みなさんは子どもの頃に昔話を読んでもらった記憶はありますか?
あるいは、お子さんに昔話の読み聞かせをしてあげたりしていますか?
ふと思い起こしたように昔話を読んでみると思わぬ発見があったり、子ども用ではないオリジナル版の昔話を読むと違った味わいがあったりします。
日本の昔話といえば、
「桃太郎」「浦島太郎」「金太郎」「かぐや姫」「舌切り雀」「猿カニ合戦」「鶴の恩返し」…
などがありますよね。
一昔前には、親しみやすい「まんが日本昔ばなし」がテレビアニメとして毎週放映されていました。桃太郎や浦島太郎のような有名どころだけではなく、地方に伝わるローカルな昔話が日本にはたくさんあることを教えてくれました。
このように日本人なら誰もが知ってる昔話ですが、海外にも昔話はあるのでしょうか?
昔話のはじまり
考えてみると、日本だろうと海外だろうと、太古の昔から人間が住んで生活してきたことには違いはありません。
ヨーロッパなど大昔の洞窟には、動物や人間の壁画があちこちに残されています。なかには実在しないような動物の絵も描かれており、いつの時代にも人々は頭の中で想像をふくらませていたことが分かります。
そして、人間が考えることはいつの時代でもどこの国でもだいたい一緒です。
それを裏付けるかのように、古今東西、物語展開の構造はよく似通っていると言われています。
理由としては、起承転結のような形式の構造は覚えやすく、また人が生きるための知識や知恵がふんだんに含まれているため、物語は末長く好まれてきたということのようです。
人間が言葉を話すようになった時代と、石版などに文章を書き記すようになる時代の間には大分ギャップがあります。
つまり、文字が発明されて形として残る随分前から、人々は物語を口頭で伝えてきたわけです。
災難や災害につねに悩まされてきた古代の人々にとって、とりわけ全知全能の神様の存在は特別です。世界各地で神様の物語は口伝され、それが神話になりました。
キリスト教圏では旧約聖書や新約聖書、日本では古事記や日本書紀のような書物として神話は伝わっています。
たとえば、古代ギリシャ神話ではガイア、日本神話では天照大神が神々や大地を生み出したとされます。
今年は平成から令和元年になりましたが、その根拠こそ神話であり、もとをたどれば紀元前にまで遡る壮大な昔話なのです。
絵本でみる昔話
こうして伝承されたさまざまな神話や物語のうち、時の試練を経たものが今も残る数々の昔話となりました。
紀元前のギリシャの昔話といえば、「北風と太陽」「アリとキリギリス」などでおなじみの「イソップ物語」でしょう。
日本では「伊曾保物語」として早くも16世紀には伝わっており、その後「うさぎとかめ」のような日本の昔話・童謡になりました。
実は外国の物語が元となって作られた昔話ということですね。
エリック・カールという著名な外国の児童絵本作家の名前を聞いたことはありますか?
代表作は「Very Hungry Caterpillar (邦題:はらぺこあおむし)」で、読んだことや聞いたことのある方は多いかもしれません。
独特のアーティスティックなイラストは一度見たら忘れられない画風です。
エリックさんは他にも楽しい作品や教訓のある寓話的な作品をたくさん書いていらっしゃいますが、じつは「イソップ物語」の絵本も出されています。
「Eric Carle's Treasury of Classic Stories for Children by Aesop (邦題:エリック・カールのイソップものがたり)」という作品です。
イソップ童話がオムニバス形式で綴ってあり、比較的簡単な英語でバイリンガル絵本としても面白いのでおすすめです。
アニメでみる昔話
海外の昔話といえば、なんといってもディズニーアニメです。
「白雪姫」「ピノキオ」「シンデレラ」「眠れる森の美女」「リトル・マーメイド」「ラプンツェル」「ロビンフッド」…
長編作品だけでなく、「3匹のこぶた」「赤ずきん」「みにくいアヒルの子」などの短編作品もあります。
これらの作品は原作本ももちろん有名ですが、ディズニーの精巧なアニメーションと美麗な音楽で語られており、とても印象的です。
作品の下敷きになっているのは、主に17-19世紀に書かれたペロー童話、グリム童話、アンデルセン童話などの昔話です。
いずれも劣らぬ名作揃いで話の内容も深く、音楽や歌も口ずさみたくなるものばかりです。
子どもが観て楽しいのはもちろんのこと、大人が視聴しても十分楽しめます。
その多くはディズニーの黄金時代とされる1930-50年代に製作されたため、使われている英語も格調が高く、英語の勉強にももってこいです!
また、ディズニー作品とは別に「長靴をはいた猫」「フランダースの犬」のように、海外の昔話が日本のテレビアニメになって有名になった作品も多くあります。
昔話の英語
英語で読む昔話は、見慣れた日本語と違っていろいろと新鮮な感じを受けます。
たとえば、「赤ずきん」は“Red Riding Hood”になり、頭巾という古臭いイメージは少し薄れます。
また、「白雪姫」は“Snow White”、「眠れる森の美女」は“Sleeping Beauty”です。
これらはかなり忠実な訳ですね。
一方、「3匹のこぶた」の挿入歌“おおかみなんてこわくない”は、英語では"Who's Afraid Of The Big Bad Wolf?"となり、ニュアンスが多少異なっています。
逆に、日本の「おむすびころりん」は"The Rolling Rice Ball"となり、いい感じのニュアンスが失われているのが分かります。
このように英語で読んだり聴いたりすることで、見慣れた物語世界が違ってみえたりすると同時に、言葉や文化のもつ不可逆さが学べることでしょう。
世界のいろいろな昔話
ヨーロッパだけでなく、世界にはさまざまな昔話があります。
アジアの昔話で有名なのは中国の「西遊記」でしょう。
主人公・孫悟空が玄奘法師のお供になって奇想天外な旅をするストーリーは、数多あるロードムービーの先駆けです。日本でもドラマ化や演劇化はもちろんのこと、翻案された「ドラゴンボール」は日本を代表するマンガのひとつとなりました。
アラビアの昔話といえば「アラビアンナイト(千夜一夜物語)」です。
アリババと40人の盗賊や、ランプの魔神、シンドバッドの冒険など、独特の雰囲気を醸し出す不思議な物語が盛り沢山です。現代ではイスラム文化圏はやや複雑な立ち位置ですが、その黄金期は当時の中国やヨーロッパを凌ぐ、卓越した文明を誇っていたことがよく分かります。
このように欧米圏だけでなく、いろんな文化の成り立ちを知ることができるのも昔話の魅力です。
日本の昔話、世界では?
では逆に、海外で有名な日本の昔話はあるのでしょうか?
日本語という言語障壁は意外に高いので、英語圏に知られるには従来は何らかのきっかけが必要だったようです。
つまり、海外で有名になっている作品は、話の内容そのものというより、知られる経緯があってたまたま知られたというケースが多いようです。
たとえば、ギリシャ人のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が持ち帰った「耳なし芳一」や「雪女」などの日本の怪談集などは海外でも有名です。
また近年では、スタジオジブリが「かぐや姫」(竹取物語)を映画化しましたが、そういうことがきっかけで世界に広まるようです。
「かぐや姫」そのものは、10世紀に書かれた日本最古の物語でありながら、すでにジェンダー論や月世界SFの視点があり、現代社会でも十分に通用する題材ですね。
インターネットやSNSがある現代では、強力なコンテンツはまたたく間に世界に広がります。
日本のアイドルグループや人気マンガ「NARUTO」などはアジアでも知名度が高く、また“ピコ太郎”が日米首脳会談や国連でも架け橋になったことは記憶に新しいです。
よって、もし日本の昔話をベースにしたようなコンテンツが人気になれば、昔話そのものも瞬時に世界に知れ渡るのではないでしょうか。
また、そもそも日本の昔話と海外の昔話に違いはあるのでしょうか?
たとえば、日本の物語で出てくる動物や登場人物は外国の物語でも登場しているのでしょうか?
マニアックな疑問ですが、狼・犬・熊などは日本だけでなく、海外の森林でも生息していたため、共通して登場しているようです。
逆に、鶴は日本で独特で、白鳥はヨーロッパで独特なように、生息域の違いから物語の象徴になった動物もいるようです。
似たように、昔話の人物構成として、子どものいないおじいさんやおばあさんの組み合わせは日本特有、王子様とお姫様のペアや継母などはヨーロッパ特有、という文化的な傾向がありますね。
これらの昔話では子どもが生まれたり、継母から逃れて結婚したりしてハッピーエンドになります。
この傾向も動物と同じで、そのような属性の人々が多く暮らしていた当時の時代背景や人々の願望をそのまま反映しているようです。
まとめ
最近は英語の絵本も増え、海外の昔話が手軽に英語で読めたり、逆に日本の昔話が英語に翻訳されるようになりました。そういう意味では、世界中の昔話を知ることがより身近になったと言えるでしょう。
昔話の時代背景は今とはずいぶん違うので、読み手には豊かな想像力が試されます。
とはいえ、人間の考えることは今も昔も同じなので、昔話は現代にも通じる巧みな人間観察や深い洞察を教えてくれます。
どのお話にも大きなハズレがなく、「まんが日本昔ばなし」の歌のように、まさに“にんげんっていいな”と思わされてしまうことでしょう。
英語初心者・初中級者の方は、まず名作を絵本で読んだりアニメで観てみると良いと思います。英語上級者の方はぜひ原典や神話にも挑戦してみてくださいね!

英語学習歴は10年ほどで留学経験もあります。 最近の趣味は外国の絵本を読むことやオンライン英会話です。 本や会話を通じて、世界の人々の文化や考え方を知ることは刺激的で未知の発見があります。 英語も日本語も、言語の世界は知れば知るほど深くて面白いものです。 自分自身や子どもがどうすれば英語をもっと楽しく身につけられるようになるか、 英語はどのくらい学ぶ必要があるのかについて興味があります。