みなさんはきっと、「they」という英単語の意味をご存知でしょう。おそらくほとんどの人が「彼ら」「彼女ら」と答えるのではないでしょうか。
つまり、「they」という単語は基本的に複数形なのですが、実は昨今、この「they」が単数形として使われることも多くなってきているのです。このことを知らずにいると、ネイティブスピーカーとの会話中に話が噛み合わないこともあるでしょう。
そこでこの記事では、「they」を単数形で使う場合の意味や使い方を解説します。意味がわかれば使い方は複数形の「they」と変わりありませんから、しっかり認識し、単数形の「they」を使われても理解できるようにしておきましょう。
「They」の単数形としての意味とは
「They」が単数形で使われる場合、それは「he」や「she」などと同じ三人称単数形として使われます。
では、その意味は何かというと、日本語で表現するのは難しいのですが「あの人」「その人」のような感じでしょうか。
「He」や「she」だと、「彼」「彼女」と性別を断定する言い方になりますが、「they」を使った三人称単数形では、性別を特定していないのです。いわば、中性の三人称単数形ということですね。
実は、「they」の単数形は以前からもある特定の場合には使われていました。たとえば、下記の例文のような場合です。
来てくれるなら、誰でも歓迎します。
この例文では「everyone(みんな)」は単数ですが、その「みんな」は男性でも女性でもあり得るため、「Everyone is welcome if he wants to come.」とは言えません。
これだと、男性だと特定し、「everyone」ではなくなってしまうからです。こういった場合に、「they」が単数形として用いられることはこれまでにもありました。
しかし今回こちらの記事でご紹介する三人称単数形の「they」の意味は、「ノンバイナリー」という新しい性自認を持つ人を対象とした単語なのです。
単数形の「They」とノンバイナリーという性自認
日本はまだまだ多様性に馴染みのない国ですので、昨今LGBTなどの言葉がよく聞かれるようになったとは言っても、「ノンバイナリー」という性自認はそれほど認知されていません。
しかし世界を見てみると、欧米では日本よりもっと多様な性自認・性的指向が受け入れられています。
この「ノンバイナリー」というのも、そんな性自認のひとつ。特にアメリカでは当たり前のように自分を「ノンバイナリー」とカテゴライズする人が増えてきています。
「ノンバイナリー」とは、性別を男女の枠に当てはめない考え方、性自認のことです。ちょっと想像しづらいかもしれませんが、「自分は男の時もあるし、女の時もある」という感覚や、「どちらもしっくりこない」という感覚を持つ人が、「ノンバイナリー」に当てはまります。
そんなノンバイナリーの人たちにとって、「he」や「she」で性別を断定されるのは居心地の悪いもの。
そういうわけで、元々三人称単数形として使われることもあった「they」がノンバイナリーの人向けの三人称として使われるようになったのです。
ちなみに、比較的新しい英語辞典で「they」を調べてみると、ちゃんとこのノンバイナリーのことが記載されています。
前述のとおり、欧米では自分をノンバイナリーだと言う人も多く、日常的に使われる用法ですから、ノンバイナリーの人を指すときや性別を特定しない時には、三人称単数として「they」を使うと覚えておきましょう。
そして、とても大切なことですが、たとえ「ノンバイナリー」という考え方が受け入れられないと感じたとしても、英語圏ではごく普通の考え方ということもお忘れなく。
ノンバイナリーの人に対して間違って「he」や「she」を使ってしまっても怒られることはありませんが、頑なに「they」を使わないようにしたり、その性自認に意を唱えたりすると、トラブルの元になりかねません。
単数形の「They」の使い方
「They」を三人称単数形で使うなら、be動詞も単数形の「is」になると思ってしまう人もいるかもしれませんね。
ですが、実はbe動詞の形は変わらず、単数形であっても「are」を使います。動詞も単数形のように「does」などにはせず、「do」となります。
ここが、外国人の私たちにとっては少々ややこしいところですが、言葉の意味が変わっても、文法は変わらないのですね。
ですから、下記の例文だと2つの意味がありえます。
彼らはハッピーです
あの人はハッピーです※この「あの人」はノンバイナリーの人を指す
では、それをどう見分けるかですが、「they」が複数形として使われているのか、単数形として使われているのかは、文脈から察するしかありません。
しかも、ノンバイナリーの人を含めた「彼ら・彼女ら」は「they」になりますから、頭がごちゃごちゃになってしまう人もいるでしょう。
会話の中で単数形と思われる「they」が出てきて、本当に単数形なのか判断に困った時には、話者に下記のように聞いてみると良いでしょう。
誰のことを指していますか?
その「they」は誰のこと?
どちらでも覚えやすい方で大丈夫です。こう聞けば、そのお相手はあなたが「they」の三人称単数形に慣れていないと察してくれるはずです。
誰に三人称単数形の「they」を使うのか
誰かが三人称単数形として「they」を使っている場合、それはその対象がノンバイナリーであること、もしくは性別にこだわるのが嫌な人であることがわかります。
ですが、初めて会う人の場合、どうやって見分ければ良いのでしょうか。
まず、誰かから初対面の人を紹介される場合ですが、もしその人がノンバイナリーである場合は
これはメアリーです。この人にはロンドンで出会いました。
という風に言ってくれることが多いです。
つまり、自然に紹介しながら「they(ここではthem)」を使って、暗にメアリーさんがノンバイナリーであることを告げているわけですね。
このような場合は、メアリーさんがノンバイナリーであると認識し、あなた自身もメアリーさんを指す時には「they」を使った方が良いでしょう。
そして、紹介を受けるわけではない場合は、別に最初は「he」「she」といった、見た目、もしくは生まれてきた時の性別を使っても問題ありません。
それが居心地が悪いと思えば、相手の方から「実はノンバイナリーだからtheyを使ってほしい」と申し出があるでしょう。
つまり、ノンバイナリーという考え方自体を否定しているわけでなければ、上手に使えなくても問題ないということです。
まとめ
これまで「they」を「彼ら」「彼女たち」という三人称複数形と思い、それに慣れていた人にとっては、三人称複数形の「they」は馴染みづらいかもしれません。
これから世の中が変化していく中でどうなるかはわかりませんが、今のところノンバイナリーを指す三人称複数形が、英検やTOEICなどの試験に出ることはありません。
ですから、ちょっと間違ってしまっても、スムーズに理解できなかったとしても、あまり大きな問題ではないでしょう。
三人称単数形の「they」についてもっと知りたくなった人は、ネイティブキャンプの講師にぜひお尋ねください。自然な使い方や概念を理解するためには、ネイティブスピーカーの講師がおすすめです。
◇経歴
英日翻訳・校正、英会話講師など
イギリスの現地企業にて就業経験あり
◇資格
TOEIC935点
英検準1級
ケンブリッジ英検FCE合格
◇海外渡航経験
イギリス5年弱、グアテマラ6ヶ月、合計49ヶ国に渡航歴あり
◇自己紹介
国内外で活動するWebライター兼翻訳者です。これまで手がけた記事は数千件以上。翻訳経験は通算5年位になります。コロナ禍前は世界中を旅をしながら仕事をするノマドワーカーをしておりました。
I took a Bachelor of Science degree in Mathematics where my problem-solving and critical-thinking skills were honed. I have worked as a trainer in a government office, which has helped me to develop my communication and intrapersonal skills. My hobbies are reading, listening to music, and cooking. After joining NativeCamp, I acquired 2 years of teaching experience. Currently, I am involved in content production in the Editing Department.