日本の文化を海外に紹介することは写真や動画を見せて楽しませることができますが、日本におけるビジネスの慣習となるとハードルが上がります。例えば、「上下関係」です。
先輩後輩といった単純な話から、組織的・政治的なヒエラルキーのお話ですね。わたしたちが考える年齢や社歴の「上下関係」という価値観は海外(とくに英語圏)ではありません。
筆者が東京で外資系企業に勤務していたとき、オーストラリアにいるディレクターにそれを説明することに非常に苦労しました。日本に住んでいる外国人であれば、理解しやすいですけど、日本に住んでない外国人にとっては理解し難いお話のようでした。
この記事では、日本の「上下関係」を英語でどのように説明したら良いのかを考えてみました。使えるフレーズや関連する単語を紹介していきます。
日本の上下関係と海外のそれとの違い
日本の「上下関係」について英語で表現する前に、日本のそれと海外のそれの違いについて紹介しておきます。主に、会社における上下関係のことだと思って下さい(ごく一般的なお話なので、全ての会社に当てはまるわけではありません)。日本の上下関係
崩壊してきていると言われていますが、根強く残る「年功序列」。日本における上下関係とは年齢や社歴が重視されます。年齢や社歴が上の方が昇格しやすいので、そのまま上司部下の上下関係にスライドしていきます。②昇格も年齢や社歴が大きく影響
③そのまま上司部下の上下関係になる
④結果、上司の方が部下よりも偉いという構図(関係性が続きやすい)
そして、この構図は他部署であっても大きく影響します。他部署の先輩の方が偉いという感じです。後述しますが、ここが海外の上下関係とは大きく異なる点かと思います。
海外の上下関係
「日本と違って海外は上下関係はなくてフラットな雰囲気がいい」なんていうイメージがあるかと思います。そのとおりで、日本と違って年功序列や年齢の上下関係という価値観はありません。実力(政治的な手腕も含む)でのし上がった人が昇格していきます。上司部下の関係はありますが、偉い偉くないというよりも、役割と権限が異なるというイメージだと思います。
②手段を問わず、そのポジションに座る人が昇格
③上下関係というより役割と権限の違い
④終身雇用の概念もないので、その関係性は続きにくい
海外の場合は完全縦割り社会です。他部署の先輩が上という考え方が全くなく、他部署の先輩とはなんの関係もないと思ってOKです。
例えば他部署(チーム)の先輩が、自分に仕事を直接頼むことは日本ではよくありそうです。しかし海外では言語道断で、上司を経由して依頼することが鉄則です。「空気読むとか読まない」の話じゃありません・・・この上司経由というのを踏み間違えると大問題になります。
そして、海外では上司の権限が強く、部下を即日解雇することができます。なので、日本の上下関係よりも厳しい側面もあり、日頃は上司の命令には絶対ということがあるんです。さらに、その上司にも上司がいるので本当に縦社会だと思います。
何よりも終身雇用の制度がないので、今の上司がずっと居座りつづけるという日本のような事態はまれです。
上下関係は英語で何という?
それでは、日本の上下関係は英語でいうとどのように表現したら良いのでしょうか。よく言われる「うちの職場は上下関係が厳しい」というフレーズも一緒に考えていきましょう。上下関係に相当する英語は以下の2つが適切かと思います。
・vertical relationship
キーワードは以下の2つの単語ですが、LONGMANの英英辞典を見てみましょう。
・hierarchical・・・”if a system, organization etc is hierarchical, people or things are divided into levels of importance”
・vertical・・・”having a structure in which there are top, middle, and bottom levels”
いずれも階層や縦のイメージです。ヒエラルキーは日本語としても使われていますね。ただし、日本のように年齢の意味は含まれていないです。
続いて例文です。「うちの職場では上下関係が厳しい」と英語で表現してみましょう。
(我々の職場では上下関係が非常に厳しい)
ただ、これだと日本の文化についてさほど詳しくない外国人だとピンとこないかもしれないので、
(わたしたちにとって、年齢や社歴がとても重要なんです。)
と付け加えると良いでしょう。これで年齢や社歴がヒエラルキーにそのまま反映されるとわかりますね。
ここで少し余談!
下記記事では「No」を使った様々な英語表現をご紹介しています!一つの単語をとっても様々な表現の仕方が存在します!ぜひ参考にしてください♪♪
関連する単語を覚えよう
つづいて「上下関係」に関連するような単語を紹介していきます。日本にあって海外にはない文化なので英語にすることは難しいですが、補足説明をしていくと良いと思います。同僚
まずは上下関係の意味を含まない「同僚」を覚えましょう。この考えは日本でも海外でも同じです。・colleague・・・”someone you work with – used especially by professional people”
・co-worker・・・”someone who works with you and has a similar position”
同僚についてはこの2つをおさえておけばOKです。
先輩後輩
前述の通り、英語圏では先輩後輩の概念はないです。たとえば2年先輩の社員だったとしても、”colleague(同僚)”なのです。敢えて年齢が上とか社歴が2年前とか表現するなら”A colleague who is older than me ”とかいうのが適切でしょう。
該当する英語がないため、”Wasabi(わさび)”とか”Kimono(着物)”と同じような感覚で”Senpai and Kohai”でも良いと思います。
”Senior”とか”Junior”という言い方もありますが、誤解が生じやすいです。理由は”Senior”の場合は役職(タイトル)になることがあります。例えば”Senior associate”のように経験豊富で未経験者のフォローをする責務もあります。
その先輩がSeniorの役職(日本でいう係長とか主任)であればSeniorと表現してもOKでしょう。そこに年齢は全く関係はありません。”Junior”もSeniorと同じようにタイトルの前に付くことがあります。同じく年齢ではなく経験や権限の範囲、役割が異なるだけです。
新入社員
学校を卒業したばかりで社会人1年目のフレッシュマンはどのように表現するのでしょうか。この単語はロングマン英英辞典で検索してもヒットしませんが、以下の表現が最も適切かと思います。new graduates
ちなみに、”freshman”は学生のことを指すので、社会人には使わないのが一般的です。
また、新卒に限らず新しく職場に来た同僚は以下のように表現します。
・new
・new hire
・new employee
・new recuit
採用の背景が日本と異なっており、新卒一括採用といって卒業後の学生が一斉に4月に就職するというわけではありません。例えば、アメリカではインターンシップが一般的で卒業後でも即戦力が求められます。しかも、通年採用です。「新卒社員」という「つい最近まで学生でした!」という概念は日本よりもないでしょう。
上司部下
上下関係をもっとも意味する「上司部下」を例文で紹介します。これには相当する単語があります。自分が部下の立場で上司を指す場合は”my XXX”と表現すると良いでしょう。(彼は私の上司です)
逆に自分が上司の立場で部下を指す場合も同じです。
(彼は私の部下です)
年功序列
最後に「上下関係」とならんで日本独自の慣習である「年功序列」について。Wikipediaによると”官公庁や企業などにおいて勤続年数、年齢などに応じて役職や賃金を上昇させる人事制度・慣習のシステム。”とあります。英語には以下のように、これに相当する単語があります。
・seniority・・・”if you have seniority in a company or organization, you have worked there a long time and have some official advantages”
日本独自の慣習のため、もう少し説明を加えてあげましょう。
(日本の年功序列賃金は、年齢とその会社の勤続年数に応じて賃金が支払われることを意味します。)
これで、賃金は年齢と勤続年数に基づくということが分かりますね。
ここでまた少し余談!
下記記事では「used to」と「be used to」の違いについてご紹介しています!似ている表現なので、混乱しないようにしっかり覚えていきましょう♪♪
まとめ
いかがでしたか。日本の慣習を英語にそのまま直訳することは難しいですね。しかし、一言で表現できなくても、補足説明や言い換えることで伝えることができます。
この言い換えは英語力をアップさせるために非常に大切な要素です。ぜひ、練習して体得してみてくださいね。
2019年マレーシア移住、マレーシア人とルームシェアで楽しく暮らしています。「英語を学ぶ」のではなく、「英語で学ぶ」ことに目覚めて海外大学進学準備中。英語が学習は発音と聞き取りからスタートすることを勧めています。