it と that はどちらも、中学生の英語で習うくらいの超基本単語です。けれど意外と「違いは何ですか?」と改めて聞かれると、違いがよくわからなかったりしませんか?
「どっちも似たようなものだから、雰囲気で使い分ければいいんだよ」なんていわれる事もありますが、実は it と that にはれっきとした違いがあるんです。
今回は、混同してしまいがちな it と that の使い分けについて、3つのポイントに分けて徹底解説していきます。
itとthatの違い
it と that は、日本語だとどちらも「あれ」「それ」といった同じような訳になります。
そのため、日本人英語学習者にとっては直観的な区別がしにくい単語であるといえるかもしれません。とはいえ、いくらイメージが似てるとはいっても、 it と that はそれぞれ異なる意味や役割、ニュアンスを持っているのです。
例えば文法的な役割について着目してみると、it と that には以下のような違いがあります。
that:代名詞、形容詞、関係代名詞など
it と that はそれぞれいくつかの文法的役割を持っていて、文法的に同じ役割をしているときもあれば、異なる働きをしていることもあるということがおわかりいただけるかと思います。
実は、it と that で共通している文法的な役割というのは「代名詞」という働きだけです。
「代名詞」というのは、特定の物事や人を表す名詞の代わりとして使われる言葉のことです。日本語では「これ」「それ」「あれ」などが代名詞にあたります。
これは何?
それは何?
あれは何?
上の例文では、this、that、it が代名詞にあたります。質問をしている人が特定の「何か」を指さしていて、その名前を this や that や it で置き換えているイメージです。
it や that 、this は「これ」「それ」「あれ」という風に訳されるため、日本語のイメージに合わせて「発話者から置き換えるモノまでの距離感」によって使い分けると考えている方も多いのですが、その方法だと少し注意が必要です。
英語の文法上、it は人称代名詞、 that と this は指示代名詞、という風に、同じ代名詞ではあるのですが、細かく言うと2つの別な品詞に分類されています。そのため、そもそも「距離感」でひとくくりに区別することは難しいのです。
強いていえば、that と this は同じ種類の品詞なので、「that は遠い、this は近い」という風に使い分けることが可能です。
ところが it と that の使い分けになると、「距離感」だけで区別するのは難しくなります。
どちらも「それ」「あれ」と同じように訳されることが多いので、代名詞としての it や that を使う時、どちらを使えばいいのかわからないという方は非常に多いです。
例えば、「それ、いいね!」という日本語を英語でいいたいとき、あなたなら it と that のどちらを使って表現しますか?
「それ、いいね!」
②That’s good!
①も②も、なんとなく「それ、いいね!」という内容を表現しているように思えますよね。でもやはり、言葉が違うということは、表現している内容も違うのです。場合によっては、it と that でまったく別の意味になってしまうこともあります。
①と②のどちらが適切なのかは、そこまでの文脈によって変わってきます。
it と that のニュアンスの違いや使い分け方について、3つのポイントに分けて詳しく解説していきます。ポイントを踏まえていけば、①と②を使い分けることができるようになるはずですので、ぜひ楽しみながら読み進めてみてくださいね。
ポイント1 it は単語、that は文全体
it と that を使い分けるポイントその1として、「it は単語の代わり、that は文全体の代わりとして使う」という方法があります。
実は it には「(文章中の)特定のもの」というニュアンスがあります。対して、that には「(文章の)全体」というニュアンスがあるのです。
もう少し詳しく説明すると、代名詞としての it は、会話や文章の流れの中に出てきたある特定の人や物について、単語の繰り返しを避けるための言葉として使われます。そのため、it とイコールの関係になるのはいつも名詞になります。
一方、that は特定の単語というより、会話するときに相手が発したひとつ前の発言など、文章全体を指し示すために使われます。つまり、that とイコールになるのは、文章全体になるということです。
例文を見ながら、 it と that の性質の違いを確認していきましょう。
A:彼女、隠し事をしてるのよ。
B:What is it?
B:隠し事って何? ※ it = a secret
B:What is that?
B:何ていったの? ※ that = ”She has a secret.”という文章全体
it を使った回答と that を使った回答では、全く意味が異なることにお気づきでしょうか。it の方では、「隠し事」という文章中の名詞について尋ねています。
一方、that を使った回答では発言文自体がなんなのかについて尋ねていますね。相手の発言が聞き取れなかった、というイメージです。
もうひとつ、例文を見てみましょう。Aさんの発言に対して、Bさんが返答しています。
A:この単語、スペルが間違ってると思うんだけど。
B:It’s right.
B:その単語のスペルは正しいよ。 ※ it = this word
B:That’s right.
B:そうだよね。
※ that = ”I think this word is misspelled.”という文章全体
いかがでしょうか。この例文では、it を使った場合と that を使った場合で、真逆の意味になってしまいました。
it を使った回答では、it = this word(この単語)に対して、”right”だと言っていますね。つまり、「その単語(のスペル)は間違ってないよ」という内容になります。
thatを使った回答では、that が文章全体を指していますので、Aさんの発言自体が”right”である、つまり「その単語のスペルは間違っている」という内容になります。
では、次の例文のBさんとCさんは、それぞれどんな内容の発言をしているでしょうか?日本語に訳してみてください。
A:この前の日曜日、DZNY公園に行ったの。
C:That’s good.
いかがでしょうか?
Bさんは、”It’s good.”と言っています。it は単語を指しますので、it = the DZNY park となり、日本語に訳すと「DZNY公園て、良いよね。」と、公園のことについて話していることになります。
一方Cさんは、that を使っていました。that はAさんの発言全体を指していますので、Cさんの発言を日本語訳すると「”この前の日曜日にDZNY公園に行った”のは、良いね。」という内容になります。
ポイント2 it は抽象的、that は具体的
it と that を使い分けるポイントその2は、「抽象的なのか、それとも具体的なのか」という”ハッキリ具合の違い”という面から使い分けをしていくやりかたです。
it は、一般的な意見を述べたり、大きな視点から抽象的に内容を捉えて表現したいときに使います。
対して、that はその場の状況や人間関係など条件が限定されていて具体的な内容を表現したいときに使うのが適しています。
「it は一般的な内容を述べるときにつかう」「that は個別的な内容を述べるときにつかう」というわけです。
ここで確認しておきたいのは、ポイント1とポイント2の観点の違いです。
ポイント1では「it は単語の代用、that は文全体の代用」という使い分け方をしていました。
それを踏まえてポイント2の「一般的なものには it 、具体的なものには that」というやる方を提示されると、「単語の方が文全体より”具体的”なイメージだし・・・ポイント1とポイント2の使い分け方は真逆なのでは?」と混乱する方もいるかもしれません。
ポイント2の「具体的」というのは、物事の”範囲の大きさ”ではなく、物事が”一般的かどうか”という観点での見方になります。そのため、代用する対象が単語なのか文章全体なのかという”範囲の広さ”とは関係のない観点から見ているということになるのです。
毎日ジョギングしてみたら?(ジョギングは)体に良いよ。
この例文では、it =ジョギングについて、「ジョギングをすると体に良い」という一般的な意見を述べています。
A:毎日ジョギングしてみたら?
B:それは無理だわ! 体にいいのは知ってるんだけどね。
Bさんは、 Aさんの「毎日ジョギングしてみたら?」という発言に対し、that 文を使って「それは(私には)無理だわ」というBさんにとっての個別的な意見を述べています。そのあと、it =jogging について、”good for our health” (健康にいい)という一般的な見解を述べていますね。
「一般的にジョギングが体に良いことはわかっているけど、自分自身という具体的・限定的な話になると、ジョギングはimpossible(不可能)です」といっているわけです。
このように、一般的で抽象的な意見を言いたい時には it 、具体的で個別的な意見を言いたいときには that を使うというように使い分けていく方法もあります。
ポイント3 it は物体以外のものに使う
ここまでは代名詞としての it と that の違いについて解説してきました。ポイントの3つめとして、it にしかできない、代名詞以外の働きをご紹介します。
it は代名詞としてある特定の物を置き換えて表現するだけでなく、物体以外の何かばくぜんとしたものや状況を表すときの主語としてもよく使われます。ばくぜんとしたものというのは、時間・曜日・天候・気分などのことです。
この働きは、that にはなく、it にだけあるものです。
午後7時です。
晴れている。
大丈夫だよ。
これらの it は、何かの代用として意味を置き換えているわけではなく、「意味のない主語」としての働きを行っています。この形の it は、英会話でも非常によくつかわれます。it なしでは時間や天気を言い表すのが難しいくらいです。
「意味のない主語」となるのは it だけで、that にはその働きはありません。混同して使わないように注意してくださいね。
まとめ
超基本単語の it と that の使い分け方について、深掘りしながら解説してきました。
it と that にはれっきとした違いがあり、使い方を間違えてしまうと文章の内容が変わってしまうこともある、ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
「it と that は同じようなものだ」と思っていたり、適当に使っている方も多いのですが、it と that は指し示す内容や役割が異なる単語です。今回の記事も参考にして、ぜひ毎日の英会話や英語学習で it と that の違いを習得していってくださいね。

I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.