「忖度」をするハイ・コンテクスト文化って?英語の会話例を踏まえてご説明します!

忖度、ビジネス、イラスト

2017年の「ユーキャン新語・流行語大賞」を受賞した言葉、「忖度」。

「ソンタク」ってなんですか?と外国人に聞かれたら、なんと説明しますか?

今回は「忖度」について解説するとともに、ハイ・コンテクスト文化とロー・コンテクスト文化についてもご紹介していきます!

忖度を簡単に説明すると

「忖度」の意味は、「人の気持ちを推し量って、行動すること」「推察すること」

ということで、非常に簡単に訳すと、 “Read between the lines”
=「行間を読む」 になります。

推察の意味をとるとすると、”guess” になりますが、日本語の「忖度」には、「推察して動く」までの意味が含まれるので、少し説明不足になってしまいますね。

ハイ・コンテクスト文化とロー・コンテクスト文化

「忖度」という短い言葉には、様々なニュアンスが込められていて、とても ”Guess” 一言では訳せませんね。

日本を含むアジアの国々は、「忖度」をするハイ・コンテクスト文化であり、欧米は「忖度」をしないことが多いロー・コンテクスト文化の国が多い、ということから説明すると分かりやすいです。

ハイ・コンテクスト文化
(High-context culture)

“A high-context culture relies on implicit communication and nonverbal cues. In high-context communication, a message cannot be understood without a great deal of background information. Asian, African, Arab, central European and Latin American cultures are generally considered to be high-context cultures.”

「ハイ・コンテクスト文化では、暗黙の了解と非言語的な手がかり(キュー)に依存しています。ハイ・コンテクスト文化では、背景を知らないと相手のメッセージを理解することができません。アジア、アフリカ、アラブ、中央ヨーロッパ、ラテンアメリカの文化は、ハイ・コンテクスト文化とみなされています」

出典:Intercultural Communication: High- and Low-Context Cultures

ロー・コンテクスト文化
(Low-context culture)

“A low-context culture relies on explicit communication. In low-context communication, more of the information in a message is spelled out and defined. Cultures with western European roots, such as the United States and Australia, are generally considered to be low-context cultures.”

「ロー・コンテクスト文化は、明示的なコミュニケーションに依存しています。ロー・コンテクスト文化では、より多くの情報が明記され定義されます。アメリカ、オーストラリア、西ヨーロッパは一般的にロー・コンテクスト文化であるとみなされます」

出典:Intercultural Communication: High- and Low-Context Cultures

要するに、「ハイ・コンテクスト文化」には人々の間に暗黙の了解がたくさんあり、「言わなくてもわかる」、阿吽の呼吸がある文化です。

「ハイ・コンテクスト文化」では、言わなくてもわかることを説明しすぎることは、かえって嫌われるので、例えば「あれ、よろしくやっておいて」と言われたら「かしこまりました」と返事をして、「あれ」と「よろしく」の意味を推察して動きます。「あれ」って何ですか?「よろしく」ってどういうことですか?とは聞きません。

「ロー・コンテクスト文化」は「言わないとわからない」文化で、全部口で説明する、口に出さなかったことは無いことにされる文化です。

「ロー・コンテクスト文化」で「あれ、よろしくやっておいて」は、普通は意味をなしません。

「8月20日の議題に上がった新商品Aの改善の件、9月20日までに報告書を出してください」と具体的に言わないと、誰も動きません。もちろんぼんやりした話し方をする人もいますが、学校・ビジネスなどの場では評価されません。

噛み合わない会話例

「ハイ・コンテクスト文化」の日本にいて相手に「忖度」を期待するAさんと、「ロー・コンテクスト文化」のアメリカから来て、全てはっきり説明してほしいBさんの会話を見てみましょう。

A: “Hi, how are you?”
「ハイ、元気?」

A: “I was waiting for your call.”
「電話待ってたんだけれど」

B: “Ah, really?”
「あら、本当に?」

A: “Yeah, you told me you would call me.”
「電話するって言っただろう?」

B: “Did I?”
「言ったっけ」

A: “Yes! Last Friday, you said you were too busy to call me on that weekend, and you’d call me later.”
「先週の金曜日、週末は忙しいから、あとで電話するって」

B: “Oh yeah. I remember it. But I didn’t promise that I would call…. I just told you “I will call you later.”
「ああ、思い出したわ。でも約束したっけ?後で電話するねって言っただけでしょ?」

A: “That means? What do you mean?”
「どういう意味?」

B: “In Japanese, “later” can mean a lot of things. Sometimes yes, sometimes no, sometimes just 5 minutes later, sometimes never.”
「日本語では、”あとで“は色々な意味があるのよ。イエスのこともあればノーのこともあるし、5分後のこともあれば、一生実現しないこともあるわ」

A: “But, how could I find out the real meaning?”
「でも、どうやったらその意味を理解できるんだい?」

B: “Well, you have to read between the lines. I thought you understood Japanese nonverbal cues. You have been in Japan for 3 years.”
「そうねえ、忖度しないと。もっと日本の言葉に表さないメッセージのことを理解していると思っていたわ。三年も日本にいるんだし」

A: “So, what did you mean when you said “later” at that time?”
「それで、君の”あとで“の意味は?」

B: “Well….I meant ‘No’.”
「はあ。ノーっていう意味よ」

A: “Why?”
「なんで?」

B: “Why? You’re asking me why? There is no specific reason. I just don’t feel like going out with you.”
「なんで?なんでって聞くの?はっきりした理由なんてないけれど、あなたとデートしたい気分じゃないだけよ」

A: “But, I want to go out with you. So, tell me exactly why you don’t want to. If you don’t explain why, I can’t change.”
「でも僕は君と出かけたいんだ。なんで出かけたく無いのかはっきり言ってくれよ。はっきり言ってくれないと、変えようが無いよ」

B: “OK, I’ll think about it. But I have to go now. I‘ll call you later.”
「わかったわ。考えておくから。でももう行かないと。また電話するわ」

日本人的には「またね」と金曜日に言われた時点で脈がないと感じますが、はっきり言って欲しいアメリカ人には通用しません。

この例はプライベートな会話ですが、ビジネスの会話でもこのような勘違い、すれ違いはよく生じます。

忖度とビジネス英語

一般的に、日本も含む「ハイ・コンテクスト文化」では、「面子を立てる」ことが非常に重要なことと考えられており、はっきりと問題点や欠点を指摘すると、相手の面子を潰すことになるため、やんわりと否定するテクニックが発達して来ました。

「忖度」は、文化レベルの高いテクニックですが、同じバックグラウンド、考え方、文化を持ついわゆる「ムラ社会」の中でしか通用しません。

「ハイ・コンテクスト文化」、「ロー・コンテクスト文化」のどちらにも利点・欠点がありますが、様々な国・背景の人が集まるインターナショナル・ビジネスの場では、「ハイ・コンテクスト文化」的な「忖度」はできるだけしないで、きちんと説明するようにした方が良いでしょう

というのは、アメリカ人、ドイツ人、中国人、サウジアラビア人、日本人がいた場合、
アメリカ人とドイツ人は「ロー・コンテクスト文化」の「忖度」しないグループ
それ以外は「ハイ・コンテクスト文化」の「忖度」するグループ
なのですが、「忖度」すると言っても「忖度」の内容はそれぞれの国によって異なります。

ですので、様々な国の人々が一堂に会する場合は、「ロー・コンテクスト文化」のやり方に合わせて、細かいところまで全て口に出して、または文章の形で説明したほうがうまくいきます。