中学英語で登場する “rock” という単語、日本語でも「ロック」という外来語として親しみがあるのではないでしょうか。ロッククライミング、ロックンロール、オンザロック、ロッキングチェア…どれも「ロック」の部分は英語表記をすると “rock” です。
そんな身近な単語でありながら、疑問に思ったことはありませんか?
“rock” って岩だよね、じゃあなんでロックミュージックとかロックバンドってロックって言うのだろう…?
今日はそんな疑問も解消します!身近な “rock” の意外な使われ方、スラングやイディオムなど、たっぷりご紹介するので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
“Rock”の基本的な意味とは
名詞としての “rock”
“rock”には、名詞として「岩」という意味があります。類義語は “stone” ですね。
A large rock fell and blocked the road.
大きな岩が落ちて道をふさいだ。
さまざまな大きさの「岩」を表す単語なので、日本語では「岩盤、岩石、岩山、岩礁(暗礁)」などと訳されることもあります。アメリカやカナダでは「小石」のような小さなものも “rock” と呼びます。
この “rock” の語源は、中世英語でいうと “rocke, rokke”、中世ラテン語の “rocca” から来ているそうです。
オーストラリアにある “Ayers Rock” (エアーズロック、ウルル)は有名な観光地ですが、実は大きな一枚岩でできています。単一の岩石の大きさとしては、世界で2番目だと言われています。まさに “rock” を代表する岩ですね。
The place that left the biggest impression on me was Ayers Rock.
一番印象に残っている名所はエアーズロックです。
日本語で「ウイスキーをロックで」の「ロック」も、この「岩」を意味する “rock” から来ています。岩の様にごつごつした氷のことをロックアイスと呼ぶので、そのような氷を入れたグラスにお酒を注ぎ、水で薄めたりすることなく飲む方法のことを指します。
I drink bourbon whiskey on the rocks.
私はバーボンウイスキーをオンザロックで飲みます。
また、イギリスには “rock” と呼ばれる棒キャンディーもあります。千歳飴のように細長く、硬いあめで、海辺系の観光地にあるお土産物屋さんで売られています。金太郎あめのように絵柄が入っているのも特徴的です。千歳飴と違うところは、外観が原色のはっきりしたストライプなど比較的派手で、味がペパーミントなど爽やかな点です。
Blackpool rock is one of my favorite confectionery.
ブラックプールのロックは私の好きなお菓子のひとつです。
一方、アメリカでは氷砂糖のことを “rock” あるいは “rock sugar” といいます。
Make syrup by simmering rock sugar and water in a pan.
鍋に氷砂糖と水を入れ、煮詰めることで、シロップをつくる。
アメリカには “Rock Sugar” というロックバンドがいますが、かわいらしい名前からはかけ離れていると言うか、割といかつめな妙齢の男性陣がハードロックを奏でるというグループです。一応ポップミュージックとのマッシュアップという音楽ジャンルなので、そのポップな部分を “sugar” に込めたのでしょうか。あるいは「ロックスター」と韻を踏んでみたのかもしれませんね。
動詞としての “rock”
「岩」としての “rock” とは別の単語として、「揺り動かす、揺れる、揺する」といった意味を持つ動詞もあります。
こちらの “rock” の語源は、中世英語でいうと “rokken”、古英語では “roccian”、そのもととなったのは印欧祖語とも言われており、「岩」とは全く別のルーツを持つ単語です。
The house was rocked by an earthquake.
その家は地震でぐらぐらと揺れた。
赤ちゃんをゆりかごで静かにゆらゆら揺することも “rock” です。
She rocked her baby to sleep.
彼女は赤ちゃんを静かに揺すって寝つかせた。
前後にゆれるタイプの椅子をロッキングチェアと呼びますが、この「ロッキング」も「ゆらゆらと揺れる」ことを表しています。
名詞の “rock” が小石から岩盤まで幅広い大きさの岩に使われるように、動詞の “rock” は赤ちゃんを優しく静かに揺り動かす様子から地震のように大きな揺れまで表すというわけです。
この“rock”という単語の懐の深さは、「心を動かす」という側面にも表れています。
The murder case rocked the whole country.
その殺人事件は国中を震撼させた。
The hall rocked with laughter.
会場は群衆の笑いで沸き立った。
動揺するのも、恐ろしさで震えるのも、笑いで沸き立つのも “rock” で表現されるとは興味深いですよね!
なぜ“Rock”?音楽における rock とは
日本語で「ロック」といえば、岩でもなく、揺れることでもなく、音楽のジャンルを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ロックは省略形なので、正式には「ロックンロール」となりますが、英語では “rock 'n' roll (rock and roll)” と記されます。
“Rock 'n' roll” is a genre of popular music originating in the 1950s.
ロックンロールは1950年代に生まれたポピュラー音楽の一種です。
I plan on singing rock.
私はロックを歌うつもりだ。
はたしてこの “rock” 、語源は「岩」でしょうか、それとも「揺れる/揺らす」でしょうか?
答えは「揺れる」方の “rock” です。「揺れる」 “rock” 、そして「転がる」 “roll”。元々は船が海で揺れ動く様子を表す言葉でした。
それが20世紀初頭にはスピリチュアル、あるいはセクシュアルな意味として使われはじめ、やがて楽曲の題名などにも登場し、音楽のジャンルとして確立されていったのです。
イギリスのロックバンド、QUEENの“We Will Rock You” というヒット曲は、日本でも広告やテレビ番組の挿入歌に登場するなど、よく耳にしますよね。
その歌詞の和訳には諸説ありますが、ライブ会場などでは観客もアーティスト側も“We will rock you!” と歌い合うので、「会場全体ロックミュージックで一体となって湧きたとうぜ!」と言っているようにも聞こえます。
あるいは “you” が「世間」だとしたら、「おまえらを震え上がらせてやるぜ」「世界をあっと言わせるぞ」という意味にもとることができますね。
いずれにしても、口ずさむと元気が出てくる、まさに応援歌といっても過言ではない名曲です。
“Rock”のスラングと使い方
日常生活で使われる基本的な単語がスラングとして別の意味を持つ、というのは英語あるあるですよね。
“rock” も例外ではなく、スラング的用法があります。
信頼できる人・頑固者
「岩」としての “rock” から生まれたスラングは、「ダイヤモンド(宝石)」「麻薬」など。複数形では「お金」という意味を持つこともあります。
「岩」は丈夫で硬い、というところから、「頼れる人、信頼できる人」という意味で使われることもあります。
He is a rock! He is such a steady worker.
彼はまじめな勉強家でとっても信頼できる人!
イディオムでは “firm as (a) rock” あるいは “solid as (a) rock” で「きわめて頑固な」「(人が)信頼できる」という意味を持ちます。
He is as firm as a rock.
彼はとても頑固だ。
日本語では「動かざること山のごとし」という表現がありますが、この「山」が “rock” に置き換わったような言い回しですよね。
また、アメリカでは「失敗を繰り返すようなばかな人」と言った意味で使われることもあります。「頑固」からの派生でしょうか。融通が利かないがゆえに同じことを繰り返してしまう、そんな人物像が頭に浮かびます。
それにしても、同じ単語が「信頼できる人」にも「ばかな人」にもなってしまうとは。 “rock” の守備範囲の広さには驚きを隠せません。
似合っている・身につけている・最高
一方、「揺れる/揺らす」の動詞としての “rock” から生まれたスラングには、以下のものがあります。
ひとつは、「魅力的/印象的なものを着用/表示している」という意味です。
She is rocking this outfit!
彼女はこの魅力的な服を着ている!(この服は彼女に似合っている!)
In the picture he is rocking a beard.
写真の中の彼はひげをはやしていた。
もうひとつは、「とても楽しい、心地よい、最高」という意味です。
You guys totally rock!
君たち本当に最高だね!
これは、人物だけではなく、物に対しても使われます。
Her new car rocks!
彼女の新車は最高!
いずれの場合も、「rock=岩」という考えでは意味がわからない表現ですね。
その他“Rock”の意味・使い方
前項目、スラングの所で “firm as (a) rock” というイディオムをご紹介しましたが、 “rock” を含むイディオムには他にも以下のようなものがあります。
“on the rocks” - 座礁して → 破産/破綻しそうで
“rock”の名詞には「岩礁/暗礁」といった意味もあるとご紹介済みですが、その「岩礁にのる」つまり「座礁する」が転じて「破綻/破産しそうな状態」を表すことがあります。
Their marriage is on the rocks.
彼らの結婚生活は破綻しそうな状況にある。
日本語にも「暗礁に乗り上げる」という表現があります。それは厳密には「途中で予期しない障害に出くわし、物事の進行が妨げられる」という意味なので「破綻する」とはニュアンスがことなりますが、「うまくいっていない」という大義は共通していますね。
“off the rocks” – 危機を脱して、破綻の心配がなくて
“off” は “on” の対義語ですので、こちらの意味は「破綻の心配がない」になります。
Their marriage is off the rocks.
彼らの結婚生活は破綻の心配がなくなった。
イメージとしては “on” の状態から “off” に変化した、ということで、「危機を脱した状態」とも言えます。
between a rock and a hard place – 板挟み状態、どうしようもない状況
このイディオム、Google翻訳にかけると「岩と硬い場所の間」となります。
そもそもは、1920年代のアメリカで、採掘労働をしていた人たちが環境改善を訴えたものの要求は認められず、ここで働きたいなら劣悪環境(鉱山=岩の中)のまま、劣悪環境が嫌なら他の土地(hard place=困難な場所)へ移住せよ、と命令されたときに使われた表現です。
劣悪な環境 “rock” と、困難な場所 “hard place” の間で、よい出口(解決方法)がない、という状態、いわば「板挟み状態」にあることを意味します。
I’m stuck between a rock and a hard place.
私は困難で身動きがとれない状態にある(窮地に陥ってしまった)。
二方向に塞がれ、どっちに転んでもよろしくないようなジレンマ状態を表す表現には、他にもギリシャ神話がもとになった “between Scylla and Charybdis” という表現もあります。
日本では二方向どころか、八方向に行けないという「八方ふさがり」という言い方もありますね。
ちなみにかの有名なロックバンド、ローリングストーンズが “Between a Rock and a Hard Place” という楽曲を制作しています。これはやはりロックミュージックとも意味をかけているのでしょう。
“rock on” – いいね!/元気?/最高!
“on rock” は「岩の上」の意味ですが、これが “rock on” になるとテンションが上がっている状況での表現、掛け声になります。
状況によって「がんばれ!」「やったね!」というような意味の場合もあります。
Rock on!
すごーい!いいね!
See you, then! Rock on!
それじゃあね!元気でね!
もともとは、ロックミュージック愛好家たちの間での挨拶で「ロックでいようぜ!」「ロックを続けよう!」というような意味でしたが、現在では一般的に交わされる挨拶や誉め言葉となりました。
ちなみに、日本語でも使う「ロックオンする」の「ロックオン」は英語表記になると “lock on”。 「標的に対して照準を合わせる」「照準に目標物を捉える」といった意味ですが、 “rock” ではなく “lock” です。
“Rock”の英語表現・まとめ
今回は入門的な英単語 “rock” の基本的な意味、インフォーマルな使い方、イディオムなどを見てきました。
日本語にも外来語として定着している “rock” がこんなに幅広い意味で使われているというのは新たな驚きがありますね。
ぜひ、 “rock” が登場したときはその文脈に注意して、どのような意味合いで使われているかを紐解いてみてください。
それではまた次回まで。 Rock on!

東京在住、元IT系で今は2児の母業に専念中。パッキング作業が大の苦手なのに数年に1回海外引越する生活が続き、日本に落ち着いた今でもたまに夢の中で荷造りしている。渡った先は欧州、南米、オセアニア…人生通算で一番長く住んだのは英国。中でもロンドンでモノクロフォトグラフィーにはまり暗室にこもっていた頃が一番の思い出。趣味はカメラとミシンと鉱物収集。形から入る派なのでモノが増えがち。ミニマリストな生活が夢。

I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.