多民族国家マレーシアでは、英語が特別な位置を占めています。
公用語はマレー語ですが、英語は教育・ビジネス・日常会話に広く浸透し、都市部では「準公用語」と言える存在です。しかし地方に目を向けると、その通用度には差があり、生活の中で戸惑う場面も。
この記事では、 英語がどこで通じて、どこで通じにくいのか、マレーシアでのリアルな英語事情を詳しく解説していきます。
マレーシア基本情報
1. 人口と民族構成
マレーシアの人口はおよそ3,300万人で、多民族国家として知られています。最大の民族グループはマレー系の人々で、国の政治や文化の中心的存在です。次いで中国系住民が多く、経済やビジネス分野で大きな影響力を持っています。
また、南インド系を中心としたインド系の人々も多く、宗教や料理など独自の文化を守り続けています。ボルネオ島には「オラン・アスリ」と呼ばれる先住民族も存在し、彼らの伝統的な生活様式も大切にされています。
2. 宗教
マレーシアではイスラム教が国教とされていますが、同時に宗教の自由も保障されています。 街を歩けばモスクや寺院、教会が自然に共存しているのが見られます。 イスラム教徒の生活は礼拝やラマダン、ハラル文化に深く根ざしており、宗教行事も日常生活に強く結びついています。
一方で、仏教や道教を信仰する中国系住民、ヒンドゥー教を信仰するインド系住民、キリスト教徒など、各宗教ごとの祝日や行事もカレンダーに組み込まれており、多様性が日常に溶け込んでいます。
3. 言語
公用語はマレー語ですが、都市部や観光地では英語が広く使われています。 そのため旅行者も比較的スムーズにコミュニケーションが取れる国です。
また、民族ごとに家庭やコミュニティ内では異なる言語を使っており、中国系住民は広東語や福建語などの方言、インド系の人々はタミル語などを話します。
このように、言語的にも非常に多様な国となっています。
4. 気候
マレーシアは一年中高温多湿な熱帯雨林気候に属しており、気温は約25度から35度の間で推移します。モンスーンの影響を受けるため、地域によって雨季の時期が異なります。
東海岸は11月から2月にかけて激しい雨に見舞われることが多く、逆に西海岸(クアラルンプールやペナン)は比較的安定した気候で、時折スコールが降る程度です。時期と場所によって、天候に注意が必要です。
5. 食事文化
マレーシアの魅力の一つは、間違いなくその多彩な食文化です。 マレー系、中国系、インド系、それぞれの料理が街中にあふれており、屋台でもレストランでも様々な味が楽しめます。
マレー料理はココナッツやスパイスを効かせた優しい味わいが特徴で、中国系の料理は炒め物や麺類が豊富です。インド系の食事はスパイシーで香り高く、ロティチャナイやカレーライスが人気です。また、それらが融合したニョニャ料理という独自ジャンルも発展しており、様々な食を楽しむことができます。
6. 観光
首都クアラルンプールは、近代的な高層ビルとイスラム建築が混在する魅力的な都市です。 中でもペトロナスツインタワーやバトゥ洞窟は観光名所として知られています。 ペナン島のジョージタウンは、歴史的な建築とストリートアートで有名で、美食の町としても人気があります。
自然派の人には、熱帯雨林やオランウータンが見られるボルネオ島(サバ・サラワク州)や、海を楽しみたいなら透明度の高い海とリゾートが揃ったランカウイ島がおすすめです。 歴史を感じたい人には、ポルトガルやオランダの植民地時代の面影が残るマラッカも見逃せません。
マレーシアの英語事情:多言語国家の中での英語の位置づけ
1. 歴史的背景:なぜ英語がここまで浸透しているのか?
マレーシアに英語が根付いた最初のきっかけは、19世紀から続いたイギリスの植民地支配にあります。 イギリス統治時代、英語が、行政、公教育、司法の主要言語として使用されていました。 特に都市部や商業地で英語教育を受けた人々が多く、英語は社会的・経済的に「成功への鍵」とみなされてきました。
1957年の独立後、政府はマレー語を国語(ナショナルランゲージ)として推進しましたが、英語は依然として教育やビジネス分野での重要性を保ち続けました。
つまり、政治的にはマレー語重視、実用的には英語重視という複雑な構造が現在に至るまで続いているのです。
2. 教育における英語の役割
マレーシアの教育制度では、英語は「第二言語」として扱われています。 政府系の公立学校でも、小学校から英語の授業が行われ、中学・高校にかけては数学や科学を英語で教えるプログラムも導入されてきました。
また、私立学校やインターナショナルスクールでは授業のほぼすべてが英語で行われており、外国大学の分校も英語を共通語としています。
そのため、富裕層や中間層以上の家庭では、子どもに高い英語力を持たせることがキャリア戦略の一環とされています。 大学進学にも英語力は必須で、多くの大学入試ではIELTSやMUET(マレーシア英語能力試験)などの英語スコアが求められます。
3. ビジネスと職場での英語使用
ビジネスの場では、英語が実質的なデフォルト言語です。 国内企業の会議や契約書類、Eメールのやりとりでも英語が頻繁に使われます。 とくに、外資系企業やグローバル市場をターゲットにする企業では、職場の共通語が英語というケースも多く見られます。
このような状況の中、マレーシア人の履歴書では「英語力:ビジネスレベル」などと明記されていることが多く、英語ができることがキャリア形成や就職の大きな武器になっています。
4. 英語とメディア・カルチャーの関係
テレビ、ラジオ、新聞、SNSといったマスメディアやオンラインコンテンツでも、英語の存在感は非常に大きいです。 たとえば、英語の新聞が広く普及しており、英語圏の映画やドラマが字幕付きで放映されるのも一般的です。 YouTube、Instagram、TikTokなどのソーシャルメディアでは、英語で発信するローカルインフルエンサーも多く、特に若い世代では英語が感情や意見を表現する主要言語になっています。
5. 「マングリッシュ」という現象
マレーシア特有の英語の使い方に、「Manglish(マングリッシュ)」と呼ばれる現象があります。
これは、英語にマレー語、中国語(特に福建語や広東語)、タミル語などが混ざり合ったローカル色の強い英語で、文法や語順が崩れていたり、スラング的な表現が多用されます。
マレーシアでは英語は「外国語」ではなく、多民族国家における「橋渡しの言語」として、非常に実用的で現代的な役割を果たしています。
公用語ではないながらも、社会、経済、教育、メディアのあらゆる場面で英語は日常的に使用され、そしてそれがマレーシア独特のスタイル(Manglish)で発展しているところが、他の国とは違う興味深いポイントです。
日常生活での英語の通用度:都市部と地方の違い
1. 都市部での英語の通用度:準公用語
クアラルンプール、ペナン、ジョホールバルなどの都市部では、英語は日常生活で非常によく通じる言語です。 店員、カフェスタッフ、タクシー運転手、病院の受付、役所など、基本的に英語で会話が成立することがほとんどです。
・カフェやファストフード、ショッピングモールでの注文・接客
・Grab(配車アプリ)でのドライバーとの会話
・外国人向けの不動産仲介や病院・クリニック
・スーパーマーケットの商品表示やレシート表記など
また、若い世代(20〜40代)は学校で英語教育を受けており、SNSなどでも英語に親しんでいるため、流暢に話す人も多く、フレンドリーで自然な英語が返ってくることが多いです。
都市部の住民は、民族を問わず「英語で話す方がスムーズ」な場面も多く、マレー語と英語を自由に使い分けています。
特に中国系やインド系の人たちは家庭でも英語を使うことが多く、バイリンガル・トリリンガルが当たり前という人も珍しくありません。
2. 地方部での英語の通用度:やや限定的
一方で、地方(田舎町、小さな村、ボルネオ島の内陸部など)に行くと、英語の通用度は大きく下がります。 マレー語が主言語として使われており、英語が話せる人がそもそも少ないという地域も存在します。
・高齢者層(60代以上)では英語を話せない人が多い
・バス運転手、地方病院のスタッフ、村の商店などではマレー語がメイン
・看板や案内表示もマレー語オンリーのケースが多い
ただし、教育を受けた若者や公務員には英語をある程度理解できる人もおり、観光地化された地方(例:マラッカ、カメロン・ハイランドなど)ではある程度英語も通じます。
3. 地元の人の英語への距離感
都市では英語は「日常に溶け込んだ便利な言語」として自然に使われていますが、地方では「学校で習ったけどあまり使わない外国語」という認識が強いです。
そのため、英語で話しかけるとちょっと緊張されたり、苦笑いされたりすることもあります。
ただし、マレーシアの人々はとても親切でフレンドリーなので、英語が通じなくても、身振り手振りや簡単な単語で一生懸命対応してくれるケースが多いです。 マレー語を少しでも話すと喜ばれるので、簡単なフレーズを覚えておくといいでしょう。
英語が通じにくい場面と対処法
1. ローカルの屋台・市場
地方だけでなく、都市部でもローカル感の強い屋台や市場では、英語があまり通じないことがあります。 屋台のおじさん・おばさんは高齢で、学校教育で英語をあまり学んでいなかった世代であることが大きな理由です。
⚪︎よくある場面
・注文の仕方が分からない
・料理の内容や辛さが不明
・値段が聞き取れない
⚪︎対処法
・メニューが写真付きなら指差し注文が一番確実な方法
・「Not spicy?」「Chicken or beef?」などシンプルな単語で質問する
・簡単なマレー語を覚えておく
「berapa?(ベラパ?)」=いくら?
「ayam(アヤム)」=チキン 「daging(ダギン)」=ビーフ
2. 地方の交通機関(ローカルバス、長距離列車など)
地方の駅やバスターミナルでは、英語表記が少なかったり、スタッフが英語を話せなかったりします。長距離バスの乗り場・時間の確認などがややこしくなることも。
⚪︎よくある場面
・乗り場の案内が理解できない
・チケット売り場での会話が噛み合わない
・時間の変更が伝わらない
⚪︎対処法
・行き先は紙やスマホで見せる
・オンライン予約を活用すれば最小限の会話で済む
3. 地方病院・クリニック
私立病院や都市部の大病院では英語が通じますが、地方の診療所ではマレー語が中心。 医師や看護師が英語を理解できても、受付の人や処方箋の説明が難しいことがあります。
⚪︎よくある場面
・症状を説明するのが難しい
・薬の飲み方がよく分からない
・保険関連の手続きで混乱
⚪︎対処法
・薬のパッケージをスマホで翻訳・撮影して確認する
・滞在が長い場合は、英語対応可能な私立クリニックをあらかじめ調べておく
4. 地元のタクシーや地方のGrabドライバー
Grab(マレーシアの配車アプリ)は英語対応ですが、ドライバーは必ずしも英語が得意とは限りません。目的地の確認やちょっとした会話で困ることがあります。
⚪︎よくある場面
・目的地の説明がうまく伝わらない
・渋滞や迂回などの事情が理解できない
・降りる場所の指示が通じない
⚪︎対処法
・アプリ内のチャット機能を使い、英語+マレー語+翻訳で短文を送る
・建物名やランドマークをGoogleマップのピンで送ると確実
まとめ
マレーシアでは英語が都市部を中心に広く通用し、生活や旅行において非常に便利な言語です。 教育やビジネス、メディアでも英語の存在感は強く、多民族社会の橋渡し役として機能しています。
ただし地方ではマレー語が主流で、英語が通じにくい場面もあるため、簡単なマレー語フレーズを覚えたり、翻訳アプリを活用するなどの工夫があると安心です。 都市と地方の違いを理解すれば、より快適にマレーシアを楽しむことができるでしょう。

◇経歴
大学では教育学部英語科を専攻し、3年生の時にアメリカのディズニーでの大学生インターンシップに参加。
コロナの影響で途中帰国となりましたが、その後ホテルのフロントに就職し、サービス業の経験を積みました。
卒業後は、カナダでコープ留学を経て、再度アメリカのディズニーで1年弱勤務。
その後、ディズニー社とフリーランス契約を結び、アジア各国でイベントの仕事を行う一方で、オンライン英語コーチング塾のコーチとしても活動しています。
◇資格
・TOEIC 950点
・英検 準1級
◇留学経験
・Walt Disney World インターナショナルカレッジプログラム
→(アメリカ フロリダ州)コロナにより1ヶ月で帰国
・SELC College 語学学校2ヶ月+コープ留学1年
→(カナダ ブリティッシュコロンビア州)
・米国三越 CRプログラム
→(アメリカ フロリダ州)
◇海外渡航経験
学生時代はバックパッカーに夢中になり、1人旅や友人とともに約20カ国を訪れました。カタール、ミャンマー、ラオス、カンボジアなどの珍しい国も旅しました。また、イタリアでは1人で自転車を使って縦断旅行をするなど、どれも素晴らしい経験となりました。アメリカでの留学では、ディズニーでエンターテイメント関連の仕事を経験し、2度目の留学ではレストランサーバーとして働きました。カナダのコープ留学時も、現地のステーキハウスでサーバーをしました。
◇自己紹介
中学時代にアメリカの映画に触れたことがきっかけで英語を学びたいと思い、大学では英語系の学科に進学しました。
時間の余裕がある大学生活の中で、何か心が踊る特別な経験をしたいと探し求め、バックパッカーとして野宿をしたり、自転車で旅をしたりするなど、数々の冒険を通して視野を広げました。
その経験から留学を決意し、憧れだったディズニーで働ける大学生インターンプログラムを見つけ、見事合格。夢にまで見たアメリカディズニーで働くことができましたが、コロナの影響で1ヶ月で帰国せざるを得なくなりました。
帰国後はTOEICや英検の資格を取得し、就職後もディズニーで働く夢を諦めきれず、カナダに留学してさらに英語を学びました。その後、形は違えど再びディズニーで働くことができ、現在はディズニー社とフリーランス契約を結び、アジア圏でのイベント業務を行いながら、英語コーチとしても活動しています。
英語を学んできたことで自分の見る世界が広がり、夢を掴むことができました。今後は、自分自身が学び続けるとともに、他の人が英語を通して人生を豊かにするお手伝いをしていきたいと考えています。