ゲシュタルト崩壊とは?意味や使い方までわかりやすく紹介します

ゲシュタルト崩壊、漢字、日本語、心理学

こんにちは、ネイティブキャンプのタツ松崎です。

「文字をじっと見ていたらなんだか意味がわからなくなってきた」
「漢字がなんだかバラバラになっている気がする」

その現象、もしかしたらあなたにゲシュタルト崩壊が起こっているのかもしれません。

今回の記事はたまに耳にする言葉「ゲシュタルト崩壊」についてご紹介します。

認知心理学で使われる難しい言葉ですが、そこには思わず「へぇ~」と唸ってしまう意味があるんですよ。

ゲシュタルト崩壊に関する小説、漫画そしてアートの作品などがいくつもあります。

ゲシュタルト崩壊の意味を知って、ぜひ実生活でも使ってみてください。


ゲシュタルト崩壊とは?意味や使い方までわかりやすく紹介します

ゲシュタルト崩壊とは?

ゲシュタルト崩壊とはまとまったものがバラバラになっていく感覚のことをいいます。

例えば冒頭で出した例のように
「漢字をじっと眺めていたら意味がわからなくなってしまった」
「文字がなんだかバラバラに見えてきた」

などは、ゲシュタルト崩壊が起こっている代表的なシチュエーションです。

図形・顔・文字に加え、味覚や皮膚感覚にも生じると言われています。

じっと見つめる行動を「持続的注視」と呼びます。持続的注視をもって、漢字認知をしていきます。

初めは全体としてひとつの漢字として認識できているのが、じっと眺めているうちに視覚的疲労が起こりバラバラのパーツ(部分部分=構成部分)に見えてきてしまい、結果的に意味がわからなくなってしまう現象をいいます。

ゲシュタルト崩壊は心理学的用語であり、心理現象のひとつです。

ゲシュタルト崩壊は決してあなたの頭や精神状態が異常をきたしているわけではなく、認知能力が低下することによって起こっています。

日本心理学会のホームページにある「心理学ワールド」でも、健常な人間においても持続的注視によって全体形態の認知が減衰してしまう可能性があると述べています。

もうひとつには、意識せずに普段している行動、例えば呼吸や唾を飲み込むといったものを一旦意識するとできなくなるという現象もあります。

ゲシュタルトの意味は「形態・姿」

ゲシュタルト崩壊のゲシュタルトとは「形態・姿」を意味する言葉です。

ゲシュタルトはドイツ語で「Gestalt」です。

同じ意味で訳せるものがないので、英語でも同じく「Gestalt」と綴ります。

ゲシュタルトの考えは「ゲシュタルト心理学」から生まれたもの

ゲシュタルトの概念が生まれた背景には『ゲシュタルト心理学(Gestalt Psychology)』があります。

精神分析学・行動主義心理学と合わせて心理学の3派閥と言われています。

歴史を見てみると、ゲシュタルト心理学は20世紀初頭に生まれた分野で、人間の精神を全体的に捉えることに重点を置いた心理学です。

心理学の父と呼ばれたドイツの心理学者・ヴェルトハイマーらによって提唱されました。

ゲシュタルト心理学の大きな考えかたのひとつに「部分の総和は全体とは異なる」というものがあります。

人間の知覚であれば、個々の感覚を総合して「個」としての存在がある訳ではなく、あくまで全体的な枠である「ゲシュタルト」があることによって存在するという考えです。

例えばラーメンを食べるとき、僕たちはラーメンの匂いを嗅覚で、麺の食感を触覚で、味わいを味覚で感じることができていますよね。

無意識ではあるが、それぞれの構成があってラーメンを食べるという全体としての行為があります。

これがもし、ラーメンの匂いがわかる嗅覚だけで食べた場合はどうなるでしょうか?

触覚も味覚も感じられない僕たちは、ラーメンをラーメンと感じることができるのでしょうか?

そのほかにも、画像の積み重ねである映画などはわかりやすいゲシュタルトの例といえます。

僕たちは個々の映像に注目するのではなく。「映画」という枠組みを見ていますよね。

感覚の全体的な枠=ゲシュタルトがあることによって、人間の知覚は枠組みとして成り立っています。

この概念を生み出したのが、ゲシュタルト心理学なんですね。


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ゲシュタルト崩壊はどんなときに起こるのか?

ゲシュタルト崩壊とは認知能力が低下することによって全体のバランスがわからなくなり、バラバラになってしまうことです。

ゲシュタルト崩壊が起こりやすいのは、例えば視界を覆ってしまうほど大量の文字を継続して見ているときです。

一例として、下記の文字の羅列を30秒ほど眺めてみてください。

今 今 今 今 今 今 今 今 今 今
今 今 今 今 今 今 今 今 今 今
今 今 今 今 今 今 今 今 今 今
今 今 今 今 今 今 今 今 今 今
今 今 今 今 今 今 今 今 今 今

いかがだったでしょうか?

僕も実際にやってみましたが、これでゲシュタルト崩壊が起こることはありませんでした(笑)。

ゲシュタルト崩壊の起こりやすさには、個人差があるそうです。

上で使った「今」のほかにも傷・粉・若・野などの漢字の羅列は、ゲシュタルト崩壊を起こしやすい文字といわれています。

時間があるときに、ぜひ試してみてください。

子供のころ漢字を覚えるために漢字練習帳に何度も何度も書いたとき、途中でわけが分からなくなった、または別の字のように見えてしまったという経験をした人も多いのではないでしょうか。

ほかにもアスキーアートと呼ばれる文字だけで絵を表現したもの((^O^)←こういうものですね)を見続けているときも、ゲシュタルト崩壊が起こります。

またゲシュタルト崩壊は視覚的な情報を得るとき以外にも、聴力的な情報獲得・皮膚的な情報獲得をするときに起こることがあるそうです。

例えば音楽を聴いていて「あれ、この曲ってどんな曲だったっけ?」と、わからなくなるような現象でしょうか?

皮膚的な情報獲得というと、なにかに触っているときでしょうか?あまり想像がつきませんね…。

そのほかにも、精神的なゲシュタルト崩壊として「洗脳」が挙げられます。

例えば宗教などでは新しい考えの信仰を通して、ゲシュタルト崩壊が起こると考えられます。

都市伝説的な話ですが、「お前は誰だ」と鏡に向かって問いかけ続けると、自分のゲシュタルトが崩壊してしまうこともあるのだとか…(実際にするのはやめてくださいね)。

こうした話を聞くと「いや、精神的なバランスが崩れているだけじゃないの?」と考えることも多いですが、あくまで認知的な能力が低下していることが原因のようです。

ゲシュタルト崩壊は英語でも起こるの?

結論から先にいうと、英語という言語でゲシュタルト崩壊は起こりづらいようです。

その原因として英語に使われるアルファベットは画数が少なく(ABC)、ずっと見ていてもそもそもバラバラになるパーツがないからだといわれています。

試しに下記に「A」の羅列を作ってみました。

A A A A A A A A A A
A A A A A A A A A A
A A A A A A A A A A
A A A A A A A A A A
A A A A A A A A A A

いかがでしょうか?

実際に僕自身もアルファベットの羅列を30秒ほど眺めてみました。ですが漢字のように頭がクラクラするような感覚もなく、いたって普通の状態でした。

アルファベットのようにシンプルな形で表現される文字では、ゲシュタルト崩壊は起こりづらいようです。

対して漢字などの画数の多い文字の場合は、ゲシュタルト崩壊が起こりやすいようです。

「ぜひ実践してみてください」というのも変ですが、気になる方はぜひ試してみてください(おそらく大丈夫なはずです)。

ゲシュタルト崩壊を使うシチュエーション4つ

「ゲシュタルト崩壊」というと、とても知的な響きが伴っているように感じてしまうのは気のせいでしょうか?

ここではゲシュタルト崩壊という言葉の使い方を紹介します。

①「やばい、ゲシュタルト崩壊してきた」

例えば調べ物をしていて、ずっと本を読んでいるときなどです(辞書など)。

同じような文字の羅列に認知能力が下がってしまい、ゲシュタルトが崩壊してしまいます。

②「この曲なんだっけ?あれ、僕(私)ゲシュタルト崩壊してる?」

ずっと同じ音楽を聴き続けているときなど、気付いたときにはゲシュタルト崩壊している可能性があります。

同じリズムの音楽を聴き続けているときなどにも、起こる可能性があります。

③「考えかたがゲシュタルト崩壊を起こしてきた、きちんと考えることができない」

ゲシュタルト崩壊という言葉は、本来の意味を飛び越えて精神的なバランスが崩れている状態を指すこともあります。

例えば、仕事の提案を何度も何度も却下されたときです。

頭と心が怒りと悲しみに満たされてしまい、心がバランスを崩してしまうことは容易に想像できることですよね。

そんなときはゲシュタルト崩壊を起こしているといえます。自分の心が全体的なまとまりを崩してしまったときです。こんなときは、少し休息が必要かもしれませんね。

④「あれ、次にどっちの足を出せばいいんだっけ?ゲシュタルト崩壊してる…」

この状況は階段を利用しているときに起こります。

階段はその構造上同じようなデザインの足場が上下に延々と続いています。

そのため、気付いたときには認知能力が低下してしまい、ゲシュタルト崩壊につながってしまいます。この経験は僕自身もあり、実際に転びそうになりました。

ゲシュタルト崩壊とは要は同じようなものを見ているうちに認知能力が低下してしまい、なにがなんだかわからなくなってしまうことです。

日常的に口に出す状況も意外なほどあるでしょう。

もし同じような状況に陥ったときは、口に出してみてはいかがでしょうか?

【雑学】ゲシュタルト崩壊が広がった原因はトリビアの泉

難しい心理学用語であるはずの「ゲシュタルト崩壊」が日本に広く普及した背景には、2002年~2006年の間に放送された「トリビアの泉」の影響があります。

お茶の間で広く人気を集めていた番組で紹介されたことで認知度がアップし、たまに目にする・耳にする機会は大きく増えました。

今ではゲシュタルト崩壊で検索すると関連する動画もたくさん出てきますが、もともとはテレビ番組がきっかけだったんですね。

ちなみに獲得したのは96へぇ~です。是非ゲシュタルト崩壊の雑学として、覚えておいてくださいね。

まとめ

ここまでゲシュタルト崩壊について紹介してきました。

最後にあらためて今回の内容をまとめておきます。

・ゲシュタルト崩壊とは、全体のバランスが崩れバラバラになってしまうこと
・ゲシュタルト崩壊は精神的な関係ではなくあくまで認知能力の低下が原因
・漢字など画数が多い文字に起こりやすく、英語など画数が少ない文字は起こりづらい
・視覚的なもののほか、聴覚的・皮膚的なゲシュタルト崩壊もある
・日本でゲシュタルト崩壊が広がったのは「トリビアの泉」の放送から

元々は難しい心理学用語であったゲシュタルト崩壊は、僕たちの日常生活でも頻繁に使う機会があります。

またゲシュタルトは語源のドイツ語から日本語や英語に派生しているので、どの言葉でも「Gestalt」と表現します。ゲシュタルト崩壊は「Gestaltzerfall」と表現しますよ。

いつの日かあなたの口から「ゲシュタルト崩壊」という言葉が出てくる日もあるかもしれません。それが日本語であれ英語であれです。

もし英語での使いかたを勉強したいという希望があれば、24時間レッスンが受講できるネイティブキャンプを選んでみてください。

日常会話から発音まで、あなたの希望に幅広いレッスン内容で応えてくれますよ。

ゲシュタルト崩壊の意味や使いかたについて、今回の内容はお役に立ったでしょうか?

そうであれば幸いです。ぜひあなたも使ってみてくださいね。