「one」や「it」、「that」といった代名詞は英語ではとても重要性が高く、関連の問題は入試英文法でも必ず押さえるべき基本と言われているほどです。
なかでも「one」と「it」 はよく使うわりに使い分けが難しく、多くの人がつまづきやすいポイントでもあります。
この記事では「one」と「it」の違いや使い分け方について、例文を交えながら詳しく解説していきます。
oneとitの違い
「英語は繰り返しを嫌う言語だ」と聞いたことはありませんか?
実際に、英文では一度文章や登場した人やものが再登場するときに「代名詞」と呼ばれる特別な言葉を使うのが一般的です。
「代名詞」のなかでも、「不定代名詞」は不特定の人やものを表すことば、「人称代名詞」はある特定の人やものを表す言葉のことを指します。それぞれの代名詞の例としては以下のようなものがあります。
人称代名詞の例:it(それ)、he(彼)、she(彼女)
中でも「one」と「it」は、どちらも「あるモノ」の代わりとして働くことができます。この2つはイメージが似ているせいか混同して使われやすいのですが、実は「one」と「it」には次のようなはっきりとした違いがあります。
it= 特定のものを指す代名詞= the + 名詞
例を挙げて説明しましょう。
AさんがBさんからペンを借りたいとします。Aさんは、Bさんが何本かペンを持っているのを知っていて、Bさんにペンを一本貸してほしいという話をします。
どれでもいいから一本 = 特定でない一本のペン = a pen
100万円のペン = 特定の一本のペン = the pen
Can you lend one to me?
どれか一本、私に貸してくれない?
Can you lend it to me?
その一本、私に貸してくれない?
「one」と「it」 のニュアンスの違いをご理解いただけたでしょうか?
どちらも「何か」や「あるモノ」を言い換えているのですが、それが「特定のもの」なのか、それとも「不特定のもの」なのかによって「one」と「it」 のどちらを使うかが決まってくる仕組みになっています。
ここからは「one」と「it」 のそれぞれについて、意味や使い方をより詳しく説明していきたいと思います。
oneの意味と使い方
「one」は「不定代名詞」です。「不定代名詞」は特定でないものを指す代名詞で、「a(an)+ 名詞」という意味合いとイコールになります。
特定でない、というのは「いくつかあるうち、どれでもいい」と言い換えることもできます。
たとえばお花が10本あって、そのうち1本を選ぶ場面を考えてみましょう。
ある女の子が10本の花を持っていました。
ある男の子が、女の子に「花を1本くれない?」と言いました。
上の文では、“can you give me a flower?”=「花を一本(”a flower”)、もらえますか?」と言っていますよね。
”a” は「10本あるうちのどれでもいいので、1本」という意味を持っていますので、この場合は女の子が10本のうちどのお花を渡しても大丈夫ということになります。
女の子は微笑んで、彼に花をあげました。
「one」は「a(an)+ 名詞」とイコールですので、”(She) gave him one” という文章から「彼女は10本あるお花のうち、特定でない1本(=a flower”)をあげました」という内容であることがわかります。
次の例文も見てみましょう。
このレシピにはにんじんが1本要るみたい。スーパーで買ってくるね。
この例文では、”one” = ”a carrot” として使われています。この ”a carrot” は、「スーパーに売っている人参であればどれでもいいから1本の人参」という意味になります。
また代名詞「one」を使うときに見落としがちなポイントとして、「one」には「可算名詞にしか使えない」という特徴があります。
たとえば ”milk”(牛乳) は不可算名詞(数えられない名詞)です 。”a bottle of milk” という風に、可算名詞である ”bottle” (ボトル)と組み合わせれば1本2本・・・と数えることができますが、 ”milk” だけを使う場合には数えることができません。
さて、この ”milk” を使った会話の中で、代名詞「one」を使うとどうなるか見てみましょう。
(1)加算名詞 ”a bottle of milk” を使った会話の場合
B:Yes, I bought one.
A:牛乳は買った?
B:うん、買ったよ。
(2)不加算名詞 ”milk” を使った会話の場合
D:Yes, I bought one.
・・・✕ ”milk” は不可算名詞なので、「one」は使えない
「one」は「a(an)+ 名詞」の代わりに言う表現ですので、”milk” や ”water”、”music”のような不可算名詞には使うことができません。
ちなみに不可算名詞の繰り返しを避けたい場合には「単語を省略する」「不定量の代名詞(”some”など)を使う」という方法を取ります。
たとえば先程の例で「one」が使えなかった会話の場合、次のようなやり方を取れば正しい文章となります。
D:Yes, I bought some.
C:牛乳は買った?
D:うん、買ったよ。
「one」の特徴をまとめると、
・「特定でないひとつのもの」を指す
ということになります。
itの意味と使い方
「one」と混同されやすい代名詞である「it」について、詳しく見ていきましょう。
「it」は「特定できるなにか」を指す代名詞で「人称代名詞」という種類の代名詞です。「one」は「a(an)+ 名詞」の代名詞でしたが、「it」は「the + 名詞」の代わりとして働きます。
冠詞「the」が持つ「1つに決まる」「唯一無二の」というニュアンスが、そのまま「it」のニュアンスとして受け継がれています。
娘がお人形を失くしたの。探してあげないと。
この例では、it = her doll(彼女のお人形)となっていますね。お母さんは、失くしてしまったお人形そのものを探そうとしているので、「it」を使っています。
もし、失くしたお人形そのものではなく同じ品番やシリーズの別のお人形を買おうとしていたりするのであれば、「it」は使いません。なぜなら、失くしたお人形は世界で唯一の「娘が失くした、”あの”お人形」であり、いくら見た目が同じでも、新しく買った人形は失くした人形とイコールではないからです。
また、可算名詞と不可算名詞のどちらを受けることができるのも「it」の特徴です。
「it」の特徴をまとめると、
・「特定のもの」を指す
ということになります。
その他の代名詞
「one」と「it」に似ている代名詞についても見ていきましょう。
ones
「ones」は「one」の複数形です。
「one」が「a(an)+ 可算名詞」とイコールだったので「ones」は「可算名詞 + s(複数形)」とイコールになる、と思いきや単純にそうと言えないのが「ones」の難しいところです。
「ones」は、「特定でない複数のもの」に「修飾語句がついている」という場合のみ使うことができます。
修飾語句が付いていない場合は「特定されていない複数のもの」を表す代名詞の「some」を使って重複を避けるのが普通です。
トムがボールを落としたから、私がいくらか分けてあげたの。
では、「ones」の使い方を具体例で確認していきましょう。
ある箱にペンがたくさん入っていて、そこから複数のペンを取り出してもよい、という状況があるとします。
You can pick pens.
この箱には何色かのペンがあります。
あなたは複数のペンを取り出すことができます。
「特定でない複数のペン」を選ぶという内容で、かつ「pens」が重複して登場していますので「pens」を「ones」に換えても良さそうな気がしますね。そこで次のように代名詞に変えて文章をつくってみます。
You can pick ones.
この箱には何色かのペンがあります。
あなたは【ones】を取り出すことができます。
実際には、このように「ones」を使うことはできません。「pens」に何も修飾語句がついていないからです。
もし「pens」に「red(赤い)」「long(長い)」といった修飾語句が付いていれば、次のように「ones」を使って言い換えることが可能になります。
あなたは複数の赤ペンを取り出すことができます。
あなたは複数の赤ペンを取り出すことができます。
”red pens” には「赤い」という修飾語句がついているので、この場合は「ones」を代名詞として使うことができるというわけです。
that
「that」は形容詞・関係代名詞・接続詞など色々な役割を持っていますが、「one」や「it」と同様に代名詞としての役割も持っています。
代名詞としての「that」は指示代名詞という分類となり「あれ」という意味合いで使われます。
あれが見えますか?
指示代名詞は特定の何かを指す代名詞のことなので、「that」には「the + 名詞」という意味合いがあります。
ここまでは「it」と同じですが、「it」はすでに話に出てきた「何かそのもの」=それ以上説明を加える必要はない、と考えられてしまうため、修飾語句をつけることができません。
ところが「that」は、”that of 〜” という形で修飾語句を受けることができます。そのため特に比較級の文章で重複を避けるため、代名詞の「that」がよく使われます。
アジアの気候はヨーロッパのそれより湿度が高い。
the one
不特定名詞の代わりに使う「one」に、特定を意味する定冠詞「the」がついた「the one」は、「one」と「it」の使い分けをわかりにくくしている度でいえばナンバーワンの存在かもしれません。
「the one」は日本語で「〜のやつ」と訳すのがぴったりな表現で「やつ」にあたるのが「one」の部分です。特定のなにかを指しているわけではなく、ぼんやりとした「何か」を指していますよね。
「〜のやつ」という言い方は、それ自体が特定のものではない(=「one」のニュアンス)けれど、すでに以前話に出てきたりしてお互いがその存在を認識できる(=「the」のニュアンス)ときに使います。
日本語で「〜のやつ」というときを思い浮かべてみてください。”昨日の帰り道で見かけた” やつ、”今日の授業で先生がいってた” やつ、というように、「〜の」にあたる部分の説明が必ずセットになっているかと思います。
英語でも、「必ず修飾語句が後ろにくっついてくる」というのが「the one」の大きな特徴になります。
あの本面白かったよね、ほら、彼女が勧めてたやつ。
これは私が買いたかったやつじゃない。
まとめ
「one」と「it」の違いや使い分け方について詳しく解説してきました。
基本的に「one」は「a(an)+可算名詞」、「it」は「the+名詞(可算/不可算)」という違いがある、ということを押さえておくことがまずは大切です。
「a(an)」と「the」の違いも日本語話者にとってはなかなか理解しにくい分野ではありますが、この記事の解説も参考にしつつ、毎日の英語学習を通して身につけていただければと思います。

I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.