「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されていることは、あまり知られていません。
日本料理のように、自然や四季と深くかかわり合いながら変化する料理は世界でも珍しく、高い評価を受けているとのこと。
また日本食は、日本人が思っているよりも海外で人気があり、アメリカのニュースサイト「U.S.News」によれば、「食べ物がおいしい国ランキング」で日本は中国を抑えて12位にランクインしているのです。さらに、「CNN News」のランキングでは5位まで到達しています。
参考
https://www.usnews.com/news/best-countries/rankings/great-food
https://edition.cnn.com/travel/article/world-best-food-cultures/index.html
いずれにしても「世界一食べ物がおいしい国はどこ?」という議論になったら、日本は必ず話題に上るということですね。ということは、それだけ外国人から日本料理について質問される可能性が高いということでもあります。
というわけで今回の記事では、日本料理の代表例である「丼ぶり料理」を英語で説明する方法を解説していきます。様々な料理に応用できる言い回しが出てくるので、ぜひ例文やフレーズ、単語を覚えて、色々なところで使ってみてください。
丼ぶりの歴史
英語で丼ぶりについて説明する前に、意外と知らない丼ぶりの歴史について、サラッと勉強しておきましょう。日本語で説明できないものは、もちろん英語でも説明できません。
丼ぶりは意外にも、そこまで長い歴史を持つ料理の様式ではありません。最初に丼ぶりが作られたのは、1800年代、江戸時代の末期ごろだと言われています。
おかずとご飯を分けて配膳するというのが、従来の日本食のスタイルでした。しかし江戸時代に流行した着飾らないことを美とする「町人文化」の中で、白飯の上におかずを乗せる「ぶっかけ」のスタイルが人気になっていきます。
最初に作られた丼ぶりは鰻丼で、その次に天丼やアサリ丼が人気になりました。海鮮物が先だったんですね。
そして丼ぶり文化は広まり、明治初期には牛丼や親子丼、大正時代にはカツ丼などの肉類を使った丼ぶりが作られるようになり、今では日本料理の代表選手となっています。
Donburi/Don
そもそも「丼ぶり」は英語で何というのでしょうか。
色々言い方はありますが、実はそのままDonburiでも通じる人には通じます。
侍をsamurai、忍者をninjaなどと言うように、日本発祥のものは英訳しなくてもそのままで通じることがありますが、丼ぶりでも同じことが起きます。
そのため、日本文化や料理に詳しい人などの中にはDonburiがどういった料理であるのかを理解している人もいるのです。
実際に海外の日本料理店などではメニューに、Katsu-Don、Ten-Donといった表記がされています。その下に英語で解説が記載されている、といった感じのお店が多いですね。
とはいえ、知らない人が大多数だと思っておいた方が良いでしょう。アメリカやイギリスなどでは、そこそこの都会でなければ日本料理屋はありません。田舎に住んでいる人は、日本料理に触れる機会が少ないので、Donburiと言っても分からない人がほとんどでしょう。
rice bowl
ではDonburiが通じない場合はどうすればいいのでしょうか?一番近い英訳がrice bowlです。
bowlは「鉢状の器、お椀」と言う意味の単語です。日本語でもボウルと言いますね。
実はメキシコやタイにも、ご飯の上におかずを乗せる料理は存在し、英語ではそれを総称してrice bowl dishと呼びます。
そのため「What is Donburi?」と外国人の人に訊かれたら、とりあえず「It’s Japanese rice bowl dish.」という返答をするとよいでしょう。そうやって全体像を把握してもらうと、あとの説明が楽になるのです。
その後に、
Rice and side dishes, like meat, fish, or vegetables, are usually served separately, but instead, in Donburi dishes, they are served in one oversized bowl. “Donburi” is a general term for a Japanese rice bowl dish. Depending on the ingredients it has, it gets a specific name. For instance, if it has rice and deep-fried pork on it, it is called “Katsu-Don”. Don is an abbreviation for Donburi.
お米と、肉、魚、野菜と言ったおかずは、普通は分けて用意されますが、丼ぶり料理では、1つの大きなボウルに用意されます。「丼ぶり」は日本のボウルディッシュの総称です。使用されている材料によって、個別の名前が付けられます。例えば、お米と、その上に上げられた豚肉がのっていれば、それは「カツ丼」と呼ばれます。「丼」は「丼ぶり」の略です。
といった具合に、細かく説明すると、正確に理解してもらえます。
日本の丼物を英語で説明すると
「丼ぶり」と一口に言っても、色々種類がありますよね。ここからは、それぞれの丼ぶりについての説明文を見ていきます。
そのまま文章を覚えてもいいですし、ところどころ盗んで自分流の説明に使ってもいいでしょう。
牛丼
Gyudon is a beef rice bowl. Sliced beef and cooked onions are put on hot steamed rice with a sweet savory sauce. Some people add raw egg, red pickled ginger, or extra sauce. Gyudon is known as a quick and cheap, but filling and nutritious food. “Gyu” means beef.
牛丼はbeef rice bowlです。スライスされた牛肉と炒められたタマネギが、甘くてうまみのあるソースがからんだご飯の上に乗っています。生卵や紅ショウガ、多めのソースなどを付け足す人もいます。牛丼は手軽で安く、しかも腹持ちが良く栄養価が高い食べ物として有名です。「ぎゅう」は牛肉の意味です。
説明文はこんな感じです。使われているボキャブラリーやフレーズを、細かく見ていきましょう。
Sliced beefは、薄くスライスされた牛肉ですね。Beefだけでもいいですが、牛丼を全く知らない人はステーキのような大きな肉を想像してしまいかねません。
Hot steamed riceは、炊飯器で炊かれた白米のこと。Riceとだけ言っても炊かれたお米であることは十分通じるでしょうが、より明確にしたい場合はこの言い方をすると良いでしょう。
Red pickled gingerは、紅しょうがの英訳です。
A is known as Bは「AはBとして有名である」という決まった言い方です。様々な場面で使えるので覚えておきましょう。
fillingはfill(満たす)の形容詞系で、「腹に溜まる、腹持ちが良い」と言う意味です。
親子丼
Oyakodon is a Japanese bowl dish with chicken and egg. Chicken and onion are simmered in a sweet dashi sauce, covered with softly cooked egg, and served on steamed rice. “Oyako” translates to “parents and child”, which refers to the use of chicken and egg.
親子丼は鶏肉と卵を使った日本のbowl dishです。甘い出汁で煮られた鶏肉とタマネギを、やわらかく調理された卵にとじ、ご飯の上に乗せます。「Oyako」はparentとchildと言う意味で、鶏肉と卵が使われていることを指しています。
simmerは「煮る」を表す動詞です。Boil, stew, poachなど、「煮る」を表す動詞はいくつかあります。煮る方法によって使われる単語が違うので、覚えておきましょう。
ぐつぐつ煮込む=stew
弱火で煮る=simmer
沸騰したお湯でゆでる=boil
弱火でゆでる=poach
「出汁」を正確に翻訳する英単語は存在しません。アメリカやイギリスなどでは、高い確率でDashiとそのまま言えば通じます。通じない場合は、Japanese brothと言えばどういったものかはだいたい理解してもらえるでしょう。
海鮮丼
Kaisendon is a Japanese bowl dish consisting of a variety of raw seafood served on a bowl of white rice. The ingredients used in kaisendon vary depending on the region, but pretty much all kinds of seafood can be used on kaisendon. “Kaisen” means “seafood”.
海鮮丼は、様々な種類のシーフードと丼ぶりに入った白ご飯から成る、日本のbowl dishです。海鮮丼に使われる材料は地域によって異なりますが、だいたい全ての種類のシーフードが海鮮丼で使わます。「海鮮」はseafoodという意味です。
consisting ofは、「~から成る」という意味の熟語です。1つ目の文章は、Kaisendon is a Japanese bowl dishがメインの文章で、consisting of以下で、詳細を説明しています。「現在分詞の後置修飾」という用法です。
2つ目の文章で使われているusedは、「過去分詞の後置修飾」です。The ingredients used in kaisendonが主語、are variedが動詞です。
pretty muchは口語でよく使われるフレーズで、「だいたい、ほとんど」という意味です。対象の範囲を曖昧にぼかす表現ですね。日常会話では頻出なので、覚えておきましょう。
豚丼
Butadon literally translates to “pork bowl dish”. It is a bowl of white rice topped with grilled sliced pork. The flavor of pork differs depending on the person who cooks it, but it’s commonly flavored with sweet and salty sauce with some dashi.
豚丼は直訳でpork bowl dishという意味です。焼かれた薄い豚肉が、ボウル一杯の白ご飯にトッピングされた料理です。豚肉の味付けは調理する人によって異なりますが、たいてい出汁の効いた甘辛いソースで味付けされます。
A literally translate to B「Aを直訳するとB」という意味で使われるフレーズです、ひとまとまりで覚えておくと良いでしょう。
食べ物を焼く時に使う動詞は、cookが一般的ですが、特に鉄板や網の上でジュージューと焼くという調理方法に限定したい時にはgrillが最適です。
「味付けする」を表す動詞はseasonかflavorですが、ソースで味付けする場合はflavorが適しています。スパイスや調味料を使う場合は、seasonがよく使われます。
カツ丼
Katsudo is a bowl dish with katsu over steamed rice with simmered onion and softly cooked egg. “Katsu” is an abbreviation for “Tonkatsu”, which is a breaded deep-fried pork cutlet. Many people eat katsudon before an important exam or sports game because “katsu” is a homophone of “winning” in Japanese.
カツ丼は、タマネギを煮たものとやわらかく調理された卵とともに、カツがご飯の上に乗せられた、bowl dishのこと。「カツ」は「トンカツ」の略です。トンカツとは、豚肉の切り身をパン粉をまぶして揚げたものです。「カツ」は「勝つ」と同音異義語のため、多くの人が重要な試験やスポーツの試合の前にカツ丼を食べます。
breadedは「パン粉をまぶした」という意味の形容詞です。Bread(パン)の形容詞形と考えてよいでしょう。
deep fryにも注意が必要です。Fryだけだと、「油で炒める」という意味になり、ひたひたの油でしっかり上げる場合はdeep fryと言わなければいけません。
cutletは「カツレツ」という日本語のもとになった名詞ですね。もともとは牛や豚、ヒツジなどの肉を、料理用に薄く切った切り身のことを指します。
天丼
Tendon is a short term for “Tempura donburi”. Tempura is a common Japanese dish that consists of deep-fried seafood, meat, or vegetables with a light batter coating. They prepare a bowl of white rice, put assorted tempura, and flavor it with a special dipping sauce called “Tare”.
天丼は「天ぷら丼ぶり」を短くした言葉です。天ぷらは、生地でコーティングされ揚げられたシーフードや肉、野菜などから成る、日本の人気料理です。ボウル一杯の白ご飯を用意し、数種類の天ぷらを乗せ、「たれ」と呼ばれる特別なソースで味付けをします。
Termは「用語」という意味です。Wordとほぼ同義ですが、「ある分野で特に使われる単語」というニュアンスが出ます。
batterは「生地」という意味です。パンケーキやお好み焼きの生地のような、小麦粉ベースのどろどろした液体の総称です。天ぷらについて話すときは「衣」と訳してもいいでしょう。
「どんぶり勘定」ってどう表現する?
「どんぶり」という単語は料理以外でも使われます。「細かい計算をせず、大体でお金の出し入れをする」と言う意味の「どんぶり勘定」が代表的な例ですね。
昔、職人たちが使っていた「どんぶり」と呼ばれる、腰かけに付いた入れ物から、無造作にだいたいの額のお金を出し入れをしていたことから生まれた言葉です。
最後に、この「どんぶり勘定」を英語でどう言うのかを見ていきましょう。
sloppy calculations
まず、「勘定」はcalculationです。「計算」という和訳が一般的ですね。
どんぶり勘定は、お粗末な計算という意味です。この「お粗末」という部分を表すのに最適な単語がsloppyです。
sloppyは「だらしのない、いい加減な、ずぼらな」という意味の形容詞です。Sloppy lifeで「だらしのない生活」、sloppy workで「いい加減な仕事」というように使います。
よって、sloppy calculationsとすることで「どんぶり勘定」を的確に表現できます。
rough calculations
もっとシンプルに、roughという単語を使ってもいいでしょう。roughには「粗い、ザラザラした」以外に、「雑な、乱暴な」という意味もあります。
そのため、rough calculationsでも「どんぶり勘定」を表すことができるでしょう。
ただ、roughを使う場合は「だいたいの数字を早く知るために、あえて大まかな計算をしている」というニュアンスが出ます。Rough draftが「下書き」という意味になるのと同じ感じですね。
sloppyと違い、roughは必ずしもネガティブなニュアンスにはならないので、そこを意識して使い分けると良いでしょう。
まとめ
丼ぶり1つで、たくさんの語彙を学ぶことができたのではないでしょうか。実は「何かを描写する」という行為は、英語力を鍛えるのにとても良いトレーニングなのです。
実際に、「目に見えている風景を英語で描写する」という英語トレーニングを進めている先生もいます。
今回の「丼ぶり」は、英語力も鍛えられるし、日本文化についても知れるし、外国人と会話をするときに役に立つ知識を身に付けられる、一石三鳥のトピックでした。
そして、こういった特定のトピックについて学びたいのであれば、ネイティブキャンプが最適です。ネイティブキャンプでは、作りこまれたカリキュラムの他に、自分でその日のレッスンのテーマを決めることができるコースもあります。また、フリートークの時間もたくさんあるので、日本料理について話をする練習をしたい場合でも、ネイティブキャンプは対応可能です。無料体験レッスンも行っているので、ぜひネイティブキャンプのレッスンプランをチェックしてみてください。
◇経歴
・アメリカ、オクラホマ州の四年制大学を卒業
・英語学習に関するブログを中心に、英語ライター・翻訳家として活動(現在)
◇資格
・TOEFL503点(大学入学時)
・Bachelor of Arts(文学士号)
◇海外渡航経験
・高校卒業後に、アメリカのオクラホマ州にあるNortheastern州立大学へ5年間の正規留学を経験
◇自己紹介
高校時代にアメリカの音楽文化に興味を持ち、アメリカへの大学留学を決意したことが、英語学習を本格的に始めることになったきっかけです。渡米後に3ヶ月の語学研修とTOEFL試験をクリアし、正規入学を果たしました。音楽学部にてJazz Studiesを専攻し、複数のバンドでギタリスト・ベーシストとして活動したことは一生の財産です。言葉はその人の価値観を定義付け、語学の習得は世界の見え方を変えます。自分が今も現在進行形で経験している、言語の魅力を発信するために、日々、英語・語学に関する情報発信をしています。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.