みなさん、「転換語」って聞いたことがありますか?
「何それ? 知らない!」という人も少なくないのではないかと思います。かく言う私も、最初は「えっ? そんなの学校で習ったっけ?」と思いました。
でもご安心ください。知らなかったり、記憶になかったりしてもがっかりする必要はありません。実は「転換語」というのは、カチッとした英文法の用語ではないのです。
「動詞」「名詞」といった品詞を表す用語、「関係代名詞」「関係副詞」などさらに品詞を細かく分類した用語、また、「主語」「目的語」「補語」といった英文の構造を分析する時に使う用語は、英文法で必ず出てくるカチッとした文法言葉です。
でも「転換語」というのはそれほどはっきりと定義された言葉ではありません。では「転換語」って、一体何でしょう?
転換語って?
「転換語」というのは、もっとわかりやすい日本語で言えば「つなぎ言葉」です。主として、文と文の間に入れて、それら2つの文の流れをわかりやすくする言葉です。
これは英語に限らず、日本語にもたくさん存在します。
例えば、「そして」「だから」「しかし」「一方」「例えば」「ところで」「最初に」「最後に」などなど。こんな感じです。私たちが日常生活の中でもよく使う言葉ですよね。
「転換語」は英語では「transition words」などと呼ばれます。また、「標識語」という日本語訳で「signpost words」などと呼ばれることもあります。さらには「Signposts & Transitions」などと書かれていることもあります。日本語だと「遷移語」などと呼ばれることもあります。
でも、こうした難しい呼び方はあまり気にせずに、文と文とをつなぐ「つなぎ言葉」ととらえておけば十分です。
ここで、「それって『接続詞』のことじゃないの?」という疑問を持たれる方もいるかもしれません。それはとってもいい質問です!答えを言えば、「『転換語』は『接続詞』などを含むつなぎ言葉」となります。
前述のように、「転換語」というのはあまりはっきりとした文法用語ではなく、ちょっと曖昧な部分もある言葉で、「接続詞」の一部も含むし、それ以外の品詞の言葉の場合もあるのです。
また、英語の「転換語」は、単語1語の場合もあれば、2〜3個の単語が並んだフレーズの場合もよくあります。学校などでは「熟語」として学ぶものも少なくありません。
転換語、すなわち「つなぎ言葉」を上手に使えるようになると、文章や会話全体の意味の流れがわかりやすくなります。表現の幅がグンと広がります。転換語は、意思疎通をスムーズに行うためにも欠かせない要素です。書き言葉でも日常会話においても、とても大事です。
さて今回は、そんな、スムーズで論理的なコミュニケーションに欠かせない英語の「転換語」の中からよく使われるものをピックアップし、多くの例文を交えながら解説・説明していきたいと思います。
転換語の種類
「つなぎ言葉」である「転換語」は、文と文をどのようにつないでいるか、その役割によって分類することができます。
ただ、前にも書きましたように、「転換語」というのは明確な英文法項目ではありませんので、その分類も特に決まったものがあるわけではありません。
今回のこの記事では、よく使われる「転換語」を、その役割から、「比較」「理由・証明」「時間」「要約・結論」の4つのカテゴリーに分けてご紹介したいと思います。
比較の転換語
まずは2つ、あるいはそれ以上のものを比較する文脈の中でよく使われる転換語です。
On the Other Hand
「一方」「かたや」といった意味を持つのが「on the other hand」。研究論文などの書き言葉やフォーマルなスピーチでよく使われ、人や場面にもよりますが、日常会話でもけっこう頻繁に登場するフレーズです。
文頭で用いられることが多いです。書き言葉の場合は「On the other hand, 〜」というように、カンマを入れるのが一般的です。
トムのプレゼンテーションは説得力がありました。 一方、ナンシーのは少しわかりにくかったです。
Meanwhile
「Meanwhile」も「一方」という意味を持ちます。特に、同時に起きている2つのことを比較する場合に使うのが普通です。
ジョージは買い物に行きました。 一方、ヴィンセントは家で宿題をし始めました。
上の例のような「meanwhile」は「その間」と日本語に翻訳されることも多いです。
In Contrast、By Contrast
「In contrast」あるいは「by contrast」も何かを比較する場合に使います。「一方」「対照的に」などと訳されることが多いです。
メアリーは人々と話すのが好きです。 対照的に、彼女の妹は内気です。
次のように、「in contrast to(またはwith)A」という形で、「Aと比べて」という意味になります。
メアリーとは対照的に、彼女の妹は内気です。
Whereas、While
「〜の一方で」という意味でよく使われるのが接続詞の「whereas」「while」です。
ここまでに紹介した転換語は独立した文の先頭に付けて使うことが多かったですが、これらの「whereas」や「while」は、以下の例文のように、主節を持つ1つの文の中に従属節を作る従属接続詞(従位接続詞)として組み込まれるのが普通です。
ナンシーは辛いカレーが大好きですが、彼女の家族の他のメンバーはそうではありません。
ほとんどの学生は試験に合格しましたが、数名が不合格でした。
But、However
「しかし」という意味でよく使う「but」も「転換語」の一つと言えるかもしれません。前に述べましたように、何を「転換語」と呼ぶかには明確なルールはありませんので、この辺りはあまり気にする必要はありません。
「しかし」という意味では、書き言葉やフォーマルなスピーチなどで「however」もよく使われます。
システムは現在正常に動作しています。 しかし、いくつかの課題も残っています。
次のように「however」は文頭ではなく文中や文末にずらして入れることもできます。この場合も、1つ前の文に対して「しかし」という意味であることは変わりません。
システムは現在正常に動作しています。 しかし、いくつかの課題も残っています。
次のように、書き言葉(文章)において、文の前半を途中の「however」で否定するような書き方は、基本的には間違いです。「However」の前でいったん文を終わらせなければなりません。ただ、ネイティブでも間違っている例はよくあります。
(正しくない文)The system is currently working properly, however, some challenges remain.
上の文の場合、「however,」を「but」に代えれば問題ありません。
その他の比較の転換語
ここまで紹介したもの以外に「比較の転換語」としては、「by [in] comparison」(比較して)、「on the contrary」(それどころか)、「conversely」(反対に)、「otherwise」(さもなければ)などを挙げることができます。
理由・証明の転換語
次に、「〜のために」「〜なので」「ゆえに」「だから」「それゆえ」といった、理由や証明の意味を持つ転換語を見てみましょう。
Because of、Due to、Thanks to、Owing to、By Virtue of、On Account of
これら6つのフレーズは、いずれも「〜のために」「〜のせいで」「〜のおかげで」といった理由の意味を表します。これらの後には名詞、もしくは名詞に準じる言葉が続くのが一般的です。
これらのうち、「owing to」「by virtue of」「on account of」は比較的かための言葉です。
台風のせいでその地域の電車はすべて止まった。
彼らの間の争いのために、手続きは遅れた。
彼は身長のせいで乗車を拒否された。
彼のおかげで、そのプロジェクトはうまくいった。
貧乏のせいで夢を諦めた。
彼が欠席したせいで私たちのチームは負けた。
So、Therefore、Hence、Thus
これらは「だから」「ゆえに」「従って」などの意味を持つ転換語です。いずれも文頭に置かれることが多いです。
「So」以外の3つはかたい言葉で、普通、学術論文やフォーマルなスピーチなどで用いられます。
今日はよく働きました。 それで、とても疲れてます。
従って、光が地球に到達するまでに8分かかります。
その他の理由・証明の転換語
「なぜなら〜なので」という理由を表す節を作る「because」や「since」といった接続詞も転換語と捉えることもできます。
また、「obviously」(明らかに)や「evidently」(明らかに)といった副詞も、特に文頭に置くと、文と文との関係性を明確にする転換語として働きます。
時間の転換語
次は、時間の経過や順番などを表す転換語です。
First、Second、Third、…、Finally
英語論文やスピーチなどで、いくつかの要素を並べる時に、よく「first(最初に)」「second(次に)」「third(3つ目に)」「finally(最後に)」といった言葉が使われます。
「Firstly」「secondly」「thirdly」…でもOKです。
まず、お互いをもっと注意深く見る必要があります。
Then、Next
「次に」「そして」などの意味を表す転換語が「then」や「next」です。
それから私たちはオフィスへ向かいました。
By the Way
「ところで」というように、話題を変える時によく使われるのが「by the way」です。
ところで、その計画はどうなっているのですか?
その他の時間の転換語
その他の、時間や順番を表す転換語としては、「now(今・さて)」「as of(〜の時点で)」「after(〜の後に)」「before(〜の前に)」なども挙げることができます。
要約・結論の転換語
最後は、「要するに」「要約すると」「結論として」「結局」といった意味を持つ、要約・結論の転換語です。
In Brief、In Summary、In Short、To Sum Up
これらは「要するに」「要約すると」「一言でいうと」「短く言うと」「つまり」といった意味で使われます。
つまり、俺たちは負けたってことさ。
要するに、彼女はあなたと結婚するつもりはまったくありません。
To Conclude、In Conclusion
これらは「結論として」「つまり」といった意味を持ちます。
結論から言えば、私たちは皆騙されました。
As a Result
「結果として」「その結果」などという意味でよく使われるのが「as a result」です。
その結果、彼は重大な事故に遭ってしまいました。
その他の要約・結論の転換語
ここまでで紹介した以外にも、「after all(結局のところ)」「in the end(最終的には)」なども、要約・結論の転換語に分類できます。
まとめ
いかがでしたか?今回は文章や会話においてとっても大事な役割を担う「転換語」について解説・説明しました。
今回の記事で紹介した転換語はほんの一部です。ほかにもたくさんあります。また、何度も言いましたように、「転換語」というのははっきり決まっているものではありません。捉え方によって、いろいろな言葉が転換語になることができます。
こうした転換語は、英語ネイティブの人たちも「国語」として学んで身につけます。どのような時にどのような転換語を使うのが適切か、たくさんの英文に触れて自分のものにしていってください。転換語をスムーズに使えるようになれば、英語でのコミュニケーションもグンと幅が広がりますよ。
◇経歴
児童英語講師
オンライン英会話講師
NC英語アドバイザー
英語学習ライター
元大学教員
◇資格
TESOL/TEC(CANADA)
中学校教諭二級免許状(英語)
◇海外渡航経験
25歳で初めて、短期間の語学留学をきっかけに本格的に英語の勉強を開始しました。
雑誌の編集・ライティング、テレビCMの企画・撮影等などの仕事が長く、英語を使っての海外取材や撮影経験も多く経験しています。また海外で日系新聞社の副編集長をしていたこともあります。
◇自己紹介
「英語学習に終わりはない」「継続は力なり」を実感し、50代半ばから毎日英語の勉強を続けて2000日近くが過ぎました。
「楽しく学ぶ!」をモットーに、僭越ながら私の異文化経験や英語の知識などをブログに織り交ぜながら、執筆することを心がけています!ネイティブキャンプのオンライン講師もしています。初心者・初級者限定ですが、ぜひ一緒に学びを続けましょう。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.