韓国語で迷信は「미신(ミシン)」と言い、日本と同じ様に古くから言い伝えられている迷信が沢山残っています。
若い世代はあまり気にしなくなってきているとは言え、未だに迷信を信じ迷信に倣って生活している人たちが多いのも事実です。
この記事では、近年のK-POPやドラマなどの華やかな世界だけでない古来より受け継がれている韓国の文化に、迷信という側面から触れてみたいと思います。
韓国の様々な迷信
ここからは韓国の迷信とその迷信が生まれたとされる由来を詳しくご紹介していきます。
日本と同じ迷信もあれば、韓国独特のものもあり、その成り立ちからも歴史や文化の違いを感じる事が出来ます。
恋人に靴をプレゼントしてはいけない
これはとても有名な迷信なので、韓国好きの人なら知っているかもしれません。
恋人に靴を贈ると、受け取った恋人はその靴を履いて逃げていく、または他の人の元へ去って行ってしまうというものです。
どこから始まった迷信なのか起源ははっきりせず、もちろん科学的な根拠は少しもありません。
しかし、思いの外若い世代にまで浸透している迷信で、未婚男性への「どんな迷信を信じているか」というアンケート調査では36.6%がこの迷信を選び堂々の1位を獲得。未婚男性の3人に1人がこの迷信を信じていているという結果が出ました。
食卓の角に座って食べてはいけない
これには2つの由来があります。
ひとつは、物には全て「氣」が存在し、食事をする際に発生する悪い氣は食卓の角を通って外に排出される為、角に座って食べると悪い氣を取り込んでしまい体調を崩すというもの。
もうひとつは、貧しかった時代に裕福な主人の食卓へ乞食が来て、食卓の角で物乞いをする様子を連想させることから、この先食べるのに苦労する運命になるというものです。
どちらが本当の由来か定かではありませんが、食卓の角は座りずらく姿勢も悪くなりがちですので、座らない・座らせないのが無難ですね。
ブーケを受け取って6ヶ月以内に結婚できなかったら3年間独り
結婚式のブーケトスに関する迷信ですので、比較的新しい説です。
ブーケトスの習慣が海外から渡ってきた頃は、ブーケとともに新婦の幸せの「氣」を受けた友人が新婦に続いて結婚を掴み取るという海外とほぼ同じ解釈だったのですが、いつのまにかそこに韓国オリジナルの有効期限が加わりました。
このことから、韓国ではブーケトスではなく、今後結婚することが決まっている女性にブーケを直接手渡しするスタイルが多く取られています。
貧乏ゆすりをすると福が逃げる
日本でもあまり良いイメージの無い貧乏ゆすりですが、その理由は単に一緒にいる人を不快にさせるからですよね。
一方韓国では、朝鮮時代のとある昔話に由来しています。
家に泊めてもらった旅の占い師がその家の主人を見て「貧乏ゆすりのせいで本来の福が逃げてしまっている。貧乏ゆすりをやめたらあなたはお金持ちなれる。」と言い片方の足を使えなくしてしまったところ、その主人はとんとん拍子に成功し富を得る事になったという話です。
しかしながら、最近では座りっぱなしのデスクワークの際、下半身の血液循環を助ける働きが期待できるとして、むしろ貧乏ゆすりは体に良いという意見も出てき始め、徐々にこの迷信は薄れつつあるようです。
数字の9への嫌忌
日本では数字の「9」はその発音から「苦(く)」を連想させる為タブーとされがちですが、韓国では全く違う意味で嫌われています。
韓国では、10,20,30などが完全な数であり、その1つ手前の9が付く数を不完全な数・未達の数と考え、19,29,39歳など1の位が9の年齢の年には良くない事が起こると言われているのです。
その年は事故や病気に特に注意する必要があり、信仰の強い人だと結婚や引っ越しなど大きなイベントは9の付く歳は避けて執り行うほどです。
扇風機をつけたまま寝ると死ぬ
扇風機が発売された当初、多くの人が信じていて社会現象にまでなった迷信です。
・風に直接あたっていると呼吸困難になり死に至る
・風で巻き上げられた埃が呼吸器へ入り込み鼻炎や喘息を引き起こし最悪死ぬこともある
・扇風機が風を起こす際、一瞬真空状態を作り肺に悪影響を与え死ぬ
等々、当時はニュースでも取り上げられました。
研究者によって検証され今では単なる迷信だったと判明していますが、年配の方など未だに信じている方もいるそうです。
これは迷信というよりは、どちらかというと都市伝説といった感じですね。
試験に関する迷信
試験の前にわかめスープを飲んではいけない
韓国のわかめスープは「미역국(ミヨクッ)」と言い、普段から親しまれているポピュラーな食べ物です。
しかし、試験前となると一転、受験生から忌み嫌われる食べ物になってしまうのです。
以前、韓国語の慣用句に関する記事でも触れましたが、韓国では試験の前にわかめスープを飲むと試験に落ちると言われているからなんです。
理由は、わかめがヌルヌルしていて「滑る」=「落ちる」を連想させるから。
韓国では、誕生日の朝には絶対欠かす事のできないわかめスープですが、試験と誕生日が重なった場合のみ、試験が終わってから飲ませるのが韓国オモニ(母)の愛情です。
試験の日には엿,떡,죽
反対に試験の日に食べると良いとされているものが、「엿」「떡」「죽」です。
「엿(ヨッ)」は日本語で飴ですが、普通の飴玉よりも柔らかく粘り気があります。飴とキャラメルの間くらいの堅さでしょうか。噛むと歯にくっついて取るのが大変なくらいです。
韓国語で「くっつく」は「붙다(ブッタ )」と言いますが、この「붙다」には「試験に合格する」という意味もある事から、受験生に人気の食べ物になりました。
「떡(ットㇰ)」は餅のことです。「엿」と同じで、粘り気があり、くっつくと言う意味から試験前に好まれる様になりました。
3つめの「죽(チュㇰ)」は「お粥」です。アワビ粥やかぼちゃ粥、小豆粥など韓国ではお粥の種類も豊富で幅広い世代から親しまれ、お粥専門店もたくさんあります。
この「죽」という単語には、「ずらっと・ずっと」という意味もあり、転じて「ずっと答案を書き続けられる」という事から試験前に好まれるようになりました。
単なる語呂合わせのようですが、実際に胃の活動が抑制された極度の緊張状態でもお粥ならば胃に負担を与えないので、案外理にかなっているのかも知れません。
ここで少し余談!
「韓国語をいくら勉強しても中々伸びないなあ」とお悩みの方、ぜひ下記記事をご覧ください!何か解決の糸口が見つかるはずです!
引っ越しに関する迷信
손 없는 날
「손 없는 날(ソン オンヌン ナル)」この「손」は手ではなく鬼神を意味するので、直訳は「鬼神の居ない日」となります。
この日は鬼神達が空へ出かけると言われている日で、鬼神に新居がバレない様に留守中にこっそり引っ越そうというわけです。
「손 없는 날」は陰暦を基準に計算される為、毎月日にちが変わります。
この日は引っ越し費用が通常の日の2倍近く跳ね上がるにも関わらず、予約を取るのが大変な状態。それだけ信じている方が多いという事ですね。
引っ越しはまず炊飯器から
日本と同じく韓国の主食も「米」です。
そのお米を炊く「炊飯器」は家の中で最も重要な物と考えられ、どんな家具や家電よりも先に炊飯器を新居に持って入ります。
その炊飯器にはたっぷりのお米を入れておくことも忘れてはなりません。
これには、これから新居で毎日十分なお米を食べられるようにという意味があります。
あいにく前出の「손 없는 날」に引っ越しする事が叶わなかったという人は、「손 없는 날」に炊飯器だけまず先に引っ越しさせるという方法を取ります。
家具一つないフローリングの真ん中に炊飯器がポツンと置いてある姿はなかなかシュールな光景です。
新築・引っ越し祝いにはトイレットペーパーか洗剤を
韓国では、新居に越した後に同僚や友人を家に招いて行う「집들이(チプトゥリ)」という新居のお披露目会を行います。
招待された側は新築祝いを持って行くわけですが、新築祝いにはトイレットペーパーか洗剤という習慣があります。
トイレットペーパーはスルスルとほどけ水に溶ける事からこの先出会う問題がスムーズに解決し消えて無くなるように、洗剤は少しの液体から泡がどんどん増える様子から幸せやお金が泡の様に増えるように、という意味を持ちます。
夢に関する迷信
豚の夢を見ると幸運が訪れる
韓国では豚の夢を見ると幸運が訪れると言われていて、豚の夢を見てすぐに宝くじを買いに行くと当たると信じられています。
豚の夢を見る確率もそんなに高くはないでしょうが、そこへ宝くじ当選となると相当な確率ですので、かなり信憑性の低い迷信と言えます。
それにもかかわらず、以外にも信じている人が多いこの迷信。韓国では古来から夢に関する迷信がとても多く、夢占いや予知夢といった夢にまつわる迷信を信じる傾向にある様です。
태몽
「태몽(テモン)」は漢字で 「胎夢」と書き、赤ちゃんの性別や未来を示唆する夢のことを言います。
広く知られているものには、寅や赤唐辛子の夢を見ると男の子、へびや花の夢なら女の子が生まれると言うものですが、実際にはもっと細かく各動植物の夢によって男女が分けられています。
妊活中の女性や妊婦の間では、どんな夢を見たかという話題でとても盛り上がります。
日本と同じ迷信
同じアジアでしかもお隣ですから、全く同じ迷信も存在します。日本と同じ迷信や言い伝えには主に以下のものがあります。
・夜口笛を吹くと蛇が出る
・数字の4のタブー
・血液型や干支での相性
・夜に爪を切ってはいけない
・名前を赤字で書いてはいけない
・北枕で寝てはいけない
・敷居を踏んではいけない
私が知っているだけでもこれだけあるのですから、もしかしたら調べるともっともっと出てくるかも知れません。
ここでまた少し余談!
下記記事では、韓国語の助動詞を勉強するうえでの注意点をご紹介しています!ぜひ参考にしてみて下さい♪♪
おわりに
日本の迷信もそうですが、戒めや子供に対するしつけの意味合いを含む事が多い為、してはいけない事・すると悪い事を引き起こすとされるものが多かったですね。
会話のネタにもなる韓国の迷信、外国人が韓国の迷信を知っていたら韓国人を「お!」と思わせることができると思いますよ!

韓国蔚山市在住10年目、2児の母です。2011年語学留学中のLAで知り合った韓国人男性と結婚。それを機に無謀にも韓国語が全くできない状態で韓国での生活を始める。2019年より自身がゼロから学習してきた経験を元に、韓国語学習に関する執筆活動を開始。最近は、辛さの奥にある韓国料理の魅力を再発見し、趣味で韓国料理を学び、好きが高じて国家資格「韓食調理技能師」を取得しました。