
海外旅行や留学、仕事での長期滞在を計画する際に、気になるポイントのひとつである治安の良さ。世界には治安が良く安全に過ごせる国がある一方で、紛争やテロ、犯罪発生率が高い地域もあります。
本記事では、2025年最新の世界平和指数に基づいた世界で最も安全な国ランキングをご紹介します。安全な国に共通する特徴や日本のランキングなどについても解説するので、参考にしてください。
- 各国の平和度を数値化した世界平和指数(GPI)
- 【2025年度】世界で最も安全な国ランキング・トップ10
- 世界平和指数が高い、安全な国に共通する特徴
- 2025年度の日本のランキングは12位
- 世界平和指数が高いからといって油断は大敵
- まとめ
各国の平和度を数値化した世界平和指数(GPI)
世界平和指数(Global Peace Index)は、各国の平和度を数値化した国際的な指標です。イギリスの経済平和研究所(Institute for Economics and Peace)が毎年発表している指数で、163の国と地域を対象に以下3つの観点から評価しています。
社会の安全・治安
国内外の紛争状況
軍事化の程度
犯罪率や暴力事件の発生頻度、政治的安定性、軍事費の対GDP比率など、合計23の定性的・定量的指標から算出する世界平和指数によって、各国の安全性を客観的に比較できます。
指数の値が低いほど平和度が高いことを示し、1.0に近いほど安全な国と評価されます。世界平和指数は、国連や各国政府、国際機関などにも参照される信頼性の高い指標であり、海外旅行者や海外移住を考える人々にとって重要な情報源となっています。
【2025年度】世界で最も安全な国ランキング・トップ10
以下では、2025年度最新版の世界で最も安全な国のランキング・トップ10を紹介します。
1位:アイスランド(スコア:1.095)
2008年から連続して世界平和指数1位を維持している北欧の国、アイスランド。警察官が銃を携帯しておらず、殺人率や暴力犯罪の発生率が極めて低いことが特徴です。ちなみに、2024年1月には、アイスランド史上2人目の女性大統領であるトーマスドッティル大統領が就任。また、2024年12月に発足した内閣も、首相を含む11名中7名の閣僚が女性で構成されています。
アイスランドの治安の良さは、高い教育水準と社会的平等、強いコミュニティ意識によるところが大きいと言われています。
人口約36万人の小国ながら観光地としても人気が高く、美しい自然景観を見るために世界中から旅行者が訪れます。
2位:アイルランド(スコア:1.260)
アイルランドは、美しい自然と豊かな文化遺産で知られる北西ヨーロッパの国です。政治的に安定しており、暴力犯罪の発生率も低いことから、世界平和指数で常に上位にランクインしています。2023年にはEU内で唯一経済がプラス成長しており、2021年には先進国でトップの経済成長を達成しました。
アイルランド人は友好的で温かい国民性を持ち、観光客に対しても親切に接する傾向があります。
首都ダブリンをはじめとする都市部でも、昼間の治安は非常に良好です。ただし、観光客を狙ったスリや置き引きの可能性もありますので、貴重品の管理には十分注意しましょう。
3位:ニュージーランド(スコア:1.282)
ニュージーランドは、壮大な自然景観と多文化共生社会で知られる南太平洋の島国です。
犯罪率が低く、テロの脅威もほとんどなく、政治的にも非常に安定しています。欧米系67.7%、マオリ系17.7%、太平洋島嶼国系が8.8%、アジア系17.2%など多様な国民性ですが、マオリ文化を尊重する姿勢や環境保護への取り組みなど、社会的な調和を重視する国民性が、高い平和度に貢献していると考えられています。
『ロード・オブ・ザ・リング』などの映画のロケ地としても知られ、世界遺産に登録された自然公園や景勝地が多数あります。
4位:オーストリア(スコア:1.294)
オーストリアは、アルプスの美しい山々と芸術文化で有名な中央ヨーロッパの国です。国内の治安は非常に良好で暴力犯罪の発生率も低く、政治的にも安定しています。首都ウィーンをはじめ、モーツァルトの出身地ザルツブルグなど、芸術や自然を楽しめる場所が豊富にあります。
首都ウィーンをはじめとする主要都市は、整備された公共交通機関と清潔な街並みが特徴で、女性一人旅でも比較的安心して観光できる環境が整っています。ただし、観光客が多く集まる観光スポットや駅周辺では、スリや置き引きの被害に注意が必要です。
5位:スイス(スコア:1.294)
ドイツやフランス、イタリア、リヒテンシュタイン、オーストリアなど、さまざまな国に囲まれた中央ヨーロッパに位置する、スイス。武装中立を宣言している永世中立国です。多くの国際機関の本部が設立されていることでも知られています。公用語は、ドイツ語やフランス語をはじめ、イタリア語、ロマンシュ語の4つです。
チューリヒや山岳地域にあるグラウビュンデン州、ベルン州、ヴァリス州など、スイスには多様な観光地があります。治安も比較的良いと言われていますが、観光客を狙ったスリや置き引きなどの犯罪もあるので、注意しましょう。
6位:シンガポール(スコア:1.357)
シンガポールは東南アジアに位置する都市国家です。厳格な法執行と高度な監視システムを通じて、極めて高い治安レベルを維持しています。麻薬や銃器に対する厳しい法律があり、軽微な犯罪に対しても厳罰を科すことで知られています。たとえば、道端で唾を吐いたり、ゴミのポイ捨てなども禁止されていることは、日本でも有名です。
近代的な高層ビルと伝統的な文化が共存する独特の都市景観は、多くの観光客を惹きつけています。公共交通機関も非常に発達しており、清潔で安全な環境が整っています。
法律が厳格なため、旅行者は現地の規則(ガムの持ち込み禁止、公共の場での飲食禁止など)をよく理解した上で滞在することが大切です。
7位:ポルトガル(スコア:1.371)
ポルトガルは、北と東でスペインと国境を接しているユーラシア大陸の最西端に位置する国です。リスボンやポルト、シントラなどの都市は人気のある観光地で、それぞれ異なる魅力があります。
ヨーロッパ諸国の中でも治安が良い方だとされていますが、最近はリスボンやポルトをはじめとした大都市でスリや置き引き、ひったくりなどの犯罪が多くなっています。外出の際は持ち物に十分注意しながら行動しましょう。
8位:デンマーク(スコア:1.393)
デンマークは、ドイツの北に位置する北欧諸国のひとつです。ユーラシア大陸にある本土のほかに、グリーンランドやフェロー諸島にも自治権を有している国です。国全体の人口599万人のうち、80万人が首都コペンハーゲンに住んでいます。
世界平和指数は世界8位とトップ10内にランキングしていますが、近年は首都圏を中心にギャングの構想と思われる発砲や爆発事件が起きるなど、滞在中は警戒が必要です。
9位:スロベニア(スコア:1.409)
中央ヨーロッパに位置するスロベニアは、ヨーロッパの文化や交易の交差地点としての役割を果たしてきた国です。イタリアやオーストリア、クロアチアやハンガリーなどと国境を接しています。2022年12月には、前任の大統領任期満了に伴って史上初の女性大統領が誕生しました。
治安は全般的に良いとされていますが、観光客が増える夏季を中心に、スリや置き引きなどの被害が増える傾向にあります。滞在中は持ち物に十分注意しながら、行動しましょう。
10位:フィンランド(スコア:1.420)
フィンランドは北ヨーロッパのスカンジナビア半島に位置しています。ノルウェーとスウェーデン、ロシアと国境を接しています。人口や経済の規模は小さいものの、1人あたりのGDPの高さから、経済的に豊かで自由な国というイメージが定着しています。
ヨーロッパ各国の中では治安が良いことで知られていますが、夏や冬などの観光シーズンには、ヘルシンキなどの都市部でスリや置き引きなどの犯罪が増加します。携行品は肌身離さず持ち歩きましょう。
世界平和指数が高い、安全な国に共通する特徴
以下では、世界平和指数が高く、安全な国に共通する特徴を4つ紹介します。特徴をしっかり確認した上で、渡航先を選ぶと良いです。
社会的、政治的に安定している
ひとつ目の特徴は、社会的・政治的に安定していることです。民主主義が機能しており汚職が少なく、政府への信頼度が高い国ほど、平和指数が高い傾向にあります。たとえば、北欧諸国やスイス、ニュージーランドなどは政治的透明性が高く、市民の政治参加も活発です。
政治的対立が暴力に発展することが少なく、社会全体が安定しています。なお、社会情勢が安定していることの要素として、社会保障制度が充実していることも重要です。
経済的に豊かで、所得格差が比較的小さい
国民が経済的に豊かで、かつ国民間で所得格差が小さいことも、治安が良い国の特徴です。経済的な安定と公平な富の分配は、社会の安全性に大きく貢献するからです。たとえば、北欧諸国では累進課税制度や充実した社会保障を通じて、極端な貧富の差が生じにくい仕組みを作っています。
経済的不平等が少ない社会では犯罪の動機となる経済的要因が減少するため、結果として治安が良くなると考えられています。
教育水準と市民意識が高い
安全な国の多くには、高い教育水準と市民意識が備わっています。質の高い教育が広く普及することで市民が法律や社会規範を理解しやすくなるため、他者を尊重する傾向が強まるからです。たとえば、アイスランドやフィンランド、シンガポールなどは教育に多くの資源を投入しているため、識字率や高等教育進学率が非常に高いです。
教育水準が高く、市民意識が強い国では、市民が社会的責任を自覚し、互いを尊重する文化が根付いています。
公正かつ効果的な法執行システムが整っている
安全な国々に共通するもうひとつの特徴は、公正で効果的な法執行システムが備わっていることです。警察や司法制度が効率的に機能しており、かつ、法の下の平等が保障されている国ほど平和指数が高まります。たとえば、シンガポールやスイス、日本などでは、法執行機関への信頼度が高く、汚職も少ないため、法律が適切に執行されています。
警察と市民の協力関係が構築されている国では犯罪の早期発見・防止をしやすいため、治安を維持しやすいのです。
2025年度の日本のランキングは12位
2025年の世界平和指数では、日本は12位にランクイン。スコアは1.440で、2024年度の17位から5位アップしました。
特に、高く評価を受けているのは社会の安全・治安の分野。殺人率や暴力犯罪の発生率が低く、警察への信頼度も高いことが評価されています。また、東京を含む日本の主要都市は世界的に見ても治安が良く、観光客にとっても安心して訪れることができる場所として知られています。
日本が治安の良い国として評価される理由は以下のとおりです。
| 強い社会的結束力 規範意識 |
他者への配慮や公共空間でのマナーが重視され、個人の行動が社会全体の調和を乱さないよう自制する文化がある |
| 法執行システムの効率性 | 警察官の数は人口比で見ると多くはないが、交番(派出所)システムにより地域に密着した治安維持活動が行われている |
| 教育 | 道徳や公共心を育む取り組みが犯罪防止に寄与 |
世界平和指数が高いからといって油断は大敵
世界平和指数が高く、安全とされる国でも、訪れる際には注意すべき点があります。安全な国でも、以下のようなリスクに注意することが必要です。
| 観光客を狙った軽犯罪 | ・スリや置き引き、詐欺などは安全な国でも発生する ・特に観光客が多く集まる場所では警戒が必要 |
| 自然災害 | ・火山活動や地震など、安全な国でも自然災害のリスクはある |
| 健康リスク | ・渡航先の衛生状況や必要な予防接種について事前に把握 ・万が一に備えて旅行保険への加入 |
| 言語の壁 | ・言語が通じないことが原因で生じるトラブルもある ・基本的な現地語のフレーズを覚えておくと安心 |
以下では、安全な国を訪れる際の注意点について解説します。
貴重品の管理は怠らない
どんなに治安の良い国を訪れる場合でも、基本的な安全対策は怠らないことが重要です。貴重品の管理には十分注意し、パスポートやクレジットカード、現金などは分散して持ち歩きましょう。なお、宿泊先のセーフティボックスを利用するのもおすすめです。
特に人混みの多い観光スポットや公共交通機関では、スリや置き引きに注意しましょう。
渡航前に現地の文化や慣習をリサーチしておく
安全な国であっても、現地の文化や習慣を尊重する姿勢は非常に重要です。渡航前にその国の文化や慣習、法律について調べておきましょう。現地の規則を知ることで、不用意なトラブルを避けることができます。特に宗教施設や神聖な場所を訪れる際は、服装や行動への配慮が必要です。
また、渡航先の慣習や罰則を伴う行動についても確認しておきましょう。たとえば、シンガポールでは公共の場所でのポイ捨てや飲食が禁止されていたり、北欧諸国では列に割り込む行為が非常に失礼だとされたりします。こうした文化的な違いを理解して尊重することが、現地の人々との良好な関係を築く第一歩となります。
まとめ
世界平和指数・安全な国のランキングの上位に位置する国々に共通するのは、政治的・社会的安定性、経済的繁栄と平等性、高い教育水準と市民意識、効果的な法執行システムなどです。2025年度、日本は12位にランクイン。社会の安全・治安の面で高い評価を受ける一方で、新たな犯罪形態への対応や自然災害リスクなど課題も抱えています。
安全だと言われている国でも基本的な安全対策を怠らず、現地の文化や習慣を尊重する姿勢が重要です。安全に滞在できるように、事前に下調べをした上で渡航しましょう。旅行前の情報収集先として、外務省の海外安全ホームページを参照すると良いですよ!
海外旅行や長期滞在先を選ぶ際の貴重な情報源である世界平和指数。旅行スタイルや目的に応じて、さまざまな要素を考慮した上で行き先を決めましょう。