2024年の7月から、日本では新紙幣が流通するようになりました。
お財布の中にある新しいピンとしたお札に、まだ慣れていない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
紙幣は、その国の文化や歴史を反映する重要アイテムの一つです。 日本で紙幣のデザイン変更がある度に大きな話題となりますし、外貨紙幣のデザインもおしゃれなものが多くて気になりますよね。
今回は、旅行先や留学先としても人気の国
オーストラリアの紙幣について、徹底的に紹介していきます。
オーストラリア紙幣について
みなさんは、オーストラリア紙幣と聞いたときどのようなものを思い浮かべるでしょうか?
オーストラリア紙幣の特徴は、なんといってもその材質です。
「紙」幣というからには紙でできているのかと思いきや、オーストラリア紙幣は実は
ポリマーと呼ばれるプラスチック製なんです。
薄いプラスチックなので、折ることもできるほどです。
ポリマー紙幣は通常の紙幣と比較すると、発行するのに手間とコストがかかります。
その一方で、耐久性に非常に優れているため、長持ちするという利点があります。
ポケットにうっかりお札を入れっぱなしにして洗濯してしまっても問題ないほど、丈夫な作りだと言われています。
加えて、ポリマー紙幣はその特殊な技術から偽造が非常に難しいです。
そのため、丈夫なうえに偽造通貨の流通を防げる、ということでコスト以上のメリットがあると判断されて現在でも流通が続いています。
オーストラリアの紙幣の歴史
まずはオーストラリアの紙幣の歴史から紐解いていきましょう。
オーストラリアで使用されている通貨単位は、
ドルとセントです。
紙幣で使用されているのは、
オーストラリアドルです。
ポンドからドルへ
「オーストラリアはイギリスの旧植民地なのだから、ポンドじゃないの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
実は、1966年までオーストラリアではポンドを使用している時期もありました。
しかしながら、十進法でより分かりやすいドルの方が良い、という意見が生まれたため、ポンドではなくドルへと通貨の単位が変更となりました。
世界初のポリマー幣
前の項でもお伝えしたとおり、オーストラリア紙幣はポリマーと呼ばれるプラスチックでつくられています。
オーストラリア建国200年の記念として1988年に導入されました。
ポリマー紙幣が発行されたのは、なんと世界初の出来事でした。
現在のオーストラリアで流通している紙幣は、すべてポリマー製です。
オーストラリア紙幣に描かれている人物
オーストラリアの紙幣は現在、全部で5種類のものが発行されています。
日本のお札以上に色がはっきりしていて、とてもカラフルな印象を受けます。
では、それぞれの紙幣にはいったいどんな人物が描かれているのでしょうか。
5ドル札(ピンク)
最も少額の5ドル札の表面に描かれているのは、
2022年に崩御なされたイギリスの女王エリザベス2世です。
なぜイギリスの女王がオーストラリアの紙幣に描かれているかというと、オーストラリアはコモンウェルス・レルム(英連邦王国)の一国だからです。
女王の崩御に合わせて、新たに君主となったチャールズ3世の肖像に変更されるかが注目されましたが、これを機にオーストラリアの先住民文化を反映したデザインに近く変更されることが発表されました。
チャールズ3世の肖像は、紙幣ではなくコインに使用されています。
また、5ドル札の裏面にはオーストラリアの首都キャンベラにある国会議事堂が描かれています。
10ドル札(ブルー)
次に少額の10ドル札の表面には、
オーストラリアの詩人であるバンジョー・パターソンが描かれています。
彼は19世紀半ばから20世紀中ごろまで活躍していた人物で、詩人としてだけでなくジャーナリストとしても活躍していました。
彼の代表作は、「ワルツィング・マチルダ」という詩で、オーストラリアで最も有名な歌の一つです。
さらに10ドル札の裏面は、マリー・ギルモアの肖像が印刷されています。
彼女もオーストラリアを代表する作家兼ジャーナリストで、オーストラリア文学に多大なる貢献をした人物として知られています。
20ドル札(レッド)
20ドル札の表面を飾っているのは、
マリー・ライビーです。
彼女はヴィクトリア朝後期のイギリスに生まれましたが、馬を盗んだ罪でオーストラリアへと流されました。
自由の身となってからはオーストラリアで事業を営み、大成功を収めました。
オーストラリアにおける伝説的なビジネス・ウーマンとしてその名を広く知られています。
そして、20ドル札の裏に印刷されているのは、ジョン・フリンです。
フライングドクターという、日本でいうところのドクターヘリのような移送医療事業を開業した功績により、彼の肖像が20ドル札に選ばれました。
50ドル札(イエロー)
50ドル札の表面に肖像画が描かれているのは、
デイビッド・ユナイポンです。
アボリジニー出身の伝道師であり、発明家、そして作家としての顔も持つ彼は、オーストラリアにおけるアボリジニー文化にまつわる数々のステレオタイプを打破してきた人物です。
そして、裏面に描かれているのはイーディス・カーワンという政治家です。
彼女は1921年にオーストラリアで女性として初めて議員になった人物です。
紙幣には彼女が行ったスピーチの文言が印刷されているのですが、発行から約半年後にスペルミスが発覚し、世界的に大きな話題となってしまいました。
100ドル札(グリーン)
最も高額である100ドル札の表面に印刷されているのは、
オペラ歌手のネリー・メルバです。
ヴィクトリア朝後期から20世紀にかけてもっとも有名な歌手だった彼女は、国際的に著名となった最初のオーストラリア人と考えられています。
オーストラリアだけでなくヨーロッパやアメリカでも成功を収めていた彼女が亡くなった際には、とても大きなニュースとなり、彼女の葬儀は国民的行事となったほどでした。
100ドル札の裏面に描かれているのは、ジョン・モナッシュです。
土木技師としても有名だった彼は、第一次世界大戦にて非常に大きな功績を上げたことで知られている陸軍将校です。
オーストラリアでの現金使用方法
さて、ここまでオーストラリアの紙幣についてお話してきましたが、オーストラリア国内で現金はどのように使われているのでしょうか。
実は、オーストラリアは
超キャッシュレス先進国です。
オーストラリア銀行協会が調べたところによると、2022年末時点で現金の利用率はたったの13%だったと言われています。
このままいくと、5年ほどでオーストラリアは完全なキャッシュレス社会に移行すると言われています。
実際、シドニーやメルボルンなどといったオーストラリアの大都市では、ほとんどの場所で電子決済の利用が可能となっており、現金がなくて困る場面にはほとんど遭遇しないそう。
しかしながら、だからといってオーストラリアに旅行や留学で行く際に現金を一切持って行かないで良い、というわけではありません。
クレジットカードやキャッシュパスポートのようなカード類は、現地で紛失したり盗難被害に遭ったりする可能性があります。
また、カードなどの支払いでは、週末などはサーチャージが課されて出費がかさむ場合があります。
電子化が進んでいるとはいえ、現金も従来通り利用できるとのことなので、安心のために少しでも円から両替して用意することをおすすめします。
オーストラリアの硬貨と紙幣の関係
では、紙幣ではなくオーストラリアの硬貨についても説明しましょう。
オーストラリアには6種類の硬貨が流通しています。
5セント、10セント、20セント、50セント、1ドル、2ドルの計6種類です。
オーストラリアの硬貨、特に50セントと1ドルコインは様々な柄のものが流通しています。
そのため、同じ金額なのに柄が違う、と混乱してしまうこともあるかもしれません。
中にはコレクターアイテムになっているものもあり、高額で取引されることもあります。
オーストラリアの硬貨
オーストラリアの硬貨は、エリザベス2世の肖像画刻印されたものがほとんどでしたが、チャールズ3世の退官に伴い、国王が刻印されたものもすでに流通しています。
本国であるイギリスよりも早くに流通し始めたというのが、少し意外です。
しかしながら、エリザベス女王が刻印されたコインは未来永劫使用可能だ、とオーストラリア政府が発表していますので、女王のコインも安心して利用できます。
10セント以下はちょっとややこしい
オーストラリアの6種類の硬貨を聞いて、1セントと2セント硬貨がないことに気づいた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、オーストラリアでは過去に1セントと2セント硬貨が使用されていましたが、今では製造が中止され流通していません。
利用する場面が減り、細かくなりすぎるから、という理由なようですが、全く使いどころがないか、というとそうではありません。
1セント単位の値段がつけられている場合があるからです。
では、その場合どのようにして支払うのかというと、金額に応じて切り上げ・切り捨てを行います。
四捨五入と同じような要領で、1、2セントであれば切り捨て、3-7セントであれば5セント、8、9セントならば1ドル、といった具合に調整してお会計を行います。
少しややこしいですね。
この切り捨て、切り上げ問題は効果を必要としない電子であれば発生しないので、この辺りもキャッシュレス化が加速している理由なのかもしれませんね。
オーストラリアのお金の表現
最後に、オーストラリアではお金のことをどう呼んでいるのかについてもお話します。
オーストラリアの通貨単位はドルとセントですが、それ以外の呼び方でお金を表現することがあります。
一番多く耳にする表現が、
「バック(buck)」です。
シカの皮(Buck Skin)に由来する表現で、通貨がまだ流通しきっていない時代にはシカの皮をお金代わりに使用していたことから、その名残でこの表現が残っているようです。
同じくドルを通貨としているアメリカでもよく耳にする表現ですね。
さらに変わったところだと、「ドウ(Dough)」と呼ぶこともあります。
これはパンや焼き菓子の生地のことを指す言葉ですが、おそらくこれらもお金の代わりに使用されていた歴史があるため、その名残として表現が残っているのでしょう。
このように、ドル以外にもお金を表現する言葉が複数あります。
慣れないうちは戸惑うかもしれませんが、ドル以外にも表現があることは覚えておきましょう。
また、通称だと正確な金額が分からずに不安な場合には、きちんと確認した方が安心かもしれませんね。
まとめ
今回は、オーストラリアの紙幣やお金事情についてお話してきました。
紙幣の歴史や描かれている人物、使い方に硬貨との関係、そしてお金の呼び方など、さまざまな側面からオーストラリアの紙幣を徹底解剖しました。
これらのオーストラリアのお金事情について頭に入れたうえで、これから旅行や留学でオーストラリアに行く人は、ぜひ現地を思う存分楽しんでいただければと思います。
この記事が少しでもその助けになっていれば、幸いです。
◇経歴
・都内私立大学の英米文学科に入学
・大学院にてイギリス文学を専攻し、修士号取得
・翻訳専門学校にて英日翻訳の基礎コース修了
◇資格
・TOEIC 890点
◇留学経験
イングランド・グロスターシャー大学夏期文化研修(大学夏期休暇中)イングランド・オックスフォードの言語学校(大学夏期休暇中)
◇海外渡航経験
カナダ・バンクーバー、カルガリー(部活)
アメリカ・ニューヨーク(旅行)
◇自己紹介
幼いころから英語が好きで、ディズニーとマザー・グース、NHK教育テレビで育ちました。小学2年生で「ハリー・ポッター」シリーズと出会い、それ以降は大のPotterhead道を突き進み、イギリス文学と文化研究にいそしみ続けています。物語がとにかく好きで、映画、ドラマ、音楽、小説などを通じて、日本にいながらして毎日英語を浴びています。
少しでも役立つ情報を発信できればと思っています。よろしくお願いします!