『IT/イット “それ”が見えたら、終わり』や
『ジョーカー』。
最近になって、ピエロをモチーフにした映画が立て続いて公開されましたね。
ところで、みなさんの中のピエロのイメージってなんですか。
ポチっとした赤い鼻、白塗りの顔、縞々のボタッとしたズボンに、ボタンの大きいジャケット?
ピエロはよくサーカスの会場でジャグリングや玉転がしをして、お客さんを喜ばせている感じですね。
欧米圏のドラマや映画などを観ていても、サーカスや遊園地、子供の誕生日パーティーなどのシーンでは必ずといっていいほど出てくるピエロ。
本来ならひょうきんな仕草や、突飛な芸で子供から大人までを笑いの渦に巻き込ませ、大人気のキャラであるべきはずの彼らですが、最近は何かと「怖い」イメージを持たれることが多いように感じます。
中には「ピエロ恐怖症」になる人の人口も徐々に増えてきて、ピエロの姿をして外を歩いただけで捕まってしまった人もいるとか。
そんな「面白い」部分と「怖い」部分を持ちつつも、人々に強い印象を残すピエロについてここではみていきましょう!
ピエロって英語?
そもそもの話、ピエロって英語なのでしょうか。
もしピエロとそのまま言ったら、英語のネイティブスピーカーに通じるものなのでしょうか。
実験してみましょう。
さっそくネイティブキャンプのフリートークを使って、イギリスとアメリカのネイティブ講師に言ってみました。
Recently, movies about pierrot are popular. Aren’t they?
最近、ピエロの映画が流行っているよね?
結果はものの見事に撃沈。
とても優しく丁寧に「もう一回言ってくれる?」って言われてしまいました(笑)
そう、ピエロのつづりはpierrotで、フランス語の単語です。
もともとはイタリアの喜劇劇団の舞台に登場する役名から作られた名前で、のちにサーカスなどで滑稽なパフォーマンスをして人を楽しませる役者を指すようになりました。
ではピエロは、英語ではなんと言ったら通じるのでしょうか?
答えは、clownです。
日本人の苦手としているLサウンドが入ってくるので、気を付けて発音しましょう。
でないと、crown(王冠)と勘違いさせてしまうかもしれません。
ピエロとクラウンの違い
先ほどpierrotは英語圏ではclownと言う、と説明しましたが、実を言うとピエロとクラウンにも微妙な違いがあることをご存じでしょうか。
「そんなの一緒でしょ?」という方に一つクイズです!
Q:
世界一有名といっても過言ではないハンバーガーショップ・マクドナルドのマスコットキャラクター ロナルド・マクドナルド君は果たして、ピエロでしょうか?クラウンでしょうか?
A:
クラウンです!
「なんで?」と思った方は、一番近くのお店にいって店先においてある彼の像をじぃ~っと見てみてください。
注目するべきは、目の下になります。
何か重要なものがないことに気が付くでしょう。
そう、涙のマークです。
実は、ピエロとクラウンを一番簡単に見分ける方法は、この涙のマークがあるかどうかなのです。
この豆知識、知ったからにはさっそく人に話してみたいですよね。
欧米発祥のピエロ、クラウンですが、もしかしてこのことを知らない欧米の方も多いのでは。
そんなに人たちにスマートに教えてあげられたら驚かれること間違いなしです!
(例文)
The simplest way of recognizing a pierrot and a clown is to check whether it has a teardrop-shaped paint under its eyes.
ピエロとクラウンを一番簡単に見分ける方法は、涙型のペイントが目の下にあるかどうかです。
次では、ピエロとクラウンの違いを詳しく見ていきましょう。
ピエロにクラウン、ジョーカーにハーレクイン・・・道化師にも色々な種類がある?!
舞台でふざけたジェスチャーやアクションで自分やみんなをいじって楽しませ、場を盛り上げる道化師。実はとても歴史が長く、深い世界なのです。
その一端をみなさんと一緒に覗いてみましょう。
クラウン
clownの語源は明確にはわかっていないものの、一説ではスカンジナビア語のclumsyからきているようで、「まぬけな田舎者」を指します。
中世ヨーロッパで、クラウンは為政者や特権階級の人間のお抱えのコメディアンとして、喜劇やギャグを生業にしていました。
王のお抱えであっても笑いのためなら王を嘲笑することも許された例外的存在で、地位は低いものの特別な特権を与えられていたと言います。
近代になるとサーカスで活躍するクラウンのイメージが主流となってきて、今でこそ私たちが想像する白塗りの化粧に赤く塗った鼻と口、奇抜な衣装と髪型などの形になります。
彼らは観客相手に大道芸やマイム、コントを見せて客を湧かせ、時には客いじりもしてみせたそうです。
(英例文)
A clown is a person who performs slapstick or mines in a comedic manner especially in a circus.
クラウンとは、主にサーカスでジャグリングやパントマイムを面白く演技する人のことです。
ピエロ
ピエロは17世紀、フランスで活躍していたイタリアの旅団による喜劇から有名になった役で、クラウンの中の1ジャンルとなっています。
ピエロの特徴は先ほども触れたように涙のマークー「悲しみ」を背負っているところです。
涙のしずくのメイクは、観客までいじるクラウンとは違って、自らの「愚か者」ぶりをひたすら馬鹿にされることに対する悲しみを表しているとか。
その他にも、ピエロの役が生まれた時代背景から、ピエロはフランス革命あとの不安定な時代に生きる庶民の嘆きや悲しみを表しているとも言います。
ちなみに同じイタリア喜劇には「アルルカン」という道化役がいます。
この役は菱形のパターンがついた色鮮やかな衣装と猫の仮面をつけていて、欲深く、ずる賢いトリックスターとなっています。
劇中では、しばしばピエロと愛人を巡って小競り合いを起こしたりもするとか。
ちなみに、このアルルカンの英語読みが
「ハーレクイン」。
この名前、どこかで聞き覚えがある人も多いはず。
そうです、2016年公開の『スーサイド・スクワッド』であの個性的なビジュアルが有名になったハーレクインですね。
彼女はバットマンシリーズのキャラの一人で、バッドマンの宿敵・ジョーカーが率いる悪役(ヴィラン)グループのメンバーでもあります。
次はハーレクインを再びメインにした映画が公開されるほど人気の女性キャラの名前が、まさか男性道化師から来ていたなんて驚きですね。
私はてっきり、あのイケメンハイスペック男性と恋に落ちるロマンスノベルの方から来ていると思っていました(笑)
(英例文)
You can notice teardrop-shaped paints under pierrot’s eyes which express his sorrow and mortification of being laughed and mocked.
ピエロの涙のしずくマークは笑われ、馬鹿にされることに対する悲しみや屈辱を表している。
ジョーカー
ハーレクインの話がでてきたということで、ジョーカーも確認してみましょう。
ジョーカーというとだいたいの人は、トランプのババ札を真っ先に思い出しますよね。
そこに描かれているのは、尖端のとがった靴をはき、ポンポンのついた帽子、不気味なメイクをした道化者の姿。
また映画『ダーク・ナイト』でもおなじみ、今やバットマンと並ぶほど人気の悪役キャラ・ジョーカーもピエロを彷彿させるメイクを好んでしており、数あるうちの公式設定の中ではサーカスの一団の一人だということもあることからしても、ジョーカーという名前はクラウンやピエロとかなり関係が深いものだということがわかります。
一方、トランプのジョーカーは一説ではジェスターと呼ばれる宮廷道化師からきているとされ、クラウンのところでも触れたように、時に宮廷道化師は場を盛り上げるためなら王様や女王などの特権階級の者よりも上に立つことができたので、トランプの札の中でも無敵な位置を得ているのです。
一度、自分がもっているトランプのジョーカーがどんな姿をしているのかまじまじと見てみるのも面白いですよ。
ちなみにトランプという呼び方はピエロ同様、欧米圏では通じないのcardやplaying cardと呼びましょう!
ここで少し余談!
ジョーカーなどといえば、ハロウィンに仮装する人がたくさんいますよね!
そこで、今回は関連させて、ハロウィンの仮装に関する記事を載せておくので、気になる方はぜひ読んでみてくださいね!
「クラウン(ピエロ)恐怖症」って?
時々、ドラマや映画やフィクションででてくる
「クラウン恐怖症(Coulrophobia)」の人。
最初聞いた時は「は?何それ、冗談でしょ?」となりましたが、これ実は高所恐怖症や閉所恐怖症などと並んで、欧米圏では7人に1人はいる案外ポピュラーな恐怖症らしいです。
なんとあの、ジョニーデップも「ピエロ恐怖症」に苦しんでいるとか。
(英例文)
Coulrophobia is the clinical term referring to a person who has a strong fear or an abomination to clowns.
クラウン恐怖症は、クラウンに対して嫌悪感や恐怖をもつ人のことをさす医療用の用語です。
ピエロ恐怖症をもつ人はピエロ(クラウン)などをばったり見かけたり、映画やドラマなどで登場したりすると、動機が早くなり、目がくらくらして、気を失ってしまったりするそうです。
たかがピエロ、されどピエロですが、確かに実際にピエロがこっちに向かってきたりすると恐怖症を持っていなくても一瞬ビクリとしてしまいますよね。
実際に近年では各国でピエロの恰好をして通りすがりの人を怖がらせるというドッキリも流行っているらしく、どんどんとピエロ(クラウン)が「面白い」存在から「怖い」存在として認識されつつあります。
Top 15 Scariest Clown Sightings Videos
こんなの現れたらクラウン恐怖症もおちおち道も歩けず、たまったもんじゃありませんよね。
ちなみにアメリカでは世界のクラウンフォビアの方たちを応援・支援するサイトがあり、 You are not alone. We are the official anti-clown website since 1996. とサイトスローガンを掲げています。
傍目から見たら深刻さがはかりにくい「クラウン恐怖症」ですが、このサイトを見ると本気で苦しんでいる人がいることを痛感します。
決してイタズラでピエロのぬいぐるみなど渡したりしないようにしましょう!
またまた少し余談!
また怖いといえば…お化け屋敷!
お化け屋敷に関する記事を載せておきますので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね!
まだまだたくさんいる!「いい」ピエロたち!
他にも近年の顕著な「ピエロ=シリアルキラー」というイメージを払拭し 「みんなを笑顔にする」 という元々の役割を喧伝すべく、世界のクラウン団体の人々も働きかけています。
日本にもクリニクラウン協会という小児医療施設を訪問して子供たちを笑顔にすべく活動しているクラウンたちもいます。
なので冗談半分でクラウンを「血まみれの殺人鬼」にしたてるのは、そのような子供たちの希望を壊してしまうことになるので控えておいた方がいいでしょう。
まとめ
いかがでしょうか。
この記事ではピエロの英語での言い方や、ピエロの歴史、ピエロの見分け方についても見てきました。
この記事を読んだ前と後とで、みなさんのピエロのイメージが少しでも深く、またガラッと変わってくれれば幸いです。

日本の大学卒業後、アメリカの大学でデザインについて学びました。 その後帰国しアパレルメーカーのデザイナーとして勤務。外資系だったため、月の半分は海外出張という多忙な日々を送っていました。 その後オーストラリア人と結婚しオーストラリアに移住。現在は2児のママをしながら自宅でデザイナー兼ブログライターをしています。 海外でのリアルな生活事情や、ご当地グルメ、文化、もちろん英会話についても役に立つようなネタを書いています。 趣味は、ギター。ロックが大好きでよく家族で野外フェスに出かけます。