今回は、超基礎単語である「this」の使い方と、そのイディオムについてご紹介します。
「this」といえば「これは」や「こちらは」でおなじみの単語ですよね。中1、いや、小学生のうちから習う単語であり、もう十分に知っているもののはずです。
しかし、実は「this」が持つ意味は大きく分けて3つあるのです。自然に使い分けているかもしれませんが、今回はもう少し踏み込んで解説していきますね。
「this」の使い方
では、まず「this」のおさらいをしておきましょう。
「this」は、距離の近いものについて使う指示代名詞です。訳は「これは」ですが、人を示すときには日本語で「こちらは」の方がしっくりきます。
ただし、指し示すことができるのは単数のもののみです。複数になると、「these」という別の単語があるので使えません。
This is my book.
これは私の本です
This is my brother.
こちらは私の兄です
人でもモノでも、単数であれば誰かに示すことができますね。
中1で習うものととなると、あとは「this morning」などですね。「今朝」という意味で、過去形を使って今日の朝に起きたことを話せます。
空間的距離を表す「this」
「this」では距離を表すことができますが、その距離には3種類あります。最初に空間的距離について解説しましょう。
空間的距離で使う「this」は、話し手から手が届く範囲で使います。難しく感じるかもしれませんが、中学校のときに習った「this」と「that」の違いと捉えてもらってOKです。近くにあるものは「this」、遠くにあるものは「that」を使います。
I think this bike is much better than that one.
あの自転車よりこの自転車の方がもっといいと思う
「this」を使われた自転車は、話し手が手の届く範囲にあり、「that」と使われた自転車は話し手の手の届かない遠くにあることを示します。これが、「this」が表す空間的距離です。
他にも、電話をする際に「this」を使うことがあります。誰かに電話をし、自分の名前を名乗るときには以下のように言います。
Hello. This is Yuki.
もしもし、ユキです
電話の場合、I’m Yuki. にはならないことを思い出しましたか?このように、電話でつながったときには話し手にとって近い存在である自分を「this」を使って表します。
察しの良い方なら、電話でつながった相手のことは何で表すか思いつきますかね。そう、相手は自分の手の届かない遠くにいるので、「that」で表すのです。
Hello. Is that Ken?
もしもし、ケンですか?
英語で電話をかけるには高度なレベルの英語が必要ですが、このときの「this」の使い方だけでも知っているとナチュラルな会話になりますよ!
時間的距離を表す「this」
「this」には、時間的距離を表す要素も含まれています。
近い距離を表すので、基本的には今現在起きていること、あるいは、すぐに起きる未来の出来事に対して使います。逆に、遠い出来事として捉えられる過去のことは「that」を使います。
This football game is really exciting!
このサッカーの試合はすごく興奮する!
This is going to be a big surprise.
これは大きなサプライズになるぞ
「this」はbe動詞と一緒に使うと、現在や未来を表す単語になります。
心理的距離を表す「this」
心理的距離を表すときにも「this」を使います。
心理的距離とは、好ましいものは自分の近くに置いておきたい、逆に好ましくないものや嫌いなものは自分とは離れた位置にいるものだ、そんな心理を表したものです。
よって、好ましいものには「this」を使い、好ましくないものには「that」を使うのです。
文章などを読んでいて、なぜここでは「this」が使われているのに、別の単語には「that」が使われているのだろうと思ったことはありませんか?物理的距離を感じない場合であれば、それは心理的距離を表しているのかもしれません。
A: Hey, have you listened to Mike's song?
B: Yeah, I like this singer so much!
C: I know he is popular, but I don’t like that singer.
A: なあ、マイクの歌聞いた?
B: うん、私その歌手めっちゃ好き!
C: 彼が有名なのは知ってるけど、俺は好きじゃないな
こうして、心理的距離のことを知ったあとで上記のような例文を見ると面白いですね。
日本語では心理的距離を表す単語を日常会話であまり使わないので、訳すと「this」の心理的距離が感じられないのが残念です。英語のネイティブスピーカーの感覚として「this」の意味を知っていればそれもわかるようになるので、ニュアンスまで理解できると言えます。
会話の中では、Mikeという歌手のことを好意的に捉えているBさんは「this」を使っていますが、彼のことが好きではないと主張しているCさんは「that」を使っています。
もし、彼らがMikeのことを好き、あるいは好きではないと主張していなくても、「this」が使われているかどうかでMikeという歌手に対する好感度がわかります。
そういったときこそ、ネイティブスピーカーの感覚が必要になるので心理的距離のことは頭に入れておいた方が良いでしょう。
また、心理的距離を表すのに使う「this」は、謝罪をするときにも気持ちが現れるものです。
I’m sorry for this.
I’m sorry about that.
こちら、どちらも「ごめんなさい」という謝罪をするフレーズなのですが、実は文の中に込められているニュアンスは少し異なります。
心理的距離を学んだ皆さんなら、どちらの方が気持ちがこもっているかわかりますね。そう、「this」を使っている最初の文の方が、自分が悪かったという意味合いを感じるフレーズとなります。
「I’m sorry for this」と言う場合、自分に非があったと認めるときに使うことが多いです。
一方「I’m sorry about that」は、謝罪する意思はあるものの、自分には責任がないと思っている場合や、責任を遠ざけたいと思っている場合に使われることが多いです。
こうしたこまかな言い回しによる相手の受け取り方は人それぞれなので、そこまで敏感にならなくても良いかもしれません。しかし、言い方によっては今後の関係がギクシャクしてしまうこともあるので、やはりどんな言語であっても言い方には気を付けたいものですね。
「this」を使った英語表現
ここからは、「this」を使った英語表現をいくつかご紹介していきます。
フレーズは決まり文句のように暗記してしまった方が使いやすいので、丸っとセットで何度も練習してみましょう。オンライン英会話スクールなど、使う機会があればサッと言えるようにしてみてくださいね。
this and that
this and thatは、「あれやこれや」「いろいろなこと」という意味です。
指示語としての「あれ」と「これ」が入っているので、日本語訳をしてもわかりやすいですね。しかし、フレーズとして意味を知らないとなかなかわからないので、暗記しておいて損はありません。
I was busy yesterday doing this and that.
昨日はあれやこれやすることがあって忙しかったよ
「あれやこれや」とは、雑多なこと、雑用、すべきことを表すので、雑用で忙しかったと伝えるにはぴったりのフレーズです。
仕事で忙しかったことを相手に伝えたいとき、仕事内容を詳細に語る必要はないものの、たくさんのタスクがあったと言いたいときに便利なフレーズですよね。
this brand of humor
this brand of humorは「こういう類のユーモア」という意味です。
brandがちょっと難しい単語かもしれませんが、フレーズとして丸っと覚えてしまえば使いやすいでしょう。this kind of humourと言いたくなるかもしれませんが、決まり文句なのでそのまま暗記します。
I love this brand of humor because it makes everyone smile.
この類のユーモアはみんなを笑顔にできるから好きだな
欧米の方は本当に頭の回転が速くて、その場その場に合ったジョークを言うのがうまいです。とくにイギリスは皮肉が好きと言われているように、ユーモアのセンスが抜群です。
本気で捉えたらいいのか、それともジョークなのか曖昧なところをついてくるなんてことも珍しくないので、旅行などでイギリスに行けばたくさんの「その類のユーモア」を浴びるかもしれませんね。
まとめ
今回は、「this」にはいろいろな種類の距離が示されていることがわかりました。
物理的な距離を言うだけではないとわかれば、ネイティブスピーカーが使う「this」に込められた気持ちも理解しやすくなるはずです。
自分が使う際にも、距離を意識して適切なところで「this」を使えるようにしてみてくださいね。
◇経歴
英語科高校卒
外国語学部英米学科卒
学習塾で英語を教えている
◇資格
・IELTS6.5
◇海外渡航経験
高校時代にオックスフォードの語学学校へ留学
大学時代にエディンバラ大学へ1年交換留学
◇自己紹介
ハリー・ポッターがきっかけで英語に目覚め、高校・大学とイギリスに留学したイギリスマニア。学校はアメリカ英語なので自己流でイギリス英語を習得。発音、スペル、すべてにおいてクイーンズ・イングリッシュを使い英語の先生にバツをくらうもめげず。生まれも育ちも日本で、海外に繋がりがなかったため留学が夢となった。アルバイトで全資金を稼ぎ渡英すると、勝手な高い理想を上回るほどの素晴らしさを目の当たりにし更に虜に。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.