「馬が合う」「鼻をあかす」のように、日本語には慣用表現を用いた言い回しがたくさんあります。
同じ様に、韓国語にも慣用句は多数存在し、日常生活でもよく使われています。
直訳では意味をなさず、辞書で調べにくいため、苦手意識を持ってしまう方も多い慣用句。
今回はそんな慣用句に対する苦手意識を無くすべく、日常会話で使えるフレーズとともに分かりやすく解説していきたいと思います!
慣用句とは?
そもそも「慣用句」とはどんなものなのでしょうか。
「慣用句」とは、昔から習慣的に使われてきた文句や言い回しで、本来のその言葉とは違う独自の意味を持つものを指します。
昔から使いならされた言い回しなので、身体の一部や身近な食べ物などが使われていることが多いという特徴があります。
諺(ことわざ)と似ていますが、慣用句が単なる言い回しなのに対して、諺には世の常や教訓や知恵を含んでいるという点が少々異なります。
韓国語の慣用句について
韓国語で慣用句は「관용구(クァニョング)」もしくは、慣用表現「관용표현(クァニョンピョヒョン)」と言います。
TOPIKⅡの試験では慣用表現と諺のどちらかが必ず出題されますし、記述問題で慣用表現を入れることが出来れば得点UPを狙う事もできますので、中級以上の学習者ならば頭に入れておきたい部分です。
今回ご紹介する慣用表現は、実際に韓国人が日常生活でよく使うもの、バラエティやドラマで耳にするもの12個を厳選しました。
例文も一緒に掲載していますので、使う場面をイメージしながら慣用句に親しんでいって頂けたらと思います。
顔の一部を使った慣用句
귀가 간지럽다/가렵다(クィガ カンジロプタ/カリョプタ)
直訳:耳がくすぐったい/痒い
意味:誰かに噂されている様だ
日本ではくしゃみをすると誰かに噂されていると言いますが、韓国では耳がくすぐったい時に噂されていると言います。そして、その噂は主に悪口を指します。
「왜 이렇게 귀가 가렵지? 누가 욕하고 있나보다. (ウェ イロッケ クィガ カリョプチ? ヌガ ヨㇰハゴ インナボダ)」
「なんでこんなに耳が痒いんだ? 誰か悪口言ってるにちがいない。」
입이 심심하다(イビ シㇺシㇺハダ)
直訳:口が退屈だ
意味:口寂しい
お腹が空いているわけではないけれど、何かちょっと食べたいなという時に使います。
「심심하다」は「退屈だ・暇だ・つまらない」の意味で知られていますが、他に「味が薄い」という意味でも使われます。
A)「아까전에 점심 먹었는데 과자를 먹고 있어?(アッカジョネ チョㇺシㇺ モゴッヌンデ カジャルㇽ モッゴ イッソ?)」
「さっきお昼食べたのにお菓子食べてるの?」
B) 「뭔가 입이 심심해서…(モンガ イビ シㇺシㇺヘソ…)」
「なんか口寂しくて…」
身体の一部を使った慣用句
손이 크다(ソニ クダ)
直訳:手が大きい
意味:食事を沢山用意する・気前がいい
元々は「食事を沢山準備する・大量に食べ物を買う」ことを意味し、そこから「気前がいい・太っ腹だ」という意味でもに使われるようになりました。
「우리 어머니는 손이 커서 항상 음식이 남아요.(ウリ オモニヌン ソニ コソ ハンサン ウㇺシギ ナマヨ)」
「うちの母は食事を沢山用意するので、いつも食べ物が残ります。」
余談ですが、「気前がいい=手が大きい」ならば、対義語の「ケチ」は「手が小さい=손이 작다」なのかと考えてしまいそうですが、そのような言い方はありません。
韓国語で「ケチだ」は、「しょっぱい」を意味する「짜다」を使って言い表します。
발이 넓다(パリ ノㇽタ)
直訳:足が広い
意味:顔が広い
知り合いが多い事を日本では「顔が広い」といいますが、韓国では「足が広い」と言います。
活動範囲が広い人は、それだけ知り合いも多いという事ですね。
A) 「〇〇씨는 그쪽 방면으로 발이 넓으니 한번 이야기 해봐(〇〇シヌン クッチョㇰ バンヒャヌロ パリ ノㇽブニ ハンボン イヤギ ヘバ)」
「〇〇さんはそっち方面に顔が広いから、一回話してみなよ。」
B) 「〇〇씨는 진짜 발이 넓구나~(〇〇シヌン チンチャ パリ ノルグナ~」
「〇〇さんは本当に顔が広いんだね~」
마음을 먹다(マウムル モㇰタ)
直訳:心を食べる
意味:決心する・覚悟を決める
さらに決心したことの重大さを強調する場合には、「大きな」を意味する「큰」を前につけて使ったりもします。
A) 「회사를 그만두고 사업을 시작했어요.(フェサルㇽ クマントゥゴ サオブル シジャケッソヨ)」
「会社を辞めて、起業しました。」
B) 「큰 마음을 먹었네요!(クン マウムㇽ モゴッネヨ!)」
「すごい決心しましたね!」
食べ物を使った慣用句
국수를 먹다(クㇰスルㇽ モㇰタ)
直訳:麺を食べる
意味:結婚する
국수(クㇰス)は日本のそうめんの様な細い麺の名前です。
韓国の結婚式ではこの국수を招待客に振舞うことからこの言葉が生まれました。
結婚する側ではなく、招待される側が使う言い回しです。
例)
「너희 사귄지 오래 됐잖아. 언제 국수를 먹여줄거야?(ノヒ サㇰィンジ オレ テッジャナ. オンジェ クㇰスルㇽ モギョジュㇽコヤ?)」
「おまえら付き合って長いじゃん。いつ結婚式招待してくれるんだよ?」
미역국을 먹다(ミヨックグㇽ モㇰタ)
直訳:わかめスープを飲む
意味:試験に落ちる
わかめは表面がヌルヌルしていることから、滑る=試験に落ちることを連想しこの様に表現されるようになりました。
なので、韓国では試験の日にわかめスープを飲んだり、受験生にわかめスープを出すのはタブーなんだそうです。
「이번 시험은 미역국을 먹지 않게 잘 봐.(イボン シホㇺン ミヨックグルモㇰチ アンケ チャル バ)」
「今度の試験は落ちない様にしっかりやりな。」
김칫국을 마시다(キムチクッグル マシダ)
直訳:キムチスープを飲む
意味:事が起こる前に、ひとり期待して先走ってしまうこと
「김칫국부터 마신다(キムチクッブト マシンダ)」とも言います。
「떡 줄 사람은 생각도 안하는데 김칫국부터 마신다.(トㇰ チュㇽ サラㇺン センガㇰド アンハヌンデ キムチクッブト マシンダ)」ということわざの最後の部分だけが慣用句として定着したものです。
直訳は「お餅をあげる人は考えてもいないのにキムチ汁から飲む」。
お餅を食べるときは水分が欲しくなりますよね。
お茶やお水も良いですが、お餅にはさっぱりしたキムチスープが合うと言われています。
お餅を持っている人がお餅を自分にくれると言う前に、勝手に期待して先にキムチスープを飲んでいる。という状況を揶揄した言葉です。
日本語で言うところの「捕らぬ狸の皮算用」でしょうか。
A) 「로또 당첨되면 이것도 사고 저것도 사야지…(ロト タンジョㇺテミョン イゴッド サゴ チョゴッド サヤジ…)」
「ロト当たったらこれも買ってあれも買わなきゃ…」
B) 「김칫국부터 마시지 마.(キムチクッブト マシジ マ)」
「捕らぬ狸の皮算用するなって。」
日本語と同じ表現の慣用句
입이 가볍다(イビ カビョプタ)
直訳:口が軽い
意味:すぐに他人に話してしまう
「口が軽い」の表現は日本と同じなのですが、反対の「口が堅い」に関してはこう言います。
입이 무겁다(イビ ムゴプタ)
直訳:口が重い
意味:口が堅い
A) 「나는 입이 무거우니까 괜찮아. 말해봐.(ナヌン イビ ムゴウニカ ケンチャナ マルヘバ)」
「俺は口が堅いから大丈夫。話してみ。」
B) 「너 입이 엄청 가볍잖아...(ノ イビ オㇺチョン カビョプジャナ)」
「お前めっちゃ口軽いじゃん…」
도토리 키 재기(トトリキチェギ)
直訳:どんぐり(の)背比べ
意味:似たり寄ったりで優れたものがない
「どんぐり」は韓国語で「도토리(トトリ)」と言います。
韓国語では日本語の「の」がよく省略されますが、この場合も意味は「どんぐりの背比べ」ですが慣用句としては「の」が省略された形で使われます。
A) 「나는 20점!(ナヌン イシプジョㇺ!)」
「私は20点!」
B) 「나는 21이다! 이겼다!(ナヌン イシプイリダ! イギョッタ!)」
「私は21点だ!勝った!」
C) 「도토리 키 재기 하고 있네...(トトリ キ チェギ ハゴ イッネ…)」
「どんぐりの背比べだね…」
ここで少し余談!
下記記事では、「時間」にまつわる韓国語表現をご紹介しています!英語でもそうですが、時間を表す表現って結構混乱するんですよね。。ぜひ下記記事を参考にしてみて下さい♪♪
その他韓国人がよく使う慣用句
바가지를 쓰다(バガジルㇽ スダ)
直訳:水汲み桶を使う
意味:ぼったくられる
実際の価格より高い価格を請求された時に使います。使う場面に遭遇しない方が望ましいですが、よく使う表現なので覚えておきましょう。
バガジとは水汲みに使う持ち手の付いた桶の事で、その昔、中国でバカジの内側に数字を書き、その数字を当てる賭け事があり、その賭け事でお金を失ってしまうことから由来しています。
A) 「이거 5만원에 샀어.(イゴ オマノネ サッソ)」
「これ5万ウォンで買ったの。」
B) 「나는 같은거 10만원에 샀는데?(ナヌン カットゥンコ シンマノネ サンヌンデ? 」
「私は同じ物10万ウォンで買ったけど? 」
A) 「바가지 썼네…(バガジ ソッネ…)」
「ぼったくられたね…」
바람을 피우다(パラムル ピウダ)
直訳:風を起こす
意味:浮気する
「피우다」は「起こす・吸う」といった一般的な動詞での使われ方以外に、
・재롱을 피우다(チェロンウㇽ ピウダ)=愛嬌をふりまく
・딴청을 피우다(タンチョンウㇽ ピウダ)=しらばっくれる
・고집을 피우다(コジプル ピウダ)=意地を張る
のように、名詞とともに使用し独特の言い回しを作り出す事があります。
A) 「저 둘이 헤어졌다 면서요?(チョ トゥリ へオジョッタ ミョンソヨ?)」
「あの二人別れたんですって?」
B) 「네. 남자가 바람을 피웠대요.(ネ. ナムジャガ パラㇺル ピウォッテヨ)」
「ええ。男性が浮気したんですって。」
ここでまた少し余談!
下記記事では、韓国語の「5W1H」について詳しくご説明しています!文法を攻略して効率よく韓国語学習を進めていきましょう♪♪
おわりに
語学というのは、勉強が進むほど難しくなっていくもので、今回取り上げた慣用句もそのひとつだと思います。
幼いころから耳にしているからこそ自然と身につく慣用句を、外国人が学習して身に着けるのはなかなか難しいものです。
慣用句を試験対策ととらえて丸暗記する方法は、効率的ではありますが実践的な語学力には結びつきません。
意味や成り立ちまでかみ砕いて理解し実際のフレーズとともに吸収し、その場しのぎではない本物の韓国語力を身に着けましょう。

韓国蔚山市在住10年目、2児の母です。2011年語学留学中のLAで知り合った韓国人男性と結婚。それを機に無謀にも韓国語が全くできない状態で韓国での生活を始める。2019年より自身がゼロから学習してきた経験を元に、韓国語学習に関する執筆活動を開始。最近は、辛さの奥にある韓国料理の魅力を再発見し、趣味で韓国料理を学び、好きが高じて国家資格「韓食調理技能師」を取得しました。