海外旅行や海外留学をする際に悩むことの一つが
「チップ」です。
日本にはチップを渡す習慣はほとんどありませんが、国によってはチップを渡すのが文化として深く生活に根付いている場合もあります。
チップはいったい、どんなシチュエーションでどのように渡せばいいのか?
相場はどのくらいなのか?
今回ご紹介するのは、オーストラリアのチップ文化です。
オーストラリアではチップは必要なのでしょうか? どんな時にいくら渡せばいいのでしょうか?
この記事では、オーストラリアでのチップについて、ホテル、タクシー、レストラン、観光ガイドなど、シチュエーション別にどのように対応したらいいのかを詳しく解説・説明していきます。
また、チップを渡す際の英会話の例も挙げますので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、以下本文中で「AU$」とあるのは「オーストラリアドル」のことです。
2025年初頭現在、AU$1は90円台後半です。
- オーストラリアでチップは基本的に不要?
- チップを払う場面と金額目安:ホテル
- チップを払う場面と金額目安:タクシー
- チップを払う場面と金額目安:レストラン
- チップを払う場面と金額目安:観光ガイド
- オーストラリアのチップ文化に関するマナー
- まとめ
オーストラリアでチップは基本的に不要?
そもそもチップって? 2つの大きな役割
チップとは、お客さんが決まった料金以外にプラスアルファでサービス提供者や商品提供者に渡すお金のことです。
英語では「tip」と書きます。
発音は「ティップ」という感じ。
日本語のように「チップ」と発音してしまうと、相手には「chip」だと思われてしまうので要注意です。
「chip」はアメリカではポテトチップス、イギリスではフライドポテトなどを意味します。
チップには大きく分けて2つの役割があります。
1つ目は「良いサービスへの感謝」あるいは「評価」です。
これは、プロフェッショナルなサービスを提供してくれた人に対して、お礼の気持ちや称賛の気持ちを示すために渡すものです。
2つ目は「低賃金労働者のサポート」です。
特にアメリカなどの一部の国では、接客業・サービス業における労働者の基本賃金が低いことが多いため、チップは彼らの生活費を支えるものとして重要な意味を持ちます。
客の方も「労働者を支えるためにチップは払って当たり前」という感覚なのです。
チップが根付いている国とそうではない国
チップ文化は国によって大きく違いがあります。
アメリカやカナダのような国では、チップは既に生活に根付いた習慣・文化であり、レストランやタクシーなどでチップを払うことが一般化しています。
一方、現代の日本ではチップを渡す文化はほぼ存在しません。
ただ、特殊な場面では、少しの金額を払う場合もあります。
例えば、結婚式のプランナーにお礼を封筒に入れて渡すといったことが挙げられます。
旅館の接客係の人にチップを渡すという人もいますね。
オーストラリアは基本チップ不要だったが……
さて、今回のテーマであるオーストラリアです。
オーストラリアのチップ事情は日本と似た点があり、基本的にはチップを払う必要はありません。
オーストラリアではチップ不要、これが「基本」です。
ところが昨今、やや事情が変わってきているのです。
オーストラリアでもチップを渡す習慣が徐々に広まりつつある、あるいは人によってはチップを渡すのが当然と考える人も増えつつあるのです。
また、意識的にチップを払う必要はないけれども、お会計・料金の中に既に「サービス料」としてチップに相当する金額が含まれている、というケースも増えてきています。
オーストラリアでチップ習慣が広がり始めたのは、2000年に開催されたシドニーオリンピックが契機である、という声もあります。
世界中から人々が集まり、その中にはチップを渡すことが当然である国から来た人々も多いわけで、そうした人々がチップ習慣を持ち込んだということです。
加えて、オーストラリアは世界中から移民を受け入れている移民大国でもあります。
やはり、チップ文化が根付いている国からの移住者がオーストラリアにチップ習慣を広めつつあるという側面もあるわけです。
では、オーストラリアにおいて、具体的にどんな場面で、どれくらいの金額のチップを、どのように渡せばいいのでしょうか。
「ホテル」「タクシー」「レストラン」「観光ガイド」というシチュエーション別に見ていきましょう。
チップを払う場面と金額目安:ホテル
繰り返しになりますが、オーストラリアでは基本チップを払う必要はありません。
しかし、良いサービスを受けた対価としてチップを渡すと相手に喜ばれるのは確かです。
例えば、ホテルでは次のようなシチュエーションが考えられます。
荷物の上げ下ろしや運搬
ホテルでは車への荷物の上げ下ろしや、部屋までの運搬などを手伝ってくれる人がいます。
ポーター、ベルスタッフ、ドアマンなどと呼ばれる人々です。
もしチップを渡すならば、AU$2〜5を渡すと良いとされています。
大きな荷物を運んでくれた場合は、やや高めのAU$5〜10を渡すのも良いでしょう。
ドアマンはタクシーを呼んでくれたりしますが、この場合もAU$2〜5が相場です。
ハウスキーピング
部屋の掃除やベッドメイキングをやってくれるハウスキーピングについては、普通はチップを渡す必要はありません。
ただし、感謝の気持ちを表したい場合は、AU$2〜5をベッドの上に置いておくのがよいでしょう。
ただ、置いてあるお金がチップなのか分かりにくいとスタッフは持って行きませんので、メモを添えておくのがおすすめです。
具体的な文面例はこの後にご紹介します。
コンシェルジュ・フロントデスク
ホテルのコンシェルジュやフロントデスクで、例えば、少し無理のある予約を取ってもらうなど特別なサービスを提供してもらった場合は、AU$5程度、場合によってはAU$10以上を渡すことを検討してもよいかもしれません。
金額はあくまで目安であり、基本的にはあなたの自由です。
また、ホテルによっては一切チップを受け取らない場合もあります。
それはルールですので、無理に受け取らせる必要はありません。
チップを渡す時の英語表現
ホテルでチップを渡す時に役立つ英語表現をいくつかご紹介しましょう。
荷物を運んでくれた時
Thank you so much for helping with my bags. Here’s a little something for you. I appreciate it.
荷物を手伝ってくれて本当にありがとうございます。少ないけどこれを。感謝します。
I really appreciate your help. Here you go.
手伝ってくれてありがとうございます。これをどうぞ。
ハウスキーピングスタッフへのメモ
This is for your excellent housekeeping service. Thank you so much!
これは、あなたの素晴らしいハウスキーピングサービスに対しての感謝です。 ありがとう!
Thank you for your wonderful service. Please accept this as a small token of my appreciation.
素晴らしいサービスをありがとうございます。 ささやかですが、感謝の気持ちとしてお受け取りください。
コンシェルジュなどにチップを渡す時
Thank you for arranging everything so perfectly. Here’s a small token of my appreciation.
すべてを完璧にアレンジしてくれてありがとう。 これは少ないけれども感謝の印です。
Your recommendation was fantastic. I’d like to thank you for your help.
あなたのおすすめは素晴らしかった。 感謝します。
Excuse me, I wanted to thank you for your assistance earlier. Here’s something for you.
すみません、先ほどの手伝ってくださった件でお礼がしたいのですが。 これをどうぞ。
チップを払う場面と金額目安:タクシー
オーストラリアでタクシーを利用する場面では、基本的にはチップを払う必要はありません。
アメリカ等でタクシーを利用する時は、運賃の10〜20%をチップとして上乗せして支払う習慣がありますが、オーストラリアではそれは不要と考えて大丈夫です。
しかし、例えば以下のような場合、チップを渡すことを検討してもいいでしょう。
・突然の行き先変更、ルート変更に対応してくれた。
・重い荷物、大きな荷物をホテル等の入口まで運んでくれた。
・その地域のいろいろな情報を教えてくれた。
・その他、楽しい気分にさせてくれた。
いずれもAU$2〜10が目安です。
もしチップを渡す場合、クレジットカード払いだと運転手に渡りませんので、チップは現金で渡しましょう。
チップを渡す時の英語表現
タクシー利用時にチップを渡す時に役立つ英語表現です。
Thank you for the ride. Here’s a little something for you.
運転ありがとう。 少しですが、これをどうぞ。
Thanks for the smooth ride. Please keep the change.
スムーズな運転、ありがとう。 お釣りはとっておいてください。
ここに登場している「Please keep the change.」は「お釣りはとっておいてください」という意味で、お釣りをチップとして渡す時によく使われる便利なフレーズです。
No need for change. Thanks for the ride.
お釣りは不要です。 ありがとう。
上の「No need for change.」も「お釣りはとっておいて」という意味でよく使われます。
Thank you for helping with my luggage. I really appreciate it. Here’s a tip for your kindness.
荷物を手伝ってくれてありがとう。 感謝します。 これはあなたの親切さに対するチップです。
You went out of your way to find the best route. Thanks a lot! Here’s a little extra for you.
わざわざ最善のルートを探してくれてありがとう。 少しですがこれをあなたに。
チップを払う場面と金額目安:レストラン
レストラン・飲食店でも基本はチップ不要なのですが、前述のように、だんだんとチップを渡す習慣が広がってきつつあるのも事実です。
また、最初から飲食代にサービス料が含まれるケースもあります。
ここでは、支払いの形態別にチップ事情をご紹介したいと思います。
チップ用の瓶などがレジそばにある店
ファストフード的な店、惣菜店、たくさんの店舗が並ぶフードコートの各店舗のレジそばに、チップ用の瓶や箱が置いてある場合があります。
必須ではありませんが、チップとして小銭を入れる人がけっこう多いです。
AU$1〜2で十分ですが、小銭の中にお札がチラホラ混じっているのも見かけます。
なお、入れる時は店員さんが見ている時に入れるのがいいでしょう。
「Thank you!」と笑顔で言ってくれるはずです。
サービス料が最初から入っているお店
オーストラリアのレストランの場合、テーブルで支払う場合と、レジに伝票を持って行ってレジで支払う場合の2通りがあります。
いずれの場合も、伝票に「service charge」「service fee」などという名目で飲食料金に上乗せされた金額が明記されていている場合は、それ以上チップを支払う必要はありません。
レジで支払うタイプの店で、お会計に「service charge」「service fee」などが上乗せされていない時は、前述のチップ用の瓶や箱がレジそばに置いてあるケースが多いです。
無い場合は、チップは渡さない場合が多いです。
チップをテーブルに残したり、金額を自分で指定するタイプのお店
テーブルでお会計をするタイプのレストランで、「service charge」「service fee」などが会計に含まれていない場合、チップをどうするかで少し悩むでしょう。
もしチップを払うならば、飲食料金の5〜15%程度と考えるのがいいでしょう。
お会計時に、チップを加えた金額のお金をテーブルに置いたまま店を出ればOKです。
アメリカでよく見かけるスタイルです。
クレジットカードやスマホのアプリで支払う場合は、店を出る前にお店の人とやりとりをする必要があります。
この場合、カード伝票やスマホ画面に「tip」もしくは「gratuity」という欄があることが多く、ここに自分でチップの金額を書いたり入力したりする必要があります。
もしチップを支払うならば、やはり飲食料金の5〜15%程度が目安となります。
伝票やスマホ画面に「tip」や「gratuity」という欄がない場合は飲食料金のみでOK。
でもチップも渡したいという時には、別途現金をテーブルに残すのがいいでしょう。
チップを渡す時の英語表現
レストランの場合、チップに関して会話をする機会はあまりないかと思いますが、以下に、サービスが良かったことや感謝を伝える表現例をご紹介します。
The service was excellent. Thank you so much.
素晴らしいサービスでした。 ありがとう。
You’ve been really helpful. Thank you.
いろいろと気遣いありがとう。
Everything was perfect. Please accept this as a thank-you.
すべてが完璧でした。 感謝の印にこれをどうぞ。
チップを払う場面と金額目安:観光ガイド
チップを渡す最後のシチュエーションは、ツアーをガイドさんに案内してもらう場合です。
ガイド付きツアーには小規模なものから大人数のものまであるかと思いますので、ケース別に考えてみましょう。
他の場面と同様に、観光ガイドに対するチップは基本的に必須ではありませんが、良いサービスを提供してくれた場合には、感謝の意を表して少しの金額を渡したりします。
小規模なツアーの場合
例えば、こちらが友人同士やカップルなど2人だけという場合は、ガイドさんとも親密にやりとりすることになるかもしれません。
もし楽しい時間を作ってくれたならば、ガイド料金とは別に、お礼としてチップを渡すのもいいでしょう。
どれくらいの時間か、どんなことをやってくれたか、などによって変わってくるかと思いますが、AU$5〜10程度が目安です。
もう少し参加者が多い時は、逆に自分だけチップを渡すのはちょっと気が引けるかもしれません。
ツアー終了後に渡すなどするのがいいでしょう。
大規模なツアーの場合
数十人規模のツアーの場合は、あまりチップを渡す必要はないかもしれません。
しかし、気分が悪くなった時に世話してくれたなどガイドさんに負担をかけたような場合は、ツアー終了後にお礼としてチップを渡すのもいいでしょう。
AU$5〜10程度が目安です。
チップを渡す時の英語表現
ツアーのガイドさんにチップを渡す時に役立つ英語表現をご紹介します。
Thank you so much for the fantastic tour. I really enjoyed it. Here’s a small token of my appreciation.
素晴らしいツアーをありがとう。 とても楽しみました。 これは少しですが感謝の印です。
You made the tour so enjoyable and informative. This is for you. Thanks again!
とても楽しくて情報にあふれたツアーでした。
これをどうぞ。
あらためて、ありがとう。
Thank you for going out of your way to accommodate my request. I really appreciate it. Here’s something for you.
私のリクエストにわざわざ応えてくれてありがとう。 本当に感謝しています。
これをどうぞ。You made my experience truly unforgettable. I’d like to thank you for your effort.
忘れられない経験になりました。 がんばってくれたことに感謝します。
オーストラリアのチップ文化に関するマナー
チップを渡す際は、必ず感謝の気持ちを伝えることがポイント。
「Thank you.」に加えて、何か言葉を添えるのがベターです。
笑顔も忘れずに。
また、チップを渡す際には、相手を下に見ているような、上から目線の態度にならないように注意しましょう。
一方、会社などの決まりとしてチップを一切受け取らないという人もいます。
そのような場合は無理強いしないようにしましょう。
まとめ
今回はオーストラリアのチップ事情を、主なシチュエーション別に解説・説明しました。
オーストラリアではチップは必須ではありません。
しかし最近、徐々にチップ文化が広まりつつあるのも事実です。
ただ、アメリカのように義務的なものではありませんので、オーストラリアでチップを渡す時は、旅や留学を楽しんでいる一環ととらえるといいのではないでしょうか。
あまり深刻に考えすぎず、気が向いたらチップを渡す、という感じでもいいのではないかと思います。
チップを渡す時に大事なのは、金額よりも感謝の気持ちをフレンドリーに伝えることかもしれません。
「Thank you.」と「笑顔」は忘れないようにしましょう。

◇経歴
児童英語講師
オンライン英会話講師
NC英語アドバイザー
英語学習ライター
元大学教員
◇資格
TESOL/TEC(CANADA)
中学校教諭二級免許状(英語)
◇留学経験
アメリカ・サンディエゴに語学留学(2カ月)の経験あり
その後、オーストラリア・シドニーに大学院留学(2年)の経験もあり
◇海外渡航経験
25歳で初めて、短期間の語学留学をきっかけに本格的に英語の勉強を開始しました。
雑誌の編集・ライティング、テレビCMの企画・撮影等などの仕事が長く、英語を使っての海外取材や撮影経験も多く経験しています。また海外で日系新聞社の副編集長をしていたこともあります。
◇自己紹介
「英語学習に終わりはない」「継続は力なり」を実感し、50代半ばから毎日英語の勉強を続けて2000日近くが過ぎました。
「楽しく学ぶ!」をモットーに、僭越ながら私の異文化経験や英語の知識などをブログに織り交ぜながら、執筆することを心がけています!ネイティブキャンプのオンライン講師もしています。初心者・初級者限定ですが、ぜひ一緒に学びを続けましょう。