フィリピンは多民族国家であり、豊かな文化的背景を持つ国です。数多くの言語や方言が話されており、コミュニケーションのために母語と公用語の使い分けが必要とされています。
フィリピンで何語が話されているのか知りたいという方も多いでしょう。
この記事では、フィリピンの言語事情について詳しく説明し、言語がどのように使われているのかを探ります。また、タガログ語の便利なフレーズも紹介しますので、フィリピンへの関心がある方はぜひ参考にしてください。
フィリピンの母語と公用語
多民族国家であるフィリピンで話されている言語・方言は数多くあります。どの言語が母語で、どの言語が公用語かを考える上で、通訳翻訳舎様ウェブサイトより母語と公用語の定義を以下に引用させていただきました。
母語:生後数年の間にその人自身が生活の中で自然と身につけた第一言語
公用語:その国や地域、また特定の場所で用いることが公式に定められた言語、あるいは国や地域において共通語として用いられている言語
このような意味になっています。
引用元URL:母語と公用語について|通訳翻訳舎
以上のことから分かるのは、
・母語は家族・友人関係の比較的小さなコミュニティで使われる
・公用語は公の場といったより大きなコミュニティで使われる
のような違いがあるということです。
これらの定義を踏まえた上で、まずはフィリピンで用いられる母語が何語かを追ってみましょう。
フィリピン国土は7,000以上の島々で構成されており、数の多さは世界第2位です。そんな国土には100以上の民族、約170の言語・方言が存在しています。
島と島が海に隔たれているため、文化的交流が促進されず、言語・文化の独立が保たれました。中には、アラビア語や中国語で会話をする地域もあります。
フィリピンで使われる多種の言語と公用語
フィリピンで使われる言語は、タガログ、ビコール、イロカノ、セブアノ、ワライ、パンガシナンなどがあります。異なる母語同士では意思疎通することはできません。
このように言語に大きな違いがあるため、言語の壁を乗り越えるために公用語として用いられているのがフィリピン語です。
フィリピン語は、首都マニラで主に話されているタガログ語を元に作られた、タガログ語とほぼ同じ言語です。
そのため、「フィリピン語」ではなく「タガログ語」と呼ばれることもあります。親しい間柄の相手によく使われます。
また、フィリピン語ではなく、フィリピノ語やピリピノ語と呼ばれている場合もありますが、一般的な呼ばれ方は「フィリピン語」です。
公用語としては、タガログ語以外にも英語が話されており、大体のフィリピン人は、英語、タガログ語、地元の母語の3言語を用いています。
なぜフィリピンでは英語が公用語なのか
人口約1億人のフィリピン国内では、9割以上の人が英語を話すと言われています。
実は、アメリカ、イギリスの次に英語話者の人口割合が高い国なのです。マスメディアや標識といった公の場で用いられており、就職の際にも英語を話せることは高い評価につながるそうです。
フィリピンで英語が公用語になったのは、かつてのアメリカによる植民地支配が背景にあります。
フィリピンは、スペイン、アメリカ、日本による植民地支配を経験しました。
アメリカが統治した際は、英語教育を植民地政策の一環として行いました。そして、植民地支配を終えた後も、フィリピン教育省によりタガログ語と英語の併用教育が定められています。その流れで、フィリピンの公用語に英語が加わったのです。
実用レベルで英語を話せる人も多く、その理由としては、
・小学校から大学まで、歴史や国語以外の授業はすべて英語で受けている。英語「を」習うのではなく、英語「で」習っている。
・母語のひとつタガログ語は、アルファベット表記になっていて英語に親しみやすい。また、タガログ語では英単語がそのまま用いられていることもある。
などが挙げられます。
フィリピンでの英語の位置付けは、第二言語のひとつです。
ネイティブスピーカーと比べると訛りがある人もいます。しかしながら、ネイティブスピーカーと完全に一致する英語でないといけない理由はありません。
日本人の用いる英語にも訛りが見られることが多いです。英語は世界中の人々と意思疎通するための言語と捉え、訛りも個性だと考えればいいのではないでしょうか。
フィリピンで話されているのはアメリカ英語です。アメリカ向けのサービスで代表的なのは、コールセンター業務などでしょう。そのためフィリピン人の英語はフィリピン以外でも通用することが分かります。
フィリピン独自の英語のルール
フィリピン独自の英語のルールも存在しています。
ファーストネームの前に「Mr.」「Ms.」を付けて呼ぶのです。 欧米などでラストネーム前に付けるのとは異なるので気を付けましょう。他にも、単語の使い方がアメリカ英語とは違う場合もあります。
そのようなフィリピン人の英語はフィリピン英語とも呼ばれています。その特徴を以下にまとめました。
【文法】母語の影響で、標準的な英語の構文と異なるケースが見られる。
【語彙・発音・アクセント】母語やスペイン語の影響を受けている。
【借用・コードスイッチング】母語から借用した表現や単語がある。また、コード・スイッチングと呼ばれる、ひとつの会話の中で言語を使い分ける現象が見られる。
【礼儀作法】目上の人と会話する際は、フィリピン文化から借用した敬語などがよく使われる。
【比喩表現・慣用表現】フィリピン文化ならではの表現が含まれており、文化圏外の人には伝わらないこともある。
以上がフィリピン英語の特徴です。フィリピンの文化や歴史の影響を大きく受けていることが分かりますね。
英語を話せるかどうかで生まれる経済的な格差
このように、言語の壁を乗り越えるために設定された公用語の英語ですが、国民を分断してしまうという弊害もあります。英語を流暢に使えるかどうかで、経済的な格差も生まれているのが事実です。
英語が得意な人であれば、英語教師、コールセンターといった、給与水準の高い仕事に就職できます。一方で、英語が苦手な人は低水準の給与体系に甘んじなければならない場合が多いです。フィリピンの貧困率は依然として高く、経済成長に合わせて物価も上昇しているので、生活が苦しい人も数多く存在します。
もう1つの公用語「タガログ語」について
タガログ語は、オーストロネシア・マレー言語といった南島語族から派生した歴史を持ちます。
そのため、スペイン語から派生したセブアノ語・ビサヤ語とは異なります。とはいえ、両言語ともスペイン語の影響が見られており、時刻の読み方も同じです。
英語と同じく公用語なので、タガログ語以外の言語が母語の人は第二言語として学習するようになっています。例えば、セブ島ではセブアノ語を母語としており、第二言語として初等教育からタガログ語を勉強します。
フィリピンで英語を話せる人は9割以上と紹介しましたが、実際のところネイティブスピーカーのように流暢に話せるのは富裕層やエリート層が多いという印象です。そのため、タガログ語の方がコミュニケーションは円滑にいくこともあります。
次に、タガログ語独自の特徴を見ていきましょう。
【アクセントの区別】強弱の付け方によって、意味が変わる言葉がある。
【「f」と「p」の発音が同じ】「f」を「p」として発音する場合が多い。
【接辞を多用している】接辞を使用することで、表現を変化させることができる。そのため「動詞」を用いる感覚があまりなく、副詞や形容詞を代わりに用いる。
知っておくと便利なタガログ語の一覧
現地で使いやすい、便利なタガログ語のリストを用意しました。フィリピン留学や観光の際にぜひ使ってみてくださいね。
タガログ語の挨拶
Magandang umaga.
音:マガンダンウマーガ
訳:おはよう
Magandang tanghali.
音:マガンダンタンハーリ
訳:こんにちは(正午)
Magandang hapon.
音:マガンダン ハーポン
訳:こんにちは(夕方)
Magandang araw.
音:マガンダンアラウ
訳:こんにちは(朝~夕方)
Magandang gabi.
音:マガンダンガビ
訳:こんばんは
Kumusta ka?
音:クムスタカ?
訳:元気ですか?
Okay lang?
音:オーケイラン?
訳:大丈夫ですか?
Ano na ginagawa mo?
音:アノナギナガワモ?
訳:今何してるの?
Mabuti naman.
音:マブーティナマン
訳:元気です
Hindi mabuti.
音:ヒンディマブーティ
訳:元気ではないです
Masama ang pakiramdam ko.
音:マサマアングパキランダンコ
訳:体調が悪いです
Masakit ang ulo ko.
音:マサキットアンウロコ
訳:頭が痛いです
Ikawa nanan?
音:イカウナマン?
訳:あなたは?
Kamusta ka naman?
音:カムスタカナマン?
訳:あなたは元気ですか?
タガログ語のお礼・謝罪・返事
Salamat po.
音:サラマッポ
訳:ありがとうございます
Maraming salamat.
音:マラーミングサラーマット
訳:本当にありがとうございます
Walang anuman.
音:ワラングアヌマン
訳:どういたしまして
Pasensya ka na.
音:パセンシャカナ
訳:ごめんなさい
Ok lang iyon.
音:オーケイランィヨン
訳:大丈夫ですよ
Hindi ko pinapansin yon.
音:ヒンディコピナパンスィンヨン
訳:気にしていませんよ
Oo.
音:オーオ
訳:うん
Oho.
音:オーホ
訳:はい
Opo.
音:オーポ
訳:(丁寧な)はい
Hindi.
音:ヒンディ
訳:いいえ
Naintidihan ko.
音:ナインティンディハンコ
訳:分かりました
Hindi ko naintindihan.
音:ヒンディコナインティンディハン
訳:分かりません
Alam ko.
音:アラムコ
訳:知っています
Hindi ko alam.
音:ヒンディコアラム
訳:知りません
Talaga?
音:タラガ?
訳:本当ですか?
Syempre.
音:シェンプレ
訳:もちろん
タガログ語で使えると便利なフレーズ
Masarap.
音:マサラップ
訳:おいしい
Masaya.
音:マサヤ
訳:楽しい
Gusto ko sa Pilipinas.
音:グストコサフィリピナス
訳:わたしはフィリピンが好きです
Mganda kayo.
音:マガンダカアヨ
訳:可愛いね、綺麗だね
Tao po!
音:タオーポ!
訳:誰かいますか!
Sandali lang.
音:サンダリーラン
訳:ちょっと待っていて
Bakit?
音:バクィット?
訳:どうして?
Magalis rako.
音:マグアリスラコ
訳:もう行きます
Anong tawag dito?
音:アノンタワッグディト?
訳:これは何と言うの?
Para sa yo to.
音:パラサヨト
訳:これをあなたにあげます
まとめ
フィリピンでは、多くの言語が話され、母語と公用語が異なる役割を果たしています。フィリピン語として親しまれ、コミュニケーションの基本となっているのがタガログ語です。
一方、英語は教育やビジネスの現場で重要な役割を担い、世界的なコミュニケーションツールとしても活用されています。
英語が話せることは、フィリピン社会において経済的な優位性をもたらしています。多様な文化や言語が共存するフィリピンを理解することで、滞在中により豊かな体験を得られるでしょう。