"Slow TV"の意味とは?形容詞を使った意外な英熟語6選

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形容詞を使った意外な意味を持つ熟語とは?

使われている単語ひとつひとつの意味はわかるのに!文章全体の意味がわからない…そんな経験、英語学習者だったら何度もしているのではないでしょうか。

今回は、そうしたパッと見た感じ簡単な単語でありながら、意外な意味を持ったり使われ方が独特だったりする英熟語をご紹介します。基本的な単語の組み合わせでできた熟語なので、覚えてしまえば日常会話でも使いやすいと思います。

今回は主にイギリス英語に登場するものから選びました。それではさっそく、厳選された6表現を見ていきましょう!

1: Slow TV の意味・使い方

最初にご紹介するのは “slow TV” です。TVと省略せず “slow television” ということもあります。

YouTubeの動画で「ゆっくり実況」というものが流行っていますが、そういうこと…ではないですね。

ゆっくりなテレビ。その意味は、「ありふれた日常、自然の姿などを長時間にわたって淡々と放送するテレビ番組の形式のひとつ」です。

ノルウェーには実際、「slow TV」という番組があります。その番組では、日常のありふれた様子や風景を、ノーカットで放送します。しかも生放送で長時間にわたって。時間の流れがとまったかのような、ゆっくりとした内容の番組、それがスローテレビなのです。

具体的には、炎が燃える様子だったり、編み物を延々と編んでいる様子だったり、野生動物の様子だったり、車窓からの風景だったり。

その映像体験は不思議なもので、まるで自分がその場にいるかのような、癒しに満ちた時間を得られるということで、番組の視聴率は悪くないそうですよ!

Slow TV is fantastic!

スローテレビは最高だ!

I will make my own slow TV.

自分でスローテレビ映像をつくるよ。

忙しい現代社会でストレスを抱える人々にとっては、こうしたゆるい映像を見ることが、いいリフレッシュになるのかもしれません。

にぎやかなYouTubeの世界でも、静かな焚火中継がバズったりしますよね。あれは “slow YouTube” と言ってもいいのかもしれません。

2: Fat chance の意味・使い方

次の熟語は “fat chance” です。

Google翻訳では「ファットチャンス」と訳されます。だからファットチャンスって何?ってなりますよね。脂肪の機会?チャンスが肥えている?

“fat” = 太った、脂肪の多い、豊かな、肥沃な

チャンスがいっぱいある、そんなイメージが浮かびます。あるいは「グッドラック!」的な幸運を祈る表現でしょうか。実はこの熟語、反語的に使うのです。つまり、その意味は「見込み薄」

Fat chance!

見込みなどあるものか!無理だね!

There is a fat chance for you to succeed.

君が成功する見込みはないね。

逆説的に使うことで、より辛辣で皮肉な響きを感じます。見込みがないという状況をストレートな表現にする場合は、こんな言い方をすることもできます。

Our chances of success are slim.

我々が成功する見込みはあまりない。

Prospects for progress in the talks are poor.

交渉が進展する見込みは薄い。

“slim” や “poor” など、まさに “fat” の対義語を使った表現となります。もし、自分が何かにチャレンジしようとしているときに “Fat chance!” と言われたときには、 “You never know! (やってみないとわからないよ)” と返してもいいですね。

3: Soft skills の意味・使い方

次にご紹介するのは “soft skills” です。

求人要件などに書かれていることもある “soft skills” ですが、これはソフトウエアを開発することができるIT系の技術のことを指すのでしょうか?それともソフトウエアを自在に操れるユーザーのスキルでしょうか?

まずは熟語を構成している単語から見てみましょう。

“soft” = やわらかい

“skill” = 技量、手腕、腕前

「ソフト」も「スキル」も日本語化されて日常会話に登場するぐらい身近な単語ですが、「やわらかい技量」とはいったいぜんたい何なのか。

これは、「コミュニケーション能力が高く他者と上手くやれる能力」のことを指しています。

We are looking for someone with soft skills.

我々はソフトスキルを有する者を探している。

Soft skills are important if you work in a group.

そのグループで働くにはソフトスキルが重要となる。

もっと広い意味で、問題解決能力、スピーチ力、論理的思考、労働倫理感、ITリテラシーなどを含む場合もあります。もちろん対義語は “hard skill”。これは、対人関係を含まない「技術的な能力」のことです。

他にも“hard skill” は知識と訓練で身につけるもの、”soft skill” は生まれたときから身に付いているもの、という考え方もあるそうです。

類義語には “common skills” があります。これは、ものごとを円滑に進めてゆくための常識や世間的な能力、という意味で使われます。

ソフトスキルを持っている人のことを表す言葉には “team player” (チームやグループの中でうまく立ち回れる人、グループに貢献する)、という熟語もありますね。

If you’re not seen as a team player, you won’t have the support of your colleagues when problems arise.

もし君がチームプレイヤーと思われていなければ、何か問題が起きても君の同僚は助けてくれないだろうね。

ちなみに “soft skill” の語源については諸説あります。そもそもは和製英語だったという説やアメリカ海軍発祥説など。

求人情報に「求む。ソフトスキルを持つ方。」と記載されていても、「ソフトウエア開発なんてできないから応募できない」とは思わないでくださいね。ソフトウエア開発スキルは「ハードスキル」ですから。

4: Big deal の意味・使い方

海外のウェブショップなどでも見かける単語 “deal” 。いわゆる「お得情報」という意味です。

“Best Deal!” =目玉商品(割引率が最も高い商品など)

“Today’s Deal” =本日の特価品

それでは “Big deal” はいかがでしょうか。ストレートな意味では「大きな取引、重大時、たいしたもの」となります。

しかしながら、先述の “fat chance” と同様、皮肉的に使用されて、逆の意味を持つこともあります。

Big deal!

たいしたことない!なんだそんなこと!

本来の意味で使われているのか、はたまた皮肉な意味で使われているのか、文脈で掴んでいかなければならないのは英語学習者としては厳しいところですね。

【ストレートな意味での使い方】

I am closing a big deal.

私は大口取引をまとめている。

That’s no big deal.

それはたいしたことではないよ。

【皮肉な意味での使い方】

A: I finished my homework in 20 minutes.

B: Big deal! I did it in 10 minutes.

A: 宿題20分で終わったよ。

B: そりゃあたいしたもんだ。俺は10分だったけど。

What is the big deal?

それがどうしたっていうの?

日本語でも「たいしたもんだねぇ」と言われると素直に受け取っていいのか、皮肉を言われているのか、判断が付かないことがあるので、同じですね!

また、 “make a big deal” だと 「大騒ぎをする」という意味になります。

Don't make a big deal about it.

そのことで大騒ぎはするなよ。

5: My bad の意味・使い方

続いては、”my bad”

“My mistake” や “My fault” と同様の意味で、自分の非を認めて謝るような場面で使います。

I forgot to buy eggs. My bad!

うわ、ごめん、卵買うの忘れた!

My bad, I’m late.

悪い、遅れた。

気を付けるべきは、そのニュアンスの「軽さ」です。

スポーツの試合中や、チーム制の対戦ゲームなどで「今の俺(が悪い)」「すまん!」「やっちゃった」という感じで “My bad!” が飛び交うようなイメージです。

言われた側も「いいよいいよ」「ドンマイ」「(笑)」で返せるレベルの謝罪とも言えます。最近の日本語で言えば「てへぺろ」に近いでしょうか。

一説には、アメリカでストリートバスケをする少年たちから広がり、1990年代に映画の中で使われたことで一般的な表現となったそうです。

気軽に使えるスラングである反面、真剣さには欠けますので、本当にあやまらないといけない場面では、正式な謝罪英単語 “sorry” を使って、しっかりあやまりましょう。

他にもシンプルに “I apologize" 、あるいは “mea culpa" (スペイン語が元)なんていう言い方もありますよ!

6: Clever clogs の意味・使い方

最後の表現は “clever clogs”。ひとつにまとめられて “cleverclogs” と表記されることもあります。

まず、構成している単語を確認しましょう。

“clever” = 賢い

“clogs” = 木靴、下駄

「賢い下駄」とは、いったいどういう意味になるのでしょうか。下駄が賢いとはどういうことなのか?想像するのは難しいですね。

実はこれは、「自分が賢くて知識が豊富だとひけらかす人」という意味なのです。そういう人に対してちょっとイラっとする気持ちを込めて使われる熟語が “clever clogs” ですね。

You are such a clever clogs!

あなたって利口ぶっててやな感じ!

Go on, clever clogs, tell us how to do it!

ほら、お前は賢いんだろう、やり方を俺らに教えてくれよ!

「自分の方が上」だと示してけん制してくることを「マウンティング」と言ったりしますが、 “clever clogs” はマウンティングをとりにきているというのとはちょっとニュアンスが違います。

それはやはり、 “clever” という単語が逆説的に使われているという皮肉さに寄るものかもしれません。

本当は知らないのに知っていると思い込んでその結果他人に迷惑をかける人だとか、自分は常に正しいと思っているけど実際は間違ったことを言っているとか、そういう「愚かだな、この人…」という残念感がぬぐえない存在、それが “clever clogs”

用法としては、先の例文にある通り “be such a clever clogs” という使われ方の他、 まさにそういう人、という意味で “Mr. Clever Clogs” という言い方もします。

この “clever clogs” という表現、イギリスでは子供向けの絵本や動画にも登場するほど一般的な表現です。知ったかぶりをして、後で痛い目に合う、そんな登場人物が目に浮かびますね。

さて、気になるのはその語源です。16~17世紀ごろの英語で、 “fellow” (人、同輩)を意味する単語に  “boots” (ブーツ、長靴)がありました。当時は「賢い人」という意味で “clever boots” と言っていたわけです。

のちに “clogs” (木靴) がイギリス北部で使われはじめたことから、 “boots” を “clogs” に置き換えて “clever clogs” という表現が生まれました。諸説ありますが。類義語には “clever dick” があります。賢ぶる人、知ったかぶりをする人、うぬぼれ屋、という意味です。

意外な意味の英熟語を使いこなそう!

見慣れた単語で構成されているのに、ストレートな意味だけで考えてしまうと理解不可能な英熟語を見てきました。

厳選された6つの熟語は、いずれもネイティブスピーカーの方には身近な表現です。

逆説的な使い方、皮肉を込めた用法など、英語学習者にはややハードルの高さを感じるラインナップだったかもしれませんが、ぜひ、意味やニュアンスをマスターして、会話に織り交ぜてみてくださいね!