韓国語は日本語と文法的にとても似ており、日本人には最も学びやすい言語と言えます。日本語と似た表現も多く初級の学習者でも英語など他の外国語に比べ学習を進める上での負担が少ないです。
そのため、英語は習得できなかったけど韓国語学習を独学でしても習得に成功するといった学習者もいます。韓国語の初級文法は、日本語の感覚で理解できたり、韓国語作文も日本語をそのまま置き換えてもできるものが多いです。
ですが、中級からは韓国語ならではの言い回しや表現などが増えて来て、単なる日本語の置き換えでは対応ができない文が多くなってきます。また、初級であっても韓国語特有の尊敬語や尊敬表現があり、それらを理解し使いこなせないと失礼になったりします。
そして、韓国語と日本語は似ているために学びやすいという日本人にとっての大きなメリットがある反面、似ているがために違う部分に気付きにくく間違ってしまうというデメリットもあります。そのため、勉強しているのに自然な韓国語の文を作ることができない学習者が多いです。
今回の記事では、初級レベルで基本的な事項にも関わらず間違えやすい韓国語を複数取り上げ、間違えるポイントや正しい表現を説明していきます。
- 日本語の「こと」にあたる韓国語
- 場所の「곳」と「데」の違い
- 「처음」と 「처음에」の使い分け
- 「이따가」と「나중에」の違い
- 「좋다」と「좋아하다」の使い分けと助詞の使い方
- 日本語の「~してください」
- 日本語の「~できる」
- 「~을 거예요」と「~을게요」の違い
- 日本語の「~のために」
- まとめ
日本語の「こと」にあたる韓国語
日本語では「こと」になる表現は韓国語ではひとつではなく使い分けが必要です。
제 취미는 그림을 그리는 거예요.
지금까지 가장 기뻤던 일은 뭐예요?
한국어로 신문을 읽을 수 있어요.
ですが、日本語をそのまま韓国語に置き換えて「読むことができる」を「読むことが」の部分を’읽는 것이’とし、「できます」の部分を’할 수 있어요’とする間違いが初級者に見られます。
제 친구는 영어를 잘 가르쳐요.
한국에 가 본 적이 없어요.
場所の「곳」と「데」の違い
場所を表すものとして「곳」と「데」があります。このふたつの文法的な違いは、「곳」は完全名詞で単独で使うことができるのに対し、「데」は不完全名詞であるため修飾語を伴います。
意味的な違いは、「곳」は狭い特定された場所を指すのに使われ、「데」は広い場所を特定する場合に使われます。
서류는 저 곳에 있어요. (〇)
서류는 저 데에 있어요. (×)
「何」にあたる韓国語
日本語の「何」にあたる韓国語はひとつではなく、表す意味によって使い分けが必要になります。
지금 몇시예요?
뭐가 제일 좋아해요?
그게 뭐예요?
무슨 색깔을 좋아해요?
무슨 요일에 쉬어요?
「처음」と 「처음에」の使い分け
「처음」と 「처음에」は使い分けが必要ですが、このふたつを使い分けられるようになるとより自然な韓国語になります。
처음
「처음」は「最初」の意味を表す時に名詞で使います。그 책은 처음부터 끝까지 다 읽었어요.
한국유학이 처음은 아니에요.
처음에
「처음에」は「最初(に)」の意味合いを表します。何かが始まる最初、初めの頃ということを言いたい時に使います。처음에는 이해하는 게 어려웠어요.
처음에는 중국사람인 줄 알았어요.
처음에는 무서웠는데 지금은 안 무서워졌어요.
「이따가」と「나중에」の違い
日本語だとどちらも「あとで」や「のちほど」と訳されますが、このふたつは使い方と意味に違いがあります。
「이따가」は「その日のうち」であるのに対し「나중에」は「いつか」です。
이따가 오세요.
話しているその時より後でその日のうち 나중에 오세요.
はっきり特定されていないそのうち、いつか
用事で来てもらう等の状況で「이따가」を使った文では、今日来て欲しいという意味であるのに対し、「나중에」は急ぎや大事な用事ではないので、はっきりいつかは特定しないという意味合いです。
저는 나중에 선생님이 될 거예요(○)
저는 이따가 선생님이 될 거예요(×)
「좋다」と「좋아하다」の使い分けと助詞の使い方
このふたつの使い分けとそれに伴う助詞の使い方の間違いは初級レベルで多く見られます。
どちらも意味としてはほとんど変わりませんが、品詞が違います。「좋다」が形容詞で「좋아하다」は動詞です。
「좋다」の場合は’~이/가 좋다’のように助詞は’~이/가’です。一方で「좋아하다」は、’~을/를 좋아하다’で助詞は’~을/를’を使います。この言い方は型として覚えておきます。
저는 한국요리가 좋아요.
저는 한국요리를 좋아해요.
日本語の「~してください」
日本語の「~してください」にあたる韓国語表現は「~ (으)세요」と「~아/~어 주세요」がありますが、このふたつは意味合いによりしっかりと区別して使う必要があります。
「~ (으)세요」は人に勧める時や丁寧に指示(命令)をする時に使い、「~아/~어 주세요」は自分のために人に何かをお願いする時に使います。
日本語ではどちらの意味合いの場合も「~してください」で表すことができるため、日常的にこの違いを区別して話すことがありません。ですが、韓国語ではこの使い分けができないと、人にお願いするつもりが命令のように聞こえてしまうので注意が必要です。
이 책을 사세요.
이 책을 사 주세요.
「사세요」を使うと相手に対して本を買うことを勧める意味合いになります。
一方で「사 주세요」の場合、話し手が相手に依頼をする意味合いになるので、話し手が相手に本を自分のために買って欲しいという意味になります。
명동까지 가 주세요. (〇)
명동까지 가세요. (×)
日本語の「~できる」
「~できる」も日本語ではいくつかの意味合いをこれひとつで表現できるのに対し、韓国語ではニュアンスにより使い分ける必要があります。
’~ㄹ/을 수 있다’
’~ㄹ/을 수 있다’は「可能」を表します。
1시간 안에 거기에 갈 수 있어요.
정말로 다 먹을 수 있어요?
’~ㄹ/을 줄 알다’
’~ㄹ/을 줄 알다’は「~のやり方が分かる」という意味合いのできるを表します。
테니스를 칠 줄 알아요?
운전할 줄 알아요.
「~できる」を表す韓国語は主に上記の2つですが、以下のような場合も「~できる」の意味を表すことがあります。
되다
제 오빠는 영어도 돼요.
잠깐 전화 돼요?
가능하다
포장 가능합니까?
지금 통화 가능해요?
「~을 거예요」と「~을게요」の違い
「~을 거예요」と「~을게요」はどちらもこれからのことを言う時に使う表現です。しかし、次のような違いがあります。
①「~을 거예요」は単にこれからの予定や計画を言うのに対し、「~을게요」は約束する意味もある
일요일에 올 거예요.
일요일에 올게요.
予定を言うと共に日曜日に来る約束をする
내일 뭘 할 거예요? (‘할게요’は不可)
日本語の「~のために」
日本語の「~のために」にあたる韓国語は、「~기 때문에」と「~기 위해(서)」です。
どちらも「~のために」ですが、「~기 때문에」は目的を表し、「~기 위해(서)」は理由を表します。
このふたつも使い分けが必要です。
~기 때문에
다음주에 시험이 있기 때문에 매일 공부하고 있어요.
理由なので、「~아서/~어서」と置き換えることができます。
다음주에 시험이 있어서 매일 공부하고 있어요.
「~기」の前には存在詞、形容詞、動詞を置くことができます。また過去形にすることもできます。
몸이 아팠기 때문에 학교에 못 갔어요.
감기 때문에 열이 났어요.
~기 위해(서)
시험에 합격하기 위해서 열심히 공부하고 있어요.
합격을 위해서 열심히 공부하고 있어요.
まとめ
ここまで初級レベルで基本的な事項にも関わらず間違えやすい韓国語を複数取り上げ、間違えるポイントや正しい表現を説明してきました。
初級レベルは簡単と思われがちですが、決してそうではないことが今回の内容を見ると分かると思います。間違った文を作らないためにまずは、教材の例文で基本の型をしっかりと身に付けます。
そして、その型を利用し自分で色々な文を作ってみることをすることで、段々と自然な韓国語が身に付いていきます。
初級レベルの韓国語をしっかりと理解し使えるようになることが、その後の中級や上級の学習を理解していく上での土台になります。
そのため中級や上級レベルの学習をしている場合でも自然な韓国語の文が作れない場合は初級を見直しましょう。

◇経歴
日本、韓国の企業で通訳・翻訳、アシスタントとして勤務
日本にて韓国語講師として5年勤務
フィリピンにてフリーの通訳として英語、韓国語、日本語の3言語の通訳を担当
◇資格
・韓国語能力試験(TOPIK)6級
・延世大学校韓国語教員養成課程修了
◇留学経験
【オーストラリア】
・クイーンズランドカレッジオブイングリッシュ:3カ月
・ゴールドコーストカレッジオブビジネス:6カ月
【フィリピン】
・ファーストウェルネスイングリッシュアカデミー:3週間
【韓国】
・梨花女子大学校言語教育院:3週間
・延世大学校言語研究教育院(韓国語教員養成課程):5週間
【タイ】
・プロランゲージ(タイ語):1年6カ月
◇海外渡航経験
ワーキングホリデーにてソウルの企業数社で通訳・翻訳、セールス、マーケティングを担当
韓国語習得のための留学5回(一般韓国語、ビジネス韓国語)
延世大学校にて韓国人と共に韓国語教育について学ぶ
◇自己紹介
韓国語学習コンサルタント
韓国語講師
講座構築コンサルタント
オンラインで韓国語学習に悩みを持つ学習者の問題解決をする韓国語学習コンサルタント、韓国語講師として韓国語習得に成功する学習法や練習法も指導しています。
また、英語と韓国語習得に成功した経験とカリキュラム構築、教材作成の経験を活かし講座構築の方法をあらゆるジャンルのプロに指導するコンサルタントとしても活動しています。
海外就職でフィリピンのセブに移住して5年半在住、現在はタイのチェンマイに住んでいます。
外国語に興味があり、英語、韓国語(ビジネスレベル)、中国語(中級)、現在はタイ語習得を目標に勉強しています。