日本から飛行機でおよそ7時間の距離に位置するシンガポール。
温暖な気候のもとでのびのびと育つ植物と近代的な都市景観のコントラストが美しいこの国は、アジアにおいて、経済的・文化的に重要な地位を占めています。
他民族国家であるシンガポールでは、公用語が英語を含む4つもあり、多様な文化や価値観が共存しています。
さらに、世界トップクラスの教育水準を誇り、グローバル思考を身に着けたい学生にとって非常に魅力的な留学先の一つです。
本記事では、シンガポール留学を考え始めた方に向けて、大学での専門分野習得や語学留学におけるシンガポール留学の特徴、注意点、費用、ビザなど、必要な基礎知識を詳しく解説していきます。
シンガポールとは?
まずはじめに、シンガポールの基本情報について紹介します。
小さな島に他民族が共存する国
シンガポールの正式名称は「シンガポール共和区」といい、東南アジアに位置する琵琶湖や東京23区ほどの大きさの小さな島国です。
人口密度は、7,595人/㎢(外務省・2021年)で、国別でみると世界2位の高さであり、ここに、中華系74%、マレー系14%、インド系9%(外務省・2024年)をはじめとし、民族や言語、文化的価値観の異なる様々な人たちが暮らしています。
観光地としても大人気のまちなか
先述したように、シンガポールはアジアの経済的・文化的なハブでもありますが、観光地としても人気の高い国です。
インフィニティプールが人気の「マリーナベイサンズ」、人工の巨大ツリーで有名な植物園「ガーデンズバイザベイ」、定番の「マーライオン」など、小さい国ながらも見どころが豊富です。
また、政府の文化財保存政策により、植民地時代の雰囲気が残るショップハウスのカラフルな街並みも魅力の一つです。
さらに、公共交通機関が発達しているため、観光地巡りはもちろん、生活に必要な場所への移動も徒歩や電車、バスを活用することで快適に行うことが可能です。
多文化が交じり合う食文化
シンガポールの魅力の一つが、その豊かな食文化です。
多民族国家であるからこそ、各文化が交じり合い、多様な料理が発展してきました。
お手頃価格で楽しめる屋台「ホーカーズ」から、美しい景色を楽しめる高級レストランまで、街の至るところで質の高い料理を味わうことができます。
観光客にも地元民にも愛される料理が、シンガポールをさらに魅力的な国にしています。
シンガポール留学の特徴・メリット
ここまでは、シンガポールの国としての魅力を紹介してきましたが、この先は、「留学」という視点で見たときにシンガポールがおすすめな理由を4つ説明していきます。
メリット①世界トップクラスの教育水準
シンガポールの大学・大学院に留学を考えている方にとって、質の高い学びを受けられることは大きなメリットになるのではないでしょうか。
シンガポールでは、「人材育成が国の発展につながる」という信念のもと、独立当初より、教育に重点を置いた政策を推進しており、現在では教育水準の高さが世界的に評価されています。
例えば、『QS World University Rankings 2025で』は、シンガポール国立大学(NUS)が第8位に、南洋理工大学(NTU)が第15位と、いずれもアジアで最上位にランクインしています。
これらの優れた大学は、多様な知見が集まりやすいだけでなく、充実した研究施設も備えており、高品質な教育を受けられる環境を提供しています。
メリット②2か国留学ができる
英語や中国語を学習中の方にとって、シンガポール留学は英語・中国語の2か国語を一度に学ぶことができる絶好のチャンスです。
シンガポールには、英語だけでなく中国語の語学学校も充実しており、どちらかの言語をメインで勉強しながら、空いた時間を活用して、もう一方の言語のコースに通う2か国語留学が可能です。
さらに、英語と中国語の両方が公用語として使われているため、日常生活においても、これらの言語に触れる機会が豊富です。
例えば、レストランや街中では、シンガポール人が英語と中国語を自然に使っている姿が見られます。
リアルな環境の中で生きた言語を体験しながら学べる点も、シンガポール留学ならではの大きなメリットです。
メリット③日本と物理的・文化的に近い
初めての留学で不安を感じる方にとって、日本と物理的にも文化的に近いシンガポールは安心して挑戦できる留学先です。
住み慣れた国から離れて新しい環境に身を置くことには、多くのチャレンジが伴いますが、シンガポールではその負担を軽減することができます。
例えば、日本人にとって人気の英語圏の留学先と比較すると、オーストラリア(シドニー)までは飛行機で約9時間半、アメリカ(ロサンゼルス)までは約11時間かかるのに対し、シンガポールまではたったの7時間程度で到着します。
この手ごろな距離感は、留学中に精神的に辛く一時帰国したい場合や緊急の用事がある際にも安心です。
さらに、文化の違いが心配な方にとっても、シンガポールは魅力的な選択肢です。
同じアジア圏内であるため、価値観や文化的背景に共通点が多く、ほかの国に比べ、大きな文化的ギャップを感じにくい環境で安心して暮らせます。
メリット④シンガポール現地での就職を目指せる
前述したとおり、シンガポールはアジアの経済のハブであるのと同時に、ヨーロッパ、アジア、アメリカをつなぐ地理的な利便性により、数多くの外資系企業が進出し、拠点を構えています。
このグローバルなビジネス環境は現地就職を目指す学生に多くのチャンスの門戸を開いています。
さらに、シンガポール政府は、政府が指定する教育機関に在籍する正規留学生には、一定の条件のもと、インターンシップやアルバイトを行うことを認めています。
そのため、留学中に様々な企業で実務経験を積みながら、就職活動を行うことが可能です。
こうした経験は、グローバルなキャリアを目指すうえでも大きな強みとなるでしょう。
シンガポール留学の注意点・デメリット
続いてシンガポール留学に行く前に注意しておきたいポイントを3つ紹介します。
デメリット①中国語訛りの英語(シングリッシュ)
シンガポールでは、英語が公用語の一つとして使用されていますが、現地で使用されている英語は、イギリス英語に中国語が混じった「シングリッシュ」といわれる独特の訛りがあります。
特に、英語学習をはじめたばかりの方にとって、この訛りが聞き取りづらく感じることがあるかもしれません。
シンガポールでの会話に慣れるまで時間がかかる可能性もありますが、一つの文化として楽しむのもいいかもしれません。
デメリット②物価が高い
シンガポールの物価は、近年の円安の影響もあり、日本よりもやや高めです。
特に、小さな面積に対して、多くの人が集中して暮らすシンガポールは、住宅需要に供給が追い付かず、家賃が高額になる傾向があります。
現地のシンガポール人でも、若者が複数人でシェアハウスを利用するなど、住居に関しては工夫が見られます。
留学生として渡航する場合、学校と事前に相談して、比較的安価で住むことができる寮生活を選ぶのも一つの方法です。
さらに、勉強の合間に観光を楽しむ場合でも、観光スポットの入場料が高めであるため、滞在費用は余裕をもって見積もっておくことが重要です。
デメリット③競争の激しい学業環境
高品質な教育水準を求めて、世界中から優秀な学生が集まるシンガポールでは、学業の競争が激しいことがデメリットにもなります。
例えば、シンガポール国立大学(NUS)では、留学生に求められるIELTSの最低スコアがオーバーオール7.0など、ほかの人気留学先と比較して基準が高めに設定されることが多くあります。
学業の負担がストレスに感じることもあるかもしれませんが、その分に得られる知識や経験は、今後のキャリアに価値のあるものとなるでしょう。
シンガポール留学の費用目安
ここからは、実際にシンガポール留学でかかる費用について、紹介します。
1か月の生活費については、レートのタイミングや渡航の時期にもよりますが、かかる費用は20万円から50万円程度を見込んでおく必要があります。
項目 | 目安の費用 | 備考 |
渡航費 | 3~10万円 | 往復(1年のうちでは3月が最も安く渡航が可能) |
学費 | 8~20万円 | 語学留学の場合。(大学の場合は異なる目安になるので注意。例えばシンガポール国立大学(NUS)経済学部の場合は年間授業料は約250万円。) |
滞在費 | 4~12万円 | 寮(相部屋・個室)、シェアハウス、ホテルなど選択肢により節約も可能。 |
生活費 | 2~10万円 | ホーカー(屋台)などを活用することで節約が可能。 |
合計 | 17~52万円 | ー |
大学留学に関しては、シンガポール政府はある一定の条件のもとで、留学生向けにも政府奨学金や学費免除などのメニューを用意しています。
また、日本政府や企業、財団も海外留学のための奨学金を多数用意しているので、留学前には必ず確認することをおすすめします。
シンガポール留学にビザは必要?
結論からいうと、シンガポール留学では留学期間が30日間以上の場合、ビザが必要です。
シンガポール留学に使えるビザは「学生ビザ」「ワーキングホリデープログラム」「観光ビザ」の3つがありますが、これらのビザは留学期間や目的によって異なるため、具体的な留学タイプに応じたビザの選択が必要です。
以下で書く留学タイプに必要なビザの取得が必要かを整理してお伝えします。
短期語学留学(30日未満)
30日未満の短期留学の場合、基本的には「観光ビザ」を利用することができます。
このビザでシンガポールに滞在し、語学学校で学ぶことが可能です。
日本国籍を持っていれば、シンガポールに渡航する際にはビザの事前申請なしで入国、そして30日未満の滞在ができます。
ただし、就学する期間や学校の種類、また、留学中にアルバイトやインターンシップなどでの就労を検討している場合には、別のタイプのビザ(教育ビザ・ワーキングホリデープログラム)があるため、事前に留学の目的、現地での予定がビザの内容にあっているか確認することが大切です。
長期語学留学(30日以上)
30日以上の長期留学の場合、「学生ビザ」または「ワーキングホリデープログラム」の取得が必要です。
「学生ビザ」を申請する場合、ビザの申請者は「学校」となるため、渡航前に余裕をもって必ず受け入れ先の学校と相談しビザの申請を依頼してください。
また、留学中にアルバイトやインターンシップなどの就労を検討している場合は、「ワーキングホリデープログラム」でのビザ取得も選択肢の一つとなります。
正規留学・交換留学
正規留学や交換留学、または長期の語学留学をする場合は「学生ビザ」が必要です。
ビザの申請者は「学校」となるため、渡航前に余裕をもって必ず受け入れ先の学校と相談しビザの申請を依頼してください。
また、留学中にアルバイトやインターンシップなどの就労を考えている場合でも、政府が指定する大学での留学の場合は、就労行為が許可されることがあります。
大学ごとに個別でルールを設定している場合もあるので、就業する前に必ず大学にも確認するようにしましょう。
まとめ
シンガポールは、高い教育水準、多文化の環境が魅力の留学先です。
英語と中国語を一度に学ぶことができるチャンスもあり、日本から近い国であることも大きなメリットです。
こちらの記事で紹介したように、物価、独特な英語の訛りなどの注意点もありますが、しっかり準備すれば充実した留学生活が待っています。
新しい経験があなたを成長させてくれること間違いなしです!

①経歴
日本の公立中高を卒業後、理系の大学に進学。
現在は、タイの大学院に留学しています。
②資格
・TOEIC 805点
・IETLS Academic 6.0
③留学経験
・オーストラリア(2週間)→中学3年次にホームステイ
・タイ(1年)→修士課程に在学中
④海外渡航経験
長期でのんびりと滞在する旅行スタイルが好きで、シンガポール(1か月)、タイ(1年)、アメリカ(1か月)に滞在。
ほかにも、マレーシア、カナダ、オーストラリア、韓国、台湾、香港などを旅行しました。
⑤自己紹介
これまで長期の語学留学経験はなく、日本の公立中高に通いながら、ほぼ独学で英語を学んできました。英語を使うことで、世界中の最新の研究やデザインに触れる機会が増え、自分の視野が大きく広がったと感じています。特に東南アジアの都市が好きで、現在はタイの大学院で学んでいます。この経験を活かしながら、多くの方に英語を学ぶ楽しさや魅力を伝えていけたらと思っています。