「must」と「have to」の意味を、どちらも「~しなければならない」と習った人も多いでしょう。
確かに和訳すると、どちらも「~しなければならない」となる場合が多いです。
しかし実は、この2つの表現には明らかなニュアンスの違いがあるのです。
そこで今回は、「must」と「have to」の違いをご説明していきます。
どちらも日常英会話で頻繁に出てくる表現ですから、これを参考に、この2つの単語を使い分けられるようになりましょう!
「must」の基本的な意味
「must」は、「~しなければならない」という義務と、「~に違いない」という推量を表すはたらきがある助動詞です。
また、「must not」と否定形にすると禁止の意味を持ちます。
例文で見てみましょう。
義務:
I must sleep early tonight.
(今夜、私は早く寝なければならない。)
禁止:
You mustn’t tell anyone about this.
(これについては、誰にも言ってはいけないよ。)
※「must not」を略すと「mustn’t」となる
推量:
You didn’t sleep all night? You must be tired!
(一晩中寝てないって?疲れてるだろう!)
※疲れているに違いないというニュアンスが含まれます。
このうち、推量の「must」は「have to」とは間違えることはないので、今回はそういう表現があるという程度にとどめておいてください。
ちなみに推量の意味の「must」は他の推量を表す助動詞よりも、意味合いが強いです。
この中で一番「have to」と混同しやすいのは、義務の「must」でしょう。
今回は主に義務の「must」にスポットライトを当てていきます。
「must」に隠れたニュアンス
義務の「must」は、他の「~しなければならない」という意味になる表現の中で、一番強い意味だと言われます。
それは、「must」は話し手自身の主観的考えで「~しなければならない」と言っているからです。
たとえば上記の例文「I must sleep early tonight.」の場合、話し手が自分に対して「今日は早く寝なきゃ!」と言い聞かせているような形になります。
その主語を変えて 「You must sleep early tonight.」 と言った場合、話し手が「あなた」に対して 「あなたの状況や意見はともかく、私はあなたが早く寝るべきと思うから、早く寝なさい!」 と言っているようなニュアンスになります。
そのため、強制力が強く感じ、あまり他人に対して義務の意味の「must」を使った表現をすることは好まれません。
「must」の否定形である「must not (mustn’t)」は、義務の「must」をそのまま否定にした形です。
こちらも強制力が強い表現ですが、こちらの場合、強制力を弱めたい場合は「shouldn’t」などを使うため、「have to」と混同することはないでしょう。
「have to」の基本的な意味
では、「have to」はどんな意味かというと、こちらも「~しなければならない」となります。
こちらもまずは、肯定文と否定文で例文をみてみましょう。
肯定文:
You have to speak in English in the meeting. All the attendees are from the UK.
(会議中、あなたは英語で話さなければならない。全ての参加者はイギリス出身です。)
否定文:
You don’t have to speak in English in the meeting. I’ll be there to help you.
(会議中、あなたは英語を話さなくても良いです。私はそこであなたを助けます。)
「have to」を使ったフレーズの否定文は、肯定文を否定したものです。
しかし、「must not」と「not have to」は明らかに意味合いが異なります。
そこに着目すると、「must」と「have to」の違いが見えてくるのです。
「have to」に隠れたニュアンス
「have to」は確かに「しなければならない」という意味ですが、強制の意味はあまりありません。
その場の状況や背景から、話し手が「こういう状況だから、そうするしかない」というような気持ちで「しなければならない」と言っているのです。
「must」とは違い、主観的ではなく客観的なイメージです。
上の例文の肯定文の方を見てみましょう。
これは、会議の参加者がイギリス人オンリーなため、英語で話さなければ通じないので「You have to speak in English.」なわけです。
そして否定文の方は、その「会議の参加者がイギリス人オンリー」という条件が「私」が参加することで解消されました。
そのため 「英語を話さなければならない。」 という状況自体がなくなるので 「You don’t have to speak in English.(英語を話さなくても良い)」 となるわけです。
これが理解できたら、もう一度「must」の意味について参照してみてください。きっと納得できるはずです。
ここで少し余談!
皆さん便利なフレーズ「in case」の使い方ご存知ですか?下記記事でご紹介しているのでぜひ参考にしてみて下さい♪♪
「must」と「have to」の違いと使い分け方
ここで、ここまでの内容をまとめてみましょう。
つまり、「must」と「have to」の違いを一言で表すと、下記のような感じです。
「must」=主観な判断で話者が「そうするべきだ」と思っている
「have to」=状況や背景から判断し、話者が「そうせざるを得ない」と思っている
こうして見ると、この2つの違いがよくわかるのではないでしょうか。とは言え、言葉だけで理解するのは難しいでしょう。
ここからは、いくつかの例文で「must」と「have to」を見比べてみましょう。比べてみると、2つの違いが感じ取れるようになるはずです。
例文で見比べてみよう!「must」と「have to」
(1)
must:
You must study harder! Or I will not buy you anything anymore!
(もっと勉強しなさい!じゃないと、もう何も買ってあげないよ!)
have to:
You have to study harder. The exam is next week.
(もっと勉強しないと。テストは来週だよ。)
こちらのフレーズでは、「must」の方は、親が子に対して勉強しろと命令しているようなニュアンスです。
対して「have to」は、来週テストがあるから勉強するべき・した方が良いと思っていることを、少し強めに伝えるような感じです。
(2)
must:
I must clean my room today. It’s really messy!
(今日は部屋の掃除をしなくちゃ。本当に散らかってるの!)
have to:
I have to clean my room today. My friend is staying over tonight.
(今日は部屋の掃除をしないといけないんだ。友達が泊まりにくるから。)
こちらのフレーズだと、ちょっと難しいかもしれませんが、「must」は特に理由はない・もしくは自分のために「今日こそは掃除をする!」という宣言をしています。
一方、「have to」は友達が泊まりにくるという事実があるために、掃除しなければならない状況だということを表しています。
なんとなくわかってきたでしょうか?
過去形はどうなる?
ここまで、すべて現在形で説明をしてきたので、過去形だとどうなるのか疑問に思っている人もいるでしょう。
「must」を使った文章も「have to」を使った文章も、過去形だと「had to」を使って表します。なぜなら「must」には現在形しか存在しないからです。
つまり I must sleep early tonight.(今夜は早く寝ないといけない。) を過去形にすると I had to sleep early last night.(昨夜早く寝ないといけなかった。) となります。
ただ厳密に言うと「must」と「have to」にはニュアンスの違いがあるので、「must」を過去形にしたい時、なんでもかんでも「had to」と言えば良いわけでもありません。
実際の会話だと、昨日「I must sleep early tonight.」と思っていて実際に早く寝たのなら
I slept early last night.(昨夜早く寝ました。)
I told myself that I must sleep early.(私は自分に「早く寝なさい」と言い聞かせました。)
でしょう。
英語では時制を合わせるというルールがありますが、「must」は過去形がないので例外なんです。
しかし過去形については、あまりあれこれ考えると混乱してしまうので、ひとまずは「must」を過去形にしたい場合は「had to」と思って大丈夫です。
「must」の感覚がしっかり身につけば、過去形にする時に「had to」以外の表現をしたくなることも出てくるでしょう。
ここでまた少し余談!
下記記事では、これもまた便利なフレーズ「kind of」の使い方をご紹介しています!どんどん使えるフレーズを増やしていきましょう♪♪
まとめ
中学英語では、ほぼ同じ意味だと習うこともある「must」と「have to」ですが、実はそのニュアンスにはちゃんと違いがあるんですね。
特に「must」は強制力が強いため、使いどころには気をつけたいもの。
使い分けられる自信がないうちは、他人に対しては「have to」や、もう少し柔らかい表現になる「should(助言・提案)」を使うことをおすすめします。

◇経歴
英日翻訳・校正、英会話講師など
イギリスの現地企業にて就業経験あり
◇資格
TOEIC935点
英検準1級
ケンブリッジ英検FCE合格
◇海外渡航経験
イギリス5年弱、グアテマラ6ヶ月、合計49ヶ国に渡航歴あり
◇自己紹介
国内外で活動するWebライター兼翻訳者です。これまで手がけた記事は数千件以上。翻訳経験は通算5年位になります。コロナ禍前は世界中を旅をしながら仕事をするノマドワーカーをしておりました。