韓国語は日本語と文法的な共通点が多く日本人にとっては学びやすい外国語だと言えます。文化的にも近いことから、それらと密接な関係のある言葉でも日本語と同じ発想で韓国語にできる表現も他の言語に比べると多いです。
特に初級の最初の段階ではその傾向が強く、英語と違い学習内容をなかなか理解ができないということはあまりないと思います。
そのため初級の序盤ではしっかりと勉強をしていれば大きな問題はない韓国語学習者が多いと思います。ですが、学習内容が進むにつれ段々と難しいと感じるようになる人も多いと思います。
その原因は韓国語と日本語が似ているためです。
似ているがゆえに何もかも日本語と同じ感覚で韓国語の文章を作ったり、会話をしてしまい、韓国語表現としてはおかしい、通じないということがあります。
どれだけ似ていても日本語とまったく同じではないため、日本語との違いをしっかりと理解し使えるようにならないと不自然な韓国語を身に付けることになってしまいます。
韓国語ネイティブスピーカーのように完全に自然な表現を身に付けることは難しいですが、普段の学習で学んだことを理解できていれば極端に不自然な表現が身に付くことはありません。
今回の記事の前半では、初級レベルから中級レベルの学習者によくある不自然な韓国語を具体的に取り上げ、どのようにすれば自然な韓国語表現になるのかをそれぞれ説明していきます。後半では、不自然な韓国語を身に付けないために注意すべき点について説明します。
初級から中級の学習者によくある不自然な韓国語
ここからは、具体的な例を挙げながら説明していきますが、大きく次の3つのカテゴリに分類してそれぞれ説明します。
2.文法の使い方の間違いによる不自然な表現
3.日本語を直訳すると不自然な表現
1.助詞の使い方の間違いによる不自然な表現
まずは、助詞の使い方の間違いによる不自然な表現です。
韓国語の助詞は日本語に対応するものが多いですが、一部一致しないものがあるため注意が必要です。
지하철에 타요.
乗り物に乗る場合は、「~을/를 타다」なので「지하철을 타요.」が正しく自然な文です。
친구에 만나요.
「~に会う」は「~을/를 만나다」なので「친구를 만나요.」が正しく自然な文です。
다음 주에 만나요.
日本語の場合は、特別な文脈の場合は「に」を入れることは考えられますが、通常の場合は「来週」の後に助詞を入れないと思います。ですが、韓国語の場合は「에」が必要です。
주말에 뭐 합니까?
初級の序盤で出て来ますが、よくある不自然な例です。에ではなく에는を使い「주말에는 뭐 합니까?」とするのが自然です。
저는 김치찌개에 할게요.
「に」をそのまま置き換えて「에」にすると間違った不自然な文です。「~으로/로」を使い「저는 김치찌개로 할게요.」とすると自然な文になります。
그 남자는 여자에 인기가 많아요.
「に」をそのまま置き換えて에にすると不自然です。「에게」を使った「그 남자는 여자에게 인기가 많아요.」が文法的にも正しい自然な文です。
내일까지에는 연락을 드리겠습니다.
日本語をそのまま置き換えて助詞の「まで」と「には」を組み合わせてしまうと不自然になる例です。
正しい助詞の使い方は「내일까지는 연락을 드리겠습니다.」です。実際には내일까지で済ますことも多いです。
2.文法の使い方の間違いによる不自然な表現
次は、決まった文法の型があるにも関わらず、日本語を置き換えて韓国語にしたために不自然になってしまう例文です。
한국어를 배우기 때문에 한국에 유학을 가요.
この文の「ために」は目的や意図を表します。
ですが、原因や理由を表す「기 때문에」を使っていることで不自然、間違っている表現です。これからの状況や行動の目的や意図を表す場合は기 위해서を使います。「한국어를 배우기 위해서 한국에 유학을 가요.」が正しい自然な文です。
레스토랑이 닫고 있어요.
「閉まっています」を「~している」と進行形の意味を表す「~고 있다」を使って「닫고 있어요.」とするのは不自然です。「休業」に当たる漢字語を使って「레스토랑이 휴업이에요.」とすれば自然な文です。
한국 요리를 만드는 것이 할 수 있어요.
日本語を置き換えただけの不自然な文です。この文の意味合いでの「~することができる」は「~을/ㄹ 수 있어요」という決まった文法があるのでそれを使うと自然です。「한국 요리를 만들 수 있어요.」とすれば自然な文です。
삼계탕을 먹은 것이 있어요.
日本語を置き換えただけの不自然な文です。「~したことがある」という経験の意味を表す文法に「~아/어 본 적이 있어요」があるのでそれを使い「삼계탕을 먹어 본 적이 있어요.」とすれば自然な文です。
명동까지 가세요.
ここでの意味合いは、自分がタクシーの運転手に対し明洞に行って欲しいというお願いになるので「~아/어 주세요」を使って「명동까지 가 주세요.」と言うのが自然な文です。
「~아/어세요」は指示や丁寧な命令になるので、相手に自分のために何かをしてもらう場合の「~してください」には使えないので注意が必要です。
3.日本語を直訳すると不自然な表現
次に、日本語を直訳すると不自然な表現の例文です。
일에 갑니다.
韓国語にはこのような表現はありません。「出勤する」や「仕事をしに行く」のように表現を置き換えます。
친구하고 런치에 가요.
「일에 갑니다. 」と同じくこのような表現はありません。正しくは「점심을 먹으러 가요.」です。
술이 안돼요.
「ダメ」が具体的にどういうことなのかを表す必要があります。「술을 못 마셔요.」(お酒を飲めません)や「술을 안 좋아해요.」のようにすると自然な表現になります。
저에서 부장님한테 전해 두겠습니다.
「から」をそのまま韓国語の「에서」で置き換えると不自然です。「私から」はつまり「私が」という意味なので「제가 부장님한테 전해 두겠습니다.」とすれば自然です。
이상한 소리가 해요.
「音がする」の「する」をそのまま「하다」で置き換えた不自然な文です。「音がする」は「소리가 나다」という決まった表現があるので、「이상한 소리가 나요.」が正しい自然な表現です。
この子はどこの家の子ですか。
이 아이는 어느의 집 아이예요?
「どこの」をそのまま置き換えて「어느의」にした不自然な文です。自然な文は、「의」を入れない「이 아이는 어느 집 아이예요?」です。
절대 맛있어요.
この文での絶対の意味合いを考えずに「절대」を使った不自然な文です。この文での「絶対」の意味は「間違いなく」なので「틀림없이」を使い「틀림없이 맛있어요.」が自然な文です。
지금까지 가장 기뻤던 것은 뭐예요?
「こと」をそのまま「것」で置き換えた不自然な文です。経験した出来事の意味合いであれば「일」を使い「지금까지 가장 기뻤던 일은 뭐예요?」とすれば自然な文になります。「こと」は必ずしも「것」に置き換わるわけではないので注意が必要です。
이것부터 바빠질 것 같아요.
「これ」と「から」をそれぞれ置き換えて「이것」と「부터」にして不自然な文です。自然な文は「이제부터/지금부터 바빠질 것 같아요.」です。
ただし、「(数ある中から選んで)これから始めましょう」のように順番の意味合いで使う場合、「이것부터 시작합시다.」のように使うことは可能です。
우리 오빠는 공부도 할 수 있고 운동도 할 수 있어요.
「~できる」を文字通りの「できる」に相当する文法である「~을/를 수 있다」を使ってしまったことによる不自然な文です。
この文での「~できる」の意味は、「上手、うまい」なので、「うまくする」に相当する「잘 하다」を使うことで自然な韓国語になります。「우리 오빠는 공부도 잘 하고 운동도 잘 해요.」とすると自然な文になります。
不自然な韓国語を身に付けないために注意すべき点
ここからは、不自然な韓国語を身に付けないために注意すべき点について説明します。
1.学習内容をしっかりと理解し使えるようになる
初級では基本的な助詞の使い方や文法を学びます。
ですが、学んでいる時は正しくできていても教材から離れて自分で作文をしたり会話をすると学んだことを正しく使えるようになっていないことがあります。
そのため、学んで終わりではなく、学んだことをしっかりと自分で使えるようになるまで練習し体得することで理解することが必要です。
2.置き換えではなく意味を考えて韓国語にする
韓国語では日本語の置き換えでできるものもありますが、できないものもレベルが上がるにつれ増えて来ます。
そのため、置き換えではなく常に文の意味を考えてから韓国語にするくせを付けて下さい。
勉強法としては、元の日本語を同じ意味を表す他の表現に換えるとどうなるか考えてみると表現を見直すことができます。
3.基本の定型フレーズを覚え応用する
自然な韓国語表現を身に付けるために、まずは基本の型となる定型フレーズをしっかりと身に付け、それを応用して文を作ることで自然な韓国語の型を身に付けましょう。
絶対にやってはいけないのは、日本語をベースにしてそれを翻訳アプリなどで韓国語に訳すことを初めからすることです。
これをすると間違った韓国語や不自然な韓国語が身に付いてしまい後から矯正することが難しくなります。
4.韓国語と日本語の違いに注意を向ける
韓国語学習で韓国語の文を日本語に訳すことをする学習者がほとんどだと思います。
その時に、単に単語の意味を拾って訳すのではなく、助詞の使い方など韓国語と日本語の違いや、表現の仕方の違いに注意を向けるようにすることです。
韓国語と日本語の差が間違いやすい部分であり、外国語として韓国語を学ぶ私達が学ぶべきポイントです。
まとめ
ここまで初級レベルから中級レベルの学習者によくある不自然な韓国語、そして、不自然な韓国語を身に付けないために注意すべき点について説明してきました。
冒頭で触れた通り、韓国語は日本語との類似点が多く日本人学習者にとっては最も学びやすい言語ですが、外国語には変わりなく日本語とまったく同じではありません。
同じ感覚で韓国語にできるものは間違うことがありませんが、日本語と違う部分が間違う部分であり、そこをしっかりと理解し自分で使えるようになれるかが習得のカギになります。
初級段階から自然な韓国語を身に付けるようにしっかりと勉強をしてください。

◇経歴
日本、韓国の企業で通訳・翻訳、アシスタントとして勤務
日本にて韓国語講師として5年勤務
フィリピンにてフリーの通訳として英語、韓国語、日本語の3言語の通訳を担当
◇資格
・韓国語能力試験(TOPIK)6級
・延世大学校韓国語教員養成課程修了
◇留学経験
【オーストラリア】
・クイーンズランドカレッジオブイングリッシュ:3カ月
・ゴールドコーストカレッジオブビジネス:6カ月
【フィリピン】
・ファーストウェルネスイングリッシュアカデミー:3週間
【韓国】
・梨花女子大学校言語教育院:3週間
・延世大学校言語研究教育院(韓国語教員養成課程):5週間
【タイ】
・プロランゲージ(タイ語):1年6カ月
◇海外渡航経験
ワーキングホリデーにてソウルの企業数社で通訳・翻訳、セールス、マーケティングを担当
韓国語習得のための留学5回(一般韓国語、ビジネス韓国語)
延世大学校にて韓国人と共に韓国語教育について学ぶ
◇自己紹介
韓国語学習コンサルタント
韓国語講師
講座構築コンサルタント
オンラインで韓国語学習に悩みを持つ学習者の問題解決をする韓国語学習コンサルタント、韓国語講師として韓国語習得に成功する学習法や練習法も指導しています。
また、英語と韓国語習得に成功した経験とカリキュラム構築、教材作成の経験を活かし講座構築の方法をあらゆるジャンルのプロに指導するコンサルタントとしても活動しています。
海外就職でフィリピンのセブに移住して5年半在住、現在はタイのチェンマイに住んでいます。
外国語に興味があり、英語、韓国語(ビジネスレベル)、中国語(中級)、現在はタイ語習得を目標に勉強しています。