さっそくですが、みなさん「アナグラム」と聞いてパッと何を思い浮かべますか?
アナグラムと言うと、ミステリーの謎解きや、暗号文などに使われていたりして、小難しいイメージがありますよね?
でも意外や意外。このアナグラム、いざ触れてみるととても面白く、身近に溢れているものなのです。
特に英語学習者の方は、アナグラムで英単語を楽しく覚えるのも一つの手!
ということで、ここではアナグラムの基礎知識から、有名なアナグラム、へえっと呟いてしまうマメ知識まで、アナグラムの奥深くも、ちょっとクスッとしてしまう世界へとご招待します。
アナグラムって、そもそもなに…?
アナグラムを日本語の辞書で調べてみると、以下のようになります。
ことばのつづりを換えることによる遊び。単語をばらばらに崩し、全く別の単語を作る。
(『精選版 日本国語大辞典』より)
ちょっとこれだけではわかりにくいので、簡単な例をあげてみましょう。
例えば”Live”(生命)という字を並べ替えてみると……
“evil”(邪悪)となり、
”silent”(静かな)を並べ替えてみると……
“listen”(聞く)となります。
このように単語のアルファベットをバラバラにして並べ替え、意味のある違ったつづりの単語を作り出すことをアナグラムを言います。
ちなみに、アナグラムは英語に直してもそのまま、anagramと言い、この言葉自体をアナグラム化すると、次のようになります。
Anagrams
→→→Ars magna(ラテン語で偉大な芸術)
いかがですか?
アナグラムは暗号などに使われいることから一見、数学的知識が必要と思いきや、なんてことはない「言葉遊び」の一種、言葉を使ったアートとも言えますね。
身近なアナグラム
さらに、アナグラムがどのようなものか理解してもらうために、なじみのあるあの作品たちから、抜粋してみましょう。
まずは「ハリーポッター」シリーズから。
『ハリーポッターと秘密の部屋』で「名前を言ってはいけないあの人(He-who-must-not-be-named)」の本名(トム・リドル)が明らかになっていますが、彼がのちに名乗る「ヴォルデモート卿」という名前はそこからのアナグラムだということも同時に判明してます。
Tom Marvolo Riddle
(トム・マールヴォロ・リドル)
→I am Lord Voldemort
(私は、ヴォルデモート卿である)
次は、ダン・ブラウンの代表作『ダヴィンチ・コード』から。
象徴学者であるラングドン教授が、この作品の中で最初に出会う謎がアナグラムとなっています。
O, Draconian devil. Oh, lame saint
(ああ、残酷な悪魔だ。ああ、役に立たぬ聖人だ)
※draconian(形)厳しい、過酷な
※lame(形)手・足の不自由な、貧弱な
これを並び替えると、
→Leonardo da Vinci The Mona Lisa
(レオナルド・ダヴィンチ モナリザ)
となり、ここからさらにドキドキハラハラする謎解きが始まる!というわけです。
その他にもデニムで有名なEDWINもDENIM(デニム:Mは逆さにしてW表記)のアナグラムとなっていたり、日本でも「いろは歌」や、本名をアナグラム化したペンネームを持つ作家やタレントが何人もいたりします。
またフィクションの世界でも小説や映画のタイトル、キャラクター名などもアナグラムによって作られているものが数多くあります。
こんな風に、アナグラムは意外と私たちの身近にこっそりと潜んでいるよう。
それを探し出し発見してみるのも、アナグラムの一つの楽しみ方といえるでしょう。
アナグラムに挑戦してみよう!
さて、少しはアナグラムに興味をもっていただけましたでしょうか。
試しにみなさんも自分の名前のローマ字表記から、何か意味のある単語が作り出せるか挑戦してみて下さい。
……どうでしょうか?意外と難しいですよね。
それもそのはず、もしあなたの名前のローマ字つづりが6文字だったら、単純に考えると6の階乗なので、720通り。5文字の場合は120通りもあるのです!
ここから一瞬にして意味のあるつづりを作るのは、至難のわざ。
もし出来たとしたら、パズルが得意な人か、直観、運がいい人でしょうか(笑)
しかし、もし見つけられなくても大丈夫!
世の中にはアナグラム自動生成をしてくれる無料サイト(WordsmithやAnagram solverなど)というものがあるので、これらのサイト内のボックスに打ち込めば、一瞬にして自分の名前のアナグラムを作り出してくれます。
これらを使って、オンライン英会話をする際のスクリーンネームをアナグラムで作ってみてもいいですね。
有名なアナグラムで英単語も一緒に覚えよう!
ここからは、有名で面白いアナグラムをご紹介します。
英語学習者さんのために、単語や関連語が覚えられるようなものを選んでいますので、ぜひ楽しみながら学んでみて下さい。
アナグラムのいいところは、一つの単語(文)から、二つ以上の単語(文)に触れられるところで、アナグラムを駆使すれば単語学習も一気に効率化する!?……のも夢ではないはず(笑)
①単語を覚えるのに最適なアナグラム!
・A persecution(迫害)
→ I run to escape(逃亡する。)
※ persecution(名)
虐待、迫害、うるさく悩ますこと
※ persecute(動)
しつこく苦しめる、迫害する
【例】 a persecution complex
(被害妄想)
・Admirer(賞賛者・崇拝者)
→ married(既婚者)
※Admire(動)
~を素晴らしいと思う、賞賛する
・Butterfly(蝶)
→ Flutterby(蝶)
※flutter(動)
〈旗・帆などが〉はためく
【例】 Leaves flutter down in autumn.
(秋には、木の葉が舞い落ちる。)
・Contaminated(汚染された)
→ No admittance(立ち入り禁止)
※Contaminate(動)
〈空気・水などを〉汚す、汚染する
【例】 This food is contaminated.
(この食べ物は、汚染されている。)
・Conversation(会話)
→ Voices rant on(声が激しく響く)
※ rant(動)
わめく、大げさに言う
・Geologist(地質学者)
→ Go get oils(石油を採りにいこう)
・Hot water(熱湯)
→ Worth tea(価値あるお茶)
※worth(形)
価値がある
【例】 His advice isn’t worth listening to.
(彼の助言は聴く価値がない。)
・Talent(才能)
→ Latent(隠れている)
※latent
(形)潜在性の
【例】 latent talent
(隠れている才能)
②ちょっとクスッとしてしまうアナグラム
・A Monday morning
(月曜日の朝)
→ Man in angry mood
(不機嫌な人)
・Dormitory(学生寮)
→ Dirty room(汚い部屋)
・Dusty(つまらない)
→ Study(勉強)
※dusty(形)
ほこりまみれの、無価値の
・I hate school(学校がキライ)
→ Oh, so ethical(おお、とても道徳的だ)
※ethical(形)
倫理的な、道徳的な
・Microwave(電子レンジ)
→ Warm voice(暖かい声)
・Television programming
(テレビ番組)
→ Permeating living rooms
(リビングに通り抜ける)
※permeate(動)
〈隙間などから〉入りこむ、行きわたる
【例】 The poison permeated the whole body.
(毒が全身に行きわたる。)
・Vacation time(休暇)
→ I am not active(何もしない)
・Why do you care(どうして気にする)
→ Hey you coward(おい、臆病者)
③「うまい!」と思わずうなってしまうアナグラム
・Astronomers(天文学者)
→ Moon starers(月を眺める者)
/ No more stars(星はもう嫌だ)
※astronaut(名)
宇宙飛行士
・Christmas
→ Trims cash(お金を切り詰める)
※trim(動)
手入れする、削減する、調整する
【例】 Our division trimmed the expenses for the project.
(私たちの部署は、そのプロジェクトへの費用を切り詰めた。)
・Dictionary(辞書)
→ Indicatory(指示する)
※indicate(動)
~を示す、ほのめかす
・God save us all
(神は私たち全員を救ってくれる)
→ Salvaged soul(救済された魂)
※salvage(動)
〈船・財貨などを〉救出する、引き揚げる
【例】 The navy salvaged the wrecked ship.
(海軍が、その難破船を引き揚げた。)
・Statue of Liberty(自由の女神)
→ Built to stay free
(自由を保ち続けるために建てられた)
※liberty(名)
(圧制・支配からの)自由
・The detectives(刑事・探偵たち)
→ Detect thieves(盗人を見つける)
※detect(動)
〈主に悪事を〉発見する
【例】 The police detected that something suspicious was happening.
(警察は賄賂を受け取っていた人物をつきとめた。)
・The meaning of life(人生の意味)
→ The fine game of nil(ゼロ得点の好ゲーム)
※nil(名)
無、ゼロ点
【例】 by three goals to nil
(3対0で)
・Sherlock Holmes
(シャーロック・ホームズ)
→ He’ll mesh crooks
(彼は犯罪者を罠にかける)
※mesh
(動)~を網で捕らえる、かみ合わせる
(名)メッシュ素材の織物、罠
【例】 He was arrested after getting meshed by the FBI.
(彼はFBIの罠のもと、逮捕された。)
いかがでしょうか。
有名な文などを見ていると、なかなか皮肉がきいていて、見ているだけでも楽しいですね。
最後に
ここでは、アナグラムについてみてみました。
皆様も「おおっ」となるような、アナグラムを作り出せるような気はしてきたでしょうか。
アナグラムのいいところは、自分の頭の中だけでできることで、気を張らず、そこらへんの看板にある英単語を並べ替えて、違う単語にしてみるのも面白いのではないでしょうか。
頭の体操にもなりますし、暇つぶしにはもってこいですよ。

日本の大学卒業後、アメリカの大学でデザインについて学びました。 その後帰国しアパレルメーカーのデザイナーとして勤務。外資系だったため、月の半分は海外出張という多忙な日々を送っていました。 その後オーストラリア人と結婚しオーストラリアに移住。現在は2児のママをしながら自宅でデザイナー兼ブログライターをしています。 海外でのリアルな生活事情や、ご当地グルメ、文化、もちろん英会話についても役に立つようなネタを書いています。 趣味は、ギター。ロックが大好きでよく家族で野外フェスに出かけます。