海外に住む日本人家族または国際結婚組にとって、子供の言語については様々な思いがあることでしょう。
現地での生活を考え、意識は英語などの第2言語にいきがちですが、海外在住だからこそ日本語教育について考える必要があります。
日本語の環境をどうするか自分たちで作っていかなければならないからです。
しかし、どのようにしていくのか、なかなか分からないものではないでしょうか?
そこで記事では海外在住者必読!海外で日本語を教育する際に注意すべき点やおさえたいポイントを紹介しましょう。
- 日本語は習得難易度が非常に高い言語!?
- 日本語教育で親が意識するべきポイント
- 年代別バイリンガル教育のポイント
- 子供への読み聞かせ・音読のコツ
- 教材を使った日本語の学習
- 海外在住家庭のための日本語教育まとめ
日本語は習得難易度が非常に高い言語!?
ところで、私たち日本人はまず、日本語は習得する難易度が高い言語であることを知っておかなければなりません。
アメリカ合衆国国務省の言語習得難易度ランキング
アメリカ合衆国国務省による「イングリッシュスピーカー対象の言語習得難易度ランキング」によると、習得が非常に難しい言語(Super-hard languages)に日本語がランクインしています。
他には中国語、韓国語、アラビア語が挙げられます。
この情報によれば、コミュニケーションがとれるレベルになるには2,200時間を要するとあります。
ノンストップで学習して約2年です。
ときどき、日本語をネイティブスピーカーレベルで話す外国人がいますが、ほとんどの人にとっては日本語学習は難易度が高いということになります。
したがって、外国に住み日本語を使う必要のない環境にいれば、日本人の子供たちにとっても日本語は難しい言語になってしまう可能性が高くなるのです。
引用:U.S. Department of State “Foreign Language Training”
日本語教育で親が意識するべきポイント
子どもが自ら進んで、親の期待どおりに日本語を勉強することはまずないでしょう。親が関わる必要があります。
そこで今回は、日本語の教育をするにあたって意識すべきポイントを解説します。
海外生活でも習い事やお友達と過ごす時間などがあります。限られた時間で日本語力をアップさせるにはどうすればいいでしょう?
しかも、海外在住の子供のための日本語教育は、長期戦と覚悟しなければいけません。
日本語に触れる時間を多くすること
限られた時間内で、日本語に触れる時間を極力多くすることが大切です。
そのためにとても良い方法があります。
常に子供と過ごす親が日本語で話しかけ続けるというものです。
ここは徹底して、日本語だけにします。
生活に慣れてくると、子どもは絶対に英語で話しかけてくるようになります。その時に、英語で返さないでください。
「英語はお母さん全然分からないから日本語で言ってくれる?」などと日本語を使うように促すクセもつけてください。
筆者のフランス人の友人は男の子4人の母ですが、パートナーはイギリス人。
ロンドンに住んでいるからこそ上達して欲しい言語は英語、家庭でママが子供達に話しかけるのも英語、と言っていました。
すると、子供たちは幼い時期にフランス語に触れる機会がほぼ無かったということになります。
その後、フランス語も話せるようになって欲しいと思い始め、週末に通う補習校のようなフランスの学校に行かせたところ、
話せない、書けないといった状況からまったく楽しくない→自主退学になりました。
このような状態になるのを避けるためにも、早いうちから親子間では日本語だけを使うくらいの強い意識が必要です。
普段話すだけでなく、日本の動画を一緒に観たり、ボードゲームも日本語で盛り上がりましょう。
できるだけ日本語を話させること
毎日一緒にいる親が母国語で話すことは重要です。さらに、日本の家族とオンラインでおしゃべりをする機会も作りましょう。
おじいちゃん、おばあちゃん、いとこ達の顔を見て話せる嬉しさから、本人が積極的に日本語を話す楽しくて貴重な時間になります。
筆者の場合は家族だけでなく、同じ境遇にいる日本人ママと子供たちで定期的に集まる会にも参加していました。
子供に日本語に触れて欲しいという同じ考えの人たちが集まることで、季節のイベント紹介など楽しい時間を作りました。
そのような仲間がいないか、ぜひ探してみましょう。
ただ気をつけたいのは日本語教育に関してはそれぞれの思いがあるため、人に影響されないようにする点です。
いずれにしても親以外の日本人と話す機会を作ると、お母さんの友達ママが上手に質問をしてくれたり感想を聞いたりとコミュニケーションをとってくれるので、子供達がさらに日本語を使えることになります。
子供に日本語を覚えることが楽しいと感じさせること
親御さんにぜひ意識していただきたいのは、日本語が苦痛にならない工夫をするというという点です。
例えばドリルを渡してやりなさい、では面白く感じることはできません。
その代わりに、日本語を使ったら褒められた、というポジティブなサイクルを作りだしましょう。
子どもが率先して日本語を話すようなアイデアの1つが、「お店やさんごっこ」です。
何のお店にするか、どんな商品を売ったり買ったりするのか、紙のお金のやりとりなど、多くの子ども達が興奮気味に遊びます。
子どもは素直なので、楽しいことには飛びつき、そうでないものにはそっぽを向きます。
だから、もっとやりたい!と思えるようなやり方をするのが重要ポイントです。
年代別バイリンガル教育のポイント
ここでは、年代別のバイリンガル教育についてみていきましょう。
乳幼児、保育園、幼稚園時代、8歳まで、そして8〜15歳に分けて紹介します。
英語など現地語は学校での授業や他のアクティビティでいくらでも機会を得るため、特にバイリンガルになるための日本語についてポイントを述べていきましょう。
乳幼児
一つめの段階は「乳幼児」。
この時期は日本語を優先します。
親が自分の母語で子どもに語りかけることを「1人1言語の原則」と言います。
小さな子どもが相手だから話しても分からないだろうなどと思わず、ゆっくりはっきりと話しかけてください。
身の回りのことや体の部位の名前、そして嬉しいね、甘いね、痛いよねなど体験からくる言葉も使ってください。
目と目と合わせ、親は表情豊かに日常生活のシーンで幼児期のインプットをさせると言語の土台づくりができることになります。
~保育園、幼稚園時代
次の段階は保育園、幼稚園時代です。
この年代は話すことだけでなく書くことを始める時期になります。
海外で生活をしていても現地の幼稚園に通いだすお子さんがいますが、できれば日本の幼稚園など、日本語の環境を作り出してください。
現地の言葉が遅れてしまうと思うかもしれませんが、この時期は心配ありません。
家族だけでなく、他の日本人との社会生活を営むことがそれ以降の日本語に良い影響があります。
~8歳:言語形成期前半
続いて、言語形成期前半と呼ばれる8歳までの時期についてみてみましょう。
言葉を自然に習得できる年齢であり、母国語の発達レベルは第2言語発達の指針となります。
話す・聞くだけでなく、書く・読むことができるバイリンガルに育てられるかにも関わってきます。
現地の小学校も始まる時期であり、日本語補習校に行き始める子どももいます。
補習校が通える範囲にない場合、通信教育といった教材を利用する方法もあります。
日本語は習得が非常に難しい言語であることを紹介しました。
日本語は、親子間でする会話だけで自然に上達するというものではないことを意識しましょう。
8~15歳:言語形成期後半
最後は、言語形成期後半と呼ばれる8〜15歳になります。
この年齢になると、普段からどう対応しているかによって海外に住む日本人の子供たちの日本語レベルはかなり差が出てきます。
言語習得にはネイティブスピーカーであってもそれ相応の時間がかかるわけであり、小学生になったから、中学生に上がったからとそこから始めようとすると大変なことは想像できるはずです。
また学習を継続していても、やめてしまう学生が出てくるのも中学生の時期です。
なお、補習校に通っていると、先生または同じ環境にいる友達からイギリスにおけるGCSE国家試験(14〜16歳の生徒ほぼ全員が受けるイギリスの学業資格試験)の日本語試験についての情報を得ることになります。
外国語としての日本語試験ですが、補習校に通うほとんどの日本人、日本人ミックスは軒並み最高得点のA*やAといった結果を出しています。
これがまた日本語への自信につながります。自信はアイデンティティ確立にもつながるでしょう。
さらに、日本語能力検定試験にチャレンジするといった目標を持つこともモチベーションアップになります。
子供への読み聞かせ・音読のコツ
絵本や書籍の読み聞かせにはメリットが多くあります。
大きなメリットは、語彙を増やせるということです。
日常の会話では使う語彙が限られてしまいます。
そこで、絵本によって普段使わない言葉を習得していくことになります。お子さんの日本語学習には、絵本や本をぜひ利用しましょう。
読み聞かせのコツ
親が子供に本を読んであげるときの時間は、とても素敵ですね。
体を寄せ合い、近い距離でお互いに日本語に触れることができます。
読み聞かせのコツは以下になります。
・聞き取りやすいスピードと声量
・定期的に取り組めるように時間を決める
親も一緒に楽しむことが大切ですが、演劇のように声の抑揚をつけすぎると、子供の想像する力を妨げてしまうことがあるのでご注意ください。
音読のコツ
声に出して読む作業には、漢字や単語の意味の理解が必要です。
しかし、音読をすることによって、声に出したものを自分の耳で聞くことになりアウトプットとインプットになる、理解力や記憶力が上がるなど、いくつものメリットがあります。
音読のコツとしては、大きな声ではっきりと読む、ゴールデンタイムと呼ばれる朝に行い脳を活性化させるなどがあります。
教材を使った日本語の学習
最後に、様々な教材による日本語学習の方法を4つ挙げます。
外国人向けの日本語教室というオンラインのサービスも紹介します。
ドリル
さて、無料のドリルがあることを知っていますか?
年長さんから小学4年生対象の「やる気どんどん!!ドリル」、
幼児と小学生向けの「学習プリント.com」、
幼児から中学生まで多くの種類が揃っている「ちびむすドリル」などオンラインにはいろいろなサイトが揃っています。
会員登録が必要だったりしますが、無料でダウンロードし、家庭学習として日本語の勉強をすることができます。
図書
本の利用も教材として日本語学習に有効です。
親がカバーしきれない情報や内容が図書には詰まっています。
日本の一時帰国で本屋さんに行って自分で選んだ一冊、ネットで選んだものを日本の家族に送ってもらう、補習校に通っている場合は図書室がありますのでそこから定期的に借りる、様々な方法によって本を入手してください。
図書には漫画も含まれますので、興味にあったものを日本語で読む習慣をつけると最強です。
映像
タブレットやスマホを利用して、日本の動画など映像を観るのもおすすめです。
気軽にできる点、多くの選択肢があることがメリットです。
動画共有サービスには、年齢に応じた日本語学習のコンテンツが多く見つかります。
海外で視聴できるところも便利ですね。
日本語のオンラインレッスンもおすすめ!
NHK World-Japan Easy Japaneseなど、日本語学習をオンラインで無料で利用する方法があります。
これらを含め、ドリルも図書も一方向の学習方法です。
そこで、双方向の日本語オンラインレッスンというおすすめを紹介しましょう。
それがネイティブキャンプが提供する「オンライン日本語レッスン」です。
日本語オンラインレッスンは安い料金のため、何度も利用し日本にいるかのような環境づくりができます。
予約なし、回数は無制限、日本人講師とマンツーマンで日本語を学べます。
経験のある講師陣は独自のオリジナル教材を使い、日常会話や文法などを指導します。
現在、お得な1ケ月間無料トライアル実施中ですので、このチャンスに一度ご利用されてみてはいかがでしょう?!
海外在住家庭のための日本語教育まとめ
本記事では、海外に住むご家庭のための日本語教育について様々な情報をお届けしました。
多くの方が悩み、時には子供とバトルを繰り広げることもあるでしょう。それは珍しいことではありません。
その年齢に合った方法で楽しく学ぶことを考えつつも、継続していくことの重要性をぜひ意識してください。

◇経歴
日本では外資系製薬会社などで勤務。
2006年夏に渡英し、現在イングランド在住。
2012年以来、南ロンドンで剣道道場を運営。地元の行政と関わり、日本文化を紹介するイベントを担当したり、剣道や居合道のデモンストレーションのオーガナイスを行なう。
また、日本の2大学と英国剣道協会とのパートナーシップ締結のためのリエゾンおよび翻訳・通訳を担当。
◇資格
・Food Safety Level 2
・Principles of Internet Safety Prepare to Deliver Excellent Customer Service
◇海外渡航経験
スキューバダイビングで訪れた国々を始め、3ケ月間のヨーロッパ各国バックパッカーの旅を経験。
◇自己紹介
こんにちは!椿サリーです。夫がイギリス人、日英ミックスの息子(UK大学生)という家族構成の国際結婚組です。ライターとして、多国籍メンバーが所属する剣道道場の女将として、日本文化紹介を紹介する地元グループ代表として行政とのやりとりなど、イギリスで幅広く活動しています。英会話ができると世界が広がりますし、外国人とのコミュニケーションは楽しい!を日々実感しています。

I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.