「~だったらいいのになぁ」とか「~ならいいのにね」などといった願望や理想を話し合うことは、日常会話でよくあります。空想に思いを巡らせ、それを語り合うと、思いのほか会話がはずんだりするものです。
また、願望の表現を上手く使うことで、微妙な感情のニュアンスを表現することもできます。遠回しに言ったり、オブラートに包んだりして直接的に言わずに相手に察してほしい時などに便利です。
今回の記事では、「だったらいいのに」の表現の仕方を例文を用いて学んでいきます。
「~だったらいいのに」の英語表現
「~だったらいいのに」を英語で表現する際によく使われるのが、仮定法です。中級英語のラスボスのような扱いをされることが多いので、聞いたことがある人も多いでしょう。
「~だったらいいのに」の表現を学んでいく過程で、仮定法の存在は無視できません。これを機に仮定法をマスターしましょう。
実際はそこまで難しい文法ではありません。決まった形と、使う場面さえ覚えてしまえばすぐに使えるようになります。
仮定法の基本的な使い方
仮定法でつまずいてしまう人が多い理由は、「日本語にはない英語独自の時制の使い方」があるためです。
仮定法は主に、「現実に起こっていない出来事」について話すときに使います。英語ではその状態を表現するために時制を変えるのです。基本的なルールと、使う場面を見ていきましょう。
仮定法における時制の変化
仮定法の文章の基本的な形は「If+主語+過去形の動詞, 主語+助動詞の過去形+原形の動詞」です。やたらと過去形が多いのが分かります。まずは例文を見てみましょう。
もし車を持っていれば、そこまで車で行くのだが。
「車を持っていたらなぁ」という願望を表している文章です。注目したいのが、過去形の動詞や助動詞があるにもかかわらず、過去の話は一切していないということ。車を持っていないことも、そこまで車で行きたいと思っていることも現在の話です。
この過去形の使用は、「現実に起こっていない出来事に対する願望」を表現するための英語特有の方法なのです。過去形にして現在から遠ざけることで、非現実を表現しています。
時制を過去にすることで空想の話をする、という概念が日本語には無いので、日本人は仮定法に苦手意識を感じてしまうのです。
仮定法を使う場面
新しい文法事項や構文を覚えるには、実際にそれらを使っている場面を想像して、文章を作るという方法が有効です。
どういう時に仮定法を使うのかを見ていきましょう。「~だったらいいのに」の言い方を学ぶ上で欠かせないポイントです。
実現できない願望を表す時
まずは、例文にもあった「願望」を表すパターンです。
もしもっとお金を持っていたら、Lサイズのピザを買うのに。
十分なお金が無く、Lサイズのピザを買うことができない状態で、「もっとお金を持っていれば」という空想の状況が表現されています。
「もっとお金が欲しい」「Lサイズのピザが欲しい」という、現時点では実現できない願望が暗に示されていることに注目しましょう。
無念さを表す時
もし私が十分に強かったら、この岩を動かせるのに。
「もし十分に強かったら」と言っているので、実際には十分に強くないことが分かります。岩を動かせるくらいの強さを持っている状態を、空想しているというわけです。
願望と似たニュアンスで、仮定法を使って「無念さ」を表すことができます。この例文では「本当はこうしたいんだけど、現実にはそれを実現することができない。残念だなぁ。」というニュアンスが見て取れます。
ちなみに仮定法の文章では、Iに対するbe動詞がwasではなくwereになります。昔はbe動詞の過去形はwereしかなく、仮定法においてのみその名残が残っているとのことです。
予測を表す時
もしお母さんがここに居たら、僕の顔面にパンチしているだろう。
「今ここにお母さんはいないけど、もしいたとしたら」という空想の話をしています。
現実に起きていることと違う状況になっていたらどうなっていただろう、という別パターンの予測をするときにも、仮定法が使えます。
be動詞に関しては、この場合はwasでもwereでもどちらでも通用します。
愚痴を言うとき
もしあなたがもっと責任感のある人だったら、こんなにたくさんのことを心配しなくてもいいのに
この例文は「責任感に欠ける夫に対する妻の愚痴」みたいな感じです。夫は責任感のある人ではないけど、もし仮に夫が責任感のある人だったら状況は違っていただろう、という空想の話をしています。
「願望」や「無念さ」も含めた「愚痴」のニュアンスが表現されています。また、もっと責任感を持って行動してほしいんだけどな、という「遠回しなお願い」のニュアンスも含まれています。
ifで「~だったらいいのに」
ここからは、これらの仮定法の使い方を利用して、「~だったらいいのに」の表現方法を身に付けていきましょう。
「願望」「無念」「愚痴」を表す仮定法を応用すれば、様々なシチュエーションの「~だったらいいのに」が表現できます。例文を見ていきましょう。
もし英語が喋れたら、世界中を旅するのに。
「英語が喋れたらいいのに」という願望が、仮定法によって表現されているのが分かります。遠回しに「~だったらいいのに」を表すのが、Ifを使った仮定法の特徴です。
もし家を持っていたら、犬を飼うのだけど。
「家を持っていたらいいのに」という願望が表現されています。If節と主節がひっくり返っていることに注意しましょう。仮定法としての意味や用法は変わりません。
I would if I didn’t have a night shift.
今夜のパーティー来る?
夜勤が無ければ行くんだけどね。
「夜勤が無ければいいのに」「パーティーに行ければいいのに」が表現されています。
日常会話では、助動詞の後の動詞は省略可能です。2つ目の文章を丁寧に書き換えるとIf I didn’t have a night shift, I would go to the party.となります。
もっと時間があればいいのに。
こちらも、Ifを使った仮定法の変化形です。「If only+過去形の文章」で、「~だったらいいのに」という言い方ができます。
If onlyの節の後に、主節となる文章を続けることもできますが、If only節単体でも使うことができます。この後に紹介するI wishと似たような使い方です。
I wishで「~だったらいいのに」
Ifを使わないで「~だったらいいのに」を表現することもできます。それがI wishです。I wishは「Ifを使わない仮定法」として知られています。
「I wish+過去形の文章」で、現実には起こりえない願望の表現ができます。シンプルな上に便利なので、今のうちに使えるようになっておきたいところです。
あなたがここにいればいいのに。
今は「あなた」はここにはいないけど、いたらいいのにな、という意味の文章です。パーティーの最中に、そのパーティーに来れなかった友達に電話口でこの例文のフレーズを使ったりします。
“Hey! This party is amazing! I wish you were here!” みたいな感じです。
またこの例文は、以下のようにIfを使った仮定法で言い換えることができます。
If only you were here.
いくつかのシンプルな公式がそこらにある、と言えればいいのですが。(そのようなものは)ありません。
この例文は、オバマ前大統領のスピーチから引用したものです。この様にI wish I could say that (~と言えればいいのだが) という言い回しで、さらに遠回しに「~だったらいいのに」を表現することがあります。
この言い回しは、多くの人にとって残念な事実を伝えるときに、スピーチなどでよく使われます。
Oh, I wish!
あの娘って君の彼女?
あぁ、そうだったらいいのにね
会話の中では、I wish単体で「そうだったらいいのに」という返答として使うこともできます。
You wish.
あの娘、絶対オレに惚れてるって。
言ってろ。
「~だったらいいのに」とは少し異なりますが、You wishもよく使われるフレーズなので覚えておきましょう。「そうだったらいいのにって思ってるだけだろ」といったニュアンスです。
自分の空想を事実だと勘違いしている人に対して、「言ってろ」「夢でも見てろよ」とツッコむときに使うフレーズです。仮定法の文章を突きつけることで、起こりえない空想であることを強調します。
I hopeで「~だったらいいのに」
ここまで、実現不可能な願望をともなう「~だったらいいのに」の表現を見てきましたが、ここで実現可能な願望を表す方法も見ていきたいと思います。
I hopeを使うことで、起こる可能性のある願望を表現できます。I wishと同じように使われがちですが、実際に起こり得るかどうかに関して明確な違いがあるので注意しましょう。
君がパーティーに来られたらいいね。
ポイントは、これから実際に起こる可能性のあることについて話しているので、現在形か未来形になることです。この例文の場合、相手がパーティーに来られる可能性が十分にあることが分かります。
彼女が独身だったらいいんだけど。
「願望」を表していますが、hopeを使っているので、彼女は独身である可能性が十分に残っています。つまり、彼女にボーイフレンドがいるかどうかわからない状態で「いないといいな」という希望を抱いている状態です。
ここでI wish she was singleと言ってしまうと、彼女にボーイフレンドがいることが判明しているうえで、「いなかったらチャンスがあったのにな」と落胆しているニュアンスになります。
まとめ
「~だったらいいのに」の表現を学ぶだけで、様々なニュアンスを表すことができます。ニュアンスの理解は、テストで点数を取る上でも重要になりますし、生の人間とコミュニケーションを取るときにも必要な能力です。ニュアンスの理解の第一ステップとして、「~だったらいいのに」の使い方をマスターしてみましょう。
また、このようなニュアンスを理解するには、ネイティブキャンプがおススメです。ネイティブキャンプでは、ネイティブスピーカーかネイティブスピーカーレベルの日本人講師とマンツーマンでレッスンを行うことができます。教科書からは学ぶことが難しい、ニュアンスに関して学ぶのに最適です。
◇経歴
・アメリカ、オクラホマ州の四年制大学を卒業
・英語学習に関するブログを中心に、英語ライター・翻訳家として活動(現在)
◇資格
・TOEFL503点(大学入学時)
・Bachelor of Arts(文学士号)
◇海外渡航経験
・高校卒業後に、アメリカのオクラホマ州にあるNortheastern州立大学へ5年間の正規留学を経験
◇自己紹介
高校時代にアメリカの音楽文化に興味を持ち、アメリカへの大学留学を決意したことが、英語学習を本格的に始めることになったきっかけです。渡米後に3ヶ月の語学研修とTOEFL試験をクリアし、正規入学を果たしました。音楽学部にてJazz Studiesを専攻し、複数のバンドでギタリスト・ベーシストとして活動したことは一生の財産です。言葉はその人の価値観を定義付け、語学の習得は世界の見え方を変えます。自分が今も現在進行形で経験している、言語の魅力を発信するために、日々、英語・語学に関する情報発信をしています。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.