
カナダの税金制度は、日本と違う点が多くあります。特に消費税は、州ごとに税率が異なるなど複雑な仕組みになっています。今回は、カナダの消費税のひとつ「HST(統一売上税)」について、仕組みや税率、還付申請方法までくわしく解説します。
この記事を読めば、カナダの税金HSTの基礎知識が身につくことでしょう。カナダ留学やワーホリの日常生活に密接に関わるカナダの消費税をよく理解しておいて損はないですよ。
HSTとは?カナダの税制度
カナダの税金制度
私たちの生活と深い関係がある「消費税」。
カナダでは、連邦政府と州政府の両方で消費税が課税されるシステムになっています。州ごとに税率や制度が異なるのもカナダの税制の特徴です。
カナダには、GST・PST・HSTという3種類の税金があります。
GST(Goods and Services Tax)= 連邦消費税
・カナダ全土に適用される税率(現在の税率は5%)
・サービスや商品販売に対して課税される
・一部の生活必需品(食品、医療品など)は非課税または税率0%が適用
PST(Provincial Sales Tax)=州売上税
・州ごとに税率や適用範囲は異なる
・消費や使用の目的で購入された有形動産などに対し、州が課税する
HST(Harmonized Sales Tax)=統一売上税
・連邦消費税(GST)と州売上税(PST)を統合
HSTは、日本語では「統一売上税」「統合売上税」「ハーモナイズド消費税」とさまざまな呼び方があります。カナダすべての州でHSTが導入されているわけではありません。HSTを導入していない州ではGST・PSTの税金を別々で徴収します。
HSTのメリット
そもそも、なぜHST(統一売上税)が存在するのでしょうか?
HSTを導入することで、企業はGSTとPSTを別々に管理・申告する手間が減り、会計処理が簡単になります。税務手続きが簡素化することにより、企業のコスト削減にもつながり、経済活動が促進されるというメリットもあります。消費者である私たちにとっては、1つの税率のみ把握すればいいため分かりやすいという点が最大のメリット。買い物の時に税金を計算するのも簡単です。
カナダのHST税率と仕組み
州ごとにHSTの消費税率や仕組みは異なります。
HSTを導入している州
カナダでHST(統一売上税)が採用されている州とその税率です。
・オンタリオ州:13%
・ノバスコシア州:15%
・ニューブランズウィック州:15%
・ニューファンドランド・ラブラドール州:15%
・プリンス・エドワード・アイランド州:15%
上記以外の州では、GSTとPSTが別々に課税されます。
州をまたいで旅行をする際には、「訪れる州でHSTが適用されるのか?」「税率はどれくらいか?」を確認しておくと、買い物の時も焦らないで済みますね。
HSTの対象品目と非対象品目
カナダで生活する上で最低限必要になるものやサービスには税金がかかりません。ぜいたく品には消費税がかかるけれど、生活に欠かせないものは非課税ということです。
・ほとんどの物品(衣類、家具、家電、書籍、雑貨など)
・ほとんどのサービス(レストランでの食事、美容院、娯楽施設、宿泊施設など)
・ガソリン
・スナック菓子
・基本的な食料品(生鮮食品、パン、牛乳など)
・穀物
・処方箋医薬品
・医療機器(補聴器、人口歯)
・医療サービス
・教育サービス
・託児サービス(一部)
・金融サービス
・中古住宅
・公共交通機関
・家賃
上記は一般的な例です。州によって対象品目が異なる場合がありますので、ご注意ください。
HSTの計算方法
具体的なHSTの計算方法を見てみましょう。
HSTはシンプルなので計算も簡単です。安心してください!
(オンタリオ州のHST税率:13%)
HST額を計算する→商品の価格:100ドル × HST税率:0.13 = 13ドル
合計金額を計算する:→100ドル + 13ドル = 113ドル
よってオンタリオ州で100ドルの商品を購入した場合、支払う合計金額は113ドルになります。
(ノバスコシア州のHST税率:15%)
HST額を計算する:→食事の価格:50ドル × HST税率:0.15 = 7.5ドル
合計金額を計算する→ 50ドル + 7.5ドル = 57.5ドル
よってノバスコシア州で50ドルの食事をした場合、支払う合計金額は57.5ドルになります。
カナダの税金が高いと言われる理由
カナダの税金はなぜ高いと言われるのでしょうか。
【連邦税と州税の二重課税 】
まず前述の通り、カナダの税金の仕組みによるものです。
カナダの消費税は、連邦税と州税の二重構造になっているため、合計の税率は「15%」「13%」等となります。日本で生活している私たちにとっては「消費税15%」なんて数字を見ると、ギョッとしますよね。
【所得税の累進課税】
カナダの所得税は、稼いだ金額に応じて税率が変わる「累進課税制度」をとっています。
簡単に言うと、たくさん稼いだ人は税率が高く、稼ぎの少ない人は税率が低くなる仕組みです。経済的な公平性を保ちつつ、みんなで社会を支えようということですね。しかし稼ぎが多い人の中には、「税金が高い」と感じる人は当然いることでしょう。
【税金は高いけれど社会保障制度が充実】
カナダの税金は確かに高いですが、その分、社会保障が充実しているという側面もあります。カナダの税金は社会保障制度を支えるための重要な財源となっています。高い税金を支払うことで、充実した医療・教育・社会福祉サービスなどを利用できるのです。
救急医療を除き、医療費は基本的に無料です。
しかし、歯科治療や眼科治療、処方薬などは自己負担となる場合が多いです。そのため民間の医療保険に加入することが一般的となっています。
また、カナダの年金制度の中のOAS(老齢年金)は、雇用履歴に関係なく支給されるため、日本のように就労していた時に年金を支払ったかは関係ありません。受給の条件を満たしていれば支給されるため、高齢者が安心して生活を送るための大事な収入源となっています。
児童手当も日本よりも高額を受け取ることができたり、国からだけではなく州からの支給がある場合もあり、日本より手厚いです。
HSTの還付申請方法
カナダには「GST/HST Credit」という税金の還付制度があります。
HST還付とは
普段の買い物で支払っているHSTは、条件を満たせば還付されることがあります。 GST/HST Creditは、GST/HST税(消費税)を低〜中所得者に対して還付する制度のことをいいます。 収入の少ない人への家計支援手当てと考えると分かりやすいでしょうか。そのため、誰でも還付を受けられるわけではありません。
HST還付の申請条件
カナダ国内に居住している19歳以上の方であれば受給資格があります。前年度の所得に応じて低〜中所得者と判断されれば、還付の対象者となります。還付対象者になると、年に4回(1月・4月・7月・10月)カナダ政府から還付金が支給されます。
HST還付の申請方法
HST還付の方法は2種類あります。
【タックスリターンを行う】
まず1つ目はタックスリターンを行う方法。
タックスリターンとは日本でいう「確定申告」のようなものです。
カナダには日本の年末調整にあたるシステムがないため、自分で確定申告を行う必要があります。またカナダ国民だけでなく、カナダ国内で働いた外国人も対象です。ワーキングホリデーで渡航しアルバイト収入がある方も当然タックスリターンの申告対象者となります。タックスリターンの申請を行うことで、あなたがHST還付に該当するかどうかをカナダ政府側で判断します。
もし該当する場合、その年の7月から還付金の支給が開始されます。国の方で自動的に計算してくれて、対象者であれば還付を受けられるため分かりやすい方法ですね。ちなみに、タックスリターンは収入がなくても申請可能です。
ワーホリや留学をしている方で、タックスリターンの申請を自分で行う方もいます。 しかし手続きに自信がない方や、必要になる書類が人によって違うため手続きが難しいと感じる方もいることでしょう。スムーズにタックスリターンの手続きを行いたいならば、タックスリターン代行会社へお願いするのが最も簡単な方法です。日本語対応している会社もありますよ。
【自分で還付申請を行う】
2つ目は、自分で還付の申請をする方法です。カナダへ入国した翌年以降は、タックスリターンの申請を行うことでGST/HST Creditも自動的に計算されます。そして、対象者であればその年の7月から支給を受けられます。しかし、カナダへ入国した年に還付を受けるためには、GST/HST Creditの申請を自分でする必要があるのです。
下記のフォームをダウンロードして、申請書に記入後、郵送で送ります。
・新規居住者のためのGST/HST Creditの申請書(RC151 フォーム)
申請して承認されるまでには時間がかかるため、カナダに入国したら早めに手続きを済ませておくことをおすすめします。GST/HST Credit追加申請の代行手続きを行っている会社もあるため、手続きに不安を感じる方はお願いしてみるといいでしょう。
まとめ
カナダのHST(統一売上税)の基本情報や、還付の申請方法について解説しました。
基本的な食料品などの生活必需品はHSTの対象外品目となるため、留学やワーホリ生活にかかる費用を抑えられるのはありがたいですね。HSTの還付制度も活用し、少しでも出費を減らしたいものです。
申請に不安を感じる方は、手続き代行会社を利用すればスムーズに安心して登録ができますよ。