英語が母国語の国、と聞いてまず思い浮かべるのが、イギリスとアメリカ(アメリカ合衆国)ではないでしょうか。
世界の政治・経済・文化などさまざまな面で強い影響力を持つ2大国です。旅行先や留学先としても超メジャーな国ですね。
でもあらためてそれぞれの国の基本的な情報を考えてみると、意外と知らないことが多いかもしれません。例えば、その国がどんな地域に分かれていて、どんな都市があり、どんな特徴を持っているのか、など。あるいは、そもそも、その国の範囲はどこからどこまで?
今回の記事では、意外と知らない、イギリスの基本情報について、あらためて説明・解説していきたいと思います。イギリス旅行や留学の計画を立てるのにお役立てください。
イギリスの基本情報
イギリスはどこにあるのか、どのくらいの大きさなのか、人口、その歴史・文化は、など、まずはイギリスに関する基本情報を見ていきましょう。
経度0度に位置する島国
イギリスはヨーロッパ北西部に位置する、日本と同じ島国です。イギリスはどこの大陸にあるの、という質問を見かけることがありますが、大陸には属していません。
ただし、どこの地域にあるかという問いには、ヨーロッパにある国の一つと答えられることもあります。とはいえ、2020年にイギリスは欧州連合(EU)から離脱するなど、「ヨーロッパの国の一つ」という言い方は適切ではないと思う人も少なくないようです。
面積は24万3600k㎡で人口は6835万人(2023年)。ちなみに日本は37万8,000k㎡で人口は1億2450万人(2023年)です。
世界地図を広げるとわかるように、0度の経線がイギリスのグリニッジ(Greenwich)という地域を通っています。ここが「世界標準時」の基準点です。イギリスは世界の時間の基準国でもあるわけです。
首都ロンドンの緯度は北緯51度。東京が北緯36度ですから、ロンドンは東京よりもだいぶ北に位置します。
多くの文化を生み出す小さな大国
ビートルズやローリング・ストーンズ。シェイクスピアにアガサ・クリスティ。シャーロック・ホームズにハリー・ポッター。サッカーだったらベッカム。小さな国なのに、イギリスからは、多くの偉大な文化が誕生し、世界の人々を魅了し続けています。
イギリスは国王または女王が君臨する王国です。ただし、王室であろうが憲法に従わなければならない「立憲君主制」であり、民主主義が大原則となっています。
歴史をひもとけば、イギリスは世界各地に進出し、植民地を所有する超大国だった時期もありました。18~19世紀の産業革命を経て、ヴィクトリア朝時代(1837~1901年)にイギリスは絶頂期を迎えます。
世界の陸地の4分の1を植民地とし、支配する地域のどこかは太陽が出ていることから「太陽の沈まない国」とも呼ばれました。「大英帝国」という言葉もこの時期のイギリスを指す時によく使われます。
アメリカ、インド、オーストラリア、ニュージーランド、カナダといった国々も、かつてイギリスの植民地だった時期があります。
まれに、イギリスはどこの植民地だったのか、という質問を見かけることがありますが、イギリスは植民地を開拓していった方です。
その後、植民地の多くは独立しますが、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどは今でも「イギリス連邦」の一員であり、これらの国の紙幣の一部にはイギリスの王族の顔が描かれていたりします。
結局どこまでがイギリス?
次に、イギリス国内がどのような地域に分かれているのか、結局イギリスとはどこまでのことを指すのか、などについて見ていきましょう。
4つの地域に分かれるイギリス
イギリスは4つの地域に分かれています。それぞれの特徴については後ほど詳しく説明します。
以下、イギリスの4つの地域とその中心都市です。
地域名(Country) 中心都市
●イングランド(England):ロンドン(London、イギリス全体の首都でもある)
●スコットランド(Scotland):エディンバラ(Edinburgh)
●ウェールズ(Wales):カーディフ(Cardiff)
●北アイルランド(Northern Ireland):ベルファスト(Belfast)
なお、この4つの地域は、それぞれの地域が自治権を持つ国のような存在に近いことから「Country」と呼ばれるのが一般的です。
このうち、イングランド、スコットランド、ウェールズの3地域がグレートブリテン島(Great Britain)に位置し、北アイルランド地域はグレートブリテン島の西にあるアイルランド島(Island of Ireland)の北部に位置します。アイルランド島の大部分である南西部はダブリンを首都とする別の国アイルランドです。北アイルランド地域だけ海をはさんで離れた所にあるわけです。
イギリスを英語で表すと
実は「イギリス」を英語で表すのはちょっとややこしいです。
もしかしたら、昔学校で、「イギリス」を「England(イングランド)」と習った人もいるかもしれません。筆者もその一人です。
でも実は、「England」は前述のようにイギリスの4つの地域の中の1つの地域名であり、イギリス全体をEnglandと言うのは実はあまりよろしくありません。
同じイギリス人であっても、スコットランド地域出身の人に「イギリス出身ですか?」のつもりで「Are you from England?」と尋ねると、十中八九「No.」という答えが返ってきます。
「English」も、「英語」「英語の」という意味では大丈夫なのですが、「イギリス人」「イギリスの」「イギリス人の」とはとらえずに、「イングランド人(出身者)」「イングランドの」「イングランド出身の」と解釈した方が無難です。
ですので、イギリス人と話す場合は、「England」を使って大丈夫かを最初に確かめましょう。スコットランド地域出身のイギリス人だと、「I’m not English, but Scottish.(私はイングランド出身ではなくスコットランド出身です。」と言うのが普通です。
別の言い方をすれば、イギリスの人々は、イギリスの国全体というよりも、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドという地域の方を強く意識している人が多いということになります。
では、イギリス全体を英語で表現するにはどうしたらいいのか。次の言い方が一般的です。
the UK
the U.K.
the United Kingdom
日本語では「イギリス」「イギリス連合王国」「英国」などと翻訳されます。
より正式な名称としては、
the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国
が使われます。
Japan、China、Canadaなど多くの国名には冠詞の「the」は付きませんが、上の場合は「the」を付けなければなりません。「the」を必ず付ける国名には、このほか、アメリカ合衆国(the United States of America、the USA、the U.S.A.、the US、the U.S.)などがあります。
また、グレートブリテン島を意味する「Britain」も「イギリス」という意味で使われることもあります。「I’m from Britain.」だと「私はイギリス出身です。」と訳せます。
より一般的なのは「Britain」の変化形の「British」の方で、こちらは「イギリスの」という意味で比較的幅広く使われます。例えば「British English」と言えば「イギリス英語」のことですね。「American English(アメリカ英語)」と比較する場合などによく聞きます。
「I’m English.」「I'm Scottish」という言い方をよく聞きますが、「I’m British.」(私はイギリス人です)と言うこともできます。
イギリスの4つの地域と主な都市の特徴
では次に、イギリスを構成する4つの地域と主な都市の特徴を解説しましょう。
イングランドEngland
イングランドはグレートブリテン島の約60%近くを占める、イギリスの中核を成す最大の地域です。島の南部と中央部に広がり、ロンドン(London)をはじめとする大都市が集中しています。
政治、経済、文化の中心地として世界的にも重要な地位を占めています。18世紀にはイングランドで産業革命が起こり、技術革新や都市化が進んだことで、世界の経済と社会に大きな影響を与えました。
文化面でも、イングランドは豊かな伝統を誇ります。文学の分野ではシェイクスピアやジェーン・オースティン、チャールズ・ディケンズなどの偉大な作家が世界中で愛されています。
また、教育機関としてはオックスフォード大学やケンブリッジ大学があり、長い歴史と高い学問水準を誇ります。スポーツではサッカーが国民的な人気を得、プレミアリーグは世界最高峰のリーグとして知られています。
スコットランドScotland
スコットランドはグレートブリテン島の北部に位置し、面積は島の約3分の1を占めます。
中心都市はエディンバラ(Edinburgh)で、美しい古都として観光名所が多く、歴史的な建造物、なかでもエディンバラ城が有名です。一方、最大の都市はグラスゴー(Glasgow)で、産業と文化の中心地として発展してきました。
スコットランドの歴史は古く、独自の王国として存在していましたが、イングランドと連合しグレートブリテン王国が誕生しました。しかし、スコットランドは独自の法律、教育、宗教制度を維持しており、イギリスに属しながらも高い自治権を持っています。
ウェールズWales
グレートブリテン島の西部に位置し、島の面積の約10%を占めるのがウェールズ地域です。中心都市カーディフ(Cardiff)は港湾都市として栄え、現在ではウェールズの政治、経済、文化の中心地となっています。
ウェールズの特徴の一つは、その独自の言語と文化です。ウェールズ語(ウェルシュ)は、英語と並ぶ公用語として認められており、街の標識や学校教育でも使用されています。歴史的には、ケルト民族の伝統を受け継いでおり、音楽や詩の文化が非常に豊かです。また、ラグビーはウェールズの代表的スポーツとして親しまれ、ウェールズ代表チームは国際的にも高い評価を得ています。
北アイルランドNorthern Ireland
北アイルランドは、グレートブリテン島の西、アイルランド島の北東部に位置しています。中心都市はベルファスト(Belfast)です。
ベルファストは19世紀に造船業で発展し、タイタニック号が建造された都市としても知られています。北アイルランドはまた、美しい自然景観でも有名です。
北アイルランドの歴史は複雑で、特に宗教や政治的背景が大きな要因となっています。17世紀にイングランドとスコットランドからの移民がアイルランド島に入り、その後分割され、南部がアイルランドとして独立する一方、北アイルランドはイギリスに残りました。
イギリスに行くなら訪れたい観光スポット
最後に、4つの地域別に、観光に訪れる際に覚えておくとよいヒントを簡単にまとめてみました。
イングランド
首都ロンドンには見どころがたくさん。ビッグベン、大英博物館、バッキンガム宮殿、トラファルガー広場など、さまざまな観光名所がそろっています。2階建て観光バスに乗って有名どころを巡るのもいいでしょう。
シェイクスピアの生誕地、ストラットフォード・アポン・エイボン(Stratford-upon-Avon)、ビートルズの出身地リバプール(Liverpool)を訪ねるなど、イギリスの文化にちなんだ場所に行ってみるのも面白いと思います。
スコットランド
スコットランドの観光キーワードとしては、まず美しい自然景観と歴史的な建造物が挙げられます。
自然景観ではハイランド地方が有名。ここには、ネッシーがいる(?)ネス湖もあります。また、中心都市エディンバラにあるエディンバラ城をはじめ、多くの歴史的建造物も楽しめます。
文化面では、バグパイプやキルト、タータン柄など伝統的なアイコンが世界的に有名。ウイスキーの本場としても知られ、スコッチウイスキーの「スコッチ」は「スコットランド」が名前の由来です。最大都市グラスゴーは音楽の街としても知られ、ライブハウスや音楽イベントが盛んです。
ウェールズ
ウェールズもスコットランドと同じく、美しい自然景観や歴史的建造物にあふれています。中心都市カーディフにあるカーディフ城、ウェールズ北部にあるコンウィ城などから見る景観は格別です。
スノードニア国立公園やブレコン・ビーコンズ、ペンブルックシャー海岸など、美しい山岳地帯や海岸線が広がり、多くの観光客が訪れます。
また、毎年場所を変えて開催される「エイスティッドフォッド」(Eisteddfod)と呼ばれる文化祭は、ウェールズ語の詩や音楽、演劇が披露される伝統的なイベントで、世界の多くの人々を引き付けています。
北アイルランド
北アイルランドも美しい自然の景観と歴史的建造物にあふれています。中心都市ベルファストには、ベルファスト城、聖アン大聖堂、キャリックファーガス城などがあります。
世界からの観光客に大人気なのが「タイタニック・ベルファスト」。前述のように、ベルファストはタイタニック号が建造された街であり、「タイタニック・ベルファスト」は、タイタニック号の歴史を知ることができるユニークな博物館です。
まとめ
今回の記事では、いったいイギリスというのはどこからどこまでを指すのか、そしてイギリスを構成する4つの地域について、解説・説明しました。
日本語では「イギリス」という一語で済ませることが多いですが、実際にはけっこう複雑であること、また、それぞれの地域が独自の魅力を持っていることがおわかりいただけたかと思います。
ところで、「イギリス」という日本語、これは一体どこから生まれたものでしょうか。一説では、ポルトガル語の「Ingles(イングレス)」やオランダ語の「Engels(エンゲルス)」が語源と言われています。また、英語の「England(イングランド)」が語源という説もあります。いずれにせよ、江戸時代末期に「エゲレス」という発音で認識されるようになり、のちに「イギリス」と呼ばれるようになりました。
また、漢字では「英国」と表記されます。これは「エゲレス」に「英吉利」という漢字があてられ、頭文字の英に国を付けて「英国」になったとされています。
イギリスに旅行や留学で訪れる際、今回の記事がお役に立てれば幸いです。
◇経歴
児童英語講師
オンライン英会話講師
NC英語アドバイザー
英語学習ライター
元大学教員
◇資格
TESOL/TEC(CANADA)
中学校教諭二級免許状(英語)
◇留学経験
アメリカ・サンディエゴに語学留学(2カ月)の経験あり
その後、オーストラリア・シドニーに大学院留学(2年)の経験もあり
◇海外渡航経験
25歳で初めて、短期間の語学留学をきっかけに本格的に英語の勉強を開始しました。
雑誌の編集・ライティング、テレビCMの企画・撮影等などの仕事が長く、英語を使っての海外取材や撮影経験も多く経験しています。また海外で日系新聞社の副編集長をしていたこともあります。
◇自己紹介
「英語学習に終わりはない」「継続は力なり」を実感し、50代半ばから毎日英語の勉強を続けて2000日近くが過ぎました。
「楽しく学ぶ!」をモットーに、僭越ながら私の異文化経験や英語の知識などをブログに織り交ぜながら、執筆することを心がけています!ネイティブキャンプのオンライン講師もしています。初心者・初級者限定ですが、ぜひ一緒に学びを続けましょう。