「英語には敬語がない」なんて聞いたことがある人もいるかもしれませんね。
しかし、これは半分本当で半分は嘘。
確かに日本語の敬語ほど種類はありませんし、通常の話し言葉との違いも大きくありません。
また、使われる場面も日本語よりは限定されていると言えるでしょう。
でも、実は、英語にも日本語の「敬語」に当たるような、丁寧なニュアンスがあるんですよ。
しかも、日本語に丁寧語や謙譲語などと種類があるように、英語でも丁寧レベルの差があるんです。
今回はそんな英語の敬語、つまり丁寧なニュアンスの英語表現についてご紹介していきます。
これを知っておけば、英語で話すときに相手に不快な思いをさせずに済むかもしれませんよ。
英語で敬語を使うときとは?
まずはどんな場面で敬語・丁寧なニュアンスを使うのかを、ご紹介します。
特にビジネスシーンでは、英語でも日本語と同じように丁寧な表現で話すのはとても重要です。
でも、どの程度の関係なら丁寧なニュアンスで話すのかは、日本とは異なる部分もあるんです。
日本の場合とも比較しながら、英語で敬語を使うときはどんなときなのかをみていきましょう。
知らない人と話すとき
日本語でもそうなように、英語でも全く知らない人と話すときは、丁寧なニュアンスを使います。
日本語よりもややくだけていることはありますが、友達や家族と話すよりは、距離のある表現を使うのです。
たとえば、ショップやレストランの店員、駅員、知らない人に道を尋ねる時などがそれに当たります。
また、初対面の場合も丁寧なニュアンスで話すことも。
ただ、初対面の場合でも相手が初めて会う同じ学校の学生だとか、明らかに上下関係などが発生しない関係性なら、あまり下品なスラングを使わないくらいで、普通の話し方をします。
この辺りも、日本とそれほど変わりませんね。
英語圏の場合は、学校の先輩・後輩のような概念はほぼないので、たとえ上級生であっても、敬語で話す必要はほとんどありません。
ただ、それがビジネスシーンとなると、少し様子が変わることもあります。
かなり役職が上の上司相手に話すとき
英語ではただ年齢が上なだけなら「目上の人扱い」はあまりしません。
しかし、職場で自分よりも役職が上の人に対しては、やはり英語でも丁寧な言葉遣いで話します。
役職が上と言っても、毎日職場で会ってたくさん会話をするような相手なら、それほど畏る必要はありません。
そういう相手とはファーストネームで呼び合いますし、ビジネスの場にふさわしい言葉選び、要するに下品な言葉遣いや極端なスラングを使わないなら、普段どおりの英語で話します。
具体的には、日本でいうならチームリーダーや係長、課長レベルくらいまでなら、英語ではフランクな話し方をしても問題ありません。
しかし、部長や専務、社長となると、丁寧なニュアンスをつかう……といった感じですね。
心の距離も重要なので、例えば役職がかなり上の人とでも、毎日会って談笑する仲で、それが許されるムードがあるなら通常どおりの英語を使います。
ただし、日常的な会話をしているときはそれでよくても、仕事の話をする時には丁寧な話し方をする必要があることも。
そのあたりは、その場の雰囲気や相手との距離感をしっかり見極めることが重要です。
取引先など他社の人と話すとき
当然ながら、英語で会話をする場合も、取引先など他社の人と話すときには丁寧な言葉遣いで話します。
こちらも相手との関係性によりますが、相手が顧客となる場合はかなり丁寧な表現を使います。
もう何年も知っている仲なら、スモールトークは日常と変わらない言葉遣いで行うでしょう。
しかし、ビジネス上の取引の話や意見交換となると別です。
やはりその場合は丁寧な表現をつかうことになります。
学校の先生などと話すとき
義務教育の間は、学校の先生に対してはやはり丁寧な言葉遣いをします。
それ以降は、その学校の雰囲気や先生との距離感で、どんな英語を話すかが決まるでしょう。
専門留学・大学留学をする人は、先生に対しては最初は丁寧な表現を使った方が安全です。
徐々に様子を見ながら、丁寧さのレベルを落としても構いませんが、友達と話すような距離感で話すことはあまりありません。
語学学校の先生だと、もう少し距離感が近くなります。
生徒の中には、友達と話すような感覚で先生と話している人もいます。
語学学校の場合、先生の方が自分よりも若いということもよくあることなので、日本人的な感覚でも、友達と話すような感じで話してしまうこともあるでしょう。
語学学校の場合は、生徒達がまだ英語が不完全だという問題もあり、万が一失礼な話し方をしても、怒られることはありません。
ただし、いつも適切な話し方を教えてもらえるとは限らないので、もしも失礼な物言いをしたときには、訂正してもらうようにお願いしておくのが得策です。
ここで少し余談!
「お疲れ様」って英語でどう表現するのでしょうか。
そんな「お疲れ様」に関する記事を載せておきます。気になる方はぜひチェックしてみてくださいね!
英語で言う「敬語」や「丁寧な表現」とは一体なにか
ここまで、英語ではどんな相手に対して丁寧な表現で話すのかをご紹介しました。
でも、場面だけがわかっても、英語での「敬語」「丁寧な表現」がどんなものかがわからなければ、使いこなせませんよね。
では、どういう風に話せば丁寧になるのかというと、そのポイントは下記の3つに絞られます。
・直接的な言い方をしないこと
・現在形より過去形の方がより丁寧になる
・フォーマルな表現(堅い単語など)を使う
では、1つ1つ詳しくご説明していきます。
直接的な言い方をしないこと
丁寧な表現が必要な場合、直接的な言い方はあまり好まれません。
例を見てみましょう。
1)メールをチェックしてください
直接的な表現:Please check the email.
間接的な表現:I was wondering if you could check the email.
2)コーラが欲しいです。(レストランなどで)
直接的な表現:I want a coke, please.
間接的な表現:Could I have a coke, please?
3)あなたには賛成できません。
直接的な表現:I don’t agree with you.
I disagree with you.
間接的な表現:I’m afraid I have another opinion.
失礼ながら、私には他の意見があります。
I think we may have different points of view. 私たちは別の見方をしているかもしれません。
といった感じですね。
なんでも“please”をつければ丁寧というわけでもなく、”please”をつけただけでは、まだまだ丁寧さが足りない場合もあります。
また、“agree”「同意」という単語を使うと、たとえその周りが丁寧だったとしても、反対意見を言うときには、やはり直接的に感じるので、やんわりと別の考え方をしていることを伝えるのがスマートです。
現在形より過去形の方がより丁寧になる
現在形でも丁寧表現はありますが、過去形にするとより丁寧になることが多いです。
こちらも例をいくつか挙げてみます。
1)窓を開けてください
現在形:Can you open the window, please?
過去形:Could you open the window, please?
2)後で電話をしてもらえないかと思っているのですが
現在形:I’m wondering if you can call me later.
If possible, can you call me later, please?
過去形:I was wondering if you could call me later.
If possible, could you call me later, please?
3)タバコを吸っても良いでしょうか?
現在形:Do you mind if I smoke?
過去形:Would you mind if I smoked?
これらの表現は、現在形でも割と丁寧な表現です。
ただ、この程度の丁寧表現なら、友達に使っても不自然ではありません。
しかし過去形のフレーズの方は、友達に使うとやや不自然だったり、固苦しく感じられることもあるでしょう。
英語では、過去形にするとより回りくどく、日本の婉曲表現のような感じになる傾向があるのです。
フォーマルな表現(堅い単語など)を使う
どんな単語や表現を使えばフォーマルになるのかは、ある程度勉強が必要です。
ビジネス英語の勉強をすると、そういった表現を習うことになるので、完璧に英語の丁寧表現を使いこなしたいなら、ビジネス英語を勉強することをおすすめします。
ここでは一例をご紹介します。
1)ごめんなさい
カジュアル:I’m sorry.
フォーマル:I apologize./ I would like to apologise.
2)質問があれば、いつでもご連絡ください
カジュアル:If you have any questions, please let me know.
フォーマル:Should you have any questions, please feel free to contact me.
2)は完全にカジュアルというわけではありませんが、例えばビジネス上のおつきあいで、そこそこ気が知れた人に使うような表現です。
これ以外にもたくさんフォーマル表現はあるので、ぜひビジネス英語を勉強してみてくださいね。
最後に少し余談!
ビジネスで英語を使う人の中に単語力でお困りの方がいるのではないでしょうか。
そこで今回はビジネスでよく使われる英単語について紹介している記事を載せておきます。気になる方はぜひチェックしてみてください。
まとめ
英語の敬語・丁寧表現は、日本語の敬語と比べればそれほど難しくはありません。基礎英語と丁寧表現のルールさえわかっていれば、すぐに使いこなせるようになるでしょう。
まずはなんでも”please”をつけるだけなのはやめて、過去形にしてみたり疑問形にしてみたりするところから始めてみてくださいね。
◇経歴
英日翻訳・校正、英会話講師など
イギリスの現地企業にて就業経験あり
◇資格
TOEIC935点
英検準1級
ケンブリッジ英検FCE合格
◇海外渡航経験
イギリス5年弱、グアテマラ6ヶ月、合計49ヶ国に渡航歴あり
◇自己紹介
国内外で活動するWebライター兼翻訳者です。これまで手がけた記事は数千件以上。翻訳経験は通算5年位になります。コロナ禍前は世界中を旅をしながら仕事をするノマドワーカーをしておりました。