「Flat」の持つ5つの意味と使い方……表現とシーン別の使い分け

「気持ちをフラットに保つ」「フラットな床」など、日本語の日常会話によく出てくる”フラット”という単語、あまりに日本で普通に使われているので和製英語だと思っている方はいませんか?

実は、”Flat”は英語圏で普通に使われる、れっきとした英単語です。しかも英語の”flat”は複数の意味を持ち、日本語と違った使い方をする場合もあります。

つまり、日本語の”フラット”と同じイメージで英会話中に”Flat”を使ってしまうと、そのつもりがなくても全然意味が違うことを伝えてしまう可能性があります。使う頻度が高いだけに、正しい意味を知っておきたい単語のひとつです。

この記事ではそもそも”Flat”にはどんな意味や使い方があるのか、そして日本語との違いはどんな点なのかについて、例文を交えながら解説していきたいと思います。

英語"Flat"の5つの意味をご存じですか?

英語の”Flat”には意外と色々な意味がありますが、特によく使われるものとしては5つあります。

例文を交えつつ、代表的な5つの意味について順番に見ていきましょう。

Flatの使い方1:level

一つ目は形容詞的な使い方で、「でこぼこのない、平らな」という意味の”flat”です。

テーブルトップや床、壁、平原や平地など、あるものの表面が平らであることを表現するときに使われます。

They finally found flat land after 2 days of walking.

彼らは2日間歩き続けてやっと平らな土地を見つけた。

ニュアンスとしては「ある一定の”level”(レベル)で揃っている状態」という感じです。

なお、この"flat”は必ずしも水平を示しているわけではなく、斜めや垂直な面に対しても使うことができます。とにかく「表面にでこぼこがない平面」というイメージです。

He led me to a cave. I was surprised the walls were all flat.

彼は私をとある洞窟へ案内した。洞窟の壁がすべて平らで凹凸がないことに私は驚いた。

Flatの使い方2:horizontally

"flat"の2つ目の使い方は、「身体を平らに伏せて」「(面と)ぴったり接して」という意味の副詞的な用法です。

基本的には、英単語で言うところの”horizontally"(地平線に沿って、水平に)と同じようなニュアンスで、水平にぺったりと倒れている感じを表すときに使われます。

The statue was lying horizontally between rocks. It was impossible to get there, I took pictures from a distance lying flat on my stomach.

その像は岩の間に横たわった状態で置かれていた。そこへ行く事は不可能だったので、僕は離れた場所から腹ばいになって写真を撮った。

「身体を平らに伏せて」=”lying horizontally"という意味で使われることが多いですが、「(面と)ぴったり接して」というニュアンスもあるため、水平に限らず垂直面などにくっついている状態を表すときにも”flat”で表現することができます。

The ladder was set flat against a wall.

そのはしごは壁にぴったりつけて設置されていた。

Flatの使い方3:feel flat

3つ目は感情に関する表現です。

”flat”には「元気がない、生気がない、単調で退屈な」という意味もあります。”feel flat”で「つまらない」「気が抜けている」といったニュアンスの感情を表す慣用句として使うことができます。

I feel flat because the party was canceled and I have nothing to do today.

パーティがキャンセルになって今日は何もやることないし、つまんない。

「気が抜けた」「元気がない」の類似表現

「気が抜けた」「元気がない」というニュアンスから派生する類語的な使い方として、

食べ物の味がない(薄い)

炭酸が抜けている(ビールなど)

タイヤの空気が抜けている

色調がくすんでいる、コントラストがない(絵や写真など)

といった意味を表すときにも"flat”が使われます。

You didn’t put the cap on the coke! It’s flat.

コーラの蓋しめなかったでしょ!気が抜けちゃってるよ。

また、”get a flat”で「パンクする」という意味を表す慣用句になります。パンクしたタイヤ自体は、”a flat”や”a flat tire”と表します。

※ちなみに複数のタイヤがパンクした場合は”flats”もしくは”flat tires"と複数形になります。

I got a flat.

タイヤがパンクしちゃった。

なおイギリスでは、パンクしたタイヤを”puncture”と表現することもあります。

I need to take my bike to the shop to fix a puncture.

パンク修理のために、お店に自転車を持って行かないといけない。

Flatの使い方4:apartment

日本では、構造(木造か、鉄筋か)やサイズ(2階建てなのか、3階建て以上なのか)などで集合住宅を「アパート」か「マンション」で呼び分けるのが一般的です。

また、賃貸か分譲かを明示したい時には「賃貸アパート」「分譲マンション」などと呼んだりもします。

英語圏では、集合住宅を表すときには”flat”、”apartment”、”condominium”といった言葉を使います。それぞれの使い分けについては後述します。

ちなみに、“mansion”(マンション)は英語では「大邸宅」という意味になりますので、イギリスでもアメリカでも「集合住宅」という意味では使われません。間違いやすいポイントですので注意してくださいね。

”flat”、”apartment”、”condominium”の使い分け

集合住宅を意味する”flat”、”apartment”、”condominium”の3単語ですが、少し複雑なので、順番に説明していきたいと思います。

まず、日本でいう所の「賃貸アパート」や「賃貸マンション」は、イギリスでは”flat”、アメリカでは”apartment”と呼ばれます。英語圏では日本でいうところの「アパートかマンションか」の区別はしません。どちらも「集合住宅」としてひとまとめに表現されます。

また、この場合の”flat”や”apartment”は建物全体ではなく各居住人の占有スペースを指します。もし、建物全体を表現したい場合は、”building”を後ろに付けます。

My apartment has 2 bedrooms.(米国)

My flat has 2 bedrooms.(英国)

私の賃貸マンション(の部屋、一人当たりの割り当てスペース)にはベッドルームが2つある。

New apartment buildings are under construction in the neighborhood.(米国)

New flat buildings are under construction in the neighborhood.(英国)

近所に新しい賃貸マンションがいくつも建てられている。

なおアメリカでは賃貸物件を”apartment”、分譲物件を”condominium”と呼び分けます。特に”condominium”は、口語になると"condo"(コンドー)と略されることが多いです。

イギリスでは賃貸物件でも分譲物件でも”flat”と呼ぶことが一般的です。どうしても正確に言いたい場合には”privately owned flat”などと細かく説明を入れて表現したりします。

He bought a condominium 2 years ago.(米国)

He bought a privately owned flat 2 years ago.(英国)

彼女は2年前に分譲マンションの一部屋を購入した。

ややこしいのが、イギリス英語でも”apartment”を使用する場合があるという点です。イギリスで”apartment”と言う場合は「高級マンション」という意味になります。

まとめると、

flat(イギリス)アパートやマンションの部屋

apartment(イギリス)高級マンション/(アメリカ)賃貸のアパートやマンション

condominium(アメリカ)分譲マンション

mansion(イギリス/アメリカ)大邸宅 ※一戸建て。集合住宅ではない。

ということになります。

ルームメイトの呼び方

ルームシェアをする場合など、同居している人のことを日本語では「ルームメイト」と呼びますが、英語ではなんと呼ぶのでしょうか?

実は「ルームメイト」についても、アメリカとイギリスで異なる言葉を使います。アメリカでは”roommate”、イギリスでは”flatmate”です。

同じ英語なのに国によって言い方が異なるのは英語学習者にとって困るところですが、言葉にはそういう側面があるので仕方がありません。自分の学習目的や好みに合う方を優先して覚えていきましょう。

Flatの使い方5:can be done quickly

"flat"の5つ目の使い方として、時間を表す語句の後ろにつけて「時間が短いことに驚いている感じ」を表現する副詞的な用法があります。

なお、元々のニュアンスとしては「動作時間の短さに驚いている」なのですが、驚いている感じから派生して「きっかり(ですごい)」という意味を表す場合も多いです。

思ったよりも短い時間で、しかもある区切りの時間ぴったりに終わってすごい!といいたいときにうってつけの使い方と言えます。

日本語でも「50m走を7秒フラットで走った」などと表現しますよね。英語でも同じように使えるというわけです。

He did it in 10 seconds flat!

彼はそれをピッタリ10秒でやったんだよ!

その他"Flat"の使い方

主な"flat"には入らなかったのですが、音楽をやっている方なら日常的に使う表現として「半音下の」もしくは「音が下がり気味である」という意味の使い方があります。

前者は文字通り変音記号の「♭」を指していますし、後者は音程が低めという意味で使います。日本語と同じですね。

How about starting with A flat?

A♭で(演奏を)始めるのはどう?

She always sings in a flat voice.

彼女の歌声はいつもフラット気味(ピッチが下がり気味)だ。

"flat"に関するスラング

口語でしか使わない、スラング的な”flat”の使い方もあります。

たとえば”flat‐out”というフレーズは、主にアメリカで「完全に」という副詞や「完全な」という形容詞として使われます。動詞や名詞を修飾して、その意味を強調する働きがあります。

この用法を文で書く時には、「flat-out」とハイフンでつないで表現します。

He flat-out lied to me. ※副詞的用法

彼は私に間違いなく嘘をついた。

That was a flat-out lie. ※形容詞的用法

あれは絶対嘘だった。

ちなみに、オーストラリアでは同じ”flat out”を使って「超忙しい」という意味を表す場合があります。

I've been flat out for the last 2 months.

この2ヵ月ずっと超忙しいんだよ。

ややこしいのが、オーストラリアでも上述した”flat-out”=完全に、完全な、という強調の意味での使い方もするという点です。どちらの意味なのかは、文脈から推測するしかありません。

全くお金がない、を表すスラング

「お金がない」という状態を表すスラング的な英語表現に”broke”という言い方があります。

She's broke.

彼女は一文無しだ。

そもそも”broke"だけでも「完全にお金がない」「すっからかん」という意味合いがあるのですが、さらにそれを強調した言い方が、“flat broke”です。

本当に救いようがないくらいにお金が底をついているというイメージです。

She's flat broke.

彼女はまったくの一文無しだ。

映画やドラマで目や耳にすることはあるかもしれませんが、現実で出会いたくはない場面ですね。

Flat のもつ意味を覚えて活用しよう

“flat”の色々な表現パターンをご紹介してきました。思っていたより多彩な意味があって驚いた、という方も多いのではないでしょうか。

すべてを一度に覚えるのは大変なので、まずは身近なものやよく使う表現から少しずつ覚えてみましょう。

自分がよく使う意味をいくつか覚えたら、次はぜひアウトプットにチャレンジすることをおすすめします。実際に使うことで”知識”を”スキル”に変えていくことができるからです。

今回紹介した”flat”の表現をどんどん使って、英会話力のスキルアップに繋げてみてくださいね。