保護者のお仕事の都合で海外で小中学校や高校時代を過ごす人も今の時代、珍しくありません。
私は過去に小学校で教師をしていたこともありましたが、クラスに何人かは帰国子女の児童もいました。
帰国子女と一口に言ってもアメリカやカナダ、フィリピン、タイ、ドイツ、中国など様々でした。
帰国子女であったことを外国人に説明する機会や英語でスピーチすることも少なくはないでしょう。
帰国子女の英単語や、帰国子女だったことを英語で表現する例文を本記事ではご紹介します。
また帰国子女は受験で有利なの?帰国後は日本に馴染めるものなの?といったことも私の経験をもとにご紹介します。
帰国子女は英語でreturnee
帰国子女は英語で「returnee」です。
returnは動詞のリターン、つまり「帰る」「回復する」「戻る」などの意味に「ee」をつけた形です。他にもreturneeには「帰還者」「長期休暇から戻ってきた人」という意味もあります。
学生であればreturnee studentsと呼ぶと、よりはっきりした意味になるでしょう。
帰国子女を英語で説明してみよう
帰国子女を英語で説明する場合、「returnee」と単語だけで説明することもできます。
しかし日常会話では「returnee」のような名詞表現による説明ではなく、動詞を用いた文章で説明することもできます。
むしろ文章で説明する方が自然に聞こえることもあります。
A 彼は帰国子女です。
B 彼は子供の頃に海外に長く住んでいた。
2つの文があるとしたらBの方が、より英語らしい表現です。
そこで「returnee」を使わずに日本語の帰国子女を表現する例文をご紹介します。
・SVCで表現する
He is a returnee student.
(彼は帰国子女です。)
こちらは第2文型のSVCとreturneeという帰国子女という名詞を知っていれば、すぐに使える表現です。
この例文でも意味は通じます。
・SVに句・節をあわせて表現する
He lived abroad for a long time.
(彼は海外に長くすんでいました。)
She lived abroad when she was a junior high school student.
(彼女は中学生の時に海外に住んでいました。)
こちらはSVOの第3文型の後に海外に住んでいたことを説明する「句」や「節」を加えた表現です。
「句」は2つ以上の語が集まって1つの品詞と同じ働きをするもの。「節」はSV関係をもつ文の中にある文のことです。
for a long timeが「句」でwhen she was a junior high school studentがWhenの後にSVが入っている「節」です。
・関係代名詞を使って表現する
He is someone who grew up overseas.
(彼は海外で育ちました。)
I am a student who has recently come home from abroad.
(私は最近、海外から帰ってきた学生です。)
こちらは関係代名詞を使って表現しています。
初級・中級・上級と区別はしましたが中学レベルから高校1年生程度で習う英文法で全てカバーできます。
使いやすい表現を使えば良いでしょう。
帰国子女ってどんなイメージ?
帰国子女にどのようなイメージがあるでしょうか。
例えば英語が得意?、自己主張が強い?、お金持ち?様々ではないでしょうか。
私は日本の公立小学校で帰国子女の児童に指導や授業をしたこともあります。
私の経験では帰国子女は海外から帰ってきた児童・生徒というだけで、それぞれが個性を持っています。
そのため帰国子女だから、ああだこうだという決めつけはできないと思います。
例えばカナダのトロントの帰国子女とフィリピンのマニラの帰国子女、中国の上海とでは同じ海外でも全く違う文化・背景の中で生活しています。
しかも、それぞれ学校も家庭も違いますし帰国子女それぞれの持って生まれた性格や個性もあります。
当たり前の話ですが帰国子女だから、こんな性格・個性を持っているという決めつけは良くないでしょう。
大人しい子も英語が苦手な子もいます。ステレオタイプのイメージを押し付けるべきではありません。
帰国子女は受験に本当に有利なの?
帰国子女は受験に有利だという意見もあれば関係ないのではという意見もあるようです。
確かに学校の中には帰国子女枠での受験もあります。
それに海外の日本人学校には、全国から経験豊富な教員が選ばれて赴任しており、指導力の高い教員がたくさんいます。
日本人学校はそれぞれの国の特色を生かして教育に力を入れていますし、海外に渡る家庭の保護者の方で教育熱心な家庭も珍しくありません。
海外に住むことで、結果的に英語が得意科目となることもあります。
このような理由から、一般的な日本の公立学校よりも、海外の日本人学校の方が教育内容が充実しているのではないかと感じる人もいるようです。
その一方で、国や環境によっては日本の学校の受験対策がしづらいところもあるかもしれません。
住んでいる場所によっては、日本の中学・高校受験の参考書や塾などが十分にないところもあります。
私がバンコクにいた頃は、良い塾を探すことや参考書を揃えるのが大変だという保護者の方も多くいました。
現在ではオンラインで質の高い授業を気軽に聴くことができるサービスもあるため、昔よりも個人で受験対策はしやすくなりました。
また帰国子女で海外経験が豊富、語学力が高いことなどを評価してくれる学校も少なくありませんので、結果的に受験に有利になることもあるかと思います。
しかし非英語圏の児童・学生が英語が得意になるとは限りません。
単に「帰国子女だから」と言って受験が有利になるわけではなく、海外でしっかりと学んだ成果が評価されますので、「帰国子女だから受験に有利」とは絶対には言えませんね。
日本と外国の文化の違い
当たり前のことですが、日本と外国では文化が違います。
コミュニケーションの取り方も異なります。
日本と海外ではどちらが優れているなどという問題ではなく、単純に違います。
そのため帰国子女の中には、日本に馴染むのに時間がかかる児童・生徒もいます
例えば、日本ではない国で育つわけですから、日本とは違う価値観や態度・振る舞いが自然に身につくことも珍しくはありません。
日本人学校出身であったとしても、学校の外は海外ですから日本とは異なる常識を身につけることも多いはずです。
海外で異文化を学ぶのは素晴らしいことですが、(一概には言えませんが)日本は同調圧力の強い国民性でもあります。
※同調圧力は英語でpeer pressureです。
周りと違うことをすると変わっている子だなと思われたり、からかいの対象にされたりしてしまうこともありますので、初めは日本での学校生活に戸惑うことでしょう。
多感な児童・生徒にとっては、転校はただでさえ緊張し不安になるものです。
それが異国から日本へとなると大きなギャップがあります。
授業への取り組み方、学校外で流行っていること、学校内のお友達との関係など様々な変化に馴染まなければいけません。
保護者、教師も協力して新しい日本の環境になれるようにサポートすることも必要になります。
帰国子女は珍しくない時代?
日本の公立学校は近年、多くの外国人の子供も暮らしています。
東京都のとある区では児童の10人に1人以上が外国人というデータもあるほどです。
最近は日本の小学校も国際化・多様化の時代です。そのため地域によっては帰国子女・外国人も混ざって一緒に仲良く学んでいる学級も珍しくはありません。
日本生まれの外国人や外国からやってきた児童もいる一方で、帰国子女の日本人もいますよね。
そんな国際化と多様性の時代では、帰国子女も良い意味で特別扱いされずに受け入れられる環境の学校もたくさんあります。
海外で子供時代を過ごせば、海外に出ることへの抵抗も心理的なハードルも低くなるでしょう。
子供の頃から異分野や外国語に触れる経験は、大人になってからも無駄になりません。
人は生まれ育った土地や文化から様々なものを吸収します。
帰国子女は、たまたま人生の一部で海外のそれぞれの土地や文化から多くのものを吸収する機会があったというだけです。
また日本以外の国に住むことで、より日本の良い所が見えるのではないでしょうか。
日本と海外のアイデンティティの間で心が揺れることもあるかもしれません。
しかし、それも長い人生を豊かに生きる糧となるのではないでしょうか。
まとめ
帰国子女は英単語で「returnee」です。
また、He lived abroad for a long time.などのように「returnee」という名詞を使わずに帰国子女を説明する表現もあります。
帰国子女が受験で有利か不利になるかは人によって異なりますが、帰国子女枠で受験ができ外国語を勉強できる機会もあるため結果的に有利になることもあります。
帰国子女として日本に来たら生活や価値観のギャップに戸惑うこともあるかもしれません。
しかし、海外で過ごした経験はきっと人生の糧になる素晴らしいもののはずです。
石川県出身。明治大学法学部の国際法コースで英米法を専攻。卒業後、日本の小学校教諭を経てタイ王国の首都バンコクの国立大学RMUTRの教養学部・日本語学科にて専任講師。日本語の講義や日本・タイの私立大学の交換留学提携、タイ全土の日本語コンテンストの審査員を経験。帰国後は留学生支援の財団法人・外資系小売業を経てライター職。好きな食べ物はカレー。東京に行く度にカレーの聖地、神保町のカレー屋巡りをしています。