カナダは比較的永住権を取得しやすい国として知られており、高い生活水準と教育の質、そして多様性を尊重する社会のため、世界中の人々にとって魅力的な移住先として人気です。
しかし、近年カナダの移民政策が見直されており、条件が厳しくなっている傾向があります。そのため、カナダ移住を成功させるには、最新の情報や移民政策の動向をチェックして、永住権申請に必要な条件や申請プロセスについて把握しておく必要があります。
この記事ではカナダ永住権の取得を検討している方に向けて、申請方法や必要な条件について詳しく紹介します。また、カナダ永住権を取得するメリットやワーキングホリデーから移住を目指す方法についても紹介するので、カナダ移住を検討している方はぜひ参考にしてくださいね!
カナダ永住権とは?
カナダ永住権は「Permanent Residence(PR)」と呼ばれ、外国人がカナダに永続的に居住する権利を与えられます。
カナダ永住者はカナダ人と同様の社会保障や教育を受けられ、医療サービスへのアクセスも可能です。また、就労や就学の期間に関する制限がなく、職業についても比較的自由に選べる点がカナダ永住権の魅力といえるでしょう。
カナダ永住権と市民権の違い
カナダ永住権は「外国人がカナダに永続的に居住する権利」である一方、カナダ市民権とは「カナダ国籍を保有する」ことです。
日本の法律では二重国籍は認められていないため、カナダ市民権を保有するには日本国籍を放棄する必要があります。カナダは二重国籍を認めているので、出身国によっては複数の国籍を保有している人々もいます。その他、カナダ永住権と市民権の違いは以下の通りです。
カナダ永住権 | カナダ市民権(カナダ国籍) | |
権利 | 医療、教育、就労の自由、社会保障の利用が可能。 | 投票権、公職への就任権、カナダパスポートの取得が可能。 |
制限 | 投票権や公職就任権はない。 | 制限なし。 |
条件 | 永住権を保持するためには一定期間(通常5年中3年間)カナダ国内に居住し続けなければならない。 | 永住権取得後、指定の期間を居住した上で、語学力の証明や市民権テストに合格しなければならない。 |
カナダ永住権申請カテゴリーや申請条件
カナダ移民の方法は多岐にわたり、自身のスキルや状況に合った申請カテゴリーを選ぶことが重要です。ここでは、代表的な永住権申請カテゴリーとそれぞれの申請条件について紹介します。
ファミリークラス
18歳以上のカナダ人またはカナダ永住権保持者は、配偶者や子ども、コモンローパートナー、両親、祖父母のスポンサーとなって永住権申請をサポートできます。
最も一般的な「配偶者またはコモンローパートナー」としてファミリークラスから永住権申請をする場合、条件としてスポンサーとの関係が純粋なものである証明をする必要があります。ファミリークラスにはカナダ国内申請とカナダ国外申請の2種類があり、それぞれ以下の特徴があります。
カナダ国内申請 | 審査期間が長め、雇用主を制限しない就労ビザを申請可能 |
カナダ国外申請 | 審査期間が短め、カナダ国外での長期滞在が可能 |
連邦スキルドワーカープログラム(FSWP)
連邦スキルドワーカープログラム(FSWP)は、熟練労働者としてカナダ永住権を目指す方向けの申請方法です。主に職歴、学歴、英語力、年齢、雇用オファーの有無などが基準になります。カナダ国外での学歴や職歴も評価対象となるため、日本での経験を活かして申請することが可能です。
連邦スキルドトレードプログラム(FSTP)
連邦スキルドトレードプログラム(FSTP)は、特定の技術職(建設、製造、農業など)に従事する熟練者向けの申請方法です。スキルドトレードの職種はNOCで分類され、指定期間以上の職歴と雇用証明、または州政府から発行された資格証明書が必要です。最低限の語学力スコアも求められますが、スキルドトレードの職種に該当する場合は条件を満たせるかをチェックしてみましょう。
カナダ経験クラス(CEC)
カナダ経験クラス(CEC)は、カナダ国内での就労経験を持つ人を対象にした申請方法です。特別なスキルを持たない留学生でもカナダ永住権を狙える方法として人気があり、ワーキングホリデーやカレッジ卒業後の就労期間が申請条件を満たす場合があります。ほかには、学歴、英語力、年齢、雇用オファーの有無なども基準になります。
各州ノミネーションプログラム(PNP)
州ノミネーションプログラム(PNP)は、カナダの各州や地域が独自の基準で移民候補者を選ぶプログラムです。申請可能な職種や条件、申請可能人数は州ごとに異なるため、希望する州政府の公式サイトを確認することが重要です。PNPを通じて州からのノミネートを受けることで、審査ポイントが加算されたり、英語力の証明が不要になったりと、永住権取得の可能性が高まる傾向があります。
ケベック移民プログラム(QSW/PEQ)
ケベック州独自の移民プログラムであり、QSWはケベック州で不足している職業経験者などのスキル重視、PEQはケベック州での学習や就労経験がある人向けの申請方法です。ケベック州はフランス語を主に使用するエリアであるため、フランス語力が重要視される場合が多いです。ケベック移民プログラムでは、州の承認(CSQ取得)後に連邦政府に永住権申請を行います。
アトランティック地方パイロットプログラム
アトランティック地方と呼ばれるカナダ東部4州(ノバスコシア州、ニューブロンズウィック州、プリンスエドワードアイランド、ニューファンドランド・ラブラドール州)での就労や学習を通じた移民プログラムです。この申請方法は先着順に審査されますが、該当地域の雇用主からジョブオファーを得ることが必須条件になります。
ケアギバープログラム
ケアギバープログラムは、高齢者や幼児、体が不自由な人の世話をする仕事に従事している人向けの移民プログラムです。カナダ人から雇用オファーを受けると、就労ビザと永住権の同時申請が可能になります。フルタイムのケアギバーとしてカナダ国内(ケベック州以外)で2年間働くと、永住権の審査が受けられます。
ビジネスクラス
ビジネスクラスは、起業家、投資家、または自営業者を対象とする申請方法です。いずれのカテゴリーも一定の資産要件とビジネス経験が求められ、一部のカテゴリーでは英語力も必要になります。
カナダ永住権の申請方法
カナダ永住権の申請方法には、オンライン申請と紙ベース申請の2種類があります。一般的にオンライン申請の方が審査時間が短縮される傾向があり、従来紙ベースのみだった申請カテゴリーも徐々にオンラインへと移行しています。申請プロセスにかかる時間は以下のサイトで確認できるので、気になる方はチェックしてみてください。
https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/services/application/check-processing-times.html
ただし、カナダ永住権の申請カテゴリーがたくさん存在しているように、それぞれ申請方法が異なります。また、申請方法や必要な条件、申請可能人数などが変更される可能性があるため、必ずカナダ移民局のサイトを確認するようにしてください。
ワーキングホリデーから永住権を申請するには?
ワーキングホリデーから永住権を申請する場合、有力な方法として以下の選択肢が挙げられます。
・カナダ経験クラス(CEC)
・連邦スキルドワーカープログラム(FSWP)
・各州ノミネーションプログラム(PNP)
特に、カナダ経験クラス(CEC)はワーキングホリデーで就労している期間も申請条件を満たす場合があるため、申請可能な職種であるかをNOCで確認するのをおすすめします。また、雇用主からジョブオファーを受けると就労期間の延長が可能になるほか、審査のポイントが加算されるため永住権申請が有利になります。
カナダ永住権を取得するメリット
「カナダが魅力的な移住先なのはわかったけど、永住権を取得すると具体的にどんなメリットがあるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか?ここでは、カナダ永住権を取得するメリットについて詳しく紹介します。
ビザの期限を気にせず働ける
海外で働く上で、多くの人が直面する大きな課題が「就労ビザの期限」です。カナダの永住権を取得すれば、ビザの期限を気にせず安定的に働くことが可能になります。また、海外で就職活動をする際にもビザの期限がないことで採用されやすくなったり、雇用主の制限がないため自由に転職活動できたりするメリットもあります。
学費が無料または安くなる
カナダは世界的に教育水準が高いことで知られていますが、留学生にとって学費が非常に高いというデメリットがあります。永住権を取得するとカナダ現地の学生と同じ学費で教育を受けられるようになり、質の高い教育を比較的安価に受けられます。また、移民のための語学学校に無料で通えるようになるので、英語やフランス語を基礎から学び直したい方にもおすすめです。
医療費が無料
カナダでは基本的に医療費が無料であり、健康診断や治療、手術などが公的保険でカバーされます。妊娠・出産に関わる費用も保険の適用範囲に含まれており、帝王切開も無料で対応されます。(ただし、差額ベッド代は自己負担になります。)
一方で、歯科治療と薬代は自己負担する必要があるため、多くのカナダ人は会社が提供する福利厚生や私的保険に加入しています。
エクスプレスエントリーとは?
エクスプレス・エントリー(Express Entry)とは、カナダで成功する可能性のあるスキルの高い人材を優先的に審査する永住権申請方法です。エクスプレス・エントリーの対象カテゴリーは以下の通りです。
・連邦スキルドワーカープログラム(FSWP)
・連邦スキルドトレードプログラム(FSTP)
・カナダ経験クラス(CEC)
・州ノミネーションプログラム(PNP)
Comprehensive Ranking System(CRS)によるポイント制
エクスプレス・エントリーでは、Comprehensive Ranking System(CRS)というポイント制度に基づいて候補者に点数が付けられ、高得点者から優先的に永住権申請の権利を得られる仕組みです。ドローイングと呼ばれる抽選が不定期に行われ、高得点者にITA(Invitation to Apply)が発行され、永住権申請プロセスに進めます。
CRSは年齢、学歴、職歴、英語力、配偶者の有無、雇用オファーの有無などを基に点数化されます。エクスプレス・エントリーにプロフィール登録すると1年間有効になり、その間に英語テストで高得点を獲得した場合は随時更新することが可能です。
エクスプレスエントリー登録から永住権取得までの流れ
永住権申請カテゴリーの申請条件を満たす
↓
エクスプレス・エントリーにプロフィール登録する
↓
CRSにより点数が算出されて、選考プールに入る
↓
ドローイングによりITAが発行される
↓
ITA発給後、60日以内に永住権申請する
↓
カナダ移民局の審査が始まる
↓
CoPR(Confirmation of Permanent Residence)と呼ばれる永住権発行通知が届く
↓
PRカードを受け取る
まとめ
この記事では、カナダ永住権の申請方法や必要な条件について紹介しました。カナダ移住を成功させるためには最新の情報を把握し、永住権申請に必要な条件やプロセスをしっかり理解しておくことが不可欠です。
申請に不足している条件がある場合、準備を整えて計画的に取り組むことが大切です。カナダ永住権取得を目指している方はぜひ本記事を参考にして、自身のスキルや条件に最も適した申請方法を選ぶようにしましょう!

◇経歴
・英米文学科卒業
・George Brown College卒業(カナダ・トロント)
・カナダ現地のパティスリーにてパティシエとして働く
・現在はWebライターのほか、SNS運用やコンテンツクリエイターとして活動しています。
◇資格
IELTS General 6.0
◇留学経験
・ニュージーランド(2週間)
→高校留学でホームステイ体験
・カナダ(13年)
→ワーキングホリデー→カレッジ留学→現地就職→永住権取得
◇海外渡航経験
長期滞在:カナダ、韓国(3ヶ月)
旅行:ニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、
イタリア、タイ、インドネシア、シンガポールなど
◇自己紹介
英語学習や留学に関する記事を書いているWebライターです。
幼少期から英語や海外に興味があり、子ども英会話教室に通ったり、ニュージーランドへ短期留学したり、大学は英米文学を専攻したりと英語に関わる人生を過ごしてきました。
現在はカナダ在住13年め、海外で子育て奮闘中です。
英語学習や海外生活に興味のある方に、役立つ情報をお届けできたらと思っています。どうぞよろしくお願いします!