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日本語には横組み(横書き)もあれば縦書き(縦組み)もありますよね?
雑誌や新書の多くは縦書きで、原稿用紙に何かを記述するときも基本的には縦書きですが、しかし一方で横書きの本などもありますし、パソコンや携帯などで友達や家族にメッセージを送る際は大体横方向です。
また、Webサイトなども大抵は横書きですよね。
そのため日本人はほぼ誰でも縦書きで文字が書かれていても横書きで書かれていても柔軟に対応ができます。
(横書きといってもアラビア文字のように右から読む言語は日本人にとっては馴染みがないですが。)
それでは英語に関してはどうでしょうか。
一般的には英語は縦書きではなく横書きのみで表記します。
そんなの当たり前だと思うかもしれません。しかし、「縦書きではダメなのか?」を明確に知っている or 答えられる人は言語学の専門家など一部の人だけですよね。
そこで今回は、
・英語が何故日本語のように縦横で自由に書くことができないのか?
・どうしても英語を縦書きで書かないといけない時はどうすれば良いのか?
など英語の縦書きについての情報を解説します。
本記事を読めば英語が何故、原則として横書きなのかも縦書きにする方法も分かります。
英語で縦書きってすることはあるの?
英語は通常、横書きです。英語の教科書で英文字や英数字を縦書きで読むことは通常ありません。
しかし英語が縦書きで書かれているケースもあります。
例えば日本のハガキや細長い看板、本の背表紙など、物の形や幅に合わせて英語を縦書きで配置してあるのが見受けられます。
実は日常生活で英語の縦書きを探すと全くないわけではありません。
しかし、日本語のように両方とも当たり前のようにある訳ではありません。確かに英語の縦書きはありますが、日本語ほど広く親しまれてはいません。
では英語が縦書きだと何か不自由があるのでしょうか。
英語が横書きの理由は表音文字だから?
英語は基本的には横書きです。その理由を知る前に表意文字と表音文字について理解する必要があります。
世界史などでも出てくる用語ですが、それぞれ一体どんな文字なのでしょうか。
表意文字とは?
表意文字とは・・・。
「意味」を形に置き換えて、それを表示した文字の集まりのこと。
文字の一つ一つに意味があることがポイントです。
例えば「川」という漢字は表意文字です。川という該当文字を見るだけで多くの人が水が流れる情景を想像することができるでしょう。
一方で「R」というアルファベット表記ではどうでしょうか。特に「R」そのものに意味はありませんから、多くの人がRを見ただけで何かの意味を想像することは難しいのです。
表音文字とは?
表音文字とは・・・。
「音」を表した文字です。英語のアルファベットや日本語のひらがな、カタカナは表音文字です。
アルファベットの「A」もひらがなの「あ」もカタカナの「ア」も音だけは分かりますが、特に意味はありません。
日本の小学校低学年の国語の教科書は、ひらがなだけの文もありますが横書きになっていません。つまり表音文字だから横書きだという理由は成り立たないようです。
英語を縦書きにする問題点
英語のアルファベットも日本語のひらがな、カタカナも表音文字です。しかし違いがあります。
それは
・英語はアルファベットの組み合わせによって音が決まる。
・日本語のひらがな・カタカナは一文字で独立して音が決まる。
実はここに大きな違いがあります。
例えば
Emperor(皇帝)
Enough(十分な)
という英単語があります。
どちらもアルファベットのEで始まっていますね。では、このEは同じ発音するでしょうか。
Emperorは発音記号では「émpərər」ですが、
Enoughの発音記号は「inʌ'f」です。
同じ発音ではありませんね。実は英語はアルファベットの組み合わせで音が決まる性質があるのです。
そのため英語のアルファベット単独では、英単語になった時に音が変わってしまうという性質があります。
Emperorが縦書きで
E
m
p
e
r
o
r
と書かれていたら「Em」で一塊りの組み合わせで発音が決まっていたEの発音が、急に視覚的に分かりづらくなってしまいます。
文字間隔が広がることでアルファベットのつながりが見えにくくなってしまうんですね。
ひらがな・カタカナだと組み合わせ関係なく、一文字ずつ独立して音が決まるので問題なく読めますが、英語のアルファベットが縦書きだと、このような不都合が生じます。
英語の発音に慣れない!という方は、こちらのブログもおすすめです。
日本語では縦書きの封筒や手紙。英語ならどう書く?
封筒や手紙、年賀状などで文書を外国人に送る時のことを想像してみてください。
アルファベットで会社名、個人の名前などの宛名、または住所を書く時、どんな書き方が正しいのか迷うのではないでしょうか。
例えばMr.Mikeを縦書きにした場合、
単にアルファベットの文字列を文字ごとそのまま横に倒したケース
と
文字の組み方も縦文字組みをしているケース
では、どちらが正しいのでしょうか。
正解は「縦文字組み」です。手紙や封筒の宛名書きは縦書きが一般的ですがアルファベットを入れる時は縦文字組みで入れます。
年賀状のソフトでもワープロソフトでも、設定画面でテキストボックスを工夫すればアルファベットを縦書きすることができるので印刷したい時も特に問題はありません。
Wordで英語を縦書きにする方法
マイクロソフトワードのWordで英語を縦書きで書く設定方法をご案内します。
まずWordのテキストエディタの上のメニュー部分を見てみましょう。レイアウトという項目を選びます。
すると一番、左のホームの下に「テキストの方向」というボタンが現れます。
そこをクリックすると横書き・縦書きのタブが現れます。そして縦書きをクリックします。
アルファベットが、そのまま横に倒れる縦書きが、これでできるようになります。しかし、縦文字組みにする場合は、さらにもう一手間が必要になります。
ホームから「Aa」の部分をクリックします。すると半角・全角・カタカナ・ひらがな等を選ぶことができるのでアルファベットの文字列を選んで「全角(F)」にしてみましょう。
これでワード文書によるアルファベットの縦書きは完成です。
(英語には半角文字と全角文字があるので注意が必要です。大体デフォルトは半角文字になっています。)
日本語の縦書きを海外の人に説明しよう
海外の人がアルファベットを縦にすることはほとんどありません。
しかし日本語を勉強している海外の学習者にとって、日本語が縦読みになったり横読みになったりすると、文の進行方向が分からず混乱する原因になってしまうようです。
そこで海外の人に日本語の縦書きについて説明できるようになりましょう。
英単語では
横書き:horizontal writing
縦書き:vertical writing
です。
では英語で日本語が横書きと縦書きが混在していることを説明してみましょう。
【例文】
The Japanese writing system uses both horizontal writing and vertical writing,and it is not uncommon that a page space such as a newspaper and a magazine contains a mixture of vertical writing and horizontal writing.
(日本語では、縦書きと横書きの両方が使用されており、新聞等の紙面や雑誌でも、縦書きと横書きが混在する事は珍しくありません。)
In Japanese vertical writing, the act of writing from right to left is general.
(日本語では文章を縦書きにする時に、行を右から左へ書きます。)
世界の横書き・縦書き
日本語は世界でも珍しい横書きと縦書きが混在した言語です。
ところで世界には日本語以外にも縦書きで読む言語はあるのでしょうか。
それとも英語のように右横進行の言語がほとんどなのでしょうか。
世界には日本人からすると珍しい読み方をする言語がたくさんあります。
例えばモンゴル文字は日本語と同じで縦書きですが、行は日本語と書字方向(文字を書き進める方向)が逆で左から右へ読みます。
また冒頭でも少し触れたアラビア語は、英語と同じで横書きですが、行は英語と逆で右から左へ読みます。
言語によって文法や表記だけでなく読む方向も変わるのは面白いですね。
日本語は縦書きから横書きになった?
日本語は今でこそ横書きと縦書きが併用されていますが、本来は縦書きの文字言語でした。
中国・朝鮮・日本の東アジアの言語はもともと右縦書きです。右縦書きとは、上から下に読み文字を右から左へ行を進めて行きます。
しかし近代に入り中国や朝鮮は圧倒的に横書きが主流になりました。
日本にも江戸時代の頃から横書きの日本語はあったそうですが、本格的に横書きが広まり始めたのは戦時中。意外なことに他国からの影響ではなく、日本自ら左から読む横書きにしようとしていたようですが、国内世論の反発に遭いなかなかうまくいかなかったそうです。
しかし戦後、少しずつ横書きの使い方も世間に浸透していきました。
海外の日本語教育では作文は横書きで教える
ちなみに私はバンコクの国立大学で日本語の作文を教えていて、タイ全土から集まる小・中・高校生の日本語総合コンテストの作文の審査員をしていたこともあります。
外国人に指導する日本語の作文教材や指導法では、主に縦書きは用いず横書き指定で指導することが普通です。世界の外国語の多数は左から横に読む言語がほとんどで、タイ語も例外ではありませんでした。
私は一度、試しに作文を横書きではなく縦書きで学生に書いてもらおうとしたことがあったのですが、学生は混乱していました。縦書きというルールにほとんど慣れていなかったからです。結局、横書きで作文の指導をしましたが外国人にとって縦書きはなかなか馴染みづらいようです。
となると縦書きで書いてある新聞雑誌、小説なども外国人にとっては最初、慣れるまで苦労しそうです。まして縦書きも横書きも混ざっているとなると、外国人には負担が大きいかもしれません。
外国人に日本語を紹介する時は横書き・縦書きが混ざっている日本語の特殊なところも配慮した方が良いかもしれませんね。
まとめ
英語では原則、縦書きはしません。
ラテン文字のアルファベットは表音文字で、しかも英語の音は何文字かの組み合わせで変わってしまうため、横書きから急に縦書きにすると読みづらく発音もしづらくなってしまいます。日本語のひらがな・カタカナも表音文字ですが、1文字1文字で音が独立しているため縦書きでも問題ありません。
しかし、縦に長い看板や日本の年賀状などで英語の縦書きが用いられるケースもあります。
Wordなどのワープロソフトでも英語のアルファベットを縦書きにする書式設定は備わっていますので、必要に応じて使ってみてください。
世界的に見ても縦書き・横書きが混在した日本語は珍しいため外国人には慣れづらいかもしれません。
縦書き自体も外国人にとって一般的ではないので慣れるまでに時間がかかります。
ネイティブキャンプの講師の中には、日本語を勉強している講師がたくさんいます。
日本のアニメやドラマを見て日本語を少し話せるという人はいても、読み書きは特別な対策をしなければかなり難しいようです。
また、日本語を勉強する教科書や参考書は横書きで書いてあるものが主流です。
その理由も「横書きに慣れている外国人にとっては難しいから」なんでしょうね。
ぜひ日本語を覚えたいという外国人と出会ったら、日本語の魅力や特徴を伝えてあげてくださいね!

石川県出身。明治大学法学部の国際法コースで英米法を専攻。卒業後、日本の小学校教諭を経てタイ王国の首都バンコクの国立大学RMUTRの教養学部・日本語学科にて専任講師。日本語の講義や日本・タイの私立大学の交換留学提携、タイ全土の日本語コンテンストの審査員を経験。帰国後は留学生支援の財団法人・外資系小売業を経てライター職。好きな食べ物はカレー。東京に行く度にカレーの聖地、神保町のカレー屋巡りをしています。

I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.