも敬語はよく出てくるので、初級学習者でも知っておくと良いと思います。
日本語同様、韓国語の敬語も 「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」 の3つに分類されますが、今回はその中の「謙譲語」について詳しく解説していきたいと思います。
謙譲語とは
まずは、敬語の中でも「謙譲語」とはどの様な表現なのかを確認しましょう。
簡単に言うと、
主語となる相手側を持ち上げることで敬意を表現する「尊敬語」に対し、
主語となる自分側を下げて相手への敬意を表現するのが「謙譲語」になります。
「食べる」という言葉を例に挙げると、
尊敬語は食べる側を持ち上げて表現するので「召し上がる」
謙譲語は食べる側をへりくだって表現するので「いただく」
となるわけです。
謙譲語の使い方
日本語と同じで、韓国語の謙譲語には以下の2つの使い方があります。
1.自分側を下げて相手を敬う方法
例)
선생님, 제가 도와 드릴게요.(ソンセンニム, チェガ トワ トゥリルケヨ)
先生、私がお手伝い致します。
「주다」の謙譲語に当たる「드리다」を使って自分を下げて先生を持ち上げて表現しています。一般的な謙譲語の使い方ですね。
2.相手を下げて第三者を敬う方法
例)
선생님을 도와 드렸어?(ソンセンニムル トワ トゥリョッソ?)
先生を手伝って差し上げたの?
登場人物は 「話し手」「聞き手」「先生」 の3人で、動作の対象(=主語)となるのは「聞き手」です。
先ほどと同じ様に「드리다」を使ってへりくだるのですが、へりくだる相手は話し手本人ではなく「聞き手」になります。
「聞き手」を下げる事で先生(第三者)を持ち上げる使い方です。
謙譲語の動詞
韓国語の謙譲語を表わす動詞は、日本よりも少なくたったの6つだけ!
たった6つですから、しっかり覚えてしまいましょう。
基本形 | 意味 | 謙譲語 | 意味 |
---|---|---|---|
주다 | あげる | 드리다 | 差し上げる |
말하다 | 言う | 말씀드리다 | 申し上げる |
데리다 | 連れる | 모시다 | お連れする |
보다 | 見る/会う | 뵈다/뵙다 | お目にかかる/お会いする |
찾아가다 | 会いに行く | 찾아뵈다/찾아뵙다 | お伺いする(直接会いに) |
묻다 | 尋ねる | 여쭈다/여쭙다 | お尋ねする/お伺いする(聞いて) |
1.드리다(トゥリダ)
あげるを意味する「주다」の謙譲語です。
「주다」は単体で「(物などを)あげる」としても使いますし、日本語と同じ様に他の動詞について使用することもできます。
買う+あげる=買ってあげる (사다+주다=사 주다)
読む+あげる=読んであげる (읽다+주다=읽어 주다)
つまり、「주다」の謙譲語である「드리다」を他の動詞につけるだけで「~して差し上げる」という謙譲表現を作り出すことができるのです。
助ける+差し上げる=助けて差し上げる (덥다+드리다=더와 드리다)
する+差し上げる=して差し上げる (하다+드리다=해 드리다)
例)
내일 다시 연락 드리겠습니다.(ネイル タシ ヨンラク トゥリゲッスムニダ)
明日もう一度ご連絡差し上げます。
대신에 제가 써 드릴게요.(テシネ チェガ ソ トゥリルケヨ)
代わりに私が書いて差し上げます。
ほとんどの動詞が「드리다」を付けることで謙譲語になることができますが、以下の2~6のように固有の謙譲語を持つ単語もあります。
2.말씀드리다(マルスムトゥリダ)
言うを意味する「말하다」の謙譲語です。
「말하다」の尊敬語「말씀하시다」と似ているので、混同しない様に注意しましょう。
例)
제 의견을 말씀드리겠습니다.(チェ イギョヌル マルスムトゥリゲッスムニダ)
私の意見を申し上げます。
3.모시다(モシダ)
連れるを意味する「데리다」の謙譲語です。
「連れて行ってあげる」の意の「데려다주다」の謙譲語として「모셔다드리다」の形で使われる事が多いです。
例)
역까지 차로 모셔다드릴게요.(ヨクカジ チャロ モショダトゥリルケヨ)
駅まで車でお送りしますよ。
「모시다」という単語は「もてなす」「近くで手厚く扱う」と言った意味合いも持っていて、単体ではその意味で良く使われるので一緒に覚えておきましょう。
例)
손님을 잘 모셔.(ソンニムル チャル モショ)
お客様をちゃんともてなしなよ。
부모님을 모시고 살아요.(ブモニㇺル モシゴ サラヨ)
両親と一緒に暮らしています。
4.뵈다(ペダ)と뵙다(ぺプタ)
見るや会うを意味する「보다」の謙譲語です。
「보다」の謙譲語が「뵈다」、「뵈다」よりもさらにへりくだった表現が「뵙다」になります。
初対面の挨拶の基本「처음 뵙겠습니다」を「初めまして」と習ったかと思いますが、直訳は最大級の謙譲語を使った「お初にお目にかかります」という意味なんですね。
さて、この「뵙다」に関しては活用する際に少し注意が必要です。
「뵈다」はどんな形でも活用でき、後ろに母音子音のどちらが来てもOKです。
それに対し、「뵙다」は後ろに母音(어으など)が来ることが出来ません。
使い分けが難しければ、挨拶の「처음 뵙겠습니다」以外は「뵈다」を使っていれば問題ないでしょう。
뵈다 | 뵙다 |
---|---|
뵈고(〇) | 뵙고(〇) |
뵈게(〇) | 뵙게(〇) |
뵈어요(봬요)(〇) | 뵙어요(✖) |
뵈니까(〇) | 뵙으니까(✖) |
뵈면(〇) | 뵙으면(✖) |
뵐게요(〇) | 뵙을게요(✖) |
뵈었어요(뵀어요)(〇) | 뵙었어요(✖) |
뵈러(〇) | 뵙으러(✖) |
例)
다음주에 뵐게요.(タウムチュエ ペルケヨ)
来週お会いしましょう。
5.찾아뵈다(チャジャペダ)と찾아뵙다(チャジャぺプタ)
会いに行く、尋ねていくを意味する「찾아가다」の謙譲語です。
「가다」(行く)自体には相対する謙譲語はありませんが、「찾다」(探す)と結合した「찾아가다」には謙譲語が存在します。
「찾아뵈다」と「찾아뵙다」の使い分けと活用方法は前出の「뵈다」「뵙다」と同じです。
例)
할머니를 찾아뵈러 시골에 가려고요.(ハルモニルル チャジャペロ シゴレカリョゴヨ)
祖母に会いに田舎へ行こうと思います。
6.여쭈다(ヨッチュダ)と여쭙다(ヨッチュプタ)
尋ねるを意味する「묻다」の謙譲語です。
「묻다」の謙譲語が「여쭈다」、「여쭈다」よりもさらにへりくだった表現が「여쭙다」になります。
「여쭈다」は規則活用ですが、「여쭙다」は「ㅂ」不規則活用の対象ですので、活用に気を付ける必要があります。
여쭈다 | 여쭙다 |
---|---|
여쭈어요( 여쭤요) | 여쭈워요 |
여쭈니까 | 여쭈우니까 |
여쭈면 | 여쭈우면 |
여쭈었어요(여쭸어요) | 여쭈웠어요 |
「여쭈다」も「여쭙다」も、単体で使われることは少なく、通常は、見るの意の「보다」とセットで「여쭤보다」の形で使われます。
例)
뭐 좀 여쭤보려고요.(ムォ チョㇺ ヨッチョボリョゴヨ)
ちょっとお伺いしますが。
電話や案内所で何かを尋ねたい時の第一声に使います。
「뭐」自体には大した意味はなく、「あの…」のような感じで最初に置いて使います。
「뭐」が入ることでネイティブっぽい、より自然な印象になります。
聞きたいことがあるんだけど、どう声を掛けたらいいか分からない時などに覚えておくと便利なフレーズですよ。
ここで少し余談!
下記記事では、韓国語を話すときにかなり重要な「相槌」の仕方についてご紹介しています!ぜひ参考にしてみて下さい♪♪
謙譲語の名詞・代名詞
謙譲語の名詞と代名詞は、たったの4つだけです。
「저」や「제」の様に初級で出てきて既に知っているものもあると思いますので、無理なく覚えられるかと思います。
基本形 | 意味 | 謙譲語 | 意味 |
---|---|---|---|
나 | 私(~は~는等が続く) | 저 | 私・わたくし |
내 | 私(~が~가が続く) | 제 | 私・わたくし |
우리 | 私たち | 저희 | 私たち・わたくしども |
말 | 言葉 | 말씀 | 言葉・お言葉 |
1.저(チョ)
私を意味する代名詞「나」の謙譲語です。
後ろには~는,~의,~를,~와,~도等が続きます。
自己紹介などで既に習ったという方も多いでしょう。
例)
저는 일본사람이에요.(チョヌン イルボンサラミエヨ)
私は日本人です。
2.제(チェ)
私を意味する代名詞「내」の謙譲語です。
後ろには~가のみが続きます。
「저」とセットで絶対に覚えておきたい単語のひとつです。
例)
그 일은 제가 하겠습니다.(ク イルン チェガ ハゲッスムニダ)
その仕事は私が致します。
3.저희(チョイ)
私たちを意味する代名詞「우리」の謙譲語です。
二つ目のハングル「희」は「ヒ」と読みますが、この場合は「イ」と発音が変化する点に注意しましょう。
複数を表す「들」を付けて「저희들」とすることも可能です。
例)
저희들과 같이 와주시겠어요?(チョイドゥルカ カチ ワジュシゲッソヨ?)
私たちと一緒にお越しいただけますか?
また、「저희」だけで「私たちの」を表現することもでき、「저희 선생님(私たちの先生)」「저희 회사(わたくしどもの会社=弊社)」のような使い方もよくされます。
例)
저희 집은 도쿄에 있어요.(チョイ チブン トキョエ イッソヨ)
私たちの家は東京にあります。
4.말씀(マルスム)
言葉を意味する名詞「말」の謙譲語です。
この「말씀」は謙譲語だけでなく尊敬語としても使う事ができます。
謙譲語として使う例)
축하의 말씀을 드리겠습니다.(チュッカエ マルスムル トゥリゲッスムニダ)
お祝いを申し上げます。
尊敬語として使う例)
저에게 말씀을 해주세요.(チョエゲ マルスムル ヘジュセヨ)
私におっしゃってください。
「~겠(~ゲッ)」
記事中の会話文を見直すと、「~겠」を使う表現が多く出てきたかと思います。
この「~겠」は謙譲語のくくりに含まれる訳ではないのですが、「~겠」を使う事でより敬意を含んだ表現にすることができるため、尊敬語や謙譲語と一緒によく使われるんです。
敬意を表す度合が低い順に、
제가 할게요 < 제가 합니다 < 제가 하겠습니다
となるわけです。
ここでまた少し余談!
下記記事では韓国語学習中、いや、語学学習中に必ずやってくる「スランプ」の乗り越え方についてご紹介しています!これは絶対に読んでおきましょう!
おわりに
今回は敬語の中でも自分をへりくだる事で相手を持ち上げる「謙譲語」について詳しくご紹介しました。
ドラマやバラエティ番組などで、韓国人がどんな言い回しで謙譲語を使っているのか、よーく観察しその表現を何度も繰り返し使って自分のものにしていきましょう。
尊敬語・謙譲語の2つをマスターすれば韓国語会話に怖いものはありません!
ぜひこの記事を参考に、尊敬語・謙譲語学習の第一歩を踏み出してみて下さい!

韓国蔚山市在住10年目、2児の母です。2011年語学留学中のLAで知り合った韓国人男性と結婚。それを機に無謀にも韓国語が全くできない状態で韓国での生活を始める。2019年より自身がゼロから学習してきた経験を元に、韓国語学習に関する執筆活動を開始。最近は、辛さの奥にある韓国料理の魅力を再発見し、趣味で韓国料理を学び、好きが高じて国家資格「韓食調理技能師」を取得しました。