新型コロナの海外渡航規制が緩和されて以降、留学を目指す人が増えています。
しかし近年、日本の円の価値が下がった
「円安」状態が続いており、留学を希望する人々にとって大きな影響を与えています。
特に、学費や生活費の負担が増しているため、留学費用の計画をより慎重に立てることが重要です。
本記事では、円安が海外留学に与える影響とメリット・デメリットについて詳しく解説します。
また、円安時の留学を成功させるための具体的な対策や工夫についても紹介するので、これから海外留学を検討している方はぜひ参考にしてくださいね!
- そもそも「円安」とは?
- 円安が海外留学に与える影響
- 円安で海外留学を諦める人も……
- 円安が留学へプラスの影響を与える場合もある
- 円安時の留学対策:奨学金を利用する
- 円安時の留学対策:ワーホリを検討する
- 円安時の留学対策:短期プログラムを選ぶ
- まとめ
そもそも「円安」とは?
「円安」とは、外国の通貨(アメリカドルなど)の価値に比べて、円の価値が低くなることを指します。
例えば、1ドル=100円の状態から1ドル=150円になると、円安が進んだといえます。
この場合、同じ金額の日本円でドルを買うと、以前より少ないドルしか得られません。
一方で、円の価値が高くなることを「円高」といい、1ドル=100円から1ドル=80円になると、円高が進んだといえます。
具体例として、留学先のアメリカで手元にある1万円を両替する場合を紹介します。
・1ドル=100円の場合:1万円は100ドルになります。
・1ドル=150円(円安)の場合:1万円は約66ドルしか得られません。
・1ドル=80円(円高)の場合:1万円で125ドルが得られます。
円安や円高の原因は、外国為替市場における需給バランスや、各国の金利、経済政策、貿易収支などさまざまです。
為替の動向を注意深くチェックしておくことは、留学計画を立てる上で非常に重要です。
円安が海外留学に与える影響
円安が進むと、海外通貨を得るために必要な円の金額が増え、学費や生活費の負担が大きくなります。
これにより、留学準備や現地での生活計画をする際により慎重さが求められ、思い描いた通りの留学を実現することが難しくなります。
ここでは、円安が海外留学に与える5つの主な影響を解説します。
留学費用が増加する
円安の影響で、日本円を外貨に換える際のレートが悪くなり、実質的な留学費用が増加します。
留学に必要な主な費用には、以下のものがあります。
・航空チケット代
・ビザ申請費用
・パスポート申請費用
・海外旅行保険
・語学学校などの授業料
・ホームステイやシェアハウスなどの滞在費
・食費、通信費、交通費などの生活費
特に、学費や滞在費、生活費などの負担が大きくなるため、以前よりも多くの資金を準備する必要があります。
留学先の選択肢が限られる
円安が進むと、学費や生活費が高い国への留学がより高額になるため、経済的な理由でこれらの国を選べなくなる人も増えるでしょう。
学費や生活費が高い代表的な国には、以下のような国があります。
・アメリカ
・イギリス
・カナダ
・オーストラリア
留学先によって学べる内容や体験できることが異なるため、国や地域を選ぶ際には、費用のほか、自身の目的に合った環境かどうかも検討する必要があります。
海外の物価高に対応できなくなる
世界的な物価高の影響により、留学先の生活費が高騰している現状があります。
そのため、日本で準備した留学資金だけでは、やりくりが難しくなる場合があります。
具体例として、日本人に人気の留学先であるカナダ(トロント)での1ヶ月あたりの生活費の目安をまとめました。
滞在費 | ホームステイ:約1,200ドル、シェアハウス:約850ドル |
食費 | 約200ドル(自炊中心) |
外食費 | 約150ドル(レストランやカフェなど) |
日用品費 | 約50ドル |
交通費 | 約140ドル |
通信費 | 約40ドル |
これらの費用は個人の生活スタイルや選択によって変動しますが、余裕を持った留学資金の準備が欠かせません。
留学期間を短縮するケースが増える
留学は期間が長くなればなるほど費用が必要になるため、円安の影響により当初予定していた長期留学を短期に変更するケースが増えると予想されます。
特に、海外大学進学などの学位取得を目的とした留学の場合、留学生向けの学費が非常に高額であり、円安が進むことでさらに学費負担が増加します。
そのため、キャリアアップや海外就職などを目指した長期留学が困難になる可能性が高く、語学研修や短期プログラムへの参加に切り替えざるを得ない場合もあるでしょう。
学業に支障が出る可能性がある
円安による経済的な負担が増えることで、留学中にアルバイトをして生活費を補う必要性が生じるため、学業に集中できなくなる可能性があります。
留学先やビザの種類によってはアルバイトが許可されていないケースもあるため、その場合はより計画的な留学費用の準備が必要です。
また、生活費を抑えるために食費を削り、十分な食事を摂らずに節約する人もいるため、健康面に悪影響を与えてしまうこともあります。
最悪の場合、体調不良やモチベーションの低下により途中で留学を断念するリスクも高まるでしょう。
円安で海外留学を諦める人も……
円安の影響により留学費用が大幅に増加し、学費や生活費の負担が想定以上に重くなることで、留学を諦める人も増えています。
特に、希望していた国や長期留学の計画が、経済的に現実的でなくなるケースも少なくありません。
しかし、海外留学は語学力の向上だけでなく、異文化への理解やグローバルな視野の獲得など、何者にも変えられない貴重な経験を得られるチャンスでもあります。
留学に関する情報収集や計画的な準備を行い、円安時代でも確実に留学を実現できる現実的な選択肢を見つけることが大切です。
円安が留学へプラスの影響を与える場合もある
近年、ニュースで「出稼ぎ留学」や「出稼ぎワーホリ」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
円安が留学に与える影響はマイナスなものだけではなく、日本人留学生にとってプラスの側面もあります。
ここでは、円安が留学に与える2つのプラスの影響について解説します。
現地収入が円ベースで増加する
海外の最低賃金は日本より高い場合が多く、円安により円換算した際にさらに収入が増えることがあります。
例えば、オーストラリアの最低賃金は2025年1月時点で時給24.10豪ドルであり、円換算すると為替レートによって月収の差が大きくなります。
時給24.10豪ドル | 円安時:1豪ドル=97円 | 円高時:1豪ドル=65円 |
円換算した場合 | 時給:2,337円 | 時給:1,566円 |
1日7時間×週5日 | 月収:約327,180円 | 月収:約219,240円 |
実際には両替手数料や為替手数料がかかる場合が多いですが、円安時には月収で約10万円以上の差が生じるため、帰国後の貯金に役立てられる可能性があります。
日本人留学生の価値が高まる
円安の影響で留学を断念する人が増えると、海外経験を積んだ日本人留学生の希少価値が高まります。
グローバル化が進む現代では、企業が語学力や異文化理解力の高い人材、また海外経験を持つ人を求める傾向が強まっています。
さらに、円安になると日本への旅行者が増加し、日本文化や日本の製品に興味を持つ人が増える可能性があります。
その結果、留学先では日本食レストランが人気を集めたり、日本語を学びたいという人が増えたりすることが期待されます。
現地での日本文化に関連する仕事のチャンスが広がるだけでなく、異文化交流の機会も増え、人脈を広げるきっかけにもなるでしょう。
円安時の留学対策:奨学金を利用する
円安時の留学資金を補う方法として、留学生向けの奨学金制度を利用するのがおすすめです。
日本国内外で提供されているさまざまな奨学金制度があり、条件を満たすことで経済的な支援を受けられる場合があります。
奨学金についての詳細を知りたい方は、留学エージェントに相談するほか、各奨学金を提供している団体の公式サイトを確認して問い合わせてみてくださいね。
留学生向け返済不要の給付型奨学金5選
ここでは、留学生向けの返済不要の給付型奨学金を5つ紹介します。
日本学生支援機構(JASSO) 海外留学支援制度 | JASSOが提供する制度で、協定校派遣や大学院での学位取得を目的とする学生が対象です。日本の大学を通じて申請することができます。 |
経団連グローバル人材育成スカラーシップ | 経団連が将来のグローバルリーダーを育成する目的で提供する奨学金で、意欲的な学生に対して支援を行っています。 |
トビタテ!留学JAPAN 新・日本代表プログラム | 文部科学省が主導する奨学金で、個別の留学計画に応じて支援が受けられます。 |
孫正義育英財団 | グローバルに活躍できる人材育成を目指して設立された奨学金で、優れた学生を支援します。 |
ロータリー奨学金 | 国際ロータリークラブが提供する奨学金で、異文化理解や国際平和の促進に貢献する学生に対して支援を行っています。 |
奨学金への応募には期限が設けられている場合が多いため、最新情報や申請条件については、必ず各団体の公式サイトを確認してください。
円安時の留学対策:ワーホリを検討する
留学スタイルの選択によって、円安対策をすることも可能です。
そのうちの1つがワーキングホリデー(ワーホリ)の活用であり、円安のメリットを享受しやすい留学スタイルといえるでしょう。
ワーホリは海外で一定期間就労しながら滞在できる制度であり、現地で働いて収入を得ることで、生活費や学費の一部を補えます。
特に、最低賃金が高い国で働く場合、円安時には日本円に換算した際に収入が増えるという大きなメリットがあります。
費用面の負担を軽減しつつ、理想の留学生活を実現できる選択肢の1つとして、ワーホリは非常に有効な手段です。
ワーホリで仕事を探すポイント
ワーホリで確実に仕事を見つけるためには、語学力の向上が欠かせません。
日本食レストランなど、日本語環境の職場もありますが、基本的に接客する場合は現地の言葉を話せることが求められます。
ワーホリは通常1年間の滞在期間があるため、渡航直後から仕事探しを始める場合、渡航前にしっかりと語学力を高めておくことが重要です。
また、海外での仕事探しにはネットワーキングが非常に大切な要素となります。
現地の人々と積極的に交流したり、求人情報を交換できる環境に身を置くことが、仕事探しをする上で大きな助けとなるでしょう。
ワーホリで生活費を節約するコツ
ワーホリは現地で働いて生活費を補える留学スタイルですが、さらに生活費を節約するために以下のような工夫をするのがおすすめです。
・食事は自炊を心がける
・レストランで働いて、賄いにより食費を節約する
・天気の良い日はシェアバイクや徒歩を活用し、交通費を節約する
・マーケットプレイスやオンラインコミュニティで不用品を売る
こうした工夫を積極的に取り入れることで、より効率的に生活費を抑えられます。
円安時の留学対策:短期プログラムを選ぶ
円安の影響で長期留学が難しい場合は、思い切って短期プログラムで留学を実現するのも良い選択肢です。
短期プログラムは留学先やプログラムの内容によって異なりますが、近年では多様なプログラムが用意されており、目的に合わせて自由に選ぶことができる点が魅力です。
ここでは、目的別おすすめの短期留学プログラムと、学費を抑えたい人向けのプログラムを紹介します。
目的別おすすめの短期留学プログラム
以下に、留学の目的別おすすめの短期プログラムをいくつかまとめました。
留学の目的 | おすすめ短期プログラムの例 |
語学力を伸ばしたい | 語学学校の集中プログラム |
海外で働いてみたい | インターンシップ留学 |
趣味を楽しみたい | おけいこ・習い事留学 |
社会貢献したい | ボランティア留学 |
これらの短期プログラムは目的に合わせて選べるほか、費用を抑えつつ留学を実現するための最適な方法といえるでしょう。
学費が安い短期プログラムならフィリピンがおすすめ
できるだけ留学費用を抑えつつ、飛躍的に英語力を向上させたい方には、フィリピン留学がおすすめです。
フィリピンは他の英語圏の国に比べて学費や生活費が安く、円安時でも比較的リーズナブルに留学を実現できる選択肢といえます。
フィリピンの多くの語学学校では、全寮制の環境でマンツーマンレッスンを提供しており、集中して英語を学べる環境が整っています。
費用を抑えながら質の高い英語教育を受けられる環境が、フィリピン留学の大きな魅力です。
まとめ
本記事では、円安が海外留学に与える影響と、そのメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
円安の影響により、学費や生活費の負担が大きくなる一方で、日本人としての強みを活かした経験を積んだり、帰国後の資金を貯めたりできるチャンスもあります。
留学生活を充実させるためには、資金計画をしっかり立て、無理のない範囲で準備を進めることが大切です。
奨学金の活用や短期留学プランの検討、現地でのアルバイトや節約術を取り入れるなど、負担を軽減するための工夫も重要になります。
これから海外留学を予定している方はぜひ本記事を参考にして、円安対策をしながら計画的に準備を進めてくださいね!

◇経歴
・英米文学科卒業
・George Brown College卒業(カナダ・トロント)
・カナダ現地のパティスリーにてパティシエとして働く
・現在はWebライターのほか、SNS運用やコンテンツクリエイターとして活動しています。
◇資格
IELTS General 6.0
◇留学経験
・ニュージーランド(2週間)
→高校留学でホームステイ体験
・カナダ(13年)
→ワーキングホリデー→カレッジ留学→現地就職→永住権取得
◇海外渡航経験
長期滞在:カナダ、韓国(3ヶ月)
旅行:ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、
イタリア、タイ、インドネシア、シンガポールなど
◇自己紹介
英語学習や留学に関する記事を書いているWebライターです。
幼少期から英語や海外に興味があり、子ども英会話教室に通ったり、ニュージーランドへ短期留学したり、大学は英米文学を専攻したりと英語に関わる人生を過ごしてきました。
現在はカナダ在住13年め、海外で子育て奮闘中です。
英語学習や海外生活に興味のある方に、役立つ情報をお届けできたらと思っています。どうぞよろしくお願いします!