カナダは英語を学ぶための留学先として大変人気のある国です。
大自然と都市が近くにあり治安も良く、勉学に励む環境としてとってもおすすめできるカナダですが、カナダ留学をするなら知っておきたいことがあります。
それは、カナダならではの言語の事情。ひいてはカナダの歴史についてです。
と言っても難しい話ではなく、「カナダには公用語が2種類ある」ということ。
その背景にある歴史を知ってからカナダへ行けば、よりいっそう現地の文化を肌で感じることができると思いますよ!
カナダの公用語はなぜ英語とフランス語なのか
その理由を理解するためには、やはりカナダという国の歴史を覗いてみる必要があります。
カナダという国ができるまで
カナダには元々、先住民が住んでいました。
イヌイットと呼ばれる人たちのことを知っているでしょうか?
カナダやグリーンランドなどの極北地帯に住む、狩猟と漁業で生計を立てている民族です。
世界で最も寒い地域に住むことで知られている彼らを含むいくつかの先住民たちが、カナダの土地には住んでいました。
ヨーロッパ人がやってきたのは1500年頃からで、1600年代にフランス人がやってきてからは長くフランス領となります。
その後、18世紀になるとイギリスがフランスからカナダを奪う形になりますが、その後もカナダにはフランス人とイギリス人の両方が住み続けました。
イギリスの植民地になってからは英語が共通の言語となったのですが、カナダ政府はフランス語と英語、どちらの言語も国として認めます。
憲法でも、英語だけでなくフランス語も国会・連邦法廷での使用が認められました。
カナダは、2種類の入植者たちの言語・宗教・文化を守ってきたのです。
ここに見られる懐深さはカナダという国の大きな特徴で、現在でも多くの移民を受け入れているのも納得できるかと思います。さすがは多様性の国です。
実は英語とフランス語が平等に扱われるようになるまでには、裏にもう少し紆余曲折があったりもしたのですが、このようにしてカナダでは英語とフランス語の二言語が公用語として制定されることになりました。
ケベック州の公用語は「フランス語のみ」
英語とフランス語が公用語とは言っても、カナダ人の多くは母語を英語としています。
その中で、とりわけ特徴的なのは ケベック州でしょう。
最初にカナダにフランス人がやってきたその時、最初にフランス人が入植したのがセントローレンス湾、つまり現在のケベック州が位置するエリアです。
フランス人はケベック州を中心として植民地を形成したため、ケベック州ではカナダ建国前よりフランス語が使われており、その文化が現在でも続いているというわけです。
英語とフランス語の割合
カナダでは州ごとに公用語を定めている
上記のような背景があり、カナダでは英語とフランス語、2つの言語に平等に公用語としての地位を認め、どちらの言語を公用語に制定するかを州に委ねることにしました。
カナダのほとんどの州が英語のみを州の公用語に制定している中、ケベック州ではフランス語のみ、ニューブランズウィック州ではフランス語と英語の両方を公用語として定めています。
ニューブランズウィック州では両言語が公用語となっているため、市民は完全にバイリンガルです。
州ごとに、文化だけでなく言語まで大きく異なる特色を持つのが、カナダならではですね。
そもそも公用語ってなに?
公用語とは、国が公の場で用いることを公式に規定した言語のこと。
つまり政府関連の書類や、テレビや広告、店頭表示などに表記することが義務づけられる言語ということです。
ただ日常生活を送るにあたって、公用語が全てというわけでもありません。
カナダ東部の一部の州では、「公用語は英語だけどフランス語も話す」という地方も残っています。
逆に、例えばケベック州のモントリオールでは、公用語として定められているのはフランス語のみですが、英語の併記もされているので「フランス語が分からないために路頭に迷う……」なんてことは起こらないのです。
カナダのバイリンガル、その実情とは
となると、気になる点も出てきますよね。
二言語が公用語とはいえ、実際にどれだけのカナダの人が英語とフランス語を使いこなしているのでしょうか。
先ほど少し触れた通り、カナダ人の多くはやはり英語を母語として話しています。
実際のところはどれくらいの人たちが、日常的にフランス語も英語と同様に使っているのでしょうか?
カナダ政府の統計によると、ケベック州で最大の都市モントリオールにおいて、フランス語と英語の二言語が使われている割合が最も高くなっています。
ケベック州では人口の85%が日常的にフランス語を使用しているそうです。
ちなみにモントリオールなどケベック州の町では、フランス語を勉強するための留学も可能です。
次いで多いのは、先にも名前を挙げたニューブランズウィック州で、人口の31%が二言語を使います。カナダの首都であるオタワはオンタリオ州の都市で、ケベック州に接しており、こちらもまたフランス語の使用率が高いエリアです。
一方で、これら以外の地域ではほとんどフランス語は使われていないことに留意してください。
バンクーバーやトロントなどでは、まれに街中でフランス語の表記を目にはしますが、フランス語を使うことはまずありません。
カナダ留学にあたっては、どんな文化圏での生活がしたいのかを良く考えて留学先を選べると良いですね。
フランス語と英語の他に話されている言語たち
カナダでは公用語として定められている二カ国語、英語とフランス語の話者が増えてきているようですが、それでも歴史を見ればわかるように、それ以外の言語を母語として持っていたり家庭内で話している人も、カナダ国内には多く住んでいます。
カナダは移民が多い国。特に大きな都市ではたくさんの文化的・言語的背景を持った人たちが暮らしています。
例えば、2016年に報告された、カナダで使用されている言語の数は215種類。
家庭内で最も使用されている英語・フランス語以外の言語は最も多いのがマンダリン(標準中国語)で、そのほかにもパンジャーブ語、スペイン語、タガログ語、そしてアラビア語などがあります。
公用語以外の言語を話す人々が国内に多くいて、さらに近年その数は増加傾向にあるといいます。
カナダでは移民を受け入れる政策が続けられていますが、移民の言語だけでなく原住民の言語を使用する人口も年々増加してきているとのこと。
カナダはアメリカと同様に移民の国と称されますが、アメリカが「人種のサラダボウル」と呼ばれるのと対になる形で
「人種のモザイク」
と称されています(カナダでは「一つの皿に入れる」ことを強要しないため「パッチワーク」「モザイク」という表現が使われます)。
公用語以外の母語を持つ人が多く、そのため言語教育にも力を入れていて教育水準が高い国なので、留学先としても人気なんですね。
カナダ英語(カナディアンイングリッシュ)って知ってる?
「カナダの英語は発音が綺麗で聞き取りやすいから、習得するのにおすすめ」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
英語は現在世界約80か国、5億人近くに話されている言語ですが、同じ英語でも各国によって異なる特徴を持ちます。
British English(イギリス英語)やIndian English(インド英語)、Australian English(オーストラリア英語)などがそうですね。それぞれにローカライズされた英語と文化が確立されています。
日本の教育の場で良しとされる英語はアメリカ英語で、学校でも習いますね。一方でイギリス英語は一つ一つの単語をはっきり発音する特徴があり、発音・スペル・表現に固有のものが多いのが特徴。
イギリス映画をアメリカ人が見てもわからないこともある、という逸話まであります。
カナダ英語は、ざっくり言えばイギリス英語とアメリカ英語が混ざった英語です。
誰にでもわかりやすく癖のない英語と言われているカナダ英語。
ここではそんな
Canadian English(カナダ英語)について、具体的に紹介していきますね。
スペルの違い
アメリカ英語と異なるため最初に驚くポイントは、単語の綴り(スペル)です。
いくつかの単語についてはイギリス英語のように綴ります。
例えば ”center” “color” ”defense” は
”centre” “colour” ”defence” となります。
これらは一定のルールがあったりして数が限られているので、一度覚えてしまえば大丈夫。
基本的にはアメリカ英語のスペルのままの単語が多く存在しています。
発音の違い
カナダ英語の発音はアメリカ英語の発音に近く聞き取りやすいです。
“t” の発音は、
アメリカ英語のような ”r” に近い発音になり、
イギリス英語の発音とは大きく異なります。
ただしアメリカ英語と異なる点が発音においてもあり、
例えば “o”の音は
アメリカ式だと口を大きく広げて発音しますが、カナダ式はもう少し口をすぼめて発音します。
“z”もアメリカでは「ズィー」と発音しますが、
カナダでは「ゼット」と発音し、こちらはイギリス式の発音です(日本式とも言えますね)。
カナダ英語の独特な表現
カナダならではの表現としてしばしば言われるのが”eh?”です。
お土産屋さんなどでも見かける表現かもしれません。
会話の中での使われ方としては、文章の最後につけることで、付加疑問文のように相手への確認をします。
「でしょ?だよね?」というニュアンスになります。こちらも、知らないと驚いてしまうかもしれませんね。
まとめ
カナダの公用語とカナダ英語について、その背景から理解できたでしょうか?
住んでいた身からしても、やはりカナダという国には奥行きがあり、非常に興味深い留学先だと感じています。
英語を学習するにあたっても、カナダ英語は魅力的ですし、さらにその背景にあるお国柄のおおらかさにも改めて心惹かれるものがあります。
日本の教育現場ではアメリカ式の英語が第一主義的に使用されますが、世界的にはイギリス英語がメインストリームと言ってもいいかもしれません。
各国代表による世界会議などではイギリス英語が使われますし、ヨーロッパでの英語教育は基本的にはイギリス式です。
そんなことも考えると、日本の英語教育から少しだけ距離をとってイギリス英語の文化に少しでも触れることは、あなたの世界を広げることになるのではないか、と思います。
カナダを留学先に選んだ際には、ぜひその地域の特色と公用語のあり方についても知っておくと、現地で見られる景色が変わると思いますよ!
◇経歴
幼稚園時代をシンガポールで過ごし、現地の友達と英語でよく遊んでいました。小学校からは日本で暮らし、中学生の時にカナダにホームステイした経験から海外での暮らしに魅了され、東京外国語大学に進学。
在学中にバンクーバーへの留学を経て就職し、新卒で入った会社では外資系クライアントと英語でやり取りをしていました。
現在は仕事で英語を使う機会はほとんどないものの、趣味として楽しく勉強し続けています!
◇資格
TOEIC940点、TOEFL iBT 90点
◇留学経験
バンクーバー(カナダ)、半年間、ILSC vancouver
◇海外渡航経験
・シンガポール(居住・旅行)
・マレーシア(旅行)
・モルディブ共和国(旅行)
・サイパン(旅行)
・カナダ(ホームステイ・留学)
・グアム(旅行)
・タイ(旅行)
・ドイツ(旅行)
・イタリア(旅行)
・トルコ(旅行)
・インドネシア(旅行)
◇自己紹介
英語が話せるだけで、世界中の「私が自分の言葉で会話できる人」の母数がぐんと広がったことが、私にとってはいちばん面白いポイントでした!これからも英語を通じていろんな地域のいろんな文化や人に触れ、知らないことを知っていきたいと思っています。