日本で現在製造されている硬貨は、1円、5円、10円、50円、100円、500円の6種類です。実は同じくアメリカでも、1セント、5セント、10セント、25セント、50セント、1ドル硬貨の6種類です。
日本よりも先んじてキャッシュレス化が進んでいる印象のあるアメリカですが、どのような硬貨が使われているのでしょうか。
アメリカの通貨の単位はドルとセント
ドルは一般的に日本でもよく聞く通貨単位ですが、セントという通貨単位に聞きなじみがない方もいると思います。1ドル=100セント、比較的覚えやすいです。最近は為替が円安傾向にあるため、1ドル=約150円ですが、1ドル=100円であれば、1セント=1円と簡単に換算できます。
日本では紙幣が1,000円、2,000円、5,000円、10,000円の4種類ですので、硬貨と重複はしていません。一方、アメリカの紙幣は1ドル、2ドル、5ドル、10ドル、20ドル、50ドル、100ドルの7種類で、1ドルが重複しています。
実際、50セント硬貨と1ドル硬貨はあまり流通していないため、見つけたらラッキーと言えるそうです。
アメリカ硬貨の種類一覧
〇1セント
通称:ペニー(Penny)
重さ:2.5g
厚み:1.55mm
直径:19.05mm
素材:亜鉛97.5%、銅2.5%
溝:なし
〇5セント
通称:ニッケル(Penny)
重さ:5.0g
厚み:1.95mm
直径:21.21mm
素材:銅75%、ニッケル25%
溝:なし
〇10セント
通称:ダイム(Dime)
重さ:2.268g
厚み:1.35mm
直径:17.91mm
素材:銅91.67%、ニッケル8.33%
溝:側面に118個
〇25セント
通称:クオーター(Quarter)
重さ:5.67g(10セントの2.5倍)
厚み:1.75mm
直径:24.26mm
素材:銅91.67%、ニッケル8.33%
溝:側面に118個
〇50セント
通称:ハーフダラー(Half dollar)
重さ:11.34g(25セントの2倍=10セントの5倍)
厚み:2.15mm
直径:30.61mm
素材:銅91.67%、ニッケル8.33%
溝:側面に150個
〇1ドル
通称:ワンダラーコイン(One dollar coin)
重さ:8.1g(25セントの2倍=10セントの5倍)
厚み:2mm
直径:27.5mm
素材:銅88.5%、亜鉛6%、マンガン3.5%、ニッケル2%
溝:なし
アメリカ硬貨の見分け方
日本とはデザインが異なる
日本の硬貨には歴代の首相がデザインされているものはありませんが、アメリカの硬貨にはアメリカ合衆国大統領が描かれているものがあります。日本人が顔で見分けるのは難しいので、実際には色や形、重さで判断するのがよいでしょう。
それぞれの見た目の特徴
見た目は日本の10円硬貨と似ている1セントは、表面には1909年よりエイブラハム・リンカーン(第16代大統領)が描かれています。1セントとあまり大きさは変わらないが厚みがある5セントの表面には、1938年よりトマス・ジェファーソン(第3代大統領)が描かれています。
大きさも重さも1番小さく軽い10セントは、1946年よりフランクリン・ルーズベルト(第32代大統領)が描かれています。日本では10円が他の硬貨より重いため、ともすれば10セントが1セントのように感じてしまうので注意が必要です。
使用する場面が最も多い25セントは大きさも重さも1、5、10セントよりも一回り大きく、1932年よりジョージ・ワシントン(初代大統領)が描かれています。
一般の銀行や店舗ではあまり使用されていませんが、現在は主にカジノで使われている50セントは、1964年よりジョン・F・ケネディ(第35代大統領)が描かれています。
1ドル硬貨は2007年以降「大統領1ドル硬貨プログラム」に基づいて計40名の大統領が描かれた硬貨が発行されていますが、現在は特定の大統領が描かれた硬貨が発行されていないという点で他の硬貨と事情が異なります。
25セント硬貨について
先ほど挙げた通常のデザインに加え、州ごとに異なるデザインが施されているのをご存じでしょうか。これは1999年から2008年にかけて“The 50 State Quarters Program”(アメリカ合衆国50州記念25セント硬貨プログラム)という名称で刻まれたもので、コレクション用のコレクターブックまで発行されました。
一般に流通させる目的で製造されているため記念硬貨ではなく、希少価値があるわけではないのですが、プレゼントにすると喜ぶ人もいますし、地域によって異なる硬貨に出会えると旅行の楽しみに収集している方もいます。
ちなみに、50州なので50種類かと思いきや、さらにワシントンD.C、グアム、サモア、北マリアナ諸島、プエルトリコ、バージン諸島の6種類があって、全部で56種類あるため、コンプリートするのはなかなか大変だそうです。
高く売れるアメリカ硬貨はある?
◾️ファーストレディ金貨(10ドル)
先ほどの「大統領1ドル硬貨プログラム」の一環で発行されたファーストレディ(大統領夫人)の功績を讃えるための硬貨です。表面には配偶者の肖像(先立っている場合などの例外もあり)が、裏面にはその人生や仕事の象徴的な場面が描かれています。
発行枚数は年によって異なりますが多くても20,000枚程度であり、一つのデザインにつき1度しか製造されなかったことも加わり、高い希少価値があります。10万円から高いものでは数十万円で取引されています。
特にファーストレディとしても人気が高い、初代大統領夫人:マーサ・ワシントン、35代大統領夫人:ジャクリーン・ケネディ・オナシス、等は高値がつくと言われます。
◾️イーグル銀貨(1ドル)
1986年以降、地金用銀貨、つまり投資用の銀貨として発行されており、一般消費者には直接販売されていません。アメリカ合衆国造幣局が、総質量のうち銀が99.9%含まれていることを保証しており、額面価格は1ドルだが、それ以上の価格で流通しています。
そのため、偽造防止が課題になっており、製品の完全性を維持するため、独特な造幣局のマークや、周囲に特徴的な溝がつけられています。
基本的には地金相場(銀価格)によって価格が決まりますが、年によって発行枚数が少なくプレミアが付く場合もあります。1986年以降、銀価格は2006年ごろまで約20年は大きな変動はありませんでしたが、近年は上昇傾向にあります。
日本でアメリカ硬貨の古銭買取はしてもらえる?
外国のコイン買取を専門としている会社は日本にもあります。上に挙げた例の他にも、アンティークコインや記念硬貨は多数あります。見慣れないコインが自宅にある、旅行先でたまたま手に入ったコインがある、という方は、見積依頼をしたら意外な高値で取引されているかもしれません。
小銭が増えすぎてしまった場合の対処法
小銭を端数の支払いで使えない?
日本では現金で買い物をするときに小銭を消費するために、例えば736円の販売価格に対して1,236円を出して500円のお釣りをもらう、のような支払いをするのはある程度一般的かと思います。
しかしアメリカではあまり習慣となっておらず、例えば7.36ドルの販売価格に対して12ドル36セントを払って5ドルをもらおうとしても、意図を理解してもらえずに単に10ドルだけをとられて2.64ドルがお釣りとして返ってくる、という場合が多々あります。
もっと言えば、1.97ドルに2.02ドルや2.07ドル、2.22ドル、のように出しても、すべて2ドルで足りるとみなされて、欲しいはずの5セント、10セント、25セント、が手に入りません。
一説には、アメリカ人には計算の苦手な人が多い、というよりも引き算ではなく足し算で考えているために、日本人が期待するようなやりとりにならない、と言われます。
チップでも使えない?
それでは、増えてしまった小銭をアメリカでは必須のチップで使うのは、というとこれもマナー違反とされています。そもそも、ホテルのベッドメイクや荷物を運んでもらった時などの相場が1ドル、レストランやバーでの会計やタクシー料金に対して10~15%、となると、1ドル未満の細かい金額をチップとして渡す機会がないのです。
わざわざレストランの会計が52ドルだからといって、5ドル20セントを渡す、というわけにはいかないのです。
公衆電話や公共交通機関は?
公衆電話からの通話が5セントで可能だった1950年代の初めまでは主要な用途の一つでしたが、その後10セントへ値上げされています。バスや地下鉄等の公共交通機関も5セントだった時期もありましたが、例えばニューヨークでは今や1回乗るのに3ドルが必要で、なかなか小銭が使いづらくなっています。
ただしコインランドリー、自動販売機、子ども向けのゲーム機等は、25セント硬貨しか使えないものが多いため、むしろ必要になる場合が多いため、無理せず使わずにとっておきましょう。
銀行での両替方法は?
日本では硬貨の預金や両替には手数料が必要になっていますが、アメリカでは現在のところ無料で硬貨から紙幣への「逆両替」をしてもらえます。
それぞれの硬貨に合わせた紙でできたペーパーコインロールという名の筒へ、1セント=50枚、5セント=40枚、10セント=50枚、25セント=40枚、と決まった枚数を自分で詰めて窓口へ持っていけば大丈夫です。(数え直されずに交換されることもあるそうです。びっくりですね。)
銀行以外で両替はできる?
「Coinstar」という両替機が大型のスーパー等は設置されていることがあり、銀行まで足を運ばなくても便利なのですが、現金では手数料(地域によって異なるが10%以上が一般的)をとられるのが難点です。
そこでAmazonのギフトカード等のeGiftカードにする人も多いです。短期の旅行よりもある程度の期間をアメリカで過ごす人向けかもしれません。
まとめ
日本で生活していると目にする機会がなかなかないアメリカの硬貨について解説をしてきました。日本と同じく、やはりアメリカでも全く現金を使わないわけにはいきません。
渡航してから困ることのないように、どんな硬貨が流通しているか事前に確認しておきましょう。 貨幣の製造コスト上昇を受けて、特に1セントは原価割れしているという議論も起きています。実際、カナダやニュージーランドのように発行中止をする国も出ていますが、多くのアメリカ国民には愛着を持たれていますし、観光地では「ペニーマシーン」で刻印をして記念のコインとして持ち帰ることもできます。
硬貨もその国の文化や歴史を反映しているものですから、各国では実用性だけで判断されることなく、今後も使用され続けるのではないでしょうか。