能って英語でなんていうの?

能、英語、説明、漢字

「日本の伝統芸能は?」と聞かれたら、みなさん何て答えますか?

たいていの人は「歌舞伎」、「能」、「落語」などと返すのではないでしょうか。

しかし、なじみある俳優を多く出している歌舞伎界・梨園や、『笑点』などで親しみのある落語界とは違って、能はなんだか敷居が高く感じますよね。

なのでここでは、そんなとっつきにくい能のイメージを払拭しつつ、「現存する日本最古の芸能」を外国の方にも説明できるよう英語を交えつつ学んでいきましょう。


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そもそも能って…?

能とは、

中世に成立し、現代に伝承される日本の代表的な古典芸能。
謡(うたい)と囃子(はやし)と舞(まい)で構成された楽劇。
室町時代に観阿弥と世阿弥が大成。

などというのが、みなさん学校などで習った基礎知識なのではないでしょうか。

でもこれだけでは表面的すぎて、実際の能がどんなものか全然わかりませんよね。

そこで、次からは能についてもっと詳しいところを易しい英語とともに見てみましょう。

【初級】能を英語で説明してみよう!

今の時代、本屋やインターネットをサーチすれば日本文化や芸能を英語で紹介するテキストなど五万と見つかるはず。

ということで今回は、すぐにでも英会話に取り組めるよう会話方式で能を説明していきましょう。

<登場人物>

・トム(T)…サブカルチャーの影響で日本文化に興味をもったばかり。
・あなた(Y)

T: I’ve been getting curious about Noh recently, because it appears in my favorite Japanese animation and Ozu Yasujiro’s movies.
(最近、能に興味があるんだ。好きな日本のアニメにでくるし、小津安二郎の映画にもでてきたから)

Y: That’s good to hear! Well, Noh is the oldest theatrical art that still exists in Japan. It has been performed for about six hundred and fifty years.
(いいね。そうだね、能は日本で現存する一番古い舞台芸能なんだ。650年続いているよ。)

T: Cool! Tell me more.
(それはすごいね! もっと話して。)

Y: Noh is like a musical. An actor sings and dances as a certain character, along with live musical instruments and a chorus.
(たとえるなら、ミュージカルに近いかな。楽器とコーラスの生演奏とともに、役者はキャラを演じながら歌って、踊るんだ)

T: Sounds like fun.
(それは楽しそうだね。)

Y: Noh are mostly about ghost stories, though.
(能の演目、主に幽霊の話なんだけどね。)

T: No way! I don’t really like horror stories.
(まさか!僕はあんまり、ホラーは好きじゃないんだ。)

Y: It’s kind of more beautiful and mysterious than scary. Such an atmosphere can be called “Yugen” in japanese.
(怖いというより不思議で美しいって感じかな。こうゆう雰囲気を日本語では「幽玄」というんだ。)

T: I see. It sounds interesting that Japanese people consider ghost stories to be beautiful.
(へえ、幽霊が美しいなんて、日本人は変わっているね。)

Y: Actually, there are a lot of famous characters from old Japanese literature in Noh programs, such as a brave warrior, a beautiful female poet and supernatural creatures like yokai or tengu.
(実際、能の演目の中には日本の古い文学に登場する有名なキャラがでてくるんだ。たとえば勇敢な戦士とか、絶世の美女である詩人とか、人智を超えた生き物、妖怪や天狗とかね)

T: Amazing! I want to watch a Noh play. So where should I go to watch one? Tokyo?
(おもしろい!能が見てみたくなっってきちゃった!どこにいけばいいの?東京?)

Y: There are many Noh theaters all over Japan. You can search for the nearest theater using the internet.
(日本中に能の劇場があるから、一番近いところをインターネットで検索できるよ。)

いかがでしょうか。
能のことをよく知らない人には以上のような感じで教えてあげれば、きっと興味をもってくれるはず。

さぁ、次は能に興味を持った人に対して、もっと能の深いところまで教えてあげるられるようになりましょう。


日本の妖怪と言えば「カッパ」!
カッパについて知りたい人は、過去のブログを読んで見てください。

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【中級】能舞台の特徴

<登場人物>

エマ(E)…舞台ディレクター 仕事のために能について調べている
あなた(Y)

E: I want to know about Noh more deeply for my work, especially about the music of Noh.
(仕事のために能のことがもっとよく知りたいの。特に能の音楽について。)

Y: Sure. In Noh programs, hayashi-kata are in charge of the instrumental music. It consists of four kinds of instruments: a flute known as “fue”, a small hand drum known as “kotsuzumi”, a large hand drum known as “otsuzumi”, and stick drum known as “taiko”. Also, the jiutai takes care of the vocals.
(いいよ。能の劇中では、オーケストラのような囃子方が楽器を手掛けている。楽器は笛というフルートと、小さいドラムのような小鼓、大きいドラムである大鼓、あとはステックドラムである太鼓によって構成されている。またコーラスは地謡が担当するんだ。)

E: I see. I heard there is a different category in Noh play aside from Mugen-noh where most of the leading characters are ghosts.
(なるほど。ところで、能には幽霊が登場する夢幻能以外のカテゴリーもあるって聞いたけど。)

Y: Wow, you are right. Roughly speaking,noh can be divided into two types. One is phantasmal Noh called Mugen-noh, and the other is present noh called Gendai-noh. Present-noh typically portrays living people.
(その通り。大きく分けると、能は二つのタイプに分かれる。一つは夢幻能と呼ばれる幻想的な能、もう一つは現代能と呼ばれる生きた人間のことを描いた能のことなんだ。)

E: I prefer gendai-noh compared to mugen-noh, since I’m a realist. Anyway, what’s the most famous program in gendai-noh?
(私はリアリストだから現代能の方が好きだわ。ところで、現代能で一番有名な演目はなに?)

Y: It’s called “Sumidagawa”, which is a story about a mother and her son. A strange woman asks a boatman to ride on a boat at the shore of Sumida River. On the boat, the boatman tells her story about a child who died at the shore of this river a year ago. She starts to cry then discloses that the child was her son. At her child’s tomb, she prays for her son with nenbutsu. At that moment, she sees a hallucination of her son. Then she wants to hug him but can’t touch him. After that, the phantom disappears, and the mother remains crying at her son’s tomb.
(『隅田川』っていう母親とその息子の物語なんだ。ある風変りな女が船頭に頼んで隅田川を渡る船にのった。船の上で、船頭は一年前に川で死んだ子供の話を聞かせたんだ。すると女は泣き始め、その死んだ子が自分の息子だという事実を話した。のち、彼女が自分の子供の墓で念仏を唱えると、息子の幻覚が現れた。彼女は自分の子供を抱きしめたかったけれど触れず、幻影は消えてしまった。その後も、墓地には彼女の鳴き声が響き続けた、っていう話なんだ。)

E: Ooh, it’s such a sad story, isn’t it? I suddenly want to see my son.
(なんだか自分の子供に会いたくなってきちゃった。)

いかがでしょうか。能の舞台の特徴について少しは喋れるようになりましたか?

ひとつ補足をすると『隅田川』のラストパートには、流派や役者の解釈によって違いがあり、息子の幽霊が実際にでてくるかどうかはその時によって違います。

【上級】能の主役・面について

ここでは、能を能たらしめているもの、面(おもて)について触れてみます。

歌舞伎と能の違いは、ざっくばらんに言ってしまうと、能面があるかないか。能の演目の中(特に現在能)にも面をつけないものはありますが、やはり能といったら能面が一番、印象に残りやすいですよね。

<登場人物>

・ジョシュ(J)…作家、能面マニア
・あなた(Y)

J: I went to watch the Noh performance in Paris recently. The ko-omote mask they used in the play was really exquisite.
(最近、能のパリ公演に行ってきたんだ。劇中で使われた小面がとても素晴らしくてね。)

Y: I’m wondering what the attraction of noh mask, or “no-men”, is. Even Japanese people mostly consider no-men as kinda creepy.
(君はまったく変わらないね。君にとっての能面の魅力ってなんだい。日本の人でさえ、能面を気味悪いという人はいるのに。)

J: Well, the most impressive thing about no-men is that expressions of noh-men changes a lot during a performance.
(うーん、能面で一番印象深いのは、舞台の中で能面の表情がころころ変わることかな。)

Y: Like Teru and Kumoru?
(たとえばテルとかクモルとか?)

J: Yes. It’s one of the basic techniques for performers to produce a character’s feelings using a mask.When actor slightly bends his head downward, mask can be looked like he or she’s smiling or laughing. Tilting his head upward will produce a slight frown that reflects sadness or sobbing. This technique’s called Teru and Kumoru.
(そう。演者が面でキャラの心情を表現する時に使う、基本的なテクニックだね。俳優が頭を少し上げると、能面は微笑んでいるようにも笑っているようにも見える。また頭を少し下げると、しかめっ面をしているように見えて、悲しみやむせび泣きを表現できるんだ。このテクニックはテルとクモルと言われているよ。)


ちょっとここで休憩。

能のお面の「喜怒哀楽」を英語で説明して見たいと思った方、ぜひこちらのブログを読んで見てください。

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最後に

さて、いかがでしたでしょうか。能のさらに深いところまで、なんとなくわかりましたか。

ロールプレイの中でも触れたのですが、能は日本のみならず世界中で上演されています。その度に役者さんたちが海外の方々にわかりやすいよう、それでいて能独特の世界観を壊さないように日々新しいことに挑み続けています。

「能は古臭いもの」なんていう固定観念は捨ててみて、一度舞台に足を運んでみてはいかがでしょうか。普段の忙しい日常生活の中では触れることのできない、しみじみとした夢幻と厳かな世界があなたを待っていることでしょう。

また舞台に足を運んで、能の魅力を知ることができたら、誰かに紹介してみたくなりますね。いい機会ですから、日本の文化に興味をもった外国人に能とは何なのか、話してみてもいいのではないでしょうか?