イギリスを語る上で、ファッションは外せないでしょう。それは、単に『イギリス人がおしゃれだから』ではありません。
実は。私たちが当たり前だと思っているようなファッションの多くは、イギリスの歴史と関わりがあるからです。
ウェディングドレスの色として白が定番となったのは、イギリスのヴィクトリア女王が自身の結婚式で白いドレスを着用したからです。
さらにトレンチコートは、第一次世界大戦でイギリス軍のために開発された防水コートがはじまりです。
まさに、今日の私たちのファッションにも大きな影響を与えているイギリスのファッション。
いったい、日本のファッションとはどのような違いがあるのでしょうか?
人気のイギリスファッションブランド
イギリスにはさまざまな人気ブランドがあります。誰もが知る世界的に有名なラグジュアリーブランドもあれば、親しみやすいファストファッションやカジュアルウエアのブランドも充実しています。
これらをTPOに合わせて着こなすのが、 イギリス流です。
イギリスのファッションアイコン、キャサリン皇太子妃を見ても、それがよくわかるでしょう。今回はその中でも代表的なものを紹介してきます。
Burberry(バーバリー)
イギリスを代表するブランドといえば、バーバリーでしょう。
1856年に創立されたこのブランドは、>英国王室御用達(ロイヤルワラント)を何代にもわたって授けられているほどのブランドです。
19世紀後半には、農民が服に汚れがはねるのを防ぐための上着から着想を得たギャバジンという素材を発明し、特許を取得したことで話題になりました。
19世紀末のボーア戦争では、トレンチコートの前身となるタイロッケンコートを製造。第一次世界大戦時にはトレンチコートを開発し、英国陸海軍に採用されました。高級ブランドという優雅なイメージとは異なり、実用性と耐久性を追求した洋服づくりで、人気となりました。
そしてバーバリーといえば、チェック柄が印象的でしょう。誰もが一度は憧れたことのある、特徴的な柄ですが、これはもともとコートの裏地だったもの。1924年ごろにこのチェック柄もフィーチャーされるようになり、大ブームとなりました。近年では高級路線を強化する一方で、フレグランスやコスメにも力を入れ、人気を博しています。
Vivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)
イギリス・ロンドンといえばパンクファッションを連想する人も少なくないでしょう。その火付け役となったのが、ヴィヴィアン・ウエストウッドです。
デザイナーの名前を冠したこのブランドは、地球と王冠を組み合わせたロゴでおなじみです。
ヴィヴィアンはイギリスの伝説的ロックバンド「セックス・ピストルズ」のマネジャーもしていたので、日本ではロック音楽好きの方にもなじみがあるかもしれません。
1971年にオープンしたブティックから始まったヴィヴィアンのファッションの特徴は、パンクな組み合わせとタータンチェックです。服だけではなくバッグや小物、アクセサリーに時計や香水など、幅広いアイテムが展開されています。
Paul Smith(ポール・スミス)
男性にも人気が高いのが、ポール・スミスです。こちらも、デザイナーの名前を冠したブランド名になっています。1970年にセレクトショップとして始まった彼の店ですが、少しずつ自らデザインした商品を世に出していき、1976年のパリコレへの参加で一躍有名となりました。メンズファッションのイメージが強いブランドですが、ウィメンズや子供向けの展開もあります。イギリス首相の就任式のスーツに選ばれたり、
エリザベス女王からナイトの称号を受勲したりするなど、
その実力と知名度は折り紙付きです。
このブランドの特徴は、無地にワンポイントとしてあしらわれたカラフルなストライプです。こちらも他のブランドと同様に、ファッションだけでなく財布やかばんなど小物も多数展開しています。
イギリスの人気ファストファッション・カジュアルウエア
Primark(プライマーク)
イギリスで多く見かけるファストファッションの一つが、プライマークです。
イギリスでは多くの人がなじんでいるブランドですが、アイルランド発のファストファッションブランドです。日本でいうところのGUやしまむらのような位置づけのメーカーで、一般的にも浸透しているのですが、現地の人でも呼び方がバラバラなのが興味深いところ。「プライマーク」が正しい発音のようですが、「プリマーク」「プラマーク」「プリマルク」など、イギリス人でも好きな呼び方をします。イギリスでそれっぽい店の名前が出てきたら、プライマークだと思うと良いでしょう。
プライマークの特徴は、とにかく安価なこと。質は決して上等とは言えず値段なりですが、店舗数が多く、とっさに何か服が必要になった時などに大変役立ちます。また、「ハリー・ポッター」シリーズのような人気のキャラクターやメーカーとコラボすることも多く、安値でそれらのグッズを購入できると、人気を博しています。
Superdry(スーパードライ)
日本には上陸していないものの、イギリスでここの服を着ている人を目にしない日はないほどの人気を誇っているのが、スーパードライです。
「極度乾燥しなさい」という謎の日本語が書かれたファッションアイテムに、困惑した日本人も多いことでしょう。日本のビール「アサヒスーパードライ」から着想を得たというこの決め文句ですが、商標の関係で日本での店舗販売や公式な輸入はされていません。公式通販での購入のみが可能になっています。
このメーカーの特徴は、やはり不自然な日本語ロゴの数々です。イギリスでこんなにも日本語を目にする機会があるとは思わないほどです。意味を分かって着ている人は、あまり多くなさそうですが、服だけでなく帽子やかばんなどのアイテムも取りそろえています。そして、カジュアルブランドではありつつも値段は決して安くなく、ファストファッションとは言えません。最近は人気も下火になっているようですが、日本人としては気になってしまうメーカーです。
Top Shop(トップショップ)
イギリスを代表するファストファッションブランドといえば、トップショップです。残念ながら日本では店舗が完全撤退してしまっていますが、地元のイギリスでは現在も人気店として君臨しています。1964年に北アイルランドから始まったこのブランドは、手ごろな価格であるもののおしゃれな商品がそろっている、と定評があります。キャサリン皇太子妃も公務で着用し、話題となりました。イギリスのトップモデルであるケイト・モスがプロデュースしたラインなども人気で、定番のファストファッションブランドとしてイギリスで強い支持を得ています。
日本のファッション文化との違い
日本とイギリスのファッション文化には、違いがあります。日本人はイギリスというと、まるで雑誌や本から飛び出してきたかのようなおしゃれな人々が街を歩いていると想像するかもしれません。
しかし、イギリス人が普段のファッションにものすごく気を使っているかというと、実はそういうわけではありません。
イギリスのファッション文化ではTPOに合わせた服装と、メリハリが非常に重要視されていると言えるでしょう。
平均的に、イギリス人は日本人ほどファッションにお金をかけません。新品の服を買うよりも、古着屋で服を購入することが多く、若者の方がこの傾向が強いです。古着屋でいかにお気に入りの服を見つけることができるか、がイギリス人にとってのファッションセンスのバロメーターのようになっています。イギリス人はレトロな洋服を着こなすイメージがあるとすれば、古着屋を活用する文化からかもしれませんね。
また、TPOに合わせたメリハリをつけるのも、イギリスのファッション文化の特徴です。例えば、ただ大学に行くだけでかわいいスカートを履いたり、ヒールの靴を履いたりはあまりしません。大学はあくまでも学問のために行く場所、という意識が強いからか、とてもシンプルな服装の人が多いです。シャツにジーンズと上着、のようなスタイルがオーソドックスだと思います。
その一方で、ミュージカルを観劇しに行くときにはそうはいきません。女性であればヒールのある靴、男性であればジャケットは最低限必須、という空気があります。このようにカジュアルだったりシンプルさだったりが求められる場と、洗練された服装が求められる場が明確に分かれており、そのTPOに合わせたメリハリがイギリスのファッションでは求められます。
また、イギリスではあまり「人からどう見られるか」を気にした服を普段着る空気がありません。そのため、自分に似合っているかどうか、よりも自分が好きかどうか、で服を選ぶ傾向があります。自分たちの思い思いのファッションに身を包んで人々が闊歩する様は、見ていてなかなかに気持ちのいい光景です。
イギリスファッションのオシャレポイント
イギリスのファッションで気を付けるべきポイントは、気候です。
一日に春夏秋冬の四季をすべて経験する、とも言われているほどにイギリスの気候は変化しやすいです。この変化に耐えつつもおしゃれに見せるのが、イギリスファッションのおしゃれポイントです。
イギリスのファッションは実用性と機能性を重視したものから発展する系統のものが非常に多いです。例えば、冒頭で挙げたブレザーやトレンチコートなどはまさにその代表例です。環境を乗り越えるのにふさわしく、かつおしゃれに見せるのがイギリスファッションです。
例えば、イギリスでは雨が非常に良く降ります。しかし、イギリス人の多くは土砂降りの場合以外は傘を差しません。雨の日に大活躍するのが、フードです。イギリスの服には、フードが付いているものがとても多いです。私自身、購入したカーディガンにフードが付いていて驚いたのですが、使ってみてその必要性に納得しました。
日本ではフード付きの服というとパーカーやジャケット、あるいは雨がっぱ的なものを想像してしまうかもしれませんが、カーディガンやTシャツなど、意外なアイテムにもフードがついていたりします。それも、おしゃれなデザインのものが多いです。
他にも、雨で服が濡れることが多いからか、固くずれしづらい硬めの素材だったり、中にパットが入っていたりする服もイギリスには多いです。このように、気候環境に合わせつつもおしゃれさを忘れない。それがイギリスファッションのおしゃれポイントです。
まとめ
ここまで、イギリスのファッションについて紹介してきました。イギリスは歴史と文化がとても深い国なので、ファッションひとつとっても非常に奥深く、語りつくすことが難しいほどです。 イギリス発のブランドも多岐にわたって数多くありますし、日本と違って自由な服装を楽しむ人がとても多いです。
イギリス流ファッションでぜひ自分の好きなファッションを追求してみてください。
ただし、気候やTPOに合わせたファッションを心がけるのを忘れないでくださいね。
◇経歴
・都内私立大学の英米文学科に入学
・大学院にてイギリス文学を専攻し、修士号取得
・翻訳専門学校にて英日翻訳の基礎コース修了
◇資格
・TOEIC 890点
◇留学経験
イングランド・グロスターシャー大学夏期文化研修(大学夏期休暇中)イングランド・オックスフォードの言語学校(大学夏期休暇中)
◇海外渡航経験
カナダ・バンクーバー、カルガリー(部活)
アメリカ・ニューヨーク(旅行)
◇自己紹介
幼いころから英語が好きで、ディズニーとマザー・グース、NHK教育テレビで育ちました。小学2年生で「ハリー・ポッター」シリーズと出会い、それ以降は大のPotterhead道を突き進み、イギリス文学と文化研究にいそしみ続けています。物語がとにかく好きで、映画、ドラマ、音楽、小説などを通じて、日本にいながらして毎日英語を浴びています。
少しでも役立つ情報を発信できればと思っています。よろしくお願いします!