英語の直訳できない表現とは? 日本語に直訳できないフレーズ集

日本語に直訳できない英語とは?

英語の直訳できない表現とは? 日本語に直訳できないフレーズ集

英語を日本語に翻訳して意味を考えるとき、まずは直訳してみますよね。

でもたまに、直訳しても意味がわからない英語表現があります。

それは、異なる文化を背景に生まれた習慣的な言い回しであるイディオムであったり、口語表現(スラング)であったり、知らないと中々正解にたどりつけないフレーズだったりします。

有名どころでいうと “rain cats and dogs” でしょうか。教科書で見たことがあるかもしれません。「(雨が)どしゃ降り」という意味ですね。

このような有名なフレーズでも、そのままGoogle翻訳にかけると「雨の猫と犬」となります。

“It's raining cats and dogs.” とすれば「大雨です」と翻訳されますが…)

最近はオンライン翻訳やスマートフォンの翻訳機能なども便利ですが、それらが対応していない英語表現もあります。今回はこうした英語独特の表現についていくつかピックアップして解説したいと思います。

それではさっそく見て行きましょう!

直訳できない英語1: lemon

ひとつめは、レモン。黄色いラグビーボール状の柑橘系果物です。

これがいったいどんな意味になるかというと「不良品、欠陥品」です。

This car is a real lemon.

× この車は本当のレモンだ。

〇 この車はまったくの欠陥車だ。

あくまで口語表現、ネイティブスピーカーの方が使うスラングなので、ビジネス英語などオフィシャルな場にはふさわしくありませんが、辞書などものっている比較的日常会話に登場する表現です。

日本語ではニュアンスが近いものは「オンボロ」「ポンコツ」でしょうか。誰でも知っているけれど、仕事などでは使わない単語ですよね。

車や船など乗り物に対して使われることが多いのですが、イギリス英語では人間に対しても「魅力がない、不快な人、いやなやつ、ばか」というネガティブなニュアンスで使われることがあるようです。

日本人からすると「さわやか」な果物が、そのようにネガティブな意味をもって使われるなんて、意外性がありますよね。

“lemon”

直訳: レモン

意味: できそこない、欠陥品

直訳できない英語2: open book

次は、スラングというよりはイディオム的な表現です。直訳してもなんとなく意味がわかるような、わからないような。

His face was an open book.

× 彼の顔は開いた本だった。

〇 彼は何も隠せない人だった。

開かれた本のように、そこに書いてあることが誰でも読める、ということで「何も秘密のない人」「明白なことがら」といった意味になります。

「自分に対して隠し事がない人」というふうに、openな対象を限定的にすることもできます。

She is an open book to me.

彼女は私に対して隠し事はなにもない。

ちなみにこちらの表現、反意語もあります。それは “closed book” です。

His past life is a closed book to us.

× 彼の過去は我々にとって閉じた本だ。

〇 彼の履歴は我々にはまったくわからない。

単にわからない、というだけではなく、何かあるから隠している、得体が知れない、そんなニュアンスを含んだ表現となりますので、使うときにはご注意くださいね。

“open book”

直訳: 開かれた本

意味: 何の秘密もない人、明白なことがら

“closed book”

直訳: 閉じた本

意味: 得体の知れない人物、不可解なことがら

直訳できない英語3: beef

最初にご紹介した “lemon” に続く食べ物シリーズ。 “beef”(牛肉)です。

日本人的には、美味しい、高級、焼肉といえば!なイメージの「ビーフ」ですが、これがなんとアメリカ英語のスラング表現で「不平、不満」といった意味を持ちます。

I have a beef with my husband.

× 私は夫と一緒に牛肉を持っています。

〇 私は夫に不満があります。

“beef with ~” で「~に対して文句・不満がある」という意味になります。

このような使い方がいつごろ始まったかについては諸説ありますが、その中のひとつはイギリスのコックニー(ロンドンの労働者階級で話される英語の一種)起源説です。

コックニーには、韻を踏んでいるという理由だけでまったく関係のない単語を他の単語として使う、という言葉遊び的な用法がみられます。

今回のケースでは “thief(どろぼう)” のことを “beef” と言っていた、というところから、まわりまわってアメリカにわたって「不平、不満」という意味を持つにいたったというのです。

“beef(牛肉)” が「不満」なら、他のお肉ではどうでしょうか。

“pork(豚肉)” はアメリカのスラングで政府や政治家が戦略的な目的をもって地方自治体や支持基盤となる地元選挙区に与える「助成金、援助金」といった意味を持ちます。

There are too many pork barrel politicians.

地元利益誘導型の政治家が多すぎる。

“chicken(鶏肉)” は「臆病者」。これは子供向けのアニメなどにもでてくるぐらい、一般的でよく聞く口語表現ですね。

He's chicken.

× 彼は鶏肉だ。

〇 彼は臆病者だ。

鶏といえば、どちらが先かわからない問題や、堂々巡りな議論などのことを、日本語で「卵が先か鶏が先か」といいますが、これは哲学的な命題として欧米でも古くから言われている言葉なので、英語でも同様に表現されます。

Which came first: the chicken or the egg?"

「卵が先か、鶏が先か?」

日本語と英語で、卵と鶏の順序が逆になっているのが面白いですね。

この表現を、形容詞として使うときは “chicken-and-egg” となります。

It’s a chicken‐and‐egg problem.

それは因果関係のわからない(堂々巡りな)問題だね。

問題文の中では “or” だったのが、形容詞化されるときには “and” になっているところは要注意です。

ビーフ、ポーク、チキン、と聞くと、思わずお腹がすいてしまいますが、このように身近な言葉だけに、独特な意味も持つようになったのかもしれませんね。

“beef”

直訳: 牛肉

意味: 不平、不満、ぐち

直訳できない英語4: bread and butter

お腹がすいてしまうシリーズです。

This job is my bread and butter.

× この仕事は私のパンとバターです。

〇 この仕事が私の収入源です。

パンとバターといえば主食。日々食べるもの。そうしたことから生活するにあたって必要なもの、生計のために必要なもの、といった意味になるのかと思います。

日本語でも「飯の種」という表現がありますね。生きて食べていくための仕事、という意味です。

一家の稼ぎ頭のことは “breadwinner” といいます。 “winner” は日本では「勝利者」というイメージがあるかもしれませんが、「得る人」という意味もあり、「パンを得る人=一家の稼ぎ頭」ということになります。

日本語では「大黒柱」なんていいますよね。家を支えている、特別に太くしっかりとした柱。金銭的なことだけではなく、精神的な支え、という意味も含んでいます。

「大黒柱」は逆に、英語に直訳しても通じない日本語表現ですね。 “big black pillar” といっても何のことやら、です。

“bread and butter” といえば、もし恋人と、あるいは友達とふたりで歩いている最中に、前から人が来たり電柱に行く手をはばまれたりしてふたりが離れる瞬間があったとします。そんなとき相手が “bread and butter” とつぶやいたら、自分も同じように口にしましょう。

これはある種の迷信、あるいは言い伝えといってもいいかもしれません。パンに塗ったバターをはがすのは難しいことから、こうつぶやくと二人の仲を引き裂く悪いことを避けられる、というわけなのです。

どちらか一方ではなく、二人ともがこのフレーズをつぶやかないと意味がないそうですので、気を付けてくださいね!

“bread and butter”

直訳: パンとバター

意味: 主な収入源、生計、本業

直訳できない英語5: old school

“old school” と聞くと、どんな光景が思い浮かびますか?

古い学校… 木造校舎… 二宮金次郎の銅像… 実際、名詞の “old school” には、「母校」という意味があります。

けれどもそれだけではなく、日本語ではちょっと思いつかないような意味もあります。

My father belongs to the old school.

× 私の父は古い学校に所属している。

〇 私の父は昔流儀だ。

この場合、もはや学校は関係ありません。 “the old school” で、「保守派、伝統的な方法を好む人々、前時代的な価値観を大切にしている人々」といった意味になります。

形容詞としての用法もあります。

I think that's an old-school approach.

× それは古い学校の取り組みだね。

〇 それは昔ながらのやり方だね。

そのニュアンスは、現代的な方法に対して古いね、おとっているね、という場合もありますが、一方で、昔ながらの伝統や格式などをリスペクトしている場合もあります。

“old school”

直訳: 古い学校

意味: 昔ながらの、古典的な

直訳できない英語6: under the weather

次は、イギリスで100年以上前から使われているイディオムです。

I was a bit under the weather last night.

× 昨晩はちょっと天気の下だった。

〇 昨晩はちょっと体調が悪かった。

風邪気味、二日酔い、ちょっとお疲れ気味…といったときに使います。本格的に体調が悪いときには使いません。

体調だけではなく、気分的に落ち込んでいる、というような場合にも使うことができます。

本来は “under the weather bow”。船乗り用語で「悪天候にさらされている船首の下」という意味があり、船酔いのときなどに使っていた表現のようです(所説あります)。

個人的には低気圧で頭痛が出るタイプなので、天気と体調をからめた表現はしっくりきます!

“under the weather”

直訳: 天気の下

意味: 体調が悪い、本調子ではない

直訳できない英語7: The world is your oyster

次は、劇中のセリフがひとり歩きをして使われるようになったケースです。

“The world is your oyster.”

直訳: 世界はあなたの牡蠣です

意味: あなたはなんだってできるよ

元となっているのは、1600年のシェイクスピアによる作品「ウインザーの陽気な女房たち」に登場するセリフです。それがそのままことわざのようになりました。

“Why then the world's mine oyster

which I with sword will open.”

「世界が牡蠣のようなものならば

この剣で世界をこじ開けてみせよう。」

「この世界はあなたの牡蠣ですよ」だけでは意味が通りませんが、実はその先に続く「その牡蠣をあなたは自分でこじ開けることができるんですよ」のメッセージまでが詰まっているのです。

力強く、素敵な表現ですよね!

直訳できない英語8: get out

次は、アメリカ英語の、主に若い人たちが口語で使う表現です。

“Get out!” なんて大きな声でいわれたら「え?出て行けってこと?」となってしまいますが、サプライズなどに対して、「うわ、びっくりした!うっそー!」というニュアンスで使われることがあるのです。

「信じられない!」という驚きを表すリアクションです。

他にも “No way!” “Unbelievable!” と言ったりします。

日本語でびっくりしたときに「え、ちょっとまってよ~!」って言ったりするニュアンスに近いかもしれません。誰も何も待たないけれど「ちょっとまって」。同様に、誰もどこからも出ていかないけれど “Get out!”

立ち去るべきか、その必要がないか、状況判断が肝心ですね。

“get out”

直訳: とっとと失せろ!

意味: うそでしょ!信じられない!

直訳できない英語9: all thumbs

次は直訳できないけれどもしかしたら推測できるかもしれないパターンです。

“all thumbs” ・・・全部の親指?

いえ、どちらかというと、「すべてが親指」です。手の指すべてが親指だったら、それはいったいどういう状況でしょうか。

答えは 「不器用な人」です。

I'm all thumbs in the kitchen.

× 私は台所では全部親指です。

〇 私は炊事が苦手です。

「立ち回り方が不器用」とかではなく 「手先が不器用」、「細かい作業が苦手な人」、そういう意味で使います。

語源は16世紀ごろのことわざです。

"When he should get taught, each finger is a thumb"

「すべての指が親指だったらそれはどんなにやっかいなことか」

全部の指が親指だったら、なんて、発想が面白いですよね。

“all thumbs”

直訳: 全部親指

意味: 手先が不器用な人

楽しみながら様々なフレーズを覚えよう!

知らなければわからない、直訳では伝わらない、そんな 英語独特の表現を見てきました。

直訳できないなんてGoogle翻訳も使えないし、不便だな…と思うかもしれませんが、もともとの意味とのギャップを楽しんで覚えていけたらいいのではないかと思います。

中には自分にピンとくるイディオム、お気に入りのフレーズ、なども出てくることでしょう。そうした表現を集めていくうちに、英語の世界は「あなたの牡蠣」になるかもしれません。

表現力、語彙力、という刀で、その牡蠣をどんどんこじ開けて行きましょう!