英語を学習している人の中には、将来翻訳者になりたいと思っている人もいるでしょう。そんな方に質問です。「ポストエディット」という言葉をご存知でしょうか。
2024年現在の翻訳業界では、この「ポストエディット」というものが、世界的にも重要視されています。そのため、翻訳者を目指している方は、ポストエディットの技術を磨いておく必要があります。
この記事では、将来翻訳者を目指す人向けにポストエディットとは何かをご説明します。こちらを参考にすれば、ポストエディットの知識やテクニックがなぜ翻訳者に必要なのかがわかるはずです。また、誰かに翻訳を依頼する際にも、参考になるでしょう。
ポストエディットとは?
ポストエディットは、英語でpost editと書きますが、要するに「後編集」のことです。翻訳におけるポストエディットとは、機械翻訳(AI翻訳)にかけた訳文の文法間違い、誤訳などを修正しつつ、自然な文章にする作業のことを言います。
機械翻訳・AI翻訳と言えば、きっと使っている人も多いかと思いますが、Google翻訳やDeepL翻訳といったツールを使って翻訳した文章のことです。ちなみに機械翻訳はMT(Machine Translation)と略されることもあり、機械翻訳のポストエディット業務は「MTPE(Machine Translation Post Edit)」と表記されることもあります。
日本人翻訳者の場合、英語から日本語の翻訳を担当することが多いかと思いますが、英語でやり取りをする場合はMTやMTPEといった表記はよく出てくるので、覚えておくと良いでしょう。
ポストエディット基礎知識
ポストエディットがどういうものか分かったところで、もう少しポストエディットについて深掘りしていきましょう。
翻訳との違い
現在の翻訳業界では機械翻訳後のポストエディットを求められることが非常に多いため、翻訳家として働いている人の多くが、ポストエディットもしていることでしょう。しかし、中には完全に手動翻訳を求める業務もあります。
では、この2つの違いは一体何かというと、手動翻訳は機械翻訳(AI翻訳)を一切使わないということです。手動翻訳では、原文を読んで自分の力で翻訳します。機械翻訳の精度が著しく低かった頃までは、翻訳業務と言えば100%手動翻訳でした。
手動翻訳では、原文の読解能力と日本語に翻訳する能力、さらに文書の種類によっては自然で読みやすい日本語のライティング力も求められていました。
一方、ポストエディットでは、原文の読解・日本語への翻訳というプロセスが大幅にカットされます。もちろん、原文を読んで理解する力は必要ですし、日本語への翻訳もある程度は必要です。しかし、機械翻訳が大部分を読解し、日本語の文章としての精度はやや低めとは言え、日本人が読んで理解できるレベルには翻訳してくれるため、時間の節約になるのです。
2024年現在の状況では、機械翻訳の精度はかなり向上していると言えど、まだまだ日本語の文章として世に出すにはかなり修正が必要です。機械翻訳による不自然な日本語を自然な形に修正するという技術が必要な点も、ポストエディットと翻訳の違いと言えるでしょう。
ポストエディットに使われるツール
ポストエディットにはDeepL翻訳やGoogle翻訳なども使われますが、MTransというソフトも人気があります。また、CATツールという翻訳支援ソフトに組み込まれた機械翻訳が使われることも多いです。
CATツールも翻訳者にとっては必須のツールですが、これには機械翻訳に加え、過去の翻訳例を蓄積したデータベースも組み込まれています。過去に似たような文章を翻訳していたら、その翻訳文を表示してくれるため、たとえば取扱説明書や契約書など、同じ文章を何度も使う業界では特に重宝されます。
ポストエディットの種類
ポストエディット業務は単に「ポストエディット」と称されていることが多いですが、厳密に言えば完成文書に求められているレベルはまちまちです。
たとえば、ライトなポストエディットだと、文法誤りや誤訳を修正し、やや不自然な言葉などを直すだけでOKで文章の順番を動かしたりなどはしません。
ですが、フルポストエディットを求められている場合は、ライトポストエディットの範囲に加え、魅力的な文章になるようなリライトが必要だったり、場合によっては日本の文化に沿うように英語の原文とは異なる文章を足したり、逆に削除したりなどといった作業が必要だったりする場合もあります。
ポストエディットをする際には、どちらを求められているのか確認が必要ですし、逆にポストエディットを依頼する場合には、その点を明確にしておくことが重要です。
ポストエディットの注意点
ポストエディットは自分で英語を読み込む必要がなかったり、粗めとは言え、AIが翻訳してくれたりするということで、手動翻訳よりも簡単かつ低コストだと思う人もいるでしょう。
しかしポストエディットには、手動翻訳とは異なる注意点もあります。ここからは、そんな注意点をご紹介します。
必ずしも翻訳より簡単なわけではない
まず知っておいてほしいのは、ポストエディットは必ずしも翻訳より簡単というわけではないということです。
契約書など読解が難解なものの、決まり文句がある文章の場合、ポストエディットの方が簡単に思えるかもしれません。しかし、ウェブサイトの記述、ブログ記事、商品紹介といった、少しでもクリエイティブな要素のある文書のポストエディットだと、機械翻訳の訳文が不自然すぎて、かえって頭を悩ませてしまうことがあるでしょう。
英語を読んで、最初から自分の言葉で訳すよりも、不自然な訳文を自然にする方が大変なことも多いです。特に機械翻訳だと、不自然な訳文を修正するという点が重要なため、高度な日本語ライティング力が必要になります。
機械翻訳(AI翻訳)は誤訳がある場合も
機械翻訳を使えば、英語の原文の読解が簡単に思えることもあるのは事実。そして、現在の機械翻訳は、かなり自然な訳文を出してくることも多くなってきています。
しかし、機械翻訳による文章には、誤訳が含まれていることも少なくありません。訳文の文章が自然な日本語だと、こうした誤訳に気づかないことも多いため、常に英語の原文を確認することも重要です。
翻訳者が誰でもポストエディットができるわけではない
翻訳者だと誰でもポストエディットができると思っている人もいるでしょう。しかし、ポストエディットにはポストエディット特有の技術が必要なため、ポストエディット経験のない翻訳者だと、質の高いポストエディットをこなせない場合もあります。
もしくは、機械翻訳を無視して、自分で1から翻訳する翻訳者もいるかもしれませんが、そもそもポストエディットは手動翻訳よりもコストが安いため、ポストエディット案件で手動翻訳をするのは非常に効率が悪いです。
翻訳家を目指すならポストエディットは必須!
翻訳業界におけるポストエディットという作業・業務についてご紹介しましたが、今後ますますポストエディットの需要は高まる見込みです。そのため、翻訳の仕事をしたいなら、ポストエディットの技術が必須となります。
これまで手動翻訳しかしてこなかった人も、ポストエディットを知らなかった人も、今後翻訳を仕事にしていくなら高いレベルでポストエディットができるようになっておきましょう。
Google翻訳やDeepL翻訳は誰でも気軽に使えるため、将来翻訳を仕事にしたいなら、こうした無料ツールを使ってポストエディットの練習をしてみてくださいね。
◇経歴
英日翻訳・校正、英会話講師など
イギリスの現地企業にて就業経験あり
◇資格
TOEIC935点
英検準1級
ケンブリッジ英検FCE合格
◇海外渡航経験
イギリス5年弱、グアテマラ6ヶ月、合計49ヶ国に渡航歴あり
◇自己紹介
国内外で活動するWebライター兼翻訳者です。これまで手がけた記事は数千件以上。翻訳経験は通算5年位になります。コロナ禍前は世界中を旅をしながら仕事をするノマドワーカーをしておりました。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.