カナダ英語とは?
英語を第一言語としている国は、世界に12か国あるといわれています。その中でも、英語を学ぶ留学先として最もおすすめされているのが、カナダです。
英語発祥の国であるイギリスや、最も英語話者が多いアメリカ合衆国ではなく、なぜカナダが英語学習の地として人気なのでしょうか。
今回は、カナダで使用されている英語について解説していきます。カナダ英語の特徴を知って、なぜカナダの英語が人気なのかの秘密に迫りましょう。
カナダ英語の発音の特徴
ではまず、カナダ英語の発音について紹介していきます。訛りがほとんどないといわれるカナダ英語の発音は基本的にアメリカ英語の発音に近いのが特徴です。
これは、アメリカ独立戦争に伴い、アメリカからカナダに移民してきた人が多いという歴史が関係していると考えられています。地理的にも、カナダは国境のほとんどをアメリカと接しているため、影響が大きいことは容易に想像できます。
その一方で、カナダ英語の発音とアメリカ英語の発音は全く一緒というわけではありません。いくつか細かい違いがあるので、ご紹介します。
「o」の発音の違い
カナダ英語の発音はアメリカ英語の発音に似ていますが、カナダ英語はよりつづりに忠実な発音をするという特徴があります。その例の一つが「o」の発音です。
この発音は、アメリカ英語だけでなくイギリス英語とも異なっていて、カナダ独自の発音になっているといえます。
アメリカ英語では「hockey」や「sorry」などと発音する際、「o」をかなり大きく口を開いて発音するため、「ア」に近い発音に聞こえることがしばしばあります。しかし、カナダ英語では口をすぼめて喉に近いところで発音します。そのため、「ア」よりも「オ」に近い発音になります。これは、日本人には親しみやすいですね。
「ou」の発音の違い
カナダでは、「out」や「about」の発音も独特です。アメリカ人はよく、カナダ人は「out」を「oot」、「about」を「aboot」と発音する、と指摘します。
しかし、カナダの人からするとこの指摘は間違っているそうです。先ほど話した通り、「o」の発音がカナダ英語とアメリカ英語では異なっています。
「ou」を発音するときにも同様に、発音が異なります。アメリカ英語では「ou」の発音で口を大きく開けるのに対し、カナダ英語では口を大きく開けずに奥から発音するようにします。そのため、「アウ」よりも「オウ」に近い発音になるのです。
このように、全体的にカナダの発音はつづりにより素直な発音になっています。日本人には親しみやすい発音かもしれません。
カナダ英語のアクセントの特徴
続いて、カナダ英語のアクセントについてご紹介します。アクセントについても、カナダ英語は比較的アメリカ英語に近いといわれていますが、やはり全く同じというわけではありません。イギリス英語のアクセントとも異なっており、独自のアクセントを持っています。
母音のアクセントが弱め
カナダ英語では、母音のアクセントが弱めという特徴があります。アメリカ英語やイギリス英語と異なり母音をあまりはっきりと発音しないため、人によっては母音を発音していないように感じられることもあるようです。
例えば、カナダの大都市トロントは「Toronto」と綴りますが、カナダ英語だと最初の「o」が欠落し「Tronto」のように聞こえることが少なくないそうです。
また、ウィンザーの綴りは「Windsor」ですが、最後の「o」が欠落し、「Winsr」のように発音しているように聞こえることが多いです。カナダ英語では決して母音を発音していないわけではないのですが、非常に弱いためあまり聞こえず、欠落しているように感じられてしまうのです。
人それぞれではありますが、分かりづらい時には頭の中で母音を補完してみても良いかもしれませんね。
アクセント位置の違い
カナダ英語では、アメリカ英語やイギリス英語とは異なる音節を強調して発音することもあります。例えば、「garage」という単語。イギリス英語では最初の音節である「ga」を強調して発音しますが、カナダ英語では第二音節の「ra」を強調して発音します。
これは、アメリカ英語でもカナダ英語と同様に第二音節を強調します。反対に、「process」という単語では、カナダ英語では最初の音節の「pro」を強調して発音しますが、アメリカ英語では後半の「cess」を強調して発音します。
カナダでは多くの場合はアメリカ英語と同じ音節を強調位置にしていますが、一部の単語では、異なる音節を強調します。明確な法則があるわけではないので、初めのうちは慣れないかも知れませんが、だんだんとそれがカナダ英語らしさと馴染んでくるでしょう。
カナダ英語のスペルの特徴
次に、カナダ英語のスペルについてご紹介します。発音、アクセントでは、カナダ英語は基本的にアメリカ英語と似ているとお話しました。しかし、スペルについてはイギリス英語のものを踏襲していることが多くあります。
これは、アメリカ独立戦争から逃れて移民してきた人々が、当時カナダを支配していたイギリスらしさを維持しようと考えた歴史に由来すると考えられています。しかし、一部のスペルではイギリス英語ではなくアメリカ英語のものを踏襲しているので注意が必要です。
カナダ英語とイギリス英語で共通のスペル
カナダ英語のスペルはほとんどがイギリス英語と共通しています。一方で、日本ではアメリカ英語の綴りが浸透しているため、違和感を覚える人もいるかもしれません。
イギリス英語のスペルで特徴なのが、「-our」の綴りです。日本ではアメリカ英語に倣い「color」や「labor」というスペルをよく見かけるでしょう。しかし、イギリス英語では「colour」や「labour」というスペルが一般的です。カナダもこれに倣っています。
また、「center」「theater」といったつづりについても、「centre」「theatre」とつづるなど、「er」が「re」に逆転するのがイギリス英語やカナダ英語では一般的です。
さらに、「labeled」や「traveler」といった単語では、「labelled」や「traveller」といったようなスペルになり、「l」を重ねて「ll」とするのが、イギリス英語やカナダ英語の典型となっています。
カナダ英語とアメリカ英語で共通のスペル
一方で、カナダ英語では時折アメリカ英語のスペルを採用しているものもあります。例えば、アメリカ英語では「analyze」や「realize」とつづる単語は、イギリス英語では「analyse」や「realise」のように「ze」ではなく「se」とつづるのが通例となっています。このパターンでは、カナダ英語ではアメリカ英語のスペルを基本的には使用しています。
これ以外にも、アメリカ英語のスペルをカナダは部分的に採用しています。単語によっては、名詞として使う場合にはイギリス英語のスペル、動詞として使う場合にはアメリカ英語のスペルを使う、なんてこともあります。ただし、どちらのスペルを利用しても、英語圏では基本的に通じます。あまり気負い過ぎず、だんだんと使い分けの習慣を身につけられると面白いかもしれませんね。
アメリカ英語・イギリス英語との違い
カナダ英語は、アメリカ英語と共通の部分もあれば、イギリス英語と共通している部分もあります。
カナダ英語とアメリカ英語で大きく異なるのは、スペルです。また、文法も時折異なる他、使用する語彙も異なる場合があります。
さらに、カナダ英語とイギリス英語で大きく異なるのは、発音やアクセントです。また、単語やスペルにも一部異なる部分があります。
アメリカ英語とイギリス英語が混在しているのが、カナダ英語の最大の特徴といえるでしょう。基本的に、耳から入る英語はアメリカ式、目から入る英語はイギリス式、と覚えておくとよいかもしれません。
分かりやすい例として挙げられるのが、「ハリー・ポッター」シリーズです。イギリスの有名な児童小説ですが、イギリスとアメリカでは単語や文法、スペルが異なるという観点から、同じ英語であるにもかかわらず、アメリカ版の本が別で出版されています。
そして、カナダ版というものも別で出版されているのですが、こちらは表紙も含めて中身はほとんどイギリス版と同じものになっています。目から入る英語は、やはりイギリス式の方が近そうです。
一方、映像作品では英語の作品を英語で吹き替えることがほとんどないので比較が難しいです。しかし、カナダのテレビではアメリカのテレビ番組が多く放送されていて、それに親しんでいる人がとても多いです。カナダの風刺では、アメリカは「テレビ番組を作っているところ」なんて言われることもあるほどです。なので、耳から入る英語は、やはりアメリカ式の方が親しんでいそうですね。
カナダ英語とアメリカ英語、イギリス英語の違いについてはコチラの記事にも詳しく書かれているので、ぜひ参照してみてください。
おまけ:カナダの公用語は2つ?
ここまでカナダ英語についてお話してきましたが、カナダで話されているのは英語だけではありません。実は、カナダには公用語が二つあります。英語以外のもう一つの公用語が、フランス語です。カナダ国内の約2割の人が、フランス語を母語として生活しています。そのうちのほとんどの人々はカナダのケベック州に住んでいて、ここでは約8割以上の人がフランス語を用いているといいます。
私の知人の中には、英語を学習したくてカナダに留学したにもかかわらず、ホストファミリーが全員フランス語しか話せず、とても困った、という人もいました。それほど、カナダの一部地域ではフランス語が浸透しています。
カナダ国内でのフランス語事情については、こちらの記事が詳しいので、興味のある方は是非ご覧になってください。
まとめ
今回はカナダ英語について、発音やアクセント、スペル、それからアメリカ英語とイギリス英語との違いという観点でお話してきました。
発音やアクセントはアメリカ英語寄り、スペルについてはイギリス英語寄り、というのが大まかな特徴でしたが、それぞれと違っている部分もあり、カナダにはカナダ独自の英語文化が根付いていることが分かったのではないかと思います。
日本人にとっては比較的親しみやすい発音であることに加え、アメリカ式とイギリス式の両方の要素を持つカナダ英語。英語学習のための留学先として人気なのも、納得ですね。
◇経歴
・都内私立大学の英米文学科に入学
・大学院にてイギリス文学を専攻し、修士号取得
・翻訳専門学校にて英日翻訳の基礎コース修了
◇資格
・TOEIC 890点
◇留学経験
イングランド・グロスターシャー大学夏期文化研修(大学夏期休暇中)イングランド・オックスフォードの言語学校(大学夏期休暇中)
◇海外渡航経験
カナダ・バンクーバー、カルガリー(部活)
アメリカ・ニューヨーク(旅行)
◇自己紹介
幼いころから英語が好きで、ディズニーとマザー・グース、NHK教育テレビで育ちました。小学2年生で「ハリー・ポッター」シリーズと出会い、それ以降は大のPotterhead道を突き進み、イギリス文学と文化研究にいそしみ続けています。物語がとにかく好きで、映画、ドラマ、音楽、小説などを通じて、日本にいながらして毎日英語を浴びています。
少しでも役立つ情報を発信できればと思っています。よろしくお願いします!