日本からも近く、リーズナブルな価格で英語を学べる「フィリピン」。日本人に人気の留学先です。
一方で、「東南アジアにあるのにどうして英語が学べるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、フィリピンの歴史的背景から、フィリピンの公用語について解説します。
フィリピンを深く知れば留学も充実したものになるはずです。フィリピン留学をご検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
フィリピンの公用語は?
フィリピンは多民族国家であり、多言語国家です。
主な民族はマレー系ですが、言語の種類で分類すると、100以上の民族に分けられるといわれています。
それぞれの民族が、7,000以上の島々に暮らし、独自のローカル言語を育んでいます。
最も多く話されているのが「タガログ語」ですが、他にもセブ島があるビサヤ諸島で話されているビサヤ語や、レイテ島で話されているワライ語などと、多くの言語が存在します。
これらの言語は方言とは異なるため、同じ国の人同士でも言葉を理解できないことが多々あります。
例えば「こんにちは」は、英語ではHelloですが、フィリピンではビサヤ語とワライ語では次のような違いがあります。
「こんにちは(午後から夕方にかけて)」
ビサヤ語:Maayo’ng hapon.
ワライ語:Maupay nga hapon.
フィリピンは島国であるため、互いの民族の文化的交流が進まず、このように独自の言語や文化が保たれた状態となったといわれています。
しかしこれでは、同じ国の国民であっても互いに意思疎通が図れません。
そこでフィリピン政府は、民族同士の言葉の違いをなくしてひとつの国としてまとめようと、「公用語」を作りました。
それが「フィリピン語」です。1987年にフィリピンの法律で定められました。
一方フィリピンの公用語は「フィリピン語」だけではありません。
フィリピンはスペイン、アメリカに支配された過去があり、文化や言葉にはこの植民地時代の影響が強く残っています。
特にアメリカの植民地時代は約50年にも及んだことから、国内に英語が普及しました。
そのため、アメリカの植民地時代を終えフィリピンが独立した後に、フィリピン語に加えて「英語」も公用語になることが法律で定められました。
そのため、フィリピンの公用語は「フィリピン語」と「英語」のふたつになります。
日本語が分かれば生活に困らない日本人にとって、公用語がふたつあるのは妙な感覚かもしれませんが、フィリピンでは独自のローカル言語に加え、ほとんどの人が英語を話せます。
フィリピンでは英語が日常生活に根差しているのが特徴です。
フィリピン語
フィリピン語は、タガログ語をベースに作られた言語です。人工的に作られた言語とも言えます。
フィリピンの首都がマニラになったため、その周辺で話されていたタガログ語がフィリピン語のベースとなりましたが、他の地域で話されていた表現なども取り入れて発展してきました。
フィリピン語とタガログ語とは厳密にいうと異なる部分もありますが、フィリピン語はタガログ語の別名と考えている人が多く、ほぼ同じと考えても問題ないでしょう。
フィリピン語はフィリピン全土で使うことのできる統一された言語であり、教育機関ではもちろん、ニュースやドラマでもフィリピン語が広く使われています。
例えば、
「こんにちは」はMagandang hapon(マガンダン ハポン)
「ありがとう(ございます)」は、Salamat(po)(サラマット(ポ))
「はい(Yes)」はOpo(オポ)
「いいえ(No)」はHindi po(ヒンディ ポ)です。
英語
フィリピンのもうひとつの公用語が「英語」です。
フィリピン人の9割以上が英語を話せるといわれており、国別の英語が話されている人口ランキングでは、アメリカ、インドに次いで世界第3位です。
ちなみに、2019年のEF英語能力指数ランキングでは、フィリピンは世界20位でした。
これは英語を母国語としない国を対象とした調査であり、日本が53位だったことを考えると、いかにフィリピン人の英語力が高いかが分かるでしょう。
道端にいる人に英語で話しかけても通じる場合がほとんどです。
交通標識や看板はもちろん、官庁や専門分野の文書も英語で書かれていることが多く、フィリピン語で放送されるニュースは英語の解説が使われるなど、英語はフィリピン人の生活に深く入り込んでいます。
ただ、純粋なネイティブスピーカーに比べると訛りがないとは言えません。
しかし英語人口の約8割が英語が母国語ではないことを考慮すれば、そこまで訛りを気にする必要はないでしょう。
ちなみに、フィリピン英語はアメリカ英語です。
幼少期から英語を学んできた人の中にはネイティブと同じくらい綺麗な発音の英語を話す人もいます。日本人には馴染みやすいでしょう。
フィリピンの公用語に英語が含まれているのはなぜ?
フィリピンの公用語に英語が含まれているのはなぜでしょうか。
それにはフィリピンの歴史が深く関係しています。
フィリピンは、スペイン、アメリカの植民地になった経験があります。
スペインの植民地時代にキリスト教が広められたこともあり、現在もフィリピン人の9割以上はキリスト教であるといわれています。
そして1898年から約50年もの間、アメリカの植民地となりました。
植民地時代に何百人ものアメリカ人講師がフィリピンに派遣されるなどして、英語教育が積極的に行われたことからフィリピン人の間で英語が広まっていきました。
今でもその積極的な教育姿勢は変わらず、フィリピンでは小学校から英語で授業が行われます。
このような歴史的背景もあり、英語も公用語に加わることとなったのです。
英語が公用語だからこそ…小学校から英語教育
フィリピンでは、小学校1年生から英語の授業が始まります。
そして、小学3年生からは国語と歴史以外は、すべて英語で授業が行われます。
フィリピン政府の資料(2010年)によれば、フィリピンの小学校における6年間の英語の総授業時間は約1700時間。
日本では4年生から英語の授業が始まるため、4年生~6年生の総授業時間は100時間しかありません。
フィリピンの英語の授業時間がいかに多いかが分かるでしょう。
幼いころから英語を学ぶので英語耳を養えますし、教科書も英語のものがほとんどなので、「英語を学ぶ」のではなく「英語で学ぶ」の実践が可能です。
飛躍的に英語力を伸ばすことができます。
このようにフィリピンでは、小学校から英語を学ぶため、英語を話せる人が多いと言えます。
さらに、学校以外でもテレビや店の看板など、日常生活において英語を実践する場が多いことも、英語が話せる人が多い理由です。
なお、貧困層がまだ多いフィリピンでは、大学に通うことが一流の教育を受けたというステータスになります。
大学ではアカデミックな英語も学びますので、大学を卒業した人はより高い英語力を有していると言えるでしょう。
社会的背景も英語取得率を後押し
フィリピンでは英語を話せると高い収入が得られる職に就くことができます。
例えば英語でのコールセンター業務や英語教師は、給与水準の高い職です。
英語が堪能であれば就職に有利になるため、フィリピン人は積極的に英語を学ぶ傾向にあります。
国としても、世界で通用する人材育成を目指して、英語教育に力を入れているといわれています。
その他フィリピンで話されている言語
公用語は「フィリピン語」と「英語」ですが、フィリピンには100以上の言語が使われているといわれています。
180以上の言語があると言われることも。地域ごとに異なる言語が使われています。
フィリピン語と英語以外の言語としては以下のような言語があります。
比較的話者の多い言語としては、以下の2つがあります。
セブアノ語(ビサヤ語):ビサヤ諸島で広く話される言語
イロカノ語:ルソン島北部で話される言語
特に日本人に人気のセブ島ではセブアノ語(ビサヤ語)がよく使われています。
タガログ語ベースのフィリピン語と異なる部分もあり、例えば「こんにちは」はフィリピン語ではMagandang hapon(マガンダン ハポン)ですが、ビサヤ語ではMaayong hapon.(マーヨン ハポン)となります。
他にも以下の言語があります。
フィリピン北部で話されている言語:
・タオ語(ヤミ語)
・イヴァターヌン語
・パンパンガ語
フィリピン中央部で話されている言語:
・ヒリガイノン語
・ワライ語
・ビコール語
・タウスグ語
・アクラノン語
ミンダナオ島周辺で話されている言語:
・マギンダナオ語
・マラナオ語
ローカル言語を話す人の割合としては、以下となっています。
( Philippine Statistics Authority 2014から引用)
まとめ
フィリピンはスペインやアメリカの植民地であった過去や、多言語国家が抱える課題を解消する目的もあり、公用語が「フィリピン語」と「英語」となっています。
積極的に英語教育が行われており、生活の中にも英語が定着しているため、アジアの国ですが英語話者が多い国です。
一方で、フィリピン語も公用語であるので、あいさつ程度のフィリピン語を覚えてから留学すると現地の人と打ち解けやすくなるでしょう。日本でも、外国人から日本語であいさつされると嬉しいのと同じように、フィリピンでもローカル言語で挨拶すれば、コミュニケーションを取る良いきっかけになるはずです。
フィリピンに留学する際は、事前に現地の言葉や歴史について知っておくことがおすすめです。ぜひ留学前に現地のローカル言語を覚えて、より充実した留学生活を楽しんでください。