英語には、日本語と同様に、発音が同じでも意味が異なるさまざまな単語があります。これは、英語を学習している方が疑問に感じやすい部分でもあります。
今回は、そのなかでも日常的に使われる「it’s」と「its」の違いや例文などをご紹介していきます。本記事で疑問を解決し、日常英会話でぜひ使ってみてくださいね。
- 1.「it's」と「its」の違いは?
- 2.「his」や「her」のかわりに「its」が使える
- 3.「it’s」や「its」に似ていて間違えやすい表現は?
- 4.末尾に「itis」がつく単語の意味には法則がある
- 5.発音が同じでも意味が異なる単語はたくさんある
1.「it's」と「its」の違いは?
「it’s」と「its」は同音異義語です。たとえば日本語でも、「意向」と「移行」の発音は同じですが意味は異なるように、英語にもこのような単語がたくさんあります。
1-1.「it’s」は「it is」または「it has」の省略形
「it’s」は「it is」または「it has」の省略形です。
「it is」の「it」は「それ」という意味で、「is」は「…は〜です」を意味する三人称単数形のbe動詞です。したがって、「it is」の省略形の「it’s」は「それは〜です」という意味になり、主に物や動物について表現する文章で使われます。さっそく例文を見ていきましょう。
It’s my laptop.
それは私のノートパソコンです。
It’s his dog.
その子は彼の犬だ。
「it’s」は、上記の例文のように物理的なものを表現する時に使えるだけでなく、以下の例文のように天気や物事の状況を表すときにも使われます。
It’s beautiful weather, isn’t it?
良い天気だよね。
I think it’s too late.
私はもう遅すぎると思う。
次に、「it’s」は「it has」の省略形の場合もあります。「has」は「have」の三人称単数形です。ここでは「持っている」という意味はなく、中学英語で学ぶ現在完了形の「have(has)」です。現在完了形は「have+過去分詞」の形で表され、次の3つの意味を表現できます。
①継続:「ずっと〜している」
②完了・結果:「ちょうど〜したところだ」「すでに〜した」
③経験:「〜したことがある」
「it has+過去分詞」の形で現在完了形の文章が作られた時、「it has」の部分が「it’s」と省略されることがあります。それでは、「it’s+過去分詞」の形で使われる例文を見ていきましょう。
It's been a while since I came here last time.
私が前回ここに来てからしばらくだ。(継続)
I was planning to take a trip, but it’s been postponed.
私は旅行に行く予定だったが、延期になった。(完了)
1-2.「its」は「it」の所有格
続いて、「its」は「it」の所有格で、「その、それの」という意味です。「所有格ってなんだっけ?」と疑問に感じた方に向けて、簡単に解説していきます。所有格とは「私の、あなたの、彼の、この」のように、その後に続く名詞を修飾するものです。たとえば、「私の」は「I」ではなく「my」、「あなたの」は「you」ではなく「your」と表現されます。それらの単語と同様に、「その、それの」は「it」ではなく「its」と表現されるのです。「its」の例文を見ていきましょう。
The cat arched its back.
猫は背中を丸くした。
この文章では「its」は後ろの「back」を修飾していて、猫のことを指しています。ここで1つ注意するべきことは、itsは所有格としては使えますが、所有代名詞として使えないということです。所有代名詞とは、「所有格+名詞」が1つの単語になったものです。たとえば「私のもの」は「mine」、あなたのものは「yours」のような所有代名詞で表されます。所有代名詞を使った会話例を見てみましょう。
Whose notebook is this? - It’s mine!
これは誰のノートですか? - 私のです!
上記の例文のように、「私のです!」というときは「mine」を使えます。別の会話例も見てみましょう。
Whose toy is this? - It’s my dog’s!
これは誰のおもちゃですか? - 私の犬のです!
「私のもの」「あなたのもの」「彼のもの」「彼女のもの」などは所有代名詞として使えますが、上記の例文の場合は「its」を所有代名詞として使えないため、「名詞’s」の形で表現します。
ここで少し余談!
下記記事では、「Concern」と「Problem」の違いについてご紹介しています!ニュアンスが似ていて使い方に迷うことが多い単語なので、下記記事で一緒に正しい使い方を学んでいきましょう!
2.「his」や「her」のかわりに「its」が使える
ここまでの解説を通して、動物に対しても「その、それの」を意味する「its」を使うことに、抵抗や疑問を感じる方がいるかと思います。実は、動物に対しては必ず「its」を使わなければならないというわけではなく、性別がわかっている場合は「his」もしくは「her」を使えます。動物に対して「its」や「her」を使った例文を見ていきましょう。
This is Tom’s dog, but I don’t know its name.
この子はトムの犬ですが、私は名前を知りません。
こちらは、犬の性別が分からない場合に使える文章で、「his」や「her」ではなく「its」が用いられています。別の例文もご紹介します。
This is my turtle, Taro, but I don’t remember his age.
これは私のカメの太郎ですが、年齢が思い出せません。
こちらの例文は、自分が飼っているカメの性別がわかっている場合の文章で、「his」が使われています。
3.「it’s」や「its」に似ていて間違えやすい表現は?
「it’s」や「its」と似ていて間違えやすい表現や、普段あまり意識することはないけれど短縮形が使われている表現をご紹介します。
3-1.所有を表す「名詞’s」と「名詞’」
「〜の」という所有を表すとき、アポストロフィ「’」の後ろにsをつける「名詞’s」と、「’」の後ろにsをつけない「名詞’」の2パターンがあります。この分野は複雑で勘違いも起きやすいので、しっかり要点をつかんでいきましょう。
所有を表す「名詞’s」と「名詞’」は、以下の条件で使い分けます。
①名詞が単数形の場合:「名詞’s」
②名詞が複数形の場合:「名詞’s」または「名詞’」
①に示したように名詞が単数形の場合は、「the cat’s」のように「名詞’s」の形で所有を表現します。
②に示したように名詞が複数形の場合、「名詞’s」または「名詞’」のどちらを使うか判断しなければいけません。
まず、単語の末尾が「s」でない時は「名詞’s」で表現します。たとえば、「children」のような単語は、意味自体は「子どもたち」という複数形ですが、末尾が「s」で終わっていないため「children’s rooms」のように「名詞’s」の形で表現されます。
次に、単語の末尾が「s」の時は「名詞’s」で表現します。たとえば、「cars」のような単語は、末尾が「s」で終わっているため、「cars’ keys」のように「名詞’」の形で表現します。したがって、「cars’s keys」とsを重ねて表記するのは間違いです。
ここで、ちょっとした豆知識をご紹介します。「名詞’s」または「名詞’」で所有を表すときに、「名詞」の部分が「Taro」や「John」のように、ある特定の名前だったとします。しかし、「Jacobs」のように名前の末尾が「s」で終わる場合、以下のどちらの表現が正しいでしょうか?
・Jacobs’s room
・Jacobs’ room
実は、これはどちらも正しい表記です。特定の名前の末尾が「s」で終わる場合は、sを重ねて表記しても問題ないのです。頭の片隅にちょっと入れておくだけでも、洋書や英語の資料の表記方法に気づくことがあるかもしれません。
3-2.「it’s’」や「its’」といった英語表現は存在しない
ここまでで「it’s」と「its」の違いや例文をご紹介しましたが、「it’s’」や「its’」といった表現方法は存在しません。ネイティブスピーカーも間違えることがあるので注意しましょう。
3-3.Let’s
Let’sは日常的に使われる表現なので、果たして何の短縮形か分からない方も多いかもしれません。Let’sは「Let us」の短縮形です。letは「〜させる」という意味で、「let+人+動詞」の形で「人に〜させる」という意味の定形表現です。「Let us」の短縮形の「Let’s」は「私たちに〜させろ」という意味です。したがって、「〜しましょう」という普段よく目にする定形文になります。
4.末尾に「itis」がつく単語の意味には法則がある
最後に、今回学習した「it’s」と「its」から少し派生して、末尾に「itis」がつく単語を見てみましょう。実は、それぞれの単語は共通した意味を持っています。
・tonsillitis(扁桃炎)
・bronchitis(気管支炎)
・tendonitis(腱鞘炎)
・telephonitis(電話狂)
・golfitis(ゴルフ狂)
上記に示したように、末尾に「itis」が使われている単語には、「〜炎」「〜熱、〜狂」のように共通した意味・ニュアンスがあります。こちらも頭の片隅に入れておくことをオススメします!
ここでまた少し余談!
下記記事では、「A lot of」「A bunch of」、「たくさんの…」の表現方法をご紹介しています!いくつか表現方法が存在するので、それぞれの使い方を学んでいきましょう♪♪
5.発音が同じでも意味が異なる単語はたくさんある
今回学習した「it’s」と「its」の違いをおさらいしましょう。
「it’s」は「it is」または「it has」の省略形
「it is」の省略形として「it’s」が使われている場合は、「それは〜です」という意味を示す。「it’s」が「it has」の省略形の場合は現在完了形であり、継続、完了・結果、経験のいずれかの意味を示す。
「its」は「it」の所有格で、「その、それの」という意味
所有格とは「私の、あなたの、彼の、この」のように、その後に続く名詞を修飾するもの。
今回ご紹介した例文を、オンライン英会話や英語の資料を読む際にぜひ活用してみてくださいね。
大学時代にフィリピンで英語留学を経験し、オンライン英会話を約4年間継続。メーカー勤務ののち、2020年よりフリーランスのライター・英日翻訳者として活動。英語学習関連やビジネス分野のほか、大学で化学を専攻し環境に優しい材料について研究したことから、環境問題の執筆・翻訳も行う。趣味は語学学習、旅行、読書など。現在はオンライン中国語を利用して中国語を学習中。世界中を旅してその土地の食を楽しんだり、さまざまな国の人と話したりすることが夢です。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.