『鋼の錬金術師』の世界を英語で楽しもう!英語学習法と英語で見る方法

鋼の錬金術師で英会話を学ぶ

いつか英語で物語を楽しめるようになりたい!そうした願いを持つ英語学習者は多いのではないでしょうか。それでも中々、教科書英語の枠を飛び越えるのは勇気がいりますよね。

そんなときにオススメなのは、既にストーリーを知っている作品です。特に、映画やコミックは映像が理解を助けてくれるので、わからない部分をスルーしながらでも話を追うことができてしまうという、すばらしい教材になってくれる可能性を秘めています。

この記事では、映像でもコミックでも英語版を楽しめる、『鋼の錬金術師』についてご紹介したいと思います。

まず最初に『鋼の錬金術師』の作品概要、続いて作品に登場する専門用語や名言(日本語&英語)、最後にこの作品を英語で楽しむための情報をお伝えします。

それでは早速見ていきましょう!

『鋼の錬金術師』とは

『鋼の錬金術師』(はがねのれんきんじゅつし)、略してハガレンは、日本の漫画作品で、作者はマンガ大賞受賞作『銀の匙 Silver Spoon』でもおなじみの荒川弘先生です。

オリジナルの漫画は『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)にて2001年から9年間連載され、完結。アニメ、アニメ映画、実写映画、小説(ノベライズ)、ゲームなど、様々なメディアに姿を変えて愛され続けている作品です。

ストーリーの舞台は架空の世界。そこでは錬金術が存在しています。錬金術といっても現実のものとはことなり、むしろ魔法に近いものです。その錬金術を使える少年が主人公。錬金術で人体を錬成し自分の元の身体を取り戻すために弟と旅をする、ファンタジー冒険物語です。

現実のものとは異なるとはいえ、錬金術がストーリーの軸にあるので、科学用語っぽい言葉がたくさん出てきます。アニメ版のハガレンは「物理の知識が得られる」と、東大生が選ぶ「勉強になるアニメ」のランキングにも登場しているほどです。

科学用語が出てくるなんて、英語では難しすぎるのでは?と思うかもしれませんが、むしろ英語の方がわかりやすい場合もあります。

また、日本語で文章を読んでいるときに意味が分からなくても読み飛ばすあの感覚で、わからない単語はわからないまま先へ進めるのもひとつの方法です。

それでは早速、作品に登場する重要な単語と、いくつかの名言について、解説してきたいと思います。

『鋼の錬金術師』の用語解説

鋼の錬金術師 Fullmetal Alchemist

まずはタイトルから。

「鋼の錬金術師」は主人公が錬金術師の国家資格を取った時に「鋼」という「二つ名」を貰い受けたことに由来しています。火を扱う錬金術が得意な場合は「焔の錬金術師」と呼ばれるなど、本人の得意分野で名前は変わるようです。

主人公の場合は金属を使った錬金術が得意なので「鋼」と呼ばれるわけですが、これが英語タイトルでは”Fullmetal”となっています。そしてこの fullmetal 、実は英語の辞書には載っていない単語なのです。

単純に「鋼」を英訳するとしたら「steel」ですが、そこをあえての”fullmetal”。

”full metal”という英語表現はあり、その場合の”full”は「完全な、たっぷりの」といった意味をもちます。

鋼を”steel”と訳してしまうと素材としての鋼、という意味合いが強くなってしまいますが、”fullmetal”とすることで、概念としての強さといったような雰囲気をまとったタイトルになっていると思います。よく考えられていますね!

ちなみに、『鋼の錬金術師』のスペイン語約は "El Alquimista de Acero"。そのまま「鋼、鋼鉄」といった意味の “acero” が使われています。

錬成陣 transmutation circle

作品世界で錬金術を使う場合、錬成陣(れんせいじん)という図を使用します。この英訳は “transmutation circle”。

“transmutation”は変化、という名詞です。物理学分野では「変換」、錬金術分野では「変質」といった意味となります。

“circle”は「円、丸」。錬成陣の「陣」に丸や円といった意味はありませんし、錬成陣自体は円以外に直線なども使われるのですが、基本的に一番外側にくる形状は円形なのと、錬成陣に似ている「魔法陣、魔法円」の元となる英語が”magic circle”なので、そこから”circle”としていると思われます。

等価交換 equal value

作品の軸になっている考え方が「等価交換」、”equal value”です。

アニメ版ハガレンのオープニングでは下記のセリフが流れます。

「何かを得るためには、同等の代価が必要となる。
それが、錬金術における等価交換の原則だ。」


これが北米版英語吹替えでは以下のようになっています。

“To obtain, something of equal value must be lost.
That is Alchemy's First Law of Equivalent Exchange.”


“obtain”は取得する、獲得する、の意味です。この”obtain”は「努力の結果手に入れる」といったニュアンスを含む動詞です。

ただ「得る」だけなら”get”でも良さそうですが、「同等の代価を払う」という行為の意味を考えると”obtain”の方が適切なのですね。

“alchemy”は錬金術。作品タイトルの「錬金術師」は”alchemist”ですが、これは錬金術という名詞”alchemy”に「~する人」を意味する接尾辞”-ist”がついた単語です。

上記の英訳で、より作品の世界観を大切にしているな、と感じたのが”must be lost”の部分です。

日本語ではさらっと「代価が必要」と表現していますが、この日本語には単なる「品物の値段」=”price”という意味以上に、比喩的に「犠牲、損害」といった意味を含んでいるので、そこをうまく拾って”something of equal value must be lost”としているのだと思います。

ちょっと長くなってしまいましたが、これらの英訳を見ていてわかるように、ハガレンの英語版作品は、単に日本語を英語に置き換えているわけではなく、作品の雰囲気や意味合いを加味して単語が厳選されているように思います。

なるほどなー、こういう風に訳したか、と、ハガレンの世界を改めて味わえる英語コンテンツ。続いてはハガレンの「名言」をピックアップしてご紹介します。

『鋼の錬金術師』の名言3選

ハガレンは名言と言われるセリフがてんこ盛りの作品なのですが、その中から3つの言葉を厳選しました。以下はいずれもコミック版からの英訳となります。

「ありえないなんて」

まずは、やられた敵キャラが復活後に放った一言。

There's no such thing as ‘no such thing’.
ありえないなんて事はありえない

禅問答みたいですね。日本語で考えても一瞬何を言っているのだろう?となるかもしれません。このセリフは、「(生き返るなんて)ありえない」に対する返答です。

作品の文脈では「生き返るなんてありえない」と言われたことに対して「俺は不死身だぜ」と答えているような感じかと思います。

”there is no such thing as ~”で「~というものは存在しない」という意味になります。「存在しないなんてことは存在しない」、つまり「なんだって存在する」となりますね。

実はこのセリフには別の訳も存在します。それは"Nothing is impossible."です。直訳すれば「不可能なんてものはない」となり、「ありえないなんて事はありえない」と同義ですね。

「ダメ人間じゃない」

つぎは、自分はひとつのことしかできない、と落ち込むキャラクターに、主人公の弟がかけた言葉です。

You’re not a nobody. I think being so passionate about something is a talent in itself.
ダメ人間じゃないよ。何かに一生懸命になれるってことは、それ自体が才能だと思うし。

この後、自信を持っていいよ、と続きます。

心に染みますね。何かに夢中になっている状態を真正面から肯定してくれる言葉だと思います。好きなことを続けていると、これでいいのかと思う局面に出会うことがありますが、そんなときに「それでいいんだよ」と背中を押してくれる名言です。

「ダメ人間」を言葉通りに訳すと”failure”(失敗作=出来損ない)となるかもしれませんが、これではネガティブスピーカーのイメージが強いですね。

ここでは”talented”(才能がある)に対する言葉として「突出した才能がない人=凡人=取るに足らない人」という意味での”nobody”が使われています。

後半は素直に翻訳されている印象ですね。

“being so passionate about something”=「何かに夢中になれること」
“~is a talent”=「~は才能である」
“in itself”=「それ自体(では)」

“in itself”と似た様な意味で”by itself”があり、どちらも「それ自体」と訳すことができますが、”in itself”は「本来/本質的な意味として」というニュアンスがあります。

一方で、”by itself”は「単独で/それだけで/ひとりでに/自然に/他の力を借りずに」という意味合いとなります。

「等価交換だ」

最後に。主人公のプロポーズの言葉です。錬金術師らしく「等価交換」という単語を使っています。

An equivalent exchange. I'll give you half of my life. So you give me half of yours!
等価交換だ。俺の人生半分やるから、お前の人生半分くれ!

用語解説の所にも出てきた「等価交換」”equivalent exchange”が冠詞の”an”と共に登場します。いきなり感を出すためか”it is” ”this is”等は省かれています。

日本語で「お前の人生半分」のところは”half of your life”ではなく、「人生」が省かれてかわりに代名詞が用いられ”half of yours”となっていますね。

これは、英語のリズムというか性質というか、英語には1つの文章の中で同じ単語を繰り返して使うことを避ける傾向があるので、このように代名詞で表現するようになっています。

日本語ではむしろ単語を繰り返すことでリズムを出すようなところがあるので、その違いがはっきり出ている興味深い対訳です。


ここで少し余談!

下記記事では、大人気漫画アニメ「ちはやふる」で英語学習する方法をご紹介しています!ちはやふるを通して、「かるた」についての英語表現も紹介していますので、ぜひご覧ください♪

nativecamp.net


『鋼の錬金術師』を英語で楽しむには

ハガレンは日本国内でもアニメや映画、小説と様々なメディアになった作品ですが、それぞれが英訳コンテンツになっています。

映像(DVD/ブルーレイ)

アニメとしてテレビ等で放映されていた作品がDVDやブルーレイにまとめられていて、日本国内からもAmazonなどで購入可能です。

日本向けのプレイヤーで再生できないリージョンコードのものが届くこともあるようですが、その場合はパソコンにリージョンフリーのプレイヤーソフトを入れるなどすると視聴可能です。

シリーズが色々出ていてわかりにくいかもしれませんが、”Brotherhood”とサブタイトルが付いているものが原作漫画をアニメ化したシリーズです。こちらはDVDでもブルーレイでも全部揃えて60ドル程度。オリジナル日本語音声の他に英語吹き替え音声と英語字幕も収録されています。

コミック

原作漫画を英語版にしたペーパーバッグが出ています。

1冊ずつのものもありますし、” 3-in-1 Edition”といって、単行本3冊分が1冊にまとめられたバージョンもあります。こちらは1冊1700円弱で全9巻出ています。

お試しで読んでみたいな、という場合におすすめなのは単行本を1冊ずつ読めるKindle版です。こちらは1冊700~800円程度。

日本語と英語を照らし合わせて読み進めやすいのはコミックの利点ですね。セリフの位置が一目瞭然なので、このセリフがこうなっている!というのが(映像や小説と比較するとダントツで)わかりやすいのではないかと思います。

ライトノベル(小説)

英語学習としてはハードルが高くなりますが、ライトノベル(小説)版も英語訳が出版されています。

こちらもKindleで読めます。文章でハガレンの世界を堪能したい方はぜひ挑戦してみてくださいね!


ここでまた少し余談!

下記記事では、大人気アニメ・漫画「けいおん!」を使った英語学習をご紹介しています!こちらも同じく内容を知っていれば楽しく学習できますので、是非ご参考にしてください♪

nativecamp.net


『鋼の錬金術師』で英語学習 まとめ

日本で大人気のコミック『鋼の錬金術師』は、コミックでも映像でも小説でも英語版がでています。

入手しやすさではコミックのKindle版がおすすめです。普段から海外のDVDやブルーレイを輸入して見慣れているならアニメ版も耳から楽しめるので良いですね。本格的に英語でハガレンの世界を楽しみたい方にはライトノベル(小説版)という選択肢もあります。

もともとの原作がセリフ多めの漫画なので、英文も手ごたえがあるかもしれませんが、スラングが少なく文体としては読みやすいものだと思います。単語こそ専門的で難しいものを含みますが、そういった箇所は読み飛ばしながらハガレンの世界を味わっていただけたら、と思います!