「アドリブ」という言葉を聞いたことがあると思います。音楽で、楽譜に書かれていないメロディーを即興で演奏したり、お芝居で台本にないセリフをその場で考えたりすることですね。
明らかに日本語ではないし、カタカナ表記だから、英語圏の人にも通じるのでは?と思う人もいるでしょう。
実は、アドリブはもともとラテン語で、イングリッシュスピーカーにも意味が通じます。ただ、日常会話で頻繁に使われる表現とは言えません。
今回の記事では、日本語でよく使われる「アドリブ」を英語でどう表現すればいいのかを解説していきます。
アドリブについて
まずは、アドリブという言葉の由来を見ていきましょう。
アドリブは、ラテン語のad libitumを語源としています。「思うままに」とか「気の向くままに」という意味で使われる上演芸術の用語です。
もともとは、演劇の世界で、台本にないセリフをその場で自由に作り上げることを指して使われた単語です。また、音楽の世界でも、頻繁に使われる単語です。
特にジャズやブルース、ロックなどの即興演奏を特徴とするジャンルでは、楽譜に「ad-lib」と書かれてあることがあり、その部分はミュージシャンがその場でメロディーを考えて演奏をします。
日常会話では、自己紹介やスピーチなどを準備なしで行う時に「アドリブでやる」といった使い方をしますね。
アドリブ 英語表現
Ad-libはあまり頻繁に使われる単語ではないので、いまいち使い方が分からないですよね。
Ad-libの使い方を解説していきます。そして、ad-libと同じ意味で使われ、もっとナチュラルな単語・フレーズも紹介します。
ad lib
彼はアドリブで話をしていた。
この劇はたくさんのアドリブがあるので、演者たちにとって困難に違いない。
即興でできるよ。
私たちは、パフォーマンスを即興で行いました。
彼のアドリブのスピーチはそんなに悪くなかった。
例文からもわかるとおり、ad libには、動詞、名詞、副詞、形容詞の意味があります。形を変えずに、これだけの品詞になれる単語はあまりありませんね。長文などで出てくると厄介なので、色々な品詞があることは覚えておきましょう。
ちなみに、三人称単数はad-libs, 進行形はad-libbing, 過去形はad-libbedになります。
真ん中のハイフンはある場合とない場合があります。厳しく採点されるような文章でない限り、特に気にする必要はないでしょう。Adlibとくっつけて表記することもあります。
wing it
彼らがどのような質問をするのか分からないので、即興で行わなければなりません。
No, I didn’t get to prepare enough. I’m going to wing it.
今日のプレゼン、準備できてる?
いや、十分に準備できなかったよ。その場でどうにかするつもり。
Oh, I don’t know. I haven’t prepared anything.
“t’s okay. You can just wing it.
パーティーが始まる前にちょっとだけスピーチしてもらえない?
え、どうだろう。なにも準備してきてないよ。
大丈夫。適当でいいからさ。
Wing itは、「その場でどうにかする、即興でやる、適当にやる」といった意味で使われる句動詞です。
スラングという位置づけですが、ビジネスシーンでもギリギリ使えるレベルのカジュアルさです。Ad libと違い、動詞の意味しかありません。単語も簡単なので、覚えればすぐに使えるようになりますね。
play it by ear
I don’t know. Let’s go downtown and play it by ear
今日はどこ行きたい?
わからない。ダウンタウンに行って、その場の雰囲気で決めようよ。
Nothing is really decided. Can you play it by ear?
私はここで何をすればいいんですか?
何も決まってなくてね。臨機応変に動いてもらえる?
We don’t have time. Let’s play it by ear.
I don’t want to spend the rest of my life behind bars!
どうするんだ!オイラたちお菓子の焼き方なんて知らねぇだろ!
時間がない。とりあえずやってみよう。
残りの人生を牢屋で過ごすのなんてオイラはごめんだぜ!
楽譜を使うことは許されていません。耳を使って演奏してください。
Play it by earは直訳で「耳で演奏する」という意味です。
もともとは音楽用語で、楽譜を使わずに周りの音を聞いて、それに合わせて音を奏でるという行為を表す表現です。もちろん、そのままの意味で使われることもあります。
その音楽用語が転じて、日常会話でも「その場で考える、臨機応変に動く、とりあえずやってみる、やりながら考える」という意味で使われるようになりました。
improvise
彼女は詩を即興で詠むのが得意だ。
ポールとブルーノは、テレビの生放送中に歌を即興で作った。
その元看護士はタオルで間に合わせの包帯を作った。
ジャズでは、ミュージシャンはコード進行に沿って即興演奏をする。
Really? I improvised.
おい、良いスピーチだったよ。
マジで?即興だったんだけど。
Improviseは「即興で~を作る、即興演奏をする」という意味の動詞です。自動詞、他動詞どちらの使い方もできます。
音楽や詩などの芸術に関すること、特に人前でのパフォーマンスに対して使われることが多いです。
off the cuff
即興でスピーチをしなければいけなかった。
本当に上手くやりたいのであれば、そんなに場当たり的に行動してはいけない。
彼の即興のお笑いは予想以上に良かった。
そのアナウンサーは場をしらけさせないために即興で喋っていた。
Off the cuffは、直訳すると「カフスを外して」という意味になります。
人前で喋るときに、話す内容を事前にカフスに書いていたことが由来です。「事前に準備しておいたカフスを外して、即興で話すことを考える」ということですね。
特にスピーチやあいさつなどの、大勢の前で話をする場面で使われることが多いフレーズです。形容詞的と副詞的な使い方ができます。
on the spot
その客は、その場で商品の購入を決めた。
ルーカスさんはその場で契約にサインをした。
警察はその通り魔をその場で逮捕した。
その騒動のあと、店主はその傷のある老人をその場で雇用した。
Ad-libが表す「即興で」とは少しニュアンスが離れますが、on the spotも「その場で決めて行動を起こす」という意味のフレーズです。副詞句ですね。
「すぐに、現場で、即座に」といったように、スピード感を表すときにも使えます。
その生徒は何でもすぐに理解できる。
というような使い方もできます。
これ以外にも様々な意味やニュアンスがあるので、確認してみましょう。
おまけ 「テンパる」「パニクる」の英語表現
ここからは、少しオマケです。
急に
「○○さん、ちょっと皆さんにご挨拶のスピーチを…」
「ピアノ弾けるんだよね?なんか弾いてよ!」
なんて言われたら、誰でもテンパって、パニックになりますよね。即興で、人前で何かするのが得意な人ってあまりいないでしょう。
というわけで、「即興する」というフレーズたちと一緒に覚えておきたい、「テンパる、パ二クる」を表す単語・フレーズを紹介していきます。
panic
あいつパーティーが始まる5分前にスピーチをするように言ってきたんだよ。パニクったね。
He thought the presentation was tomorrow. I guess he is going to have to play it by ear at this point.
彼パニクっているように見えるけど、どうしたの?
プレゼンが明日だと思っていたんだって。もう即興でやるしかないよな。
Don’t panic! Just relax and wing it!
待って、どうすればいいの?クラブって行ったことないんだけど。
パニクるなよ。落ち着いて、なんとなくでいいんだよ。
1つ目はpanicです。日本語でもパニックと言いますね。
日本語でパニックというと、「ものすごく深刻に慌てている」というニュアンスに聞こえますが、英語ではそこまで大事ではなく「いやー、焦ったわー」くらいの時でも使われます。自動詞、もしくはin panicのように副詞句として使えます。
freak out
何の準備も無しに500人の前でスピーチをしなきゃいけなかったんだよ。テンパったね。
彼女のお父さんがピアノを弾いてくれって言うんだよ、でも楽譜が無かったからテンパったよ。幸運なことに、即興でなんとかなったけどね。
あいつ俺に「今夜のコンサートがんばれよ」って言ったんだ。テンパったよ。コンサートの予定を忘れていると思ってさ。
日常会話で使われる頻度でいうと、panicよりもfreak outの方が多いです。
「テンパる」以外にも、「怖がる」「発狂する」などといった、精神状態が強く揺り動かされた状態全般を指します。
まとめ
日本語でも使う「アドリブ」は、英語でも通用します。
しかし、「アドリブ」よりももっと自然な表現がたくさんあるんですね。しかも、今回紹介した「アドリブ」を表す単語やフレーズは、それぞれニュアンスが微妙に異なります。
紹介した例文を何度も読んだり、辞書を引いて例文を調べたり、自分で例文を作ってみたりして、それぞれのニュアンスを身に付けていきましょう。英語の表現力の幅が、グンと広がるはずです。
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◇経歴
・アメリカ、オクラホマ州の四年制大学を卒業
・英語学習に関するブログを中心に、英語ライター・翻訳家として活動(現在)
◇資格
・TOEFL503点(大学入学時)
・Bachelor of Arts(文学士号)
◇海外渡航経験
・高校卒業後に、アメリカのオクラホマ州にあるNortheastern州立大学へ5年間の正規留学を経験
◇自己紹介
高校時代にアメリカの音楽文化に興味を持ち、アメリカへの大学留学を決意したことが、英語学習を本格的に始めることになったきっかけです。渡米後に3ヶ月の語学研修とTOEFL試験をクリアし、正規入学を果たしました。音楽学部にてJazz Studiesを専攻し、複数のバンドでギタリスト・ベーシストとして活動したことは一生の財産です。言葉はその人の価値観を定義付け、語学の習得は世界の見え方を変えます。自分が今も現在進行形で経験している、言語の魅力を発信するために、日々、英語・語学に関する情報発信をしています。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.