教科書英語でも実際には使えない英語とは?

教科書英語でも実際には使えない英語とは?

中学校や高等学校の英語の授業で、こんな始まりの挨拶をしませんでしたか?

先生が“How are you?”と尋ねたら、生徒全員で“I’m fine, thank you. And you?”と答える、みたいな。このやりとりが身に沁みつきすぎて、 “How are you?” と聞かれたら反射的に答えてしまう人、多いのではないでしょうか。

それほどまでに日本人に馴染んでいる英語の挨拶ですが、実際の英会話ではこのやりとり、あまり聞かないんですよね。

“I’m good!” “Not bad.”など、その返答は様々です。“And you?”の部分も、少しフォーマルすぎるので“How about you?”等と尋ねたりすることが多いです。

今回は、そんな「教科書で習ったのに!え?使わないの??」という表現をご紹介していこうと思います。実際に使われるフレーズの例も合わせてご紹介します。

それでは早速見ていきましょう!

1:“Pardon?”・・・聞き返しでPardonは丁寧すぎる?

英語で会話をしていて聞き取れなかったときの「え?何て言った?」と聞き返すシチュエーション。皆さんならなんと言いますか?

教科書では “Pardon?” と習いませんでしたかでしょうか。パードン。語感がいいですよね。思わず口にしたくなるというか。クラスで流行った!という声もちらほら聞こえます。実際私も高校生の頃、友達同士の日本語の会話で「は?何言ってるの?」の代わりに「ぱーどん?」って言ったりしていた気がします。

この pardon ですが、辞書を引いてみると「恩赦」「寛容」「贖宥」…重い、重いです。なんだかとても厳格な雰囲気です。

“Pardon?” 以外の聞き返し

実際、アメリカの若者同士の会話では“What did you say?” “What was that?”等と聞き返すことが多いと思います。

もっと簡潔に“Sorry?” “What?” “Huh?”と返すこともあります。“Excuse me?”もありますね。

“Pardon?”だと丁寧すぎるというか、かしこまっているというか、古い英語のような。むしろ逆に日常からかけ離れている表現をあえてふざけて言っている、というような空気になることも。

丁寧に言いたい、でも丁寧すぎる表現は避けたい、というときは“Could you say that again?”などもナチュラルな響きで良いと思います。

ネイティブスピーカーに“What?” “Huh?”等と言われると、ちょっと心が削られますよね…日本語の「はぁ?」に聞こえて。でもこれらに煽り要素は入っていないので、気にしなくて大丈夫です。

自分が使う場合は、言い方には注意が必要です。力強く“What?”と言ってしまうと失礼なニュアンスになってしまうので、やわらかい発音、軽めの発音を心がけましょう。

地域差もある

と、これまで散々「Pardonは使わない」と言ってきましたが、もちろん使う場面もあります。

例えばイギリスや英国連邦系の国では、割と日常的に登場します。子供同士の会話でも出てくるくらいです。アメリカでもビジネスシーンなどで耳にしますね。

文化圏や会話をしている相手との間柄、シチュエーションなどで使えたり使えなかったり違和感があったりなかったり…難しいところですね。個人的には“Sorry?”あたりがシンプルで使いやすく汎用性も高いかな、と思います。

“Good afternoon”も丁寧すぎる

“Pardon?”と似たケースで、教科書に登場し何度も復唱したフレーズなのにアメリカの若者同士の会話では丁寧すぎてほとんど登場しない挨拶があります。

それは“Good afternoon.”です。

教科書ではお昼(午後)の挨拶として学びますね。朝の挨拶は“Good morning!”。夜の挨拶は“Good night!”。これはどちらも普通に使うのですが、なぜか“Good afternoon!”だけは言わない不思議。

日中の挨拶は“Hi!”や“Hello!”がダントツで使用頻度高いです。

では、どのようなシチュエーションで“Good afternoon!”が使われるのかというと、それはフォーマルな場です。学校で先生と、ホテルでコンシェルジュと、職場で、壇上の挨拶で…などなど。

基本的に、英語の教科書に出てくる英語はフォーマルなものです。シチュエーションによっては日常会話で使わないものがあったり、ネイティブスピーカーとの会話の中で違和感を生じたりするものもあったりするので、ナチュラルに聞こえる表現を使っていけたらいいですね!

2:“What’s your hobby?”・・・hobbyはニュアンスが違う?

教科書で最初の方に出てくる、自己紹介などのシチュエーションありますよね。会話形式で趣味は何かと尋ねてみたりする、あそこです。

What’s your hobby?
趣味は何ですか?

こちらの文章、文法的にカンペキです。Google翻訳をかけても何の問題もなさそう。でも、ネイティブスピーカーが初対面の自己紹介というシチュエーションでこの質問を投げかけられると違和感があるそうです。

“hobby”と「趣味」の違い

その理由は“hobby”という単語。

日本語訳は「趣味、道楽、ホビー」ですが、日本人が「趣味は何ですか?」と尋ねるときに想定している「趣味」とはズレがあります。

日本語で「趣味」というと本格的なもの(切手など収集系、プラモデルや洋裁など制作系)、気楽なもの(音楽、映画鑑賞、読書など)、スポーツ(ジョギングなどのライトなものから本格的なものまで)等々、多岐に渡りますよね。

質問する側としては「何が好き?」「普段何してるの?」くらいの気楽な気持ちだったりします。

一方、英語で“hobby”というと「本格的に取り組んでいるもの」「スキルが身に付いて初めて行えるもの」というイメージが強いのです。

みんなでわいわいやるようなものではなく、独りで静かに行うものがメインですね。「友達とカラオケに行く」「みんなでBBQをする」というのは hobby ではないのです。

英語の Wikipedia で hobby の例として出ているものは、切手収集、バードウォッチング、ジオラマ制作、洋裁、料理、山登り、ハンティング、ガーデニング、歌、手品、楽器演奏などがあります。

初対面というシチュエーションでの聞き方

このように、英語の“hobby”は「本格的に取り組んでいること」なので、初対面の人に軽い気持ちで尋ねられてしまうと、「え?それを今、聞く?まだ友達でもないのに?」という違和感、唐突感が生まれるのです。

では、日本語の会話でいうところの「趣味」に近いニュアンスで尋ねたい場合は、どのような表現になるでしょうか。

What do you usually do for fun?
いつもどんなことを楽しんでいますか?

What do you do in your free time?
How do you spend your free time?

時間があるときには何をして過ごしますか?

このように習慣としての時間の使い方や、好きなことを尋ねると、会話としてナチュラルです。

3:“I’m sleepy!”・・・sleepyは子供っぽい?

I am sleepy.
私は眠いです。

こちらの文章も文法的にまったく問題はありません。“sleepy”は「眠い」という意味なので訳語としても正しいです。ところが、日本人が「わー、眠い」というようなシチュエーションでも“I’m sleepy”とは言わないのです。

大人は“tired”

私自身、ネイティブスピーカー相手に“I’m sleepy”と言った経験がありますが、言いなおされました。

You are tired.
疲れているのね。


逆に違和感があったので鮮明に記憶しています。

いや、疲れているんじゃなくて、眠いんです。ただ眠いんです。でもこちらの文化的に「眠い=疲れている」なのかな。そんな風に自分を納得させた記憶があります。

その後、他の方の会話などに注意していても、誰も“sleepy”って使っていませんでした。どうやら大人は起きている状態で“sleepy”にはならないようです。諸説あるかと思いますが、“I’m sleepy”が許されるのは小学校低学年ぐらいまでらしいです。

私自身、「眠い」といいたくなるシチュエーションでは、都度「眠いじゃない、疲れている、だ」と脳内変換し、以下の様に言うようにしました。

I’m tired.
疲れたー!

I’m exhausted.
へとへとだよー!

なお、寝起きでまだ眠い状態では“sleepy”を使います。寝ているので身体の疲れはとれているはずだけど、まだ目が完全には冷めていない状態なので“I am still sleepy.”が成り立つのです。

“play with”も子供限定

友達と出かけることを、日本語では「遊びに行く」と言いますよね。

これを英訳して“play with”を使った表現をすると違和感が出てしまいます。 スポーツをする、という意味ではなく、遊ぶという意味の“play”は子供が遊ぶ場合の用法なのです。

それでは、どのように言えば違和感がなくなるでしょうか。

I watched a movie with my friend.
私は友達と映画を見ました。

I hung out with my friend last night.
昨晩は友達と遊びに出かけました。

このように、具体的に何をしたかに合わせた動詞をチョイスすると良いかと思います。

4:“What time is it now?”・・・nowが余計?

こちらも教科書の最初の方で出てくる表現ですね。

What time is it now?
今何時ですか?

英会話の定番中の定番です。何度も復唱した記憶がある方もいらっしゃることでしょう。「掘った芋いじるな」と言えば通じるなんていう有名な小話もありますよね。

Googleの検索窓にこの文章を打ち込めば現在時刻が表示されます。ということは、時間を尋ねる表現として間違っているわけではないはずなのだけど…

実はこの表現、ネイティブスピーカーには“now”が余計なようです。「今、たった今は、何時なの?」と「今」が強調されて聞こえるのです。

What time is it?

これで十分、「今何時ですか?」の意味で通用しますね。

でもこの文は、直接的な表現過ぎてぶっきらぼうに聞こえるということもあるようです。時間を尋ねる表現でより一般的なのは以下の表現でしょうか。

Do you have the time?

手首を指さすジェスチャー付きで聞かれることが多い気がします。“What time~?”で聞かれるより丁寧な印象もあります。

注意するべき点としては、“the”を省いてしまうと「今(あなたに)空き時間がある?」という意味になってしまうことです。しっかり“the time”と“the”を入れて、ジェスチャー付きで尋ねましょう。

教科書英語の間違ったニュアンスから卒業しよう!

これまで、教科書で習ったけれど、実際の会話では使わなかったり違和感があったりするような表現を見てきました。

使われない・違和感のある教科書英語のパターンには、以下のようなものがありましたね。

・古き良き英文が使われていて現代に合わない
・文語体なので会話(口語)に合わない
・直訳的、直接的すぎてぶっきらぼうに聞こえる
・単語のもっているニュアンスが英語と日本語で異なる
・イギリス英語とアメリカ英語などカルチャーの違いから使われない

また、教科書には文法を学ぶために作られた文章というものもたくさんのっています。時制の書き換え、能動態から受動態への書き換えなど、機械的に操作したものは特に不自然になってしまうことも。

もちろん、教科書英語がすべて使えないというわけではありません。教科書は基本や文法を学びやすいように作られたものだと認識することが大切なのかな、と思います。

知識や経験をいかしつつ、ニュアンスの違いなどを知った上で、教科書英語もうまく活用しながら、一歩先の自然な会話に近づけていきたいですね!


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