
海外に興味を持っている人の中には、
海外の刑務所がどのようなものなのか興味がある人もいるのではないでしょうか。
この記事では、フィリピンの刑務所がどのような場所なのか解説しています。
実際にどういった生活を送ることになるのか、課題はなんなのか、自由度や規則はどうなっているのかなど、フィリピンの刑務所の実態を詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
- フィリピンの主な刑務所:ニュー・ビリビッド刑務所
- フィリピンの主な刑務所:サンボアンガ市刑務所
- フィリピンの刑務所での生活
- フィリピンの刑務所における問題点
- フィリピンの刑務所における自由度・規則の厳しさ等
- まとめ
フィリピンの主な刑務所:ニュー・ビリビッド刑務所
フィリピンにはさまざまな刑務所がありますが、そのうち主要な刑務所の1つとして挙げられるのがフィリピンのモンティンルバにあるニュー・ビリビッド刑務所です。
ニュー・ビリビッド刑務所の運営や管理は司法省の矯正局が担当しており、古い情報ですが、2004年10月時点では16,747人が収監されていました。
ニュー・ビリビッド刑務所が主要な刑務所の1つとされている背景として考えられるのが、施設の大きさにあります。
こちらの刑務所は敷地面積が551ヘクタール(1,360エーカー)あり、非常に大きい点が特徴です。
また、そのうちの104ヘクタール(260エーカー)は、後になって司法省の官舎建設に転用されています。
官舎を建てることができるくらいの大きさであることから、いかに大きな刑務所であるかが理解できるでしょう。
一方で、非常に広大な敷地を持つニュー・ビリビッド刑務所であっても、過密な収容者数が問題視されています。
2019年には服役している人の5人に1人が死亡しているという報道もされるなど、人が多過ぎて生活スペースが十分に確保されていない状況が明らかにされました。
刑務所内では楽しみもある
刑務所というと、受刑者が刑務作業を行っているイメージが強いかもしれませんが、刑務所内には屋内運動場があり、受刑者たちはスポーツを楽しむことも可能です。
例えばバスケットコートがあるため、バスケットをプレーしながら過ごすこともあります。
そのほかにも、手工芸品の製造に取り組むことができるほか、市場を意味する「タリパパ」が設けられているため、物品を買うことができます。
さらに、刑務所内には教育施設もあり、そこでは初等教育や中等教育、職業訓練、識字教育などを受けることができ、商学分野の学士号取得を目指すことも可能です。
このように、刑務所内とはいっても、ニュー・ビリビッド刑務所では受刑者にさまざまな機会が提供されているといえるでしょう。
なお、刑務所内にはさまざまな宗教のバックグラウンドを持つ人たちがいることもあり、宗教面での配慮もされています。
例えば、カトリックの礼拝堂が刑務所内にはあり、そこではミサが毎日行われている点が特徴です。
フィリピンの主な刑務所:サンボアンガ市刑務所
サンボアンガ市刑務所もフィリピンの主な刑務所の1つとして挙げられます。
サンボアンガ市刑務所は、フィリピンのミンダナオ島の最西端に位置するサンボアンガという都市にある刑務所です。
サンボアンガは沖合にスールー諸島が連なっている点が特徴で、高度に都市化された街であることに加え、フィリピンの中でも市制移行が最も早かった都市の1つとされています。
サンボアンガ市刑務所の具体的な収容者数や施設の規模は不明ですが、非常に大きな刑務所であるとされています。
また、こちらの刑務所にはFacebookページがあり、刑務所内で受刑者がどのような生活を送っているのかを投稿を通して垣間見ることができます。
フィリピンの刑務所での生活
ここでは、フィリピンの刑務所でどのような生活が行われているのか解説します。
フィリピン国内にも各地に刑務所があるため、一概にはいえませんが、刑務所によってはビルタイプのものもあり、そこに男性・女性がそれぞれ収容されているケースもあります。
また、外国人犯罪者も収容されており、日本人が収容されているケースも珍しくありません。
また、刑務所によっては収容率が400%を超えているケースもあるなど、収容率の高さはフィリピンの刑務所における課題の1つです。
刑務所の生活は資本主義
そんなフィリピンの刑務所ですが、食事やベッド、トイレなどは資本主義となっており、お金を支払うことで刑務所内での生活をより良いものにできる点が特徴です。
例えば、ベッドは年間約2万円を支払わないと使用できない仕組みで、支払いができない人は床で雑魚寝することになります。
収容率の高さもあって、雑魚寝となると他の受刑者と密着しながら眠ることとなるため、寝返りが打てないのはもちろん、密着による暑さなどもあるでしょう。
また、フィリピンは一年を通して暑い国であり、寝る際には扇風機などがないと快適に眠ることができません。
しかし、その扇風機も刑務所内で使用するにはお金が必要です。
ベッド脇における扇風機代として800円を支払った人のみが使用できます。
刑務所内のトイレ
トイレに関しては共用となっており、シャワー室を兼用しています。
シャワーといっても桶の中に水があるだけです。
トイレは便器はついているものの便座はないため、座って用を足すときは注意しなければなりません。
さらにトイレットペーパーはないため、自分の手を使って拭きます。
ちなみに、トイレに関しては特別なトイレもあります。
こちらは有料のベッドを所有している人のみが利用できるトイレです。
有料ベッドを所有していない人は限られたトイレを多くの受刑者同士で共用しなければならないため、自分の好きな時にトイレを利用できないストレスがあります。
一方で、お金を払っている人であれば、トイレを自分の好きなタイミングで使えます。
このようにトイレ1つをとっても資本主義社会となっているのがフィリピンの刑務所の特徴です。
なお、刑務所は階級があり、部屋ごとにリーダーがいて、その下に班長、行動の自由のある囚人、行動の自由のない囚人と続きます。
最も下層の自由のない囚人は自由時間であっても整列して座る必要があり、トイレに行くのも許可が必要と、自由度にも大きな差があります。
刑務所内での食事
受刑者とはいっても、食事を通して栄養を摂取しないことには健康状態を維持できません。
しかし、フィリピンの刑務所の場合、食事でも資本主義がベースです。
食事自体は1日3食あり、基本的には囚人が自ら作ります。
ただし、野菜スープにライスと決して栄養面でも量でも十分とはいえません。
一方で、お金がある人はお金を支払うことで豚肉や焼き魚、目玉焼きなど、タンパク質となるものを食べられます。
このように、刑務所内とはいっても、資本主義の仕組みがさまざまな場面で見られる点が、フィリピンの刑務所生活の特徴です。
ただ、これは裏を返せば、お金さえあれば刑務所内でも比較的いい生活ができるということでもあります。
フィリピンの刑務所における問題点
フィリピンの刑務所における問題点は、先ほども触れているようにその収容率の高さにあります。
刑務所によっては400%を超えるケースもあるなど、過剰な詰め込みは受刑者の生活に大きな影響を与えています。
例えば、詰め込みによって病気が蔓延する、暴力沙汰などが起こりやすくなる可能性があります。
実際にフィリピンの国立刑務所によると、受刑者のうち5人に1人が毎年死亡している状況にあったそうです。
その死亡者数は5,000人を超えるとされています。
収容人数30人の監房に対して131人が入っていたという報告もあるなど、キャパシティを大幅にオーバーしている状況は大きな問題だといえるでしょう。
フィリピンの刑務所における自由度・規則の厳しさ等
フィリピンの刑務所における自由度や規則の厳しさに関しては、先ほども説明しているように、刑務所内は基本的に資本主義となっており、お金があればある程度の自由や快適さを手に入れられる一方で、階級の一番下に位置する人は自由時間すら十分に確保できないなど、規則は非常に厳しいといえます。
また、過去にニュースなどで収容所にいる人が携帯電話を使用している様子を目にしたことのある人もいるかもしれませんが、フィリピンであっても、刑務所内で受刑者は携帯電話を使うことはできません。
携帯電話を使用しているシーンを見たと思われるのは、オーバーステイなどによって強制送還されることとなった人たちが収容される入国管理局の施設です。
入国管理局の施設では、本国との連絡を取るケースや航空券の取り直しをするケースなどがあり、そのような時に携帯電話が必要となるため、使用自体は認められている場合があります。
そのため、刑務所内では基本的に携帯電話などは使用できません。
ただし、フィリピンの刑務所は施設内の統制が取れているわけではなく、職員のガバナンス面での問題があるため、看守の裁量や受刑者との交渉次第でルールや規則が変わる可能性が大いにありえます。
これは、フィリピンの社会全体に、交渉や取引を通して利益を得ることは問題ないという考え方が存在しているためです。
実際に刑務所以外でも、例えば外国人が滞在許可を延長する、就労や結婚の手続きをするといった場合などに、賄賂を支払えば素早く手続きをしてもらえるといったケースは決して珍しくありません。
フィリピンの場合、公務員とはいっても給料が決して高いわけではなく、日本のように高いサービス精神を持っていたり、意欲を持っていたりするわけではありません。
兼業をしている人もいます。
生活を安定させることが優先されている状況にあるため、刑務所という場所であっても、賄賂を受け取る可能性は十分にあるでしょう。
まとめ
今回は、フィリピンの刑務所について解説しました。
フィリピン国内にもさまざまな刑務所があり、中には非常に敷地の大きい刑務所などもあります。
刑務所内での生活は、資本主義がベースとなっており、刑務所内であってもお金が支払えなければ生活の質を高めることができません。
一方で、お金があれば、寝床や食事、トイレなどさまざまな面で優遇される点が特徴です。
また、日本とは違って公務員であっても賄賂などを要求してくることもあるため、刑務所内で受刑者が看守にお金を支払うことで刑務所内のルールが変わってしまう可能性もあります。